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2024.06.08

『君とゆきて咲く~新選組青春録~』 第7話「涙の告白」

 芹沢鴨から、京の郊外にある水戸藩別邸の修繕の手伝いを命じられた丘十郎・大作・新之丞・南無之介。穏やかな一日を楽しむ四人だがその晩、丘十郎は大作の涙を目撃する。一方、様々な策を巡らせる芹沢に、土方は反発を強めるが……

 「原作(以下略)」な今回は、なんとピクニック回。いつもの四人組が、芹沢の命で屯所から遠出する――というので、これは最近長州をはじめ倒幕派の勢いが増していると散々言っているからして、きっとこの四人組を使って何か敵を釣り出す策なのだな、と思いきや特にそういうことはなく、単なる水戸藩へのすり寄り策だったように見えます。
 脱藩した後の芹沢と水戸藩の関係ってどうだったのかしら? という気がしないでもありませんが(そもそも脱藩というのも諸説ありますが)、土方が芹沢のやり方に怒るというので、てっきり囮作戦くらいはやったのかと思いきや――本当にお使いだったとは、逆に驚かされました。
(ただし一つ気になることがあるのですが、これは後述)

 これぐらいで怒るとは土方はちょっと考えすぎなのでは――とも思いましたが、本作の土方はこれまでキレイな土方すぎたので、これはこれで良いのかもしれません。一方で本作の芹沢は、従来の暴力マニア的な印象はほとんどなく、むしろ直接的に力を振るうよりも、間接的に策を巡らせる、一種昼行灯的な味わいもあるキャラクターなのは面白いと思います。

 さて、四人組の方はお使いを無事に果たして、帰り道に川を見つけて水遊び。あまりに丘十郎がはしゃぐので、川で滑って大作にラッキースケベ的展開があるかと覚悟していましたが特にそういうこともなく、わちゃわちゃと若人たちが騒ぐ姿は、これはこれで微笑ましいものがあります。が、その中に一人、本当は沈んでいる奴がいるわけですが……

 そして結局野宿することになった(本当に何やってるの君たち……)四人組ですが、その晩、いつもは飄然と月を見上げていた大作が、今日はうつむいて涙をこぼしているのを目撃してしまった丘十郎。ここのところ昔のことを思い出しては一人で思い詰めていた大作ですが、これまでの丘十郎の無邪気な信頼感や、昼間に南無之介が仲間最高! 的に陽キャ的なことを言ってたのが、古傷にクリーンヒットしてしまったようです。
 しかし大作、ここ数回毎回登場していたかつての友・光永、そして実は友だった庄内の間で、金打までして志を誓い合っていようですが――光永たちだけ役人に連行され、大作と庄内だけ残されたのはどういうことなのか。何かの裏切りなのか、意図があって残されたのか……

 いずれにせよ、今回も無邪気に距離を詰めてくる丘十郎の「俺を信じろ」という言葉に絆され、ついに大作も丘ちゃんから丘十郎呼びに。そしてボロボロと涙を流す大作に、丘十郎の不吉なモノローグが重なって次回に続きます。


 というわけで、間者疑惑が滅茶苦茶高まる大作ではありますが、ここでちょっと気になったのは今回の芹沢の命令です。わざわざしょうもない理由で四人組を郊外に遠ざけたわけですが、これはあるいは間者を炙り出すだめだったのではないか? 彼らがいない間に壬生浪士組周辺で間者の動きがあれば、四人組は間者の疑いから外れるわけです。(当然その逆もあり得る)
 もちろんそれはこちらの考えすぎで、本当にピクニック回だった可能性も高いわけですが……

 ちなみに私が勝手に疑っている渋皮は、今回庄内と街中で遭遇したものの、特にお互い怪しい素振りも見せずに、ほとんどすれ違い状態。これまであれだけ壬生浪士組ストーカーしていた庄内だけにいきなり斬りかかるかと思いきや、原田たちがやってきたためか、何事もなく引き下がったのも、意外といえば意外ではあります。
 その一方で、渋皮は芹沢のお供で来た花街で、一人の舞妓さんと何だか意味ありげな遭遇をして――いや本当に、四人組とはほとんど絡まないのに毎回妙に出番のある渋皮、謎のキャラでありますす。

 いずれにせよ次回は大きな動きがありそうで、本当にこのドラマ2クールなんだっけ!? と段々不安になってきました。


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