『明治撃剣 1874』 第肆話「撃剱」
町で起きた辻斬りの犠牲者が大日本撃剱会の出場者であったことから、捜査のために身分を隠し、出場することになった静馬。そこには数々の強豪と共に、あの修羅神狂死郎も参加していた。一方、謎の人物・御前が行う阿片の密貿易を巡り、狂死郎が世話になっている守屋組長らの思惑が複雑に絡み……
二回も休みが入ったためもあってか、まだ第四回だったのか!? という気がする本作ですが、今回はタイトルというかサブタイトルの通りに激剣会が登場。それにふさわしくというべきか様々な剣士たちが登場し、その一方で物語の裏側の動きも活発化して一気に物語は複雑になってきた印象があります。
そしてその縦糸になるのはいうまでもなく撃剣会であります。言ってみれば剣術試合を興行化した撃剣会ですが、本作においては、謎の人物・御前とも深いつながりのある守屋組が取り仕切る興行、そしてそれを任されたのが、組長の龍三と杯を交わした狂死郎で――というわけで、色々と裏があるとしか思えません。しかしそれはさておいたとしても、多額の賞金に釣られて腕自慢たちが集まってくる、というのは定番ながらやはり盛り上がるパターンであります。
もちろん本来であればこうしたグレーゾーンのイベントに巡査である静馬が関わるはずもありませんが、彼が取り扱うことになった辻斬り事件の被害者が出場予定者、そして目撃された犯人が二刀流ということで、これも剣客ならば撃剣会絡みの可能性がある――というわけで捜査のため、偽名で彼も出場することになります。
さらに参加者の中には何故か藤田五郎がいるのですが(ここで静馬が何となく見覚えがあるような顔をしながら名前に覚えがなかったのは、藤田名乗りは斗南藩移住の時なので平仄はあっています)、さらに嬉しいのは中澤琴の登場です。
女性ながら男装して新徴組に参加したという、嘘のような実在の剣士である中澤琴。さらに自分より強い者と結婚すると決めていた(その結果生涯独身だった)とまで来るとキャラが立ちすぎているためか、意外とフィクションに登場することは少なかった彼女が登場するだけでも本作の価値はある、というのはもちろん言い過ぎですが……
さらに土俵で相手を殺して追放された殺人力士・雷岩梶五郎、紳士然とした態度ながら自分のペースのためには残虐行為も厭わないイギリス人ブレイズ・ミラー、やたらと運が良い短躯のおっさん・宝井幸太郎、賭場でのいざこざで刀を交えた狂死郎をも驚かせた居合使い・吉川冬吉――といずれも一癖も二癖もある面々に、静馬・藤田・琴、そして狂死郎も加わった八人でトーナメントが! と、いきなりメジャーな展開になるのには驚きましたが、ストーリーが比較的地味だっただけに、歓迎したいと思います。
さて、このトーナメント自体は次回開幕ですが、それと並行してきな臭さを見せているのが、第一話から登場している謎の金髪侍・御前サイドの動きであります。新政府打倒のために色々と企んでいるらしいこの御前、その一環として阿片の密貿易を行っていますが、一味の守屋組長と商人の藤島が、阿片を横流しして私腹を肥やそうとしているなど、一枚岩ではない様子。
さらにそこに目をつけた狂死郎は、配下たちを使ってこの横流しを妨害(しかしそれを阻んだ狐面の用心棒も、もしや……)。その目的はまだ不明ですが、御前の側は狂死郎、いやその前身の庄内藩士・池上宗一郎の存在を知り、自分の敵であると認識しています。どうやら幕末にはドイツと手を結んで薩長に対抗しようとしていたらしい狂死郎が、何故御前を狙うのか――おそらくはその辺りに本作の物語の核があるのでしょう。
そして組長への牽制と敵の排除、一挙両得とばかりに、雛鶴が狂死郎抹殺を狙う一方で、御前は「鴉」なる者を呼んだようですが――その直後に登場した巡査の牧野がいかにも不審な動きを見せたと思えば、金欲しさにその動きに巻き込まれそうなのが小山内巡査――と、あちこちで動きが出てきました。
さらにここに辻斬り事件がどう絡むのか、様々な勢力と登場人物が現れ、事態が複雑化していくのは伝奇の華、次回以降が楽しみです。
(これでキャラデザがもう少しわかりやすいと良いのですが――メインどころ以外はかなり地味なのでキャラを混同しやすい)
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