和月伸宏『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚・北海道編』第9巻 五稜郭決戦 全面対決三番勝負!
アニメ版はそろそろ終盤ですが、漫画の方はいよいよ絶好調。札幌での死闘に続いて、函館で繰り広げられるのは、物語の当初から登場していた劍客兵器・凍座部隊との全面対決であります。それぞれ人智を超えた力を持つ劍客兵器には、さしもの剣心たちも苦戦必至。三つの激闘の行方は……
札幌で官吏たちを次々と暗殺していた髏號・雹辺双と、新選組・御陵衛士の生き残りの激闘は、それぞれに全力を出し切った末に斎藤らが勝利。しかしその帰路に現れた劍客兵器・伊差川糸魚の襲撃を受けた斎藤は、深手を負うことになります。
一方、その函館では、五稜郭の露天獄に拘束された凍座ら劍客兵器の裁定に来た山県有朋が、劍客兵器壊滅の命を下すのですが――これはあまりにも認識不足としかいいようのない決定。ついにその真の実力を露わにした劍客兵器たちの前にただの兵隊たちが及ぶはずもなく、あわや全滅という状況に追い込まれるのですが――もちろんそこに駆けつけるのは剣心たち!
(勢ぞろいで駆けつけた姿を描く見開きが格好良い!)
かくてこの巻で描かれるのは、剣心チームvs劍客兵器函館隊の全面対決――
相楽左之助&“明王”悠久山安慈vs地號・土居潜具羅
“刀狩”沢下条張&“大鎌”本条鎌足vs偽號・権宮剛豪&恵號・天智実命
緋村剣心&“天剣”瀬田宗次郎vs異號・凍座白也
どれを見ても先が読めないカードですが、やはり気になるのは、元・十本刀組の動きでしょう。かつての敵が頼もしい仲間に、というのは少年漫画の王道ですが、しかし十本刀は一部の例外を除いて悪人揃い。はたしてそんな面子と剣心たちの共闘がうまく働くのか?
そんな中で安心して見ていられる――いや、何よりも夢のタッグとなったのは、左之助とその例外である安慈のコンビでしょう。明治政府への怒りから道を誤ったものの、悪人というのとはまた異なる安慈。実力的にも、本気を出せば作中屈指の――って、滅茶苦茶パワーアップしてる!
元祖二重の極みをマップ兵器に使うわバリアーに使うわ、攻防一体の滅茶苦茶な強さにもう仰天。これに対する土居の戦型・土遁暴威蟲(これで「ぐらぼいず」と読める人間はいないと思う……)は土や岩を操る技だけに、それを砕ける和尚は実に有利だと思われます。
唯一の(?)弱点であるメンタル面も、左之助という支えがあれば大丈夫。何よりも、志々雄亡き後の自省の日々が、彼の精神を強くしたのでしょう。
かくてダブル二重の極みで快勝(オーバーキル)と思いきや、鉄拳いや岩腕制裁しそうな異形の姿から、まさかのスポーティーな感じに――意外な展開であります。
一方、張&鎌足は、この面子の中では明らかに実力に不安があるものの、改心してなさそうという点では一番という、何が飛び出すかわからないコンビ。対する権宮&天ちー組は、やたらと軽い陽キャと顔も見せない陰キャと、対照的な組み合わせで、これまた何が飛び出すかわかりません。
いや、飛び出すのは例によって面白すぎる張の殺人奇剣。張というか新井赤空は何を考えていたんだ!? というツッコミも空しい怪剣を見れば、張も絶好調だとわかります。
これに大鎖鎌というトリッキーな動きの鎌足も加われば、名前も得物も豪快タイプの権宮は、いかに天ちーのフォローがあっても不利は否めませんが――勝負を決めるのは武器の性能だけでも、武術の腕前だけでもないのもまた事実。
互いに全てを出し合った悪人勝負の行方は……
そしてある意味最もどうなるかわからないのが剣心&宗次郎vs凍座戦。実力的には味方では間違いなくトップの二人ですが、しかし凍座も得体の知れぬ実力の持ち主――というより、銃撃を生身で受け止めてビクともしない異常な体の持ち主であります。
だとすれば、そんな相手に刀が効くのか――どう見ても(宗次郎の)負けイベントの予感がひしひしといたします。
全面対決三番勝負はいずれも決着は次巻に持ち越しですが、しかし今のところいずれも剣心チームが苦戦中。はたしてこの状況を覆すことができるのか――全く先は見えない状況であります。
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