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2023.11.03

やまざき貴子『LEGAの13』第6巻 大団円 繋がりあう人びとの運命

 中世のヴェネチアとフィレンツェを舞台に繰り広げられてきた恋と錬金術の大ロマンもいよいよこの巻で完結であります。行方不明の父を追うレガーレが知ることになるのは、自分の意外な出生の秘密。その秘密を知ったレガーレの選択は――様々な伏線が一気につながり、意外な大団円が待ち受けます。

 元首に軟禁され、黄金を作らされていたヴェネチアから仲間たちとともに脱出し、行方不明の父・ゲオルグを探してフィレンツェまでやってきたレガーレ。
 そこで腐れ縁の怪人物・コルヴォや、最愛のアルフォンシーナと再会したレガーレは、ついにゲオルグと再会するのですが、しかし彼はレガーレなど見向きもしない状態で……

 というわけで、父の態度に疑問を抱きつつ、あくまでもその姿を追うレガーレを待っていたのは、自分の出生にまつわる意外すぎる真実。どうやらゲオルグが実の父ではないこと、そしてベアトリーチェなる女性が母らしいことがこれまで語られてきましたが――その真実がついに語られるのです。

 そしてその中に浮かび上がるのは、運命に翻弄されながらも懸命に生きたベアトリーチェの姿。しかしそんな彼女と周囲の人々は、当時のイタリアの情勢も絡み、非道な悪人たちの犠牲になったのであります。
 すべてを知ったレガーレは母の後を継ぐのか。そして過去の復讐に乗り出すのか――レガーレの仲間たちも巻き込み、最後の冒険(悪巧みともいう)が始まります。


 物語が始まって以来、ほとんどノリと勢いに流されるまま生きてきたレガーレ。そのためもあって――というのは厳しい言い方かもしれませんが、物語自体も、どのような結末となるのか、この巻に入るまでわからなかったように感じます。

 しかしそれが全て計算の上――これまで綿密に張り巡らせてきた伏線を踏まえていたものであったことが、この巻の怒濤の展開の中で明らかになります。
 レガーレだけでなく、コルヴォ、クラリーチェ、ゲオルグ、ジアン――レガーレを取り巻く人びとの運命が実は一本の精緻な糸で繋がり、美しい環を描いていたことを知った時の驚きたるや……
(第1巻だけに登場したレガーレの先輩が、実は非常に重要なキャラだったのにも仰天)

 そして未読の方のために詳細に触れられないのは残念ですが、この巻の展開がまた、ほとんどジャンルが変わってしまうほどの疾風怒濤ぶり。ここでこう来るのか!? こう来るしかないか! と言いたくなるような盛り上がりには、ただただ胸が熱くなりました。
 もちろんそんな中でも最後までレガーレはレガーレなのですが――だからこそこの物語は大団円を迎えられたと感じます。

 そんな彼が作り上げた13種の薬のうち、ここに至るまで効果が不明だったものが、最後の最後にその効果(その皮肉なこと!)を鮮やかに表すシーンにも、ただただ拍手喝采であります。


 そして全てが終わった末に待つ結末に、心の底から笑顔が浮かぶ本作。波瀾万丈にして豪華絢爛、そして軽妙洒脱――見事な中世ロマンスでありました。


『LEGAの13』第6巻(やまざき貴子 小学館フラワーコミックスα) Amazon

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