『戦国妖狐』 第5話「氷岩」
迅火に倒された雷蔵を匿い、剣を教わる真介。しかしその雷蔵の妹・氷乃が次なる刺客・断怪衆四獣将・氷岩として現れる。自分と融合した火岩と同族と融合した氷乃を止めようとする灼岩だが、その前に龍の匂いをまとった男・神雲と子供が現れる。龍はダメだとその場から逃げ出す迅火たちだが……
いよいよ断怪衆との戦いが本格化する今回ですが、前回迅火を追い詰めた雷蔵の妹にして四獣将(退魔僧集団のネーミングじゃない……)の一番手・氷岩との対決がメイン――と思いきや、灼岩と一体化していた闇・火岩の登場、そして迅火もビビる最強の敵・神雲と得体の知れない少年・千夜の出現と、結構重要な展開が目白押しであります。
この先の展開で大きくクローズアップされる神雲と千夜はそちらに譲るとして、注目は灼岩で、迅火に替わって参戦というのはいかにもバトルものっぽくていい――というのはさておき、実は「灼岩」は人間の芍薬と闇の火岩が融合した存在だった、ということが今回判明。今まではいわば芍薬のパーソナリティが表に出ていたのが、氷乃いや氷岩と融合した蒼岩(何だかややこしい)を前に、火岩が前面に出ることになります。
これまで「◯◯す」と気の抜けたような喋り方だったのから一転、シリアス(?)で力の入った喋り方となるのには、別キャストなのかと思わず確認してしまったほどの見事な演じ分けでしたが、それだけ異なる存在が同じ体に共存しているというのは、ある意味、本作で描かれる人間と闇の共存の一つの在り方と言ってもよいのかもしれません(もっとも、最初は暴走して大変なことになりましたが……)。
そしてこれと対照的な存在が氷乃であることは言うまでもありません。自ら望んで闇をその身に取り込んだものの、決してそれは闇と共存するのではなく、相手の意識は喰らい尽くして力のみを自分のものとする――なるほど、霊力改造人間というものがそういう存在であれば、迅火でなくとも顔をしかめたくなるような邪法というべきでしょう(というより、灼岩はかなり規格外の存在なのか?)。そんな彼女が自らを氷乃でも蒼岩でもない氷岩と名乗るのは、芍薬と火岩が二魂一身の灼岩であるのとは、似て非なるものであることは言うまでもありません。
物悲しいのは、居場所を失い親に売られて改造された灼岩と、自ら望んだとはいえ裏の世界から表舞台に立つ(兄を立たせる)ために改造された氷岩には、どこか共通項があることでしょう。それでも、ありのままの自分を受け入れてくれる者がいた灼岩と、自分が支えようとしていた兄の心を理解できずにいた氷岩は、決定的に道を違えることになったわけですが――人間でも闇でもない存在になったはずが、闇に飲まれ、人間になりたいと訴えながら散った氷岩の姿は、あまりに悲しいものがあります。
さて、そんなドラマが展開する一方で、迅火は思い切り食われていた、というか締まらない印象。氷岩を殺すと見栄を切りながら(まあ、殺す殺すと宣言して実際に殺す奴はあまりいない)灼岩に出番を譲ったのはともかく、神雲を前に尻尾を巻いて逃走、その後もたまに発破をかけられるまで戦意喪失と、普段の中二病的態度が態度だけに、何とも残念としか言いようがありません。
まあ今回は負けイベントなので後は捲土重来ということで、たまが勝利へのステップを宣言して終わるわけですが――「正義を騙り 対話を拒み 力を行使する あの思い上がったクソガキ」って、君たちがいうか……
(というか迅火はまだ悩める部分が描かれているからよいとして、たまはここまでアレなキャラだったか )
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