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2024.07.02

『鬼滅の刃』柱稽古編 第八話「柱・結集」

 ついに対峙した産屋敷と無惨。短い対話の後に無惨がその爪を向けた時、産屋敷は自分と妻子もろとも屋敷を爆破し、無惨を巻き込む。さらに珠世が無惨に人間化薬を打ち込み、悲鳴嶼が猛然と襲いかかる。そしてその場に柱と炭治郎が結集し、一斉に無惨に打ちかかった時、思わぬ異変が……

 おはぎだカブトムシだというコミカルな空気は一気に消し飛び、柱稽古編最終話というよりは、次なる戦いの序章というべき内容が描かれた今回。内容は原作三話分をほぼそのまま描いた形になりますが、本編39分と普段の回の約6割増の分量で、力の入ったクライマックスが描かれました。

 冒頭こそ、前回あれだけ時間をかけた無惨がお館様の前に現れる前の歩みをまたやったり、お館様の子どもたちの歌うわらべ唄が妙に長かったりと、そこで尺を使うの!? という部分もありましたが、お館様の壮絶自爆シーンからは怒涛の展開が続きます。

 もっともこの自爆シーン、原作では柱たちが到着したと思ってページをめくったら、いきなり次のページで見開きの大爆発という描写だった、という漫画ならではの強烈な演出だった一方で、アニメではいきなりスローモーションが始まって爆発の瞬間が描かれるという、何だか妙な演出だったのですが――しかし、その最後の最後の瞬間に、お館様に寄り添い妻・あまねの姿が描かれたのは印象的でした。
 思えばお館様と無惨が対面したその瞬間から変わらず在り続けたあまねの存在は、どれほど己の不滅を誇示しようと孤独でしかない無惨に対する、人と人の絆を象徴するものなのでしょう。
(もっとも、その絆もろともいきなり自爆するのは、「完全に常軌を逸している」という無惨の感想も頷けるのですが……)

 そして坂本真綾の声の演技も素晴らしい珠世の覚悟の一撃から、まさにゴウンゴウンいわせながら突っ込んできた悲鳴嶼がついにその実力の一端を発揮した鉄球大粉砕(しかし首、斬ってないと思う……)、そして柱結集は、まさにこの柱稽古編、というより全編を通じてのクライマックスの一つといってよい盛り上がりであることは間違いありません。
 そこからさらに、鬼殺隊の無限城突入、というより無限城に引きずり込まれる鬼殺隊の姿を描くアニメオリジナルの描写も面白く、直後のそれぞれの姿が描かれる柱+炭治郎だけでなく、全くいきなり引きずり込まれた玄弥や村田さんと他のモブ隊士たち、そして天ぷら食べてたらいきなり落下、しかし逆に闘志を燃やしてニヤリと猪面を被る伊之助と、らしい描写が続くのですが――全てを掻っ攫っていったのが善逸であります。

 こういう時、これまでであれば身も世もない悲鳴を上げて取り乱すはずの彼が、全く動じることなく、姿勢を崩すこともなくただ落下していく。しかしその瞼が閉じられていることから、ああ寝てるのね、と思わせた次の瞬間、瞼がゆっくりと開き強い眼差しが現れる――全く無言の中でのこの描写のみで、善逸の苛烈なまでの覚悟と、その覚醒ぶりの凄まじさを理解させてみせるのは、まさに白眉。彼が完全にこの場を攫っていったといっても過言ではありません。
 そしてそんな衝撃映像で終わったかと思いきや、最後の大正コソコソ噂話では、更なるとんでもない衝撃映像、いや衝撃音声が流れるという……


 何はともあれ、色々な意味で波乱に富んだ内容だった柱稽古編もこれで終了。そして最終決戦は無限城編として劇場版三部作で完結と、およそ考えうる限り最高の形でクライマックスを迎えるわけですが――残る7.5巻分、血戦につぐ血戦、名場面につぐ名場面をどれだけのクオリティで描いてくれるのか、まだまだその遥か先ではあろうものの、期待は今から高まるというものです。


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