『明治撃剣 1874』 第弐話「渡世」
堂山組を皆殺しにし、守屋組の客人に迎えられる狂死郎。一方、川路にスカウトされてポリスとなった静馬は、警邏中に鎮台の兵士と乱闘になる。静馬に捕らえられた仲間を奪還するために屯所を鎮台の兵士たちが襲撃する中、故あって狂死郎は静馬に助太刀して戦うことに……
負傷して海に漂う兵士が、何者かに救出される姿がから始まる今回。この兵士こそがかつての狂死郎だったようですが――状況から見るに、彼も戊辰戦争で旧幕側の人間であったということでしょうか。
その狂死郎は絵に描いたような仁義を切って守屋組に草鞋を脱ごうとしますが、前回の失態を糊塗しようとした堂山組が悪評を流していたために失敗。それならばと今度は堂山組に殴り込みをかけて皆殺しにした狂死郎、看板を奪って献上して守屋組の親分に気に入られると客人に迎えられるのでした。
なんとなくどちらが主人公かわからない状況ですが、静馬は前回の岩倉襲撃一味との戦いぶりを認められた末、ストーカーじみた川路のスカウトによって、巡査の職に就くことになります(川路暇なのかしら、と思う一方で、川路だしな……という気も)。そこでコンビを組むことになったのは、前回彼を岩倉襲撃犯と思い込んで捕らえようとした薩摩出身の小山内、戊辰からの因縁もありギクシャクした二人ですが――そこに鎮台の兵士との乱闘騒動が発生します。
前年の徴兵令で平民から集められた兵士たちと、士族出身者が占められる巡査と――この半世紀後にまで続く軍隊と警察の不仲が思わぬところで飛び火した形ですが、芝居小屋で暴れる兵士を、静馬が菊五郎(時期的に五代目)の真似をした芝居がかった所作で取り押さえたことから、芝居マニアの小山内と打ち解けるという展開は、よくできていたと思います。
しかし収まらないのは鎮台の兵隊たち、こともあろうに仲間たちが捕らえられた屯所を襲撃して救出せんとする挙に出たことで、大乱闘となります。ここで救援に駆けつけようとした静馬の前にも鎮台の兵隊たちが立ち塞がるのですが(どれだけ暇なのだこいつら)――刀ではなく棒では勝手が違うということか、手傷まで負ってしまった静馬の思わぬ助っ人となったのが狂死郎であります。
鎮台の兵士に煙草入れを奪われたという守屋組傘下の人足の訴えを積極的に無視しようとした組長ですが、それを止めて、鎮台との厄介事を買って出た狂死郎。もちろん静馬がその事情を知るよしもありませんが、ここに静馬と狂死郎が背中合わせで、鎮台の兵士相手に大立ち回りを繰り広げることになります。
正直なところ驚くほど地味なクライマックスは、二人がそれぞれに大暴れした後に駆けつけた川路たちによって収められます。いや、それ以上にその場を収めることになったのは、佐賀に下った江藤新平が乱を起こした(正確には乱の首領に祭り上げられた)という報せだったわけですが……
そんな天下の動きの背後で暗躍しているのは、前回も登場した謎の碧眼侍と謎の芸者・雛鶴一党。裏の顔を持つ商人や守屋組長まで加わるこの一党が、一連の動乱を仕組んでいるようですが、いまいち散発的な動きなのが奇妙に映ります。
この謎の一党、狂死郎一党、パークス、そして警視庁と今のところ四つの勢力が存在するように見える物語ですが、はたしてどこに向かおうとしているのか……
(前回見た時は佐賀の乱が一つの山場になるかと思いましたが、そういえば速攻で鎮圧されたのでした)
ちなみにパークスのスパイの謎の記者・せんりが、獄中の岩倉襲撃犯の武市に近づいた時、警備に見せた英文の許可証(の偽物)、何故かメアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』……(時代的にはおかしくないのですが)
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