『明治撃剣 1874』 第陸話「襲撃」
琴との試合で、彼女が辻斬り犯ではないと確信した静馬。しかしもう一人の容疑者である狂死郎に小山内が殺されたと聞かされた静馬は激昂して試合に乱入、返り討ちに遭う。一方、狂死郎の仕掛けで守屋と藤島の抗争が勃発、御前が調停に乗り出すが、それこそが狂死郎の望んだ機会だった……
全十話ということで、後半に突入した本作。物語の方も一気に核心に迫る展開となってきましたが――そこにほとんど主人公が関わっていないという、ある意味スゴい内容となっています。
前回ラスト、もの凄い顔で中澤琴に惨敗した静馬ですが、実はそれはわざとだった――というのは勝った琴が一番わかっていること(確かに、相撲取り相手にタフネスと腕力で勝った相手だった)。怒る琴に、戦ってみて彼女が容疑者ではないと信じた静馬は、正直に自分の身分を明かすのですが、その直後、小山内が何者かに殺害されたと聞かされて激昂。キービジュアルにいたのに何だか雑に動いた末に死んだ小山内ですが、静馬は背後の事情を知ることもなく、下手人は狂死郎という言葉を信じてしまうのでした。それを告げたのは、小山内を使嗾し、その死の直前に行動を共にしていた牧野巡査であったのですが……
どう考えてもこいつが暗殺者・鴉だとしかいいようのない牧野の思惑に乗せられたか、試合前の狂死郎に斬りかかる静馬。しかし実力差か激昂していたのが悪かったか、返り討ちにされた彼は、辛うじて本来の対戦相手である藤田五郎に救われるも大怪我でリタイア。狂死郎に関する捜査が上から実質もみ消されたことで川路に怒鳴り込んだ以外出番なし。その間になんとなく琴とフラグが立ったと思えば、ようやく自分の生存を知った雛鶴=澄江にその姿を目撃されてフラグが折れたりとそれなりに色々ありはしましたが……
さて、その間に忙しく動いていたのは狂死郎。撃剱会での優勝こそ逃したものの、会自体は大盛況で会長からの信頼はますます上がりますが、その一方、同志たちを使って煽ってきた阿片を巡る守屋組と藤島の仲違いは既に血を見なければ収まらない状況に。そしてガドリング砲に加えて、禿頭の手斧使いと髭のガンマンという微妙にキャラの立った用心棒を擁する藤島が先制攻撃を加えることになります。
やくざが殴り込みをかけられて黙っていられるはずもなく、ついに全面抗争寸前――というところに動いたのは御前。さすがに自分の配下たちが同士討ちをするのを座視しているわけにもいかず、双方の代表を招いて手打ちさせようとするのですが――それこそが狂死郎の狙いでした。いまや守屋の片腕としてその場に同行した狂死郎。しかしその場で彼は御前に――いや金髪碧眼の武士・平松武兵衛に襲いかかります。
平松武兵衛! 既に公式サイトでは思い切り最初から名前が明かされていましたが、どう見ても外国人なのに侍装束のこの怪人もまた実在の人物――その名もジョン・ヘンリー・スネル。幕末に武器商人として主に奥羽越列藩同盟と取引を行い、軍事顧問としても活動し、松平容保から平松武兵衛の名を与えられた、正体不明の人物であります。
その彼が何故いまだに髷を結ってるのか――はいいとして、何故新政府に抗するような形で暗躍しているのか。そして何故狂死郎は彼を討とうとしているのか。それはこれから明かされることですが、今回そのヒントになりそうな描写があります。
謀を巡らせる狂死郎を追う中、破れ寺に集まる僧侶や盲人たち――明治の世に行き場をなくした者たちを、狂死郎の同志・幻丞が船で何処かに誘おうとしていることを知ったせんり。幻丞の口からは、エルドラドという言葉が出ましたが、それは実は平松武兵衛ことスネルにも関わる地名であって……
さて、ここで正体がバレて窮地に陥ったせんりを救ったのが藤田五郎ですが、彼はその後、御前を罠にかけたつもりが自分が嵌められ、同志ともども絶体絶命の窮地に陥った狂死郎を救うため、豪快に会談場所の門を馬車でぶち抜いて突入という荒業まで披露。先の静馬の件も合わせて、今回異様に人助けをする男ですが、彼の方もまた、狂死郎に死なれては困る理由がある様子です。
スネルと狂死郎の因縁、そしてかつて庄内藩士だった狂死郎が進めていた企て――それが物語の全てを結びつけるのでしょう。
思いもよらぬ実在の人物の登場で盛り上がってきましたが、問題はそこに主人公がどう絡むか見えないことで――この調子で最後まで門外漢ということになりはしないか、その点はヒヤヒヤさせられます。
にしても悪徳商人がガトリング砲を持つと、どうしてこういうことになるのか……
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