『戦国妖狐』 第2話「灼岩」
灼岩の前から一旦退却し、断怪衆の僧に事情を尋ねた迅火たちは、灼岩が断怪衆によって生み出された霊力改造人間であり、暴走して生まれ故郷を滅ぼしたことを知る。文字通り灼岩を粉砕し元の姿に戻した迅火は、この事態を引き起こした断怪衆に制裁を加えるため、総本山に殴り込みをかけるが……
今回からOP映像がつきましたが、そこでレギュラーとして顔を出している(人間の時の)灼岩の登場回。まさか前回から暴れまわってるアッザムみたいなのがツインテールの美少女になるとは思わない――というより因果関係が逆ですが、今回のメインとなるのは、ある意味この灼岩誕生にまつわるエピソードであります。
断怪衆の霊力改造人間の素材として、とある農村で父親に売られ、改造直後に暴走・脱走して故郷の住民を親を含めて皆殺しにし、その後も道行く人々や追手を襲っていた――あまりに悲惨な設定の灼岩。その話を聞いて真介がシリアスに涙を流し憤る一方で、たまは脳天気なテンションで「後のことは我ら世直し姉弟に任せよ?」と言い出すので、こちらの感情をどの辺りに置いてみればいいのか、混乱してきます。
この辺りの感情移入のしにくさというのはやっぱり本作の序盤にはどうしてもあって、たまは脳天気(の上に自分では戦わない)、迅火は中二病、真介は実力が伴わない、そしてある意味一番重い過去を背負っている灼岩はその部分の記憶を失っていると、誰に共感して良いかわからないというのはちょっと辛いな、と正直なところ思います。
もちろん、断怪衆の実験が非道であることは間違いないのですが、今のところその辺りが当の断怪衆の口から語られるのみなので、そこもちょっと素直に怒って良いのかな、という複雑な気分になります。
などと思いつつも、ここはやはり素直に真介に感情移入するべきなのでしょう。このアニメ版では、少しずつ描写を足すことで真介の印象を強くしていることは前回の紹介でも述べましたが、今回も、山中の総本山に向けて進む中で、さりげなく灼岩に手を貸す場面があったりと、人の良さを感じさせてくれます。
しかし真介関連で今回一番印象に残るのはやはり、宿代代わりに薪を割りつつ、真介が灼岩の所業に想いを馳せるシーン(というか前回の素振りをしながら自分の過去を思い出すシーンといい、何か振り下ろしている時にほかのこと考える質なのかしら)でしょう。この部分はアニメのオリジナルですが、闇の姿に改造された灼岩が、金で自分を売った父や自分を迫害してきた村人たちを殺す場面を、直接描写するのではなく、音と流れる血等を通じて間接的に描かれることになります。
特に父親のくだりは、(おそらくは知らずとはいえ)灼岩を化物呼ばわりし、腕には彼女を売った銭を抱えたままという姿で父が描かれ、次のシーンでは葉が舞い散る中で、重いものが振り下ろされる音と銭が散らばる音が響き、ややあって水路が真っ赤に染まる――という描写は出色であったと思います。
(ちなみにこの葉、もしかしてシャクヤクの葉だったりして、と思いましたが、葉の形を見た限りではさすがに考えすぎでした)
その一方で削られたのは、総本山を前にして精霊転化のために迅火がたまの血を吸う、ちょっと妖しげなシーン。何となくこの辺りはウリなのかと思っていましたが、カットされたのはちょっと不思議……
などと、今回も重箱の隅にばかり目が行ってしまいましたが、次回はおそらくアクションの連続、余計なことを考えている暇はないのではないかと思います。
ちなみにコン会ちらりとシルエットで登場した野禅、年寄り声の津田健次郎はちょっと意外でしたが、これはこれで良いかと思います。
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