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2024.03.25

松原利光&青崎有吾『ガス灯野良犬探偵団』第2巻 新たな仲間、少年の牙!

 19世紀末のロンドン、あの名探偵シャーロック・ホームズの「猟犬」として彼を出し抜くべく奮闘する少年・リューイを主人公とした、意外極まりないイレギュラーストーリーの続巻であります。中国マフィア絡みの事件に巻き込まれたリューイが、そこで出会った人物は……

 姉貴分として慕っていた少女・ニナを、何者かに殺された靴磨きの少年・リューイ。持ち前の観察眼で、犯人を追う彼がその最中に出会ったのは、浮浪児を人間とも思わない傲岸不遜な諮問探偵シャーロック・ホームズ――ニナが彼の仕事を請け負っている最中に死んだと知ったリューイは、ホームズのやり口を全て盗んだ上で、いつか殺すと宣言して……


 と、何ともユニークかつ殺伐とした設定で展開する本作。ホームズが浮浪児を「ベイカー街不正規連隊」として雇い、捜査を手伝わせていたのは有名な話ですが、本作におけるホームズとリューイは、互いを「野良犬」「クズ」と呼び合う間柄――ホームズはあくまでも上から目線、リューイはなんとか出し抜こうという、そんな緊張関係と、二人の推理対決が、本作の魅力の一つであります。
 しかし本作のタイトルは「探偵団」。団ということは団員は複数いるはず――というわけで、この巻での前半では、リューイの初めての仲間が登場することになります。

 ある日、浮浪者に襲われていた少女・パメラと出会ったリューイ。彼女を助けようとするも全く歯が立たなかった一方で、同年代の少年が現れ、相手を叩きのめすのでした。
 首筋に刺青を入れた彼こそは、街で恐れられる中国マフィア・磁刀会のジエン――そのジエンを出し抜いてパメラと逃げたリューイは、彼女が磁刀会のメンバー殺しの目撃者であることを知ります。

 これ以上パメラが追われないようにするため、殺人事件の犯人を探す決意を固めたリューイですが、現場の倉庫でジエンと再会してしまい……

 と、わかりやすく剣呑極まりない相手と事を構えることになったリューイ。彼は時にホームズを瞠目させるほどの頭脳の持ち主である一方で、腕っぷしは普通の子供並みであることが、物語冒頭から描かれてきました。

 しかし、残念ながら、子供だからと手加減してくれるような者などいない荒んだロンドンで、頭脳のみで乗り切っていくのは無理があります(何しろ当のホームズですら、原典では時に実力行使に出る羽目になっているのですから)。
 だとすればどうすればいいか――腕っぷしの強い奴を味方につける、という答えはなるほど納得ではあります。しかし、そんな相手をどうすれば味方にできるのか?

 そんな難問をロジカルに、そしてリューイの観察眼の基本である靴を起点とすることでエモーショナルに描く物語は巧みというべきでしょう。
 もちろん、何かと意地を張り合う年頃の少年二人が距離を縮める――それも腕っぷしの強いジエンの方が――のは簡単ではありませんが、その様を単発エピソードで描くのも、(殺伐とした場面が多かっただけに)ホッさせられるところです。


 そしてリューイがホームズの代わりにレストレードからの依頼を受ける短編エピソード(ラストで、レストレードからのある問いに、意味深な笑みを浮かべるホームズがいい)を経て、この巻の終盤では、ちょっと天然気味の軽業少女・アビーが登場。
 サーカス入団を目指す彼女が、思わぬ事件に巻き込まれて――ところでこの巻は終わりますが、さて彼女は本作にどのように絡むのか。

 はたしてリューイは彼女を救えるのか、そして彼女が二番目の仲間になるのか? この先の展開が、色々と楽しみであります。


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