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2024.03.15

『戦国妖狐』 第10話「山の神(後)」

 己の妖精眼を解放し、修行をクリアした迅火。一方、偶然千夜を殺す機会を得た真介だが、まだ子供である相手に手を下すことはできなかった。全員修行を終えた一行に、断怪衆の総本山に向かうよう促す山の神に対し、敢えてたまは神雲との戦いを選ぶ。戦いの中に山の神を巻き込もうとするたまだが……

 冒頭描かれるのは、迅火の修行の続きですが、前回文字通り開眼した迅火の妖精眼は相手の気の動きを読む力で、これを応用して幻術を見破るのはなかなか面白い使い方。さらにこの妖精眼によって、彼は人間も闇も等しくこの世界に生きる者と気付くわけですが――それがきっかけでりんずに丁寧な言葉をかけた、というわけではないかな、やっぱり。

 一方、一足早く修行を終えた真介は、山の神が雑に異空間から放り出した勢いで、偶然山を彷徨っていた千夜を押し倒して首元に刀を当てるというラッキースケベならぬラッキーキル(そんな言葉はない)の状態に本当にとんでもない偶然の産物ですが、しかしそんな好機であっても、千夜がまだ人形で遊ぶような子供であるのを見て手を下すのを躊躇うのは、いかに目の下に隈を作っても、あくまでも真介は真介だという証でしょう。
 結果として自らの命を差し出す羽目となる真介ですが、しかしそんな矛盾だらけの彼の行動が、むしろ千夜の迷いを呼び、命拾いすることになります。そしてそれは、この先の大きな大きな分岐点となるのですが――それはまだ先の話であります。

 そしてある意味真っ当な(力技と言えないこともない)方法で修行を終えたたまを加え、再び集まった三人。自分が神雲を抑えている間に総本山へ迎えという山の神の言葉に反し、たまはここで敢えて神雲との対決を選択――ようは自分たちよりも遙かに、そして神雲よりも強いであろう山の神を戦いの中に巻き込んでしまおうという、まあバクチといえばバクチな手ではあります。そもそも、本当に山の神は強いのか、という疑問もありますが……

 とはいえ、初めは自分たちが戦うしかないわけですが、いきなり千夜の妨害が入ってたまと引き離され、迅火が生身で神雲と対峙するという誤算が発生。これはもう九分九厘死んだ――と思ったところに、奇跡的な偶然が発生、しかも二回も! と、その前に山の神がうさんくさいセミナー講師的に、最初に奇跡が起きれば勝てる、というとおりになってしまったわけですが、何はともあれここからがバトルの本番。たまを救出して、空を飛びながら精霊転化というロマン溢れるシーンに始まり、ここからのバトルがこの回のハイライトであることは間違いありません。
 パワーアップしたとしてもまだまだ大きい実力の差を埋めるため、正面からぶつかるだけでなく、相手の動きを読んでの動き、隙を突く――様々な動きを見せる迅火の戦いは見事ですが、しかしそれでも竜の力を前には、痛み分けがやっとであります。それもかけがえもないものを犠牲にして……

 それでもこの土壇場に二本も新たな尻尾を発現した迅火を脅威と見て、自らも奥義を放つ神雲。そこでようやくたまの策が当たり、山の神が戦いに介入、子供姿の分身の状態でありながら、神雲の火の出そうな渾身の急速落下蹴りを、一瞬にして岩と樹の中に封じてしまうのだから凄まじい。やっぱり山の神は強かった!
 それでもなお、その封印を吹き飛ばして戦おうとする神雲も神雲ですが、しかしそれをさらに地の底深く封印した上に、神雲との意外な関係を口走った千夜も合わせて封印――ラスボスとも思われた神雲と、千魔混沌とまでいわれた千夜は、ここに全く思わぬ形で退場することになったのです。

 なるほど、前回と今回のサブタイトルになるに相応しかった、と思い知らされた山の神ですが、その助力の代償は、たまか迅火の魂――この旅が終わった後に取り立てるという山の神の言葉に、何とも重い気持ちになりながら、最後の目的地への旅が始まります。
(やっぱり基本的にたまも迅火も考えが甘いという気が……)


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