わらいなく『ZINGNIZE』第10巻 ばんばばん迫る刺客と復活の魔剣士!
第二部突入、単行本二桁突入の『ZINGNIZE』ですが、高坂甚内の方はいきなり大ピンチ。彼の首にかけられた賞金を狙う八人の刺客に加え、お菊までもが彼を狙います。一方、出雲阿国の前には、かつて庄司甚内に倒された剣鬼が出現、捕らわれの身になる阿国のですが……?
宿敵・風魔小太郎を倒したものの、江戸から姿を消した高坂甚内。それから三年、江戸と大坂の緊張が高まる中、大坂の間者であった高坂に対して徳川は多額の賞金をかけ、八人の猛者を刺客として送り出すことになります。
一方、京に向かったお菊と庄司は、そこで阿国と共に暮らす高坂を発見。再会を喜ぶ間もなく、大鳥井逸平の襲撃を受ける高坂ですが、さらにお菊までもが彼に襲いかかり……
と、再会した愛する人にいきなり腹をブッスリやられた高坂。それでも全く気にしていない、というより完全に舐めプの辺りが彼の器のデカさというべきかもしれませんが、そんな修羅場(?)でお菊に手を出そうという大鳥井こそいい面の皮であります。
鎧というより巨大ロボじみた外見の上、四人の仲間と共に連携攻撃を仕掛ける、一見強敵の大鳥井ですが――手傷を負った高坂に速攻でボコられて退場。八人の刺客の一番手としては不甲斐ないというか理想的というか……
しかしそこに現れたのは同じく刺客の一人のライオンじみた外見の男。「ばん」「ばんばばーん」と叫ぶばかりのその男の名は、塙団右衛門! なるほど、言われてみれば(?)というところですが、後世に名を残す豪傑が、ここで、こんな姿で見参というのには驚かされます。
しかし驚かされるのはその戦闘スタイル。古代ローマの軍装を参考に、二頭の馬を手足のように操る塙団右衛門の猛攻に、さしもの高坂も大苦戦を強いられることになります。
一方、そんな騒動も知らずに旧知の仲の岩佐又兵衛と再会した庄司甚内ですが、そこに現れたのは妖刀籠釣瓶を手にした剣鬼・小妻岩人――かつて小太郎の同志として江戸に現れ、多くの民の命を奪った末に、庄司の奮闘(と高坂のフォロー)の前に散った怪物であります。
その際に失ったはずの命を、小太郎同様に辺魂樹で蘇らせ、いまや籠釣瓶が本体というべき小妻。彼は阿国とお菊を緊縛して、高坂の行方を問うのですが――色々あって庄司が役に立たない中、阿国がその魔性をフルに発揮して……
というわけで、この巻のメインは高坂甚内vs塙団右衛門と、出雲阿国vs小妻岩人――というより、この二番勝負のみでほとんど話が進んでいないというのが正直なところであります。
相変わらず時々何が起きているのかわからなくなるアクションの連打の末に、気が付いてみれば最終ページだった――というのは幸福なのか残念なのか、悩ましいところではあります。
もっとも、怒濤の超人バトルの中で見え隠れする人間関係が、なかなか興味深いところであります。そういえば塙団右衛門の旧主は加藤嘉明(ここではわりと死神っぽい外見)だったなとか、そういえば名古屋山三郎の弟分だった庄司が阿国と色々面識あっておかしくないなとか、どこかで見たような名前だと思っていたら小妻岩人の前身は――などと考えるのはなかなか楽しいところではあります。
もちろん一番気になるのは、その先に何が描かれるのか、高坂を待つ運命は何かということであるのは間違いないのですが……
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