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2024.07.18

『君とゆきて咲く~新選組青春録~』 第12話「あの輝く日々を取り戻す」

 池田屋事件の激闘を終え、心身ともに様々な傷を残した新選組隊士たち。初めて人を斬ったことに衝撃を受ける丘十郎だが、庄内の死に際の「裏切者」という呟きを聞いたことから、土方に間者を探して斬るよう命じられる。一方、桂に呼び出された大作は、庄内の仇・丘十郎を斬ることを命じられ……

 新選組大勝利のはずが、極めて苦い後味を残した第一部のラストから続く今回は、表面上の動きは小さいながらも、今後の波乱を感じさせる内容でした。

 前回深傷を負ったかに見えた南無之介はなんか結構ピンピンしてましたが(EDでは側転してましたし ←それは違う)、初めて人を斬った丘十郎、眼の前で今の親友が昔の親友を斬った大作は、当然というべきか、メンタルに深いダメージを負うことに。
 そしてもう一人、激闘の最中に喀血してリタイアした沖田は、相手に敗れたのではなく、いわば自らの体が敗れたことに――「剣は自らの心を斬るもの」という普段の克己心を裏切ったと感じたか――相当ショックを受けている様子です。今のところ沖田の病状をしる斎藤が、この沖田を指して「揺れている」と評するのが、なかなか印象的です。

 一方、震えが止まらない丘十郎は、剣を振るのもままならない状況。そんな彼を励ます近藤ですが、そこで丘十郎が余計なことを思い出したために、事態はいよいよのっぴきならぬ方向に突き進んでいくことになります。
 前回、死に際に庄内が残した「裏切り者」という言葉――それを聞いたのは運良く(?)丘十郎だけだったようですが、それをよせばいいのに近藤に話し、そして近藤は自分の胸に収めようとしていたのに、土方がそれを聞いてしまったことから、土方は丘十郎に間者を探し出して斬れと命じたのです。
(基本的にもはや原作はどこへ行った、という感じですが、ここでの土方の厭な感じは原作っぽいといえばいえるかもしれません)。

 ここでちょっと面白いのは、前回の丘十郎と庄内の位置的に、「裏切り者」と言われた相手は、大作だけでなく他のレギュラーメンバー全員が該当してしまうということで――おそらく丘十郎的には、大作がその裏切り者と思っているわけではないのでしょう。しかしもはや彼にとっては、裏切り者=自分が守りたいと思っている者の敵=自分の敵であるわけで、ここに彼は自分が刀を振るう新たな大義名分を得てしまったことになります。

 一方、色々とどん底でヤケになっているのか、現れた長州浪士たちに無抵抗で連行されていく大作ですが――そこで相変わらず厭らしい桂に、「庄内くんの仇は討たないといけないけど、君の大好きな丘ちゃんを他の奴に殺らせていいのかなあ?」(意訳)と迫られ、自分が必ず、と言わされることに……
 どん底のさらに底があることに愕然とさせられますが、ここでちょっと気になるのは、桂が妙に丘十郎の個人情報に詳しいことです。地獄耳っぽい桂だけにどこかで聞いたのかもしれませんが、もし、本当に大作の他に間者がいたのであれば――消去法的にほとんど一人に絞られる気もしますが、以前渋皮にあらぬ疑いをかけてあんな結果になったので、これ以上は言わないでおきます。

 何はともあれ、もはや一人前の新選組隊士として積極的に前線に出ていく=人を斬るようになった丘十郎と、彼に「そちらに行ってはいけない」と言うも聞いてもらえない大作という、逆転した立場になってしまった二人。
 そしてそんな中、お前らは教養が足りない的に余計なことを会津のお殿様が言い出したおかげで、新たに新選組に伊東甲子太郎と鈴木三樹三郎がやってきて――と、OPに何か知らない人がいる! と思いきやこの二人。この状況に、さらに面倒なのが現れて、いよいよこの先の辛さが思いやられます。


 しかしOPはともかく、EDはこれまで同様に楽しげな映像なのですが、史実通りであればこの中で近々一人姿を消すことになるわけで……(やはり辛い)


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