「コミック乱ツインズ」2024年4月号(その一)
号数とわかっていても4月と聞くとちょっとギョッとする、「コミック乱ツインズ」4月号であります。今月は表紙が『ビジャの女王』、巻頭カラーは『そぞろ源内 大江戸さぐり控え帳』――今回も、印象に残った作品を一つずつ紹介します。
『ビジャの女王』(森秀樹)
ブブがよくわからないところで休んでいる間に、モズの指揮で蒙古軍の攻撃を防ぐビジャ。前回はオリーブオイルの意外な効用で難攻不落の攻城塔を見事に炎上させ、ビジャ側は死者ゼロの状況で、残る塔はあと一本となりました。
そしてそのあと一本残も、城壁への渡り板を全て叩き落とされ、もはや攻城塔の意味なし――と、ビジャの勝利かと思いきや、そこで蒙古側の軍師というべき「名無し」に意外(?)な策が……
意外というか、この手段をモズが考えていなかった方が意外だよ! という展開になりましたが、蒙古側にとっては城内に入り込んでしまえば勝ったも同然のこの戦い。はたして蒙古軍の大逆転勝利となるのか?
『前巷説百物語』(日高建男&京極夏彦)
神田の小間物問屋・睦美屋で起きたという怪事件。朝が遅いという女将・おもとが寝起きしている離れに、使用人が昼餉を持っていってみれば、部屋の中に何かが充満して、襖や障子が膨れあがっていて――恐る恐る触ってみれば、それは以外にも肉で……
という、エピソードのサブタイトル「寝肥」らしくなった今回。しかしあくまでも今回は伝聞のみ、南町の定町廻り同心・志方兵吾が、店のものから聞き取りをするだけ――という、又市サイドのキャラクターは(一名を除いて)登場ナシ、(一名を除いて)一般人たちばかりが登場する回であります。
それでも妙に印象的なのは、これは登場人物一人一人のビジュアルの味ゆえという気がします。普通であれば主人公になりそうな骨太のビジュアルの兵吾をはじめとする登場人物たちは、リアルさとディフォルメが絶妙に混じり合い、漫画として実にいい塩梅。省略された顔つきなのに妙にカワイイ使用人たちや、悪女の極みというべきおもとも、出番は少ないのに実に個性的で印象に残ります。
(そして終盤に登場する、ただ一人只者ではない久瀬棠庵のビジュアルももちろんイイ)
そしてそのビジュアルでついに描かれる寝肥の姿は――次回は6月号というのがもどかしいところであります。
『江戸の不倫は死の香り』(山口譲司)
毎回毎回、エロいことをしているうちに悲惨な死人が出る本作、今回は谷中のとある寺院――門前の豆腐屋に、身寄りのない姪・おかるを二階に置いて欲しいと頼む住持・厳醇、とくれば予想がつくように、実はおかるは厳醇の姪ではなく囲い者。おかるを寺に呼んでは弄ぶ厳醇ですが……
と、いつも(?)であればおかるが間男を引っ張り込んで惨事に――というところですが、今回はちょっと趣向が違います。おつとめは色々な意味で大変なものの、今の境遇をそれなりに受け容れているおかる。であれば何の問題が――と思いきや、問題は寺の外からやって来たのですから。
思わぬ窮地から、おかるはどのようにして逃れるのか――と、いつもとはだいぶ異なる展開を辿るこのエピソード。当然ながら展開も結末も、いつもとはだいぶ変わるのですが、これはこれでアリでしょう。タイトルに偽りありになってしまいましたが、いつもの通りばかりだと気も滅入るので……
次回に続きます。
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