『るろうに剣心』 第二十二話「蘇る狼」/第二十三話「牙を剥く狼」
左之助が何者かの襲撃を受け、意識不明の重体となった。一方、剣心は鎖鎌を使う暗殺者・赤末有人の襲撃を受けるも、これを退ける。道場に戻った彼を待っていたのは、左之助を倒した張本人であり、今は藤田五郎を名乗る元新選組の斎藤一だった。剣心と斎藤、幕末を彷彿とさせる死闘の行方は……
残すところ数話となった今回のアニメ版、二十二話・二十三話では、おそらくは最後の戦いとなるであろう斎藤一戦が描かれました。今回のアニメ版では冒頭に過去パートで登場した後に、満を持して登場した斎藤ですが――正直なところ、内容的には良くも悪くも原作を忠実になぞったという印象で、さすがにファンの間で語り草の旧アニメ版と比較するのは野暮としても、(もちろんこちらも質的に決して悪いものではなかったものの)普通に映像化された感があります。
もっとも普通にといいつつ、冒頭の左之助と斎藤の対決シーンをカットして、いきなり倒された左之助が描かれたのは、これはこれで得体のしれない斎藤の強豪感が出ているものの、やはりちょっと勿体なかったかと思います。
質の悪いファン的には、赤末有人は大丈夫だったのか気になったところですが、特に何事もなく登場。なぜかもっと赤い衣装を着ていた印象を持っていましたが、白と紫という、ちょっと意外なカラーリングが妙に印象に残ります(印象に残るといえば目張りですが――意外とお洒落だったのかしらん)
むしろ、原作当時から違和感――というかぶっちゃけ恥ずかしかった斎藤の「もう殺す」と、弥彦の「武器破壊」がそのまま残ったのはちょっと残念だったところで、前者はセリフの中でそれなりにこなれていた印象はあったものの、そもそも言葉として普通は出てこない後者はどうにかならなかったのかなあと感じます(「対空」云々もどうかと思いますが、もうキリがない)。
と、ネガティブなことばかりいきなり書いてしまいましたが、激闘の中で段々箍が外れていく二人の姿はなかなかの迫力で、どう見ても無理がありそうな斎藤の首締めも、あれはあれで(頭がカーッとなってるとやりそうな)妙な説得力があります。
特に剣心は、一人称が変わるという明確な変化を交えつつ、徐々に抜刀斎時代のメンタリティに近づいていく描写は納得できるものがありましたし、斎藤の方も今回は今となっては猛烈にレアキャラとしかいいようがない、愛想が良くて腰が低い「藤田五郎」モードも含めて、違和感はなかったかと思います。
しかし、改めて見ると、それまでるろうにとして薫や弥彦たちと接し、それによって(特に前回わざわざアニメオリジナルで描かれたように)かつての人斬り時代の姿からようやく抜け出せたかのように見えた剣心が、当の薫たちの目の前で抜刀斎に戻っていくというのはやはり衝撃的な展開であって、いささか命知らずにもほどがありながら、薫が二人の間に割って入りたくなるのも、それなりに理解できるものがあります。
そしてその行為が、当の剣心によって拒否されるのですから、なおさらその辛さは強く感じられるわけで……
さて、実は二人の対決はあくまでも腕試し。あわやというところで川路大警視をお供に登場したのは、大久保利道――というところで、タイトルを見るに、次回が最終回でしょうか。
しかし改めて見ると、腕試しのはずなのに完全に殺す気になってかかる斎藤は、さすがにどうかと思いますが……
(そりゃ「ひょっとして今でも悪・即・斬とか言ってる?」とか煽られても仕方ない)
そしてもう一つ、これは本当にどうでもよいことなのですが、愛想の良い時の藤田五郎が蕎麦屋でかけそばを食べる場面、お新香がついてきたのが妙に違和感で――原作ではお新香はなかったのですが、こちらの方が考証的に正しいのかしらん?
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