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2024.02.17

久正人『カムヤライド』第10巻 嵐の前の静けさ!? 新たなる敵の影

 連載五十回突破、単行本もこれで第十巻と、長期連載となった『カムヤライド』、この巻は天津神との全面対決が終わり、嵐の前の静けさという印象ですが――しかしそこで語られるものは、驚くべき事実の数々。モンコたちを更なる戦いに誘う、新たなる(?)敵とは……

 驚愕の「殖す葬る」から一転、ヒーローたちと怪人たち、五対五の頂上決戦が描かれてきた本作。それぞれに犠牲を払いつつ繰り広げられた激闘は、アマツ・ノリットとミラールをカムヤライドと神薙剣がそれぞれ撃破――これにより天津神たちが撤退したことから、ひとまず終わりを告げることになります。

 この巻の冒頭では、そのアマツ・ノリットとミラールが、それぞれの好敵手、あるいは想いを寄せた相手との別れが描かれるのですが――特にノリットにとっては、あの殖す葬るは、戦いにも血を流したり相手を傷つけたりせず、終わればノーサイドになるものがあることを教えるものだったのか、と感心させられます。
(……ん、師匠なんかやってなかったか?)
 しかしこれで戦いが終わったわけではありません。よく考えればモンコはヤマトのお尋ね者、そもそも神薙剣とヤマトヒメたちも、モンコを追って現れたのですから。

 かくて捕らえられた上、トレホ親方たちを人質にされたモンコですが、ここで意外な事実を語ったのがタケゥチであります。
 彼が手に入れたノミの宿禰の指の指紋とモンコの指紋の間のある関係性を、そして東国の民と国津神が同盟を締結、その仲立ちとなったのは以前に彼が追っていた謎の三人の老人と、「ノミ様」なる人物であったことを!

 しかしノミの宿禰は、ヤマトでの処刑からは生き延びたものの、その後確かに死んだはず。それは今回、色々とノミの宿禰(の造形)には詳しいトレホ親方によっても確認されたはず。だとすれば、東国に現れたのは何者なのか。そして何よりも、モンコとの関係は――?

 かくて東国征伐に向かうヤマトタケルの軍に同行することになったモンコ。それは人質を取られた囚われ人としての旅ではあります。しかしそれ以上に彼にとっては、ヤマトタケルの目を覚まさせる――出会った頃の彼に戻すための旅というのがまた泣かせるところであります。
 そして誰かを取り戻すための旅というのは、オトタチバナも同じ。かつて己の力を誰にも受け容れられずに荒れ狂っていた彼女を認め、「盾」とし生きることを教えてくれたワカタケを天津神から奪還するために、彼女もまた東征に加わります。


 かくて旅立つ三大ヒーロー+タケゥチ。しかし相変わらず飄々としたモンコと、何を考えているかわからないヤマトタケル、殺気立つオトタチバナと、向いている方向がバラバラ。あのタケゥチがツッコミ役に回らざるを得ないのですから先が思いやられます。
 そしてそこに意外なところから「敵」が襲いかかります。その「敵」の戦う理由の哀しさに対し、モンコが語るのは――ヒーローという存在がある意味必然的に抱えざるを得ない陰を、「守る」という言葉で全て受け止めてみせる彼の姿には、ひたすら痺れるしかありません。

 そこからカムヤライドの新たな能力と神薙剣との対峙、そしてさらに物語の始まりに繋がる存在の提示――と、物語は一気にアクセルを入れて展開。再び嵐に突入したその先はまだまだ見えないのであります。


 それにしてもこの巻で思いもよらぬ活躍――というより要所要所を押さえて見せるのがタケゥチです。この巻では彼の思わぬ秘密が明かされますが、それを以て記紀の描写との整合性を取ってみせるのには脱帽であります。
(そしてこの巻のラストでは、彼が思わぬ人情を見せますが、あれはあれである種のフラグを背負わせたような……)


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