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2024.06.01

立沢克美『イクサガミ』第4巻 絡み合う二つの糸 京八流を巡る因縁の戦い

 なんと岡田准一主演でNetflixドラマ化というとんでもないニュースも飛び込んできた『イクサガミ』ですが、この漫画版の方はこの第四巻から原作の第二巻『イクサガミ 地』にあたる内容に突入します。「こどく」と共に繰り広げられるもう一つの戦い――京八流の継承を巡る戦いが、愁二郎を翻弄します。

 金十万円を賭けて、京都天龍寺から東京まで繰り広げられるデスゲーム「こどく」。この過酷な戦いに参加した嵯峨愁二郎は、無力な少女・双葉を同行者に、鳴海宿まで戦い続けてきました。
 しかしそこでかつての京八流の相弟子の一人・三助が双葉を攫って消え、愁二郎、いやかつての相弟子たちに、戦人塚に来いというメッセージを残すのでした。

 双葉を奪還するために向かった愁二郎を待つのは、三助だけでなく、既に一度刃を交えた彩八、そして相弟子の中でも屈指の実力者である四蔵。かつて鞍馬で共に京八流を学び、そして殺し合う定めにあった継承候補者たち――再び激突する彼らの前に、しかし真の敵が現れます。


 「こどく」が物語の縦糸だとすれば、それと絡み合うもう一本の糸というべき、京八流を巡る因縁。八人の継承候補者が最後の一人となるまで殺し合うことで、代々継承されてきた京八流の宿命から逃れるため、継承戦から逃れた愁二郎ですが、それがかえって新たな戦いを招き寄せることになります。

 かくてここで描かれるのは、京八流継承候補者、すなわち京八流同士の戦いから、一転彼らが共通の敵である幻刀斎に挑む戦い――このくだりは、原作でも名場面の一つですが、それは漫画版でも変わりません。
 四人の候補者の戦いを通じて、候補者一人が一奥義を持つ京八流の特異性が語られ、そこから候補者たちの共闘に繋がっていく――幾人もの強豪がぶつかり合い、状況が二転三転していくスピーディーな戦いは、あたかも「こどく」の縮図のように展開し、クライマックスへと雪崩れ込んでいくのであります。

 ただ、正直なことを申し上げれば、本作は絵がその展開に追いついていないという印象があります。
 次から次へと戦う相手が変わり、そして何よりも、主人公側が複数人で協力しあって戦うという、複雑な戦いのシチュエーションを描くのに、本作の絵が今一つ淡々としている――ある種のハッタリや外連味が足りていないと感じます。

 この先、まだまだ物語が盛り上がり、様々なシチュエーションの戦いが描かれるであろうことを思えば、些か不安感があることは否めません。


 さて、この巻はこれまで述べてきたように京八流の継承にまつわる戦いがメインであり、「こどく」そのものはあまり進行しませんでしたが、しかし戦いはもちろん続いています。
 この巻の冒頭では、原作第一巻『イクサガミ 天』のラストで描かれ、読者に絶大なインパクトを与えた貫地谷無骨と菊臣右京の対決が描かれましたが、原作では描かれなかった部分まで描かれたのは嬉しいサプライズであります。

 このように、この先も本作ならではの独自性をどれだけ盛り込めるかに、期待したいと思います。


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