『君とゆきて咲く~新選組青春録~』 第4話「顔を上げておくれ お前が側にいてくれるだけで私の心は温かい」
屯所から姿を消し、自ら命を絶とうとしていたところを、彼に執心する豪商・鵺野の手下に見つかり捕らえられた新之丞。一方、南無之介は、以前新之丞に絡んでいたゴロツキが鵺野の配下と知り、鵺野の屋敷に乗り込む。後を追う丘十郎だが、大作は同行を拒否、他の隊士も芹沢に止められて動けず……
一度は浪士組に迎え入れられたものの、姿を消した新之丞。原因は自分にあるといわんばかりにどこかの山の中で自害しようとしたり、躊躇ったりしているうちに、見るからに怖そうなお兄さんに見つけられて――という展開で、やたらとサブタイトルが長い今回は始まります。
前回、あからさまにいかがわしい感じだった渡辺いっけいいやさ会津藩御用達の豪商・鵺野。新之丞に執心して追いかけ回していた――というよりどう見ても一度囲っていたのを逃げられた感がありますが、連れ戻された新之丞は縛られて牢に放り込まれてというハードな展開であります。
愛する主がそんなことになっているとは思いもよらぬ南無之介ですが、前回新之丞を狙っていたのが鵺野の手下だったことを思い出し、先日の接待の帰りに鵺野を屋敷に送って行った隊士からその場所を聞いて、殴り込みを決意します。いやいや、浪士組が商人宅を襲撃してはいかんでしょう、芹沢鴨じゃあるまいし――と思いきや、その芹沢はむしろ近藤や土方ら、幹部たちが同行するのを制止。というか君たち、「私ノ闘争ヲ不許」じゃないんか! いや、この頃はまだ局中法度はなかったとはいえ、もう少しこう……
(まあ、一度は仲間に加えた隊士が男色家に攫われて黙ってる壬生狼もイヤですが)
そんなこんなで鵺野邸に向かったのは南無之介とお人好しの丘十郎だけ、大作は拒否ったのでただ二人で殴り込み――と、二人が簡単に奥まで入れる警護のザルっぷりが他人事ながら心配になりますが、南無之介が全く忍ぶつもりもないので簡単に見つかるどっちもどっち。
ワラワラやってくるガラの悪いお兄さんたち相手に勢いで突っ込む若人二人ですが、ほとんど素人が木刀振り回してるだけなので、曲がりなりにも暴力のプロ相手には分が悪い。まあお約束で後から助けに来た大作が加わってもまだ不利は続きます。
そんなグダグダな状況の中、自ら縛めを解いて抜け出してきた新之丞。喜ぶ南無之介に対し、しかし新之丞は「もうお前の知ってる「新之丞様」はいないんだよ」(意味深)と拒絶――しかし南無之介がもちろんそれで諦めるはずもなく、そんな南無之介を今度は新之丞が庇って、と麗しい主従愛の往復であります。
そしてそこに遅れて乗り込んできたのは壬生狼の幹部連と芹沢。うちの若い連中が失礼しました、しかし鵺野さんもおかしな連中とやんちゃしてるのはいかがなもんですかねェ――とネチネチツッコむ芹沢に鵺野も黙るしかなく、浪士組の面々は新之丞を連れて堂々帰ることに……
こういうのが人一倍好きそうにもかかわらず他の隊士を制止する時点で何かあるとわかりますが、若い連中が暴走したことにして、仲裁する体で相手に釘を差し、しれっと新之丞も引き取って帰るという、一種の腹芸を(自分は表に出ずに土方を使って)見せた芹沢。他の幹部たちが直情径行で突っ走るのに対してこのムーブは、色々な意味で役者が違うとしか言いようがありません。
近藤が嫌いとを堂々と認めつつ、だからこそ共に歩む意味があると言ってのけるところも、今回の若い面子のドラマと重なる部分があって実に面白い。そのあとに覚悟を決めろと釘を刺すところも含め、本作ならではの芹沢像を描いているのは、好感が持てるところです。
(原作の芹沢像はとても古典的だっただけに……)
そして何だかんだで会津藩にお目通りが叶うことになった浪士組ですが、その場で剣舞を披露するにことになり、「おう、悪いお知らせの登場だ」と指導役として現れたのは芹沢。もう芹沢が出てくると一人で場を掻っ攫ってしまいますが、どうやら次回は特訓話になりそうな予感です。
そんなこんなの今回のエピソードで南無之介と新之丞の心がしっかりと結びついた一方で、相変わらず丘十郎に何か問われてもはぐらかす大作。しかし何故浪士組に入ったかと問われてようやく答えたのが、「もう死んでも構わない」と思ったから、というのはどういうことなのか。丘十郎が殴り込みに行った後で、昔の男を思い出しているようなシーンがありましたが……
原作ではその辺り描かれなかっただけに、ちょっと期待したいところです。
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