『君とゆきて咲く~新選組青春録~』 第8話「疑惑の愛」
庄内が会津藩の役人を襲撃する事件が発生、松平容保からの情報漏洩の疑いを受け、壬生浪士組に外出禁止令が出される。そんな中、芹沢の使いで外に出た丘十郎は渋皮の不審な動きを目撃、後を追ったものの、長州藩士の集団の襲撃を受ける。謎の男のおかげで辛うじて逃げ延びた丘十郎だが……
時間は一気に流れて春から初秋――ということは前回は本当にピクニック回(というか実際には大作と丘十郎が距離を縮める回)で、芹沢の策云々はこちらの深読みだったわけですが、いずれにせよ今回は間者の存在を巡り、一気に物語は動き出します。そして久々に原作を踏まえた場面も……
というわけで原作ベースの場面の一つは、初めの方の松平容保と近藤・土方・山南の会話。ここで芹沢がいないことに関する会話が原作を踏まえたものですが、その一方で長州の動きが問題となり、壬生浪士組に間者がいるのでは――という話になるのは、本作のオリジナル展開であります。
実のところ原作では間者を巡る話はそれほどウェイトは高くなく、終盤で結構いきなり出てくる感すらあるのですが、本作ではほとんど物語の中心になっているのが興味深い(その理由もほぼ明らかなわけですが)。特に今回はその間者を巡る疑惑が決定的な悲劇を――ということで、これまで(というか前回)描かれてきた要素が一気に結びついていくのですが、その中心となるのが渋皮であります。
これまで芹沢に何かと使われてきた渋皮ですが、前回出会った遊女にベタ惚れして、彼女に会うために外出禁止令が出ているにもかかわらず外出するという、絵に描いたようなご法度で切腹くらう平隊士ムーヴを披露。さらに間が悪いことに、前回なんとなく町中で庄内と顔を合わしたところを原田に見られていた上に、彼を追った丘十郎が(たぶん)偶然出くわした長州藩士の襲撃を受け――と、不運に不運が重なります。
正直なところ彼が間者では――と、私もずっと疑ってきたわけですが、正直すまんかった。ここまで来たらどう考えても彼が間者ではないわけですが、土方に目をつけられた時点でもう彼の運命は決まったようなもので……
(というところで、渋皮役の役者さんがSNSでお別れの挨拶をしているのを見てしまう、思わぬネタバレをくらいました)
しかし考えてみると、今後この件はさらに大きな影響を及ぼしそうに思われます。先に触れたように渋皮は芹沢派の隊士、しかも芹沢は間者を泳がせろと言っていたのに逆らって土方が渋皮を間者として捕らえ(て処断し)たとくれば、芹沢が面白かろうはずもありません。原作での芹沢は、この辺りで大坂力士乱闘事件を起こしたり、大坂奉行所の与力を殺したりと、大暴れしていたわけですが、本作では表立って暴れてはいない――ということは逆に近藤・土方たちの敵として悪役にはしにくい――わけですが、そろそろ敵対関係が生まれるということでしょうか。
なお、今回は原作のベースの展開がもう一つ――それもかなり重要なものがあります。窮地に陥った丘十郎を救ったのは、以前にも登場した土佐弁の謎の男。その正体は――もういうまでもなく坂本龍馬なのですが、ここで龍馬は丘十郎に日本の狭さと、そこで争うことの無意味さを教えます。そして仇討ちをすれば後悔すると、予言めいたことを語るのですが――さてそれが当たるかどうかはわかりませんが、この先も龍馬が物語に関わることは間違いないでしょう。
そしてもう一人の主人公・大作の想いについては、次回本格的に描かれるでしょうからここでは触れませんが――今回新之丞がわざわざ触れたことで今更ながら気付きましたが、これまで何度も出てきた大作や庄内、光永が青春していた場所は、あれは松下村塾だったのでしょうか。だとすると、それはそれで、何故大作と庄内は残されたのかが謎になるのですが……
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