『君とゆきて咲く~新選組青春録~』 第10話「君に会えて良かった」
芹沢を粛清し、新撰組という新たな名を得た近藤たち。しかし、芹沢の最期にショックを受けた丘十郎は、刀を振るえなくなってしまう。そんな丘十郎たちを連れ出した山南は、寺子屋を手伝わせて、刀を振るう以外の生き方を教えるのだった。しかしその頃、長州の桂小五郎は恐るべき計画を進めていた……
前回の衝撃展開を受けて精神的にどん底の主人公が、その中から自分の本当の目的を見つけて立ち上がるという、最終回一話前みたいな展開――と思ったら本当にそんな感じのようですが、内容的には嵐の前の静けさとでもいったものとなっています。
芹沢を実力で排除した近藤・土方らは、ついに新選組の名を与えられて、名実ともに「浪士」を抜け出した形となり意気軒昂ですが、一方で隊士たちに動揺が残っているのは言うまでもありません。特に丘十郎は、父が殺された時の「そちらに行ってはいけない」という言葉が耳に甦り、自然体になろうとすればするほど、手が震えて刀を握れなくなってしまうという有様です。
この言葉自体は、庄内に刺された父が、丘十郎が出てこないように止めるためのものだったのですが、丘十郎にとって刀によって齎された不幸と惨劇の記憶を思い出させるものとして機能するというのは、なかなか説得力があります。
そしてそんな丘十郎に、如何にも明朗体育会チックに声をかける近藤ですが、これは大作ならずとも、うさんくさく思うのではないでしょうか。そして、あの人は自分で何も選んでない、というのは何となく前回の芹沢による近藤評にも通じるものがあるように感じます。
もちろん、実はこれは自分のことだ、というその後の大作の自嘲めいた言葉もまた、おそらくは正しいのでしょうけれども……
(ちなみにシチュエーションや内容は異なるものの、大作が近藤にある種の嫌悪感を抱いているのは原作同様)
さて、丘十郎ほどではないにせよ、他の一年生組もすっきりしないものを抱えてちますが――そんな中、山南が四人を町に連れ出します。そして山南が向かった先は寺子屋――そういえば、寺子屋の先生をしていると以前聞いたような気もしますが、無邪気な子供たちと接することで、四人にも少し活気が戻ったようにも見えます。
が、そこで山南に、子供たちと触れ合うことで子供たちを守ろうと思わせるのであれば、やり方が酷ではないかと問い糾したのは新之丞。クレバーかつ苦労人である彼ならではの鋭い視点ですが、それに対して山南は、刀だけが術ではないと、それ以外にも町を守る道はあると、静かに語ります。そんなことをいま考えられないという丘十郎には、それでも考えなさいと、いつになく厳しい表情で告げて……
そしてこの言葉は、内容・目的自体はまた異なるものの、芹沢が常日頃語っていたことと重なります。幹部連の中では、比較的芹沢と接点が多く、それなりに息が合っていたように見えた山南ですが、それはこういった点だったのかもしれません。
しかし新選組がそんな状況の中で、暗躍していたのは長州です。いつの間にか京を追放されていた彼らは、桂の指揮の下、祇園祭も近い京で、大きな陰謀を巡らせます。そう、皆さんご存知のアレを……
(しかし桂の口から、芹沢がいなくなったので動きやすくなった、と言われると、排除した人たちの立つ瀬が)
そして、もはやドラマ的にも大作と長州の繋がりが今でもあることは隠す必要はないのか、真昼間から密会する庄内と大作。渋皮の時以上に結構大胆な会い方なので、人目が心配になるレベル――というのはさておき、庄内は企てを記した密書を大作に手渡すのでした。(いや、本当に不用心すぎて、実は桂の罠とかじゃないか心配になりますが……)
昔の友と今の友、昔の大義と今の大義の板挟みになった大作は、二人だけで誰も知らない遠くに行って茶屋でも開こうと、もはや駆け落ちを持ちかけているとしか思えないレベルの台詞で丘十郎を口説くのですが――それをわかると言いつつも、敵討ちとかではなく、普通に生きてる人たちの幸せを守りたい、というヒーローじみた「誠」の境地に至った丘十郎は断るのでした。
そんな丘十郎の言葉を聞いた大作は、思い詰めた表情で密書を手に、近藤のもとへ……
よかった、土方に足の裏を燭台にされた人はいなかったんだね! と胸を撫で下ろしたくなるのは置いておいて、大作の長州の間者疑惑不可避ではないか心配になりますが、しかしそれだけ彼の覚悟は決まっているということなのでしょう。
そして次回は第一部最終回ということで、いよいよ池田屋事件。――実は原作はこの辺りで完結なので、どうするのか心配していましたが、第一部ということなので、この先も続く(続ける)のでしょう。
第一話冒頭のような状況になりつつも、大作は川落ちして第二部に続くのかな――という余計な予想はせずに、次回を待ちたいと思います。
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