『明治撃剣 1874』 第参話「狩人」
行方不明者の服を売る古着屋を捕らえたことから、数多くの人間が殺害されていたことを知った静馬。背後に狩人倶楽部なる団体があることを知り、古着屋が出入りしていた商人・蔵屋に調査に向かった静馬だが、主の善兵衛に追い出される。さらに善兵衛は木戸孝允に圧力をかけ、捜査を中止させるが……
何故か放送が一週空いての今回は、いきなりの人間狩りネタ。これまでそれなりに史実を踏まえた物語が描かれてきましたが、突然、政界にも顔が利き、警察の捜査も手の及ばない黒幕が――という展開には、どういう顔をしたらよいのかわからなくなります。
この人間狩りは、戊辰戦争の中で人を狩り、殺すことに味をしめた元武家、今は大商人である蔵屋善兵衛が、配下を使って人間を拐かし、狩人倶楽部なる団体に人を集めて、密かに行っていたというもの。密かにといっても、そこら辺で攫ってくるのですぐに騒ぎになるし、殺された人間から剥ぎ取った血染めの服を、雑に古着屋に卸しているのですから、見つからない方が不思議であります。
(ちなみにこの善兵衛、絵に描いたような変態なのですが、料亭で吸い物の味が薄いと、自分の指を切って出した血で味付けするシーンは頭がおかしくて良かったです)
木戸孝允でなくとも呆れそうな犯行ですが、その木戸も圧力をかけられ(狩人倶楽部の参加者に長州出身者が何人も含まれていたとはいえ)、警察の捜査を中止してしまうのは、まあいくらでも後ろ暗いところのありそうな桂小五郎だし――というのは冗談としても、病院に担ぎ込まれた古着屋を堂々と襲って殺した上、巡査にまで深手を負わせるほどの無茶をするとは、何とも大味な展開に天を仰ぎたくなります。
(一応、江藤新平の乱の対応に大久保利通が忙殺されて、こちらにまで目が向けられなかった、という史実を踏まえたエクスキューズはあるのですが……)
こういう時に腹芸でごまかしてなんとかするのが川路のキャラかと思いきや意外と役に立たず、大久保にチクって木戸を抑えるというあまりパッとしないやり方で対応するのも残念なところではありました(もっともラストでは――こちらは後述します)。そんな中、静馬は「ならんものはならん!」と会津魂全開ではみ出し警官ぶりを発揮しますが、基本的に能力値が常人レベルなので善兵衛に鉄拳制裁したくらいしか見せ場がないのが何とも……
しかしその中で、思わぬドラマが描かれたのが、謎の御前の下で暗躍する謎の芸者・雛鶴であります。これまで大久保利通襲撃や江藤新平の下野等で暗躍してきた彼女は、実は善兵衛に深い恨みを持つ者だった――というわけで、ある意味私怨ながら、今回ばかりは悪を討つ立場にあったといえます(尤も、これまでの行動も彼女なりに悪を討っていたのだと思いますが)。
そしてその彼女を姉のように慕う小梅は、雛鶴を助けようとするあまり、単身善兵衛を襲撃して失敗、人間狩りの標的に――というところで静馬と接点が出来たわけですが、彼が探す澄江と同じ折り方のウサギを折ることが出来ることから、この先静馬のドラマにも関わるのでしょう(というか、しばらく彼女が澄江なのだと思っていました……)。
また、ラストになって一人逃げ延びようとした蔵屋の番頭格をいきなり悪即何とかした新キャラが――と思えば、これが藤田五郎。「明治で警察が出てきたら藤田、そうでなければ川路と思え」という格言があるくらいですが(ありません)、やはり本作にも登場しました。ここでは川路の密命を受けて悪即何とかしているようですが、川路が表で動かなかったのも彼の存在があったからでしょうか。
そしてもう一人、何となく物語の中で、元庄内藩士・池上宗一郎が正体らしいと語られた狂死郎。今回も守谷組長のために地味な仕事を派手にやり遂げていましたが、東北諸藩最強の軍事力を持ち、ほとんど最後まで新政府軍と互角に戦い抜いた(ある意味会津藩とは好一対である)庄内藩と絡んでいるとすれば、やはりこの先面白い存在になりそうです。
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