『戦国妖狐 千魔混沌編』 第1話「千鬼夜行」
人と闇が共に暮らす村に身を寄せることになった真介と千夜。全ての記憶を失っていた千夜だが、とまどいながらも村の娘・月湖と触れ合ううちに子供らしさを見せるようになる。その身に千体の闇が眠らせた千夜を、月湖の両親をはじめ、村の住人たちは優しく受け入れるが、やはて決定的な悲劇が……
少々出遅れましたが、18日から放送が開始されたアニメ版『戦国妖狐』の第二部「千魔混沌編」。第一部の「世直し姉弟編」が一クールだったのに対し、こちらは二クールを予定とボリュームは倍――内容的にも、前章の終盤に描かれた様々な伏線や、登場人物の去就が描かれる(そして史実とのリンクも描かれる)、いってみればこちらが本編と呼んでよいかと思います。
その第1話に当たる今回は――第一部では基本的に漫画をカタワラに置いて比較しながら観ていましたが、今回はそんな厭らしいやり方はせずに、原作は記憶程度に留めて観ることにします――通算14話に当たるものの、前話までの展開とは直接繋がらないように見える、謎多き状況からスタートします。
第一部から引き続き登場するのは真介と千夜のみ、真介はふるまいは剣士らしくなったように見えますが――しかし酒をかっくらって肝心な時に役に立たず、後で落ち込むというダメな大人っぷりも――第一部のラストで無事生き延びてから時間も経ち、修行も積んだということなのでしょう。
しかしわからないのはもう一人の千夜。第一部の終盤で、父親の神雲ともども山の神に封印されたはずの彼(だけ)が何故解放されていて、何故真介と行動を共にしているのか? 一応真介とは接点がありましたが……
月湖の回想によれば二人揃って空から落ちてきたようですが、さてどういう状況でそんなことになったのか――それはもちろんこれから語られるのでしょうが、何が起きているのかわからない状況で、これまでからの変化と、それに伴う謎に胸を躍らせるのは、これはもう新章の醍醐味というべきでしょう。それが味わえた時点で、この回はもう合格――というのは採点甘すぎかもしれませんが、それも正直な気分ではあります。
そしてまた、千夜がその圧倒的な力に覚醒して闇の盗賊団を蹴散したタイミングで「戦国妖狐 第二部」「千魔混沌編」とバーンと示されるのは、素直に格好良い演出で気分が上がります。
しかし、ここで彼の「内面」が描かれたことで、初めて気付かされる千夜というキャラクターの特徴は、彼を評する「千魔混沌」の語が示す通り、霊力改造人間として融合した千体の闇たちのパーソナリティが、いまだに彼の中に残っていることでしょう。霊力改造人間に、融合された闇のパーソナリティが残っているかどうかはまちまちのようですが(第一部では灼岩と芍薬が併存していましたが、あれは彼女特有の不安定な状態の賜物のような)、いずれにせよ絶大な力を持ちながらもどこか不安定な状態は、この先の千夜の道行きに大きな影響を及ぼすのでしょう……
と思っていたら、後半ですぐに待ち受けている地獄のような展開――いや、千夜がもたらしてしまった地獄。決して人が死なない物語ではない――それどころか、死ぬ時には簡単に人が死ぬ物語ですが、しかしこうも早くあっさりととは、さすがに驚かされます。
それがまた、明らかに過失ながら、もっとうまく力を扱えていれば犠牲は出なかったという厭な感じで絶妙なバランスなのが、またやりきれなさを感じさて実にキツい。その後の、これまた力余って文字通り「村を焼く」シーンよりも、印象としては辛いものがあります。
冒頭で記憶を失っていると思ったら、そんな自分を温かく迎えてくれた地を、自分のせいでいきなり失うという、一話のうちに慌ただしくも過酷すぎる経験をした千夜のメンタルが不安になります。
(そんな状況を結構平然と受け止めてる村の子供たち、時代が時代とはいえメンタルが強すぎて怖い……)
しかし彼以上に過酷な運命となった月湖が思わぬ決断をして――と、結末に意外な展開が待っているのも、新章第一話として合格でしょう。も一ついえば、途中でさらりと第一部ラストの不気味な五人組のことが仄めかされるのも、今後の展開を想像させて良い感じであります。
そしてラストのクレジットの時に流れていた曲、アツい曲調からしてこれがオープニング曲なのだと思いますが、結構直球なタイトルで、これはこれでなかなか良いと思います。
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