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2024.02.26

『明治撃剣 1874』 第伍話「死闘」

 ついに始まった撃剱会本選。急遽真剣の使用が許可された中、第一試合では雷岩梶五郎と対峙した静馬が何とか勝利。続いて、中澤琴も追い詰められた状況から二刀を用いて勝利する。第三試合以降は雨で翌日に順延されるが、その晩、狂死郎は毒を盛られることに……

 というわけでいよいよ始まった大日本撃剱会の本選トーナメント。会場はド派手な四神の像に三、四階建ての客席、試合開始前には大太鼓が打ち鳴らされ、公然と勝敗を賭けた賭博が――と派手にやりたい放題なのにご満悦の守屋組長ですが、撃剱会の運営は狂死郎に任されていたということは、これは彼のセンスなのでしょうか。それはさておき、今回展開するのは、前回選出された八人の選手の激突ですが、しかしその裏側では様々な事態が動いていることはいうまでもありません。

 第一試合は静馬vs雷岩梶五郎――殺人力士の異名を持つ梶五郎とは、前回ちょっとした因縁があった静馬ですが力はともかく、技の面では勝るとも劣りません。しかし木刀同士の勝負では、すぐに得物が折れてしまい――というところで、いきなり真剣の使用もOKというルール変更。そういうのはアンダーグラウンドで行うものでは、と心配になりますが、御前のバックがあるからということか、組長は気にも留めません。
 そんなわけでこれまで以上に命懸けになった勝負ですが、静馬は梶五郎の攻撃をもろにくらいながらも、技もへったくれもない馬鹿力で相手をブン投げて逆転勝利。正直なところ、もう少し技でも使って欲しかったところではあります。

 第二試合は中澤琴vsブレイズ・ミラー。イギリス人のわりには(?)十文字槍を用いるミラーですが、相変わらずの時間を気にしながらの猛攻に追い詰められた琴は、これを二刀を使って封じ、交差しながらの一閃で勝利。しかし忘れかけていましたが、元々静馬たちは二刀を使う辻斬りを追いかけて撃剱会に参加した身だったわけで、これで琴も容疑者の仲間入りです。

 そして第三試合――というところで雨が降り、文字通りの水入り。しかしその晩、せんりのインタビューを受けていた狂死郎が雛鶴に毒殺されかけるという事件が発生。客人よりも先に盃に口を付けるという出来の悪い三下のおかげで助かったようなものですが、どれだけ強力な毒だったのか、狂死郎は一口飲んだだけで瀕死の状態に……
 それでも翌日の試合は進行し、第三試合は藤田五郎vs宝井幸太郎。鎖鎌を使う宝井に刀を奪われて追い詰められる藤田ですが、眼鏡を取ってやたら目つきの悪くなった彼は行司の軍配を奪って攻撃を封じ、そこからさらに行司の脇差で一撃――行司が本身を差していたばかりに、ついに大会に死者が出るのでした。

 そしてついに第四試合――ヨレヨレになりながらも何とか出場した狂死郎ですが、ここで対戦相手の吉川冬吉の意外な真実が判明。実は彼の正体は、清水次郎長一家の小政――うかつにも見落としていましたが、吉川冬吉は小政の本名、そして史実での小政も、居合の達人と言われております。時々思わぬところで面白い史実を拾ってくる本作ですが、なるほど、前回ちょっとした大物扱いされていたのはこのためか、と納得であります。
 さて、体調不良に加えて相手も悪いと窮地の狂死郎でしたが、しかしこちらも二刀を用いて相手の居合いを封じるという戦法で辛勝するのでした。
(ちなみに死因はともかく、死んだ年も史実通りであります)

 しかし狂死郎の受難は続きます。翌日、二人がかりで狂死郎を襲う牧野巡査と小山内。やはり牧野が御前の暗殺者・鴉――なのかはまだわかりませんが、そうであるとすればそのダシにされてしまった小山内は、狂死郎の凶刃を受けることに……
 そしてその頃、琴との勝負で実にみっともなくKOされた静馬。梶五郎戦のしょっぱさに続き、主人公にあるまじき展開の連続に、ただでさえ物語の核心から遠い位置にいる彼の今後が不安であります。おそらく元婚約者はあんなに裏で大暴れしているというのに……


 それにしても明治時代の後ろ暗いところのある商人は、何故ガトリング砲が好きなのか……


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