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2024.08.01

『君とゆきて咲く~新選組青春録~』 第14話「俺のために生きてくれ」

 自分の身を案じ、何かと話しかける大作を冷たく拒絶する丘十郎。そんな中、郊外に暮らす水戸学の師に挨拶に行くという伊東甲子太郎から、丘十郎たちと斎藤・原田は同行を命じられるが、山南はやることがあると同行を辞退する。残った山南と土方・沖田は試衛館時代を懐かしむが……

 斬り合いはなく、むしろ温泉回だったものの、切なさと今後の暗雲を感じさせた今回。そんな中でも左之助は「馬鹿組」(直球)に帰ってきた大作を口では荒っぽく迎えつつも、ご飯大盛りにしてやるなど、いい兄貴分ぶりを冒頭から発揮します。

 そして暗雲の元凶の一人・伊東と弟は、突然水戸学の師匠に挨拶に行くと言い出し、前回選出した自分の側近+速攻で追い出した大作に加え、丘十郎・南無之介そして何故か原田、さらに山南に同行を命じるのですが――ある思惑を秘めた山南はこれを辞退。結局いつもの面子+斎藤・原田が行くことになります。
 水戸といえば芹沢、芹沢といえば路線対立、と相変わらずキーッとなっている土方ですが、わざわざ伊東がお気に入り(山南も含む)に加えて馬鹿組を連れて行くのは、これは自派閥を増やす目的のような気もするので、あながち杞憂ともいえません。

 まあドラマ的には、土方・山南・沖田を屯所に残すためなのだと思いますが、残留組三人が、懐かしげに試衛館時代を語る姿は、新選組ファン的には嬉しいプレゼントではあります。特に本作の場合、既に壬生浪士組が設立してからのスタートのためにそれ以前の面々の姿は描かれていなかったわけで、三人の口から過去の彼らのイキイキとした姿が語られるのは、ある意味新鮮ですらあります。
 そんな中でも、丘十郎たちにとっては先輩剣士として超然とした姿を見せることが多かった沖田が、弟感全開にしているのは珍しく、実に微笑ましいのですが――しかしこの先を考えると曇らされるのもまた事実。特に山南が屯所に残ったのは、最近薬の減り具合が激しいこと――というより、そこから導き出される隊士の健康を安全を案じて、それを調べるためなのですから。

 一方、お使いはあっという間に終わり、意識高い系らしくタイパを重んじる伊東はさっさと帰る――というところを、原田がこの辺に秘湯があると言うのを聞いて、あっさり前言撤回。これも懐柔の機会と思ったのか、それとも本当に温泉が好きなのか――風呂に入っている姿からは何となく後者もアリに思えてきましたし、新選組の体育会系ノリが気持ち悪いとdisる弟に、むしろそこに感心していると語る姿には、意外な一面を見た気がします。
 ――と思いきや、入浴を斎藤が覗いていた、いや監視していたのに気付いての言葉らしく、この辺りで伊東兄弟の中での格の違いをうかがわせるのは、なかなか上手い演出かと思います。

 しかし「気持ち悪い」といえば、今回この言葉を丘十郎に二度も言われた大作。まあ、お香をプレゼントしてきたり、髪についた花びらを取ろうとしたりと、最近やたらと彼氏ムーブが多い距離感が近いのは事実ですが――しかし大作の方は、もう自分が丘十郎を守らなくては! という想いに凝り固まってモノローグを連発してくるので聞きやしません。とどめに後ろから丘十郎を抱きしめて「斬れるものなら斬ってくれ」「死ぬな」「俺のために生きてくれ」と言い出すのですから丘十郎はどんな顔をすればいいのか……(いや、後ろ二つはともかく、最初のは要らなくないですか)
 挙げ句の果てに、自分の元から去っていく庄内たちの幻を見ながら、「俺ももうすぐそちらに行く」とか柔らかな表情で言い出した日には――ここまで大変なキャラになるとは思わなかっただけに、今後の大作から目が離せません。

 しかしそれでもさすがに思うところがあったのか、屯所に帰ってきてから一度は放りだしたお香を焚いてみようとした丘十郎ですが――何やら外が騒がしいと思ったら、山南が顔真っ赤にして土方の胸ぐらを掴んでいるという衝撃映像で次回に続きます。
 予告から考えれば、次回何が待ち受けているかは明白なわけで、ますますもって辛い状況に……


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