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2024.03.17

「コミック乱ツインズ」2024年4月号(その二)

 「コミック乱ツインズ」4月号の紹介の続きであります。

『真剣にシす』(盛田賢司&河端ジュン一・西岡拓哉/グループSNE)
 大塩平八郎とのカードゲーム「蔵騒動」勝負もいよいよ決着というところで、いきなり最終回という本作。非常に残念ではありますが、まずはこの勝負の行方を見届けるべきでしょう。

 終始夜市を押していたはずが、いつの間にか追い込まれていた大塩。そして勝負は最終手、そこで迎えた決着とは――と、ルールとしては面白いのだけれども勝負が見えにくいゲームであったためか、大塩が何故追い込まれたのか、最後までこちらにもわかりにくいのが残念ではあります。
 しかしむしろ今回の眼目は決着の後でしょう。思わぬことを言い出した夜市の行動は何を意味するのか、そしてそれがもたらした結果は――ある意味実に頭脳バトルものらしい結末ではあるのですが、そこに夜市のしたたかさだけでなく、大塩の生硬さ、ある種の視野の狭さを浮き彫りにしてみせるのには驚かされます。
(確かに、大塩については様々な評価があるだけに……)

 ギャンブルものとしての面白さだけでなく、歴史ものとしての視点の巧みさを、ここでも示してみせた本作。ここで終わりというのが、何とも残念であります。ラスト1ページ半で描かれた、その「未来」がとんでもないものだけになおさら……


『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』(重野なおき)
 まだまだ続く直家と三村元親の戦い。前回、直家の弟・忠家の大活躍が描かれたので、何となくもう勝った気になっていましたが、双方の大将を擁する主力の兵力差は1:2と、普通に大変な状況であります。

 ここで助っ人に現れたのは、明石全登――の父! というネタにはひっくり返りましたが、直家の策が、周囲が期待したり敵が警戒したりするような類のものではなく、普通に乾坤一擲の、そして彼が普通に捨てていそうな絆を信じたものであった、というのはグッときます。
 彼が得意とする暗殺などの「卑怯」な手段も、決して命惜しさなどではなく、追い詰められても必ず勝って生き残るためのものである――そんなことをさりげなく再確認させられるエピソードです。


『カムヤライド』(久正人)
 蝦夷・国津神連合軍と戦いつつ、東征を続けるヤマトタケル一行。その姿を陰から見つめる天津神ウズメの姿は以前から描かれていましたが、てっきり連合軍に天津神が一枚噛んでいるかと思いきや――という意外な事実が判明する今回、物語は天津神サイドから語られることになります。

 彼らが見たこともない国津神の存在、そして彼らにも不可能な国津神との共同戦線――はたしてそれを可能としているのは何者なのか。それは既に読者に対しては語られているのですが、今回ついに真正面から描かれたその姿(モン子?)には、少々驚かされます。
 もっとも、天津神はまだその正体を知らないわけですが、いずれにせよ彼らの狙いはヤマトタケルの体の中のニ=ギの肉。第三者に横取りされるわけにはいかない――と、彼らもついに覚悟を固めることになります。その覚悟を支えるものは――おそらくモンコたちはこの先も知る由もない気もしますが、彼らには彼らなりの戦う理由があることを、我々は覚えておく必要があるでしょう。

 そしてラスト、ヤマトタケル一行が到着した土地は――ついにこの時が来てしまったか! と天を仰ぎたくなってしまうその名を知れば、この先の展開を見るのが、恐ろしくて仕方ないのです。


 しかしトレホ親方的にはあの姿はアリなのだろうか……(台無し)


 次号は特別読み切り大攻勢ということで、『凛九郎』『口八丁堀』とこれまで登場してきたシリーズに加え、なんと碧也ぴんくが初登場! これは楽しみであります。


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