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2024.02.12

大島幸也『平安とりかえ物語 居眠り姫と凶相の皇子』第3巻

 山本風碧原作の『平安とりかえ物語 居眠り姫と凶相の皇子』の漫画版、第三巻にして最終巻であります。千尋との関係にドキドキが止まらない小夜ですが、ある日発見した暦のずれが、思いも寄らぬ事態に繋がっていくことになります。はたして二人の運命を変えることはできるのか――?

 宿曜師・賀茂信明の病弱な息子と入れ替わることで、陰陽寮に入り、星を見るという夢を叶えた大納言の姫・小夜。そこでふとした事(路上で居眠りしているのを見つかった)から出会った中務省の長官・千尋に、彼女は何故か気に入られてしまうのでした。
 実は千尋は、かつて小夜がその星を占った忌子と言われる親王その人。その時から小夜を忘れられない千尋は、何かと彼女に迫るのですが、小夜は自分の正体がバレていると思っていない&バレていたとしても自分などが好かれるはずがないと、壮絶なすれ違いを演じることに……

 と、傍からは男同士がいちゃついているようにしか見えない(おかげで千尋のお付きからは白眼視される小夜)という展開が続いた本作でしたが、この巻では一気に物語が動き出すことになります。

 星を観ているうちに、暦と星が大きくズレていることに気付いた小夜。それが自分の誤りではないと春分の日に確かめた小夜は、中務省長官――すなわち陰陽寮を所管する千尋とともに、暦博士・賀茂明保を訪ねたものの、けんもほろろの扱いを受けるのでした。
 一方、こういう時に頼りになるかと思われた信明も、千尋に近づきすぎるなと冷たくあしらってきた上に、千尋まで脅しにかかる始末。孤立無援となった小夜ですが、ある出来事をきっかけに、意外な事実に気付くことに……


 凶日に生まれたために凶相の皇子と呼ばれ、父をはじめとする周囲から疎まれて孤独に生きてきた千尋。そもそも千尋が小夜に惹かれるようになったのは、そんな自分に対して、彼女が未来に希望を感じさせる宿曜を読んだからなのですが――しかしそれでも、彼の持って生まれた星は変わるものではありません。
 それでは千尋は凶相の皇子のままなのか。小夜の読んだ宿曜は誤っていたのか――二人(?)の恋の行方以上に気になる星の行方が、ここで物語に大きな動きをもたらすことになります。

 さらに以前からうさんくさかったものが、ここに来てさらにその度合いを増した信明。その彼の行動理由も加え、本作の中心となる三人の運命が、そして彼女たちの行動の因と果が一気に結び付き、大団円へと――それも、本作ならではの要素を活かした形で――突き進んでいくのには、こうして漫画で読んでみても、改めて感心させられました。
(また、漫画でビジュアルとして読むと、信明の胡散臭さが幾層倍にも感じられるわけで……)

 もちろんここで描かれるものは相当に荒唐無稽ではあります。しかし、一人の少女が自分自身の道を貫くために努力し、そしてそれが回り回って一人の青年の孤独を救うという構図は、やはり美しいと言うべきでしょう。
 星を、すなわち未来を読む彼女でも――という結末も洒落ていて、やはりよく出来た「ファンタジー」であると、原作を読んだ時同様に感じた次第です。

 そしてすぐ上で荒唐無稽と申し上げたものの、それを美しい画の力によって、そこに確かにあるものとして描き抜いてみせた筆もまた、大いに好感が持てるものであったことは言うまでもないのです。


『平安とりかえ物語 居眠り姫と凶相の皇子』第3巻(大島幸也&山本風碧ほか KADOKAWA BRIDGE COMICS) Amazon

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