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2024.03.03

重野なおき『信長の忍び』第21巻 決着、愛の忍びたちの戦い そして向かう新たな地

 第二次天正伊賀の乱のはずが、まさかのラブラブ忍者バトル編に突入した『信長の忍び』――この巻の前半では、伊賀の中枢に突入した千鳥と助蔵の戦いの結末が描かれます。そして後半では思わぬ(?)新展開、千鳥ははたして何処に向かうのか……

 再びの伊賀攻めを決意した信長に対し、暗殺という挙に出た伊賀忍びの襲撃を、辛うじて退けた千鳥と助蔵。しかし千鳥は、信長から伊賀攻めへの従軍を禁じられることになります。
 しかし伊賀忍びが信長を苦しめることが許せない千鳥は、命に逆らっても、忍術上手十一人を倒すべく伊賀に向かいます。当然それに助蔵も同行し、二人の孤独な戦いが始まることになるのでした。

 と思ったら、戦いの前の助蔵の告白にまさかのOKが出て、何だかちょっと変わった戦いのムード。明るい未来に盛り上がる二人(というか助蔵)ですが、これはもしかして(助蔵にとって)フラグでは……


 という色々な意味で意外な展開となった第二次天正伊賀の乱。まさか本作で本格忍者バトルが始まるとは! と前巻の時点で驚かされましたが、そのテンションは全く衰えることなく、城戸弥左衛門・楯岡道順・藤林長門守そして百地丹波――と、名だたる大忍者たちとの死闘に物語は突入していくことになります。

 しかしこれまでの忍術上手との死闘で二人ともボロボロ。というか助蔵はこれやっぱり死んだんじゃ――という状況ですが、愛の力は強し! 千鳥はこんなにラブラブいう(言ってない)キャラだったか――というのはさておき、二人が背中合わせで強敵たちに挑む姿は、やはり大いに盛り上がります。

 特に百地丹波は、伝説の忍びに相応しい強豪ぶりが素晴らしい最後の敵。本当にここまで全うに忍者バトルを繰り広げられるとは、忍者ものファンとしてはニッコリであります。
 もちろん、そんなシリアス展開の中で、ギャグもきっちり織り交ぜてくるのも素晴らしい。また、ボロボロになった状態からの千鳥の覚醒も、一歩間違えればズルなのですが、このギャグを交えて緩急を見事につけてくることによって、違和感を感じさせないのも巧みです。

 そんなわけで大いに盛り上がった忍者バトルですが、しかしそれが骨肉の争いであります。
 千鳥は基本的に、こちらがどん引きするほど信長の敵には全く容赦しないキャラではありますが、それでも戦いの終わりに見せる姿には、これまでと異なるものがあることは間違いありません。

 もっともそれは、自分自身が信長の命に逆らい、そして忍びというものの恐ろしさを信長に示してしまったことに対する、絶望に依るものが大きいのではありますが……
(しかしこうして見ると、そういう葛藤が全くない助蔵はコワい)


 かくて終わりを告げた第二次天正伊賀の乱。しかし千鳥にとって、その代償は決して小さなものではありません。死闘のダメージが癒えぬ傷として残っただけでなく、信長から引き離され、彼女(と助蔵)は、信長麾下の武将に預けられることになったのですから。
 さて、その武将は――と、これがまたこう来るか! と驚かされる人物。なるほど、ここで信長から視点を転じるとすれば、確かにこの人物が適切というべきでしょう。

 そして始まる、信長最後の年。「その時」に至るまでに何が起きるのか、そしてその中で千鳥が何を見るのか――この巻の後半の展開は、そこで大きな意味を持つものなのでしょう。
 まだクライマックスはもう少し先になるかとは思いますが、今からそれを見たいような、見たくないような――そんな気持ちになる展開であります。


『信長の忍び』第21巻(重野なおき 白泉社ヤングアニマルコミックス) Amazon


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