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2024.02.02

『戦国妖狐』 第4話「迅火と人間」

 人間を喰らう闇の成敗に向かった迅火とたまの前に現れた闇喰い人・雷堂斬蔵。風を操る魔剣・荒吹を用いるだけでなく、卓越した剣技を持つ斬蔵に迅火は敗れるが、斬蔵は命を奪わず見逃す。しかし断怪衆から妹の命と引き替えに迅火の確実な抹殺を命じられた斬蔵は、再び果たし合いを挑むのだった。

 冒頭から突っ走ってきましたが、何だかんだでたま・迅火・真介・灼岩が四人一組で暮らすことになって、ちょっと落ち着いた感のある本作。今回冒頭では、顔見知りの闇の知らせで、村人に生贄を出させている闇のことをたまが知るわけですが、知らせに来た闇とのやり取りや、村人に対して見返りに他者に善行を施すよう促す姿など、前回までの殴り込みはあくまでも例外で、たま(と迅火)はこうして地道にやってきたのだなあ、と感じさせられるところです。――いや、文句を言う子供も人を食う闇もぶん殴っているので、結局こういう行動しかなかったのかも……

 と、ここで村の子供の母親を人質に取るという闇のイヤらしい戦術に対して、迅火は当然のごとく無視しようとするも、しかし――という前振りを経て、今回の真打である「人間」斬蔵が登場。迅火とほぼ互角にやり合う力を持つ魔剣を持ちながらも、真のスキルは純粋な剣術という玄人好み(?)の人物で、そのやさぐれた風貌も相まって、主人公を圧倒して成長させて退場するゲストキャラ感溢れる人物であります。
 まあ実際には退場はしないのが本作のよいところですが、闇から解放した母子を今度は自分が人質にして迅火に対決を迫ったり、人間の技術の精華である剣術で迅火を圧倒したり、それでも迅火を討たずに大人の余裕を見せたり、律儀に斃した闇はきちんと食べたり、そしてこんなナリと稼業でも妹は大事にしていたり――と改めて見てみるとこんなにいいキャラだったのだなあと感心させられます。後で触れるように今回は「人間」「人間性」が意味を持つエピソードですが、その様々な象徴として、重要なキャラクターであるというべきでしょう。
(人間臭いといえば、迅火には実家を潰すと脅し、斬蔵には妹の命がかかっていると脅しつつ、「難しく考えるな。『脅しとは卑怯だぞ』と言っておけばいいのだ」と妙に味のあることを言う名もない断怪衆も、これもある意味「らしい」と感じます)

 一方の迅火はといえば、己の圧倒的なパワーで蹴散らすことのできない相手の登場に焦り、死すら覚悟した末に、再戦では完全に飲まれて決定的なミスを犯す(この辺り、斬蔵がどこまで意図していたかはわかりませんが、狙い通りであったとしたら面白い)ことになるのですが――そこからの大逆転の手段がムチャクチャなものなのが実に面白く、その八方破れぶりが斬蔵の技を破るという展開にある種の説得力をもたらしていると言ってよいのではないでしょうか。
 もちろんこんな技は普通の「人間」にはできないのですが、走馬燈まで見て頭が真っ白になるというのは、これはこれで実に人間らしい(そもそも闇闇拘っている時点でめちゃくちゃ人間らしいわけで……)。先に触れた人質のくだり、そして明るく接してくる灼岩やある意味真っ直ぐなリアクションの真介との触れ合いも含めて――今回はタイトル通りに迅火が様々な人間に触れて人間性を学び、自分の中にも残っている人間性を自覚するエピソードなのでしょう。

 しかし迅火がその人間性を捨てようとしている一方で、既に捨て去ってしまった者もいて、というのはフライングですが、闇とは人間ではないモノを指すのか、人間性を捨てればそれは闇なのか――その辺りに着目すると、やはり興味深い物語であります。


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