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2024.06.14

浅井海奈『八百万黒猫速報』第2巻 人間と妖魔の間での苦闘の末に

 人間が妖魔を取り締まる明治時代を舞台に、黒猫の妖魔という正体を隠し、人間と妖魔の間の架け橋となろうとする巡査・黒井の苦闘を描く物語の第二巻、完結編であります。恐るべき力を持つ炎の妖魔・不知火と対決する最中、ついに恐れていた事態に追い込まれた黒井の運命は……

 警察が妖魔たちを取り締まる明治時代。八岐大蛇の怨念を飲み込んだ神剣・草薙の力を借りて妖魔を駆逐する部隊の一員である巡査・黒井――しかしその正体は、故あってその姿を借りる黒猫の妖魔でした。
 人間と敵対しない妖魔までもが容赦なく狩られていく現状に胸を痛め、仲間たちに隠れてそんな妖魔たちを救おうとする黒井。しかしその最中に情報で食っているという男・篠田に正体がばれて弱みを握られたり、恐るべき力を持つ妖魔との戦いを余儀なくされたりと、数々の困難が彼を待ち受けます。

 そんな中、一つの町を焼き尽くす恐るべき
力を持つ妖魔・不知火と対峙した黒井は、彼女が妖魔と人間の間に生まれた半妖であることを知ることに。
 そしてその後も、人間に騙され利用される妖魔や、己の恐れを妖魔の力で乗り越えようとする人間など、黒井は様々な人間と妖魔の姿を目の当たりにします。

 しかしそんな中で深手を追い、妖魔の姿となったところをこともあろうに不知火に救われた黒井は、不知火ともども仲間たちに追われることに……


 物語が始まって以来、人間と妖魔が激しく対立し合う世界において、人間と妖魔の共存を助け、互いが傷つけ合うのを避けるために、奮闘してきた黒井。しかし彼は妖魔との戦いの中で体を、そして同時に人間の仲間との間で心を傷つけてきました。

 はたして人間は、妖魔はそんな苦難に値するものなのか――そんな想いすら浮かぶ中で愚直に奮闘してきた彼の行動に、この巻では一つの答えが示されることになります。

 その答えは――ここで書くだけ野暮というものでしょう。
 全編のクライマックスで描かれるものは、正直なところ、些かあっさりという印象はあります。しかしそれは同時に、確かに納得がいく結果であり――そしてそれを納得させてくれるのは、これまでの物語、すなわち黒井のこれまでの苦闘がもたらしたものであることはいうまでもありません。

 もちろん、それでも信じて裏切られることはあります。想いがすれ違うこともあるでしょう。しかしそれでもその先に、一つでも希望の光があるとすれば――それを信じてみることは決して無駄ではないと、本作は力強く描くのです。


 この巻では篠田の出番がほとんどなかったり、結末で描かれる世界はあまりにも楽天的であったりと、気になる点がないではありません。(しかし後者には、きっちりそうなる理由が用意されているのは上手い)
 それでも、今まで物語の中で描かれてきたものが、違和感なく全て収まるべきところに収まった美しい結末は、最後まで本作を読んで良かったと、感じさせてくれるものであります。


『八百万黒猫速報』第2巻(浅井海奈 KADOKAWAハルタコミックス) Amazon

浅井海奈『八百万黒猫速報』第1巻 人間と妖魔のシビアな狭間を駆ける男

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