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2024.08.03

木野麻貴子『妖怪めし』第3巻 明かされる全ての因縁、そして最後の料理

 妖怪もの+グルメものというユニークな取り合わせの時代漫画『妖怪めし』の第三巻/最終巻は、主人公の兵徳と忌火兄弟が追い求めてきた骨仮面の男、そして「不浄の王」との決着が描かれます。はたして兄弟にかけられた呪いは解けるのか。そして二人の料理は因縁に打ち勝つことができるのか!?

 母が殺された場に現れた謎の骨仮面の男によって、荒神の力を宿す異形の肉体に変えられてしまった兄弟。呪いを解き、元の体に戻るために骨仮面の男を追って諸国を旅してきた兄弟は、途中で人間と妖怪の軋轢に巻き込まれては、それを料理によって解決してきました。
 その過程で、妖怪たちを暴走させている「不浄の王」なる存在と出会った二人。何故か忌火を以前から知っているような態度を見せる相手に戸惑いながらも、骨仮面の男との関連が感じられる「不浄の王」を追うことを、二人は決意します。

 そしてこの巻の冒頭で二人が情報を求めて御薪山の天狗・慈煙坊のもとに向かったことから、事態は大きく動き始めます。
 途中、山で兵徳が邪天狗に攫われたことから、飯をふるまうことを条件に慈煙坊の力を借り、妖魔の棲む妖霊郷に足を踏み入れた忌火。そこで彼らは全てのものを穢れに取り込む「穢悪」なる存在を目撃するのでした。

 そして天狗の口から、穢悪と不浄の王の関係を知る二人。それは二人が宿す荒神の力とも浅からぬ因縁があるものでした。
 そこに天狗の力を狙った不浄の王が出現、さらに不浄の王を追って骨仮面の男も現れ……


 というわけで、この最終巻では、物語の縦糸となってきた骨仮面の男と不浄の王、そして主人公二人の関係が明らかになります。
 はたして母を殺し、二人に呪いをかけたのは骨仮面の男なのか。骨仮面の男と不浄の王の関係は。そして不浄の王の目的は何か――これまで物語の中で謎とされてきたことが、一つ一つ解き明かされていくことになります。

 こうした謎解き&不浄の王とのバトルが中心となるため、本作の一番の特色である料理シーンが今回少なめ(ほぼ天狗とラストの二回のみ)なのが残念ではありますが、しかし解き明かされていく謎と因縁はなかなか読ませるものがあります。
(骨仮面の男の正体は、ほとんどの方が予想していたのではないかと思いますが……)

 その中でもかなり意外だったのは、不浄の王がかつての忌火を知っていた(しかし忌火の方はそれを忘れていた)理由であります。
 正直なところ、他の謎に比べれば重要度が低いと思い込んでいましたが、これはとんでもない勘違い。物語そのものの流れに大きく関わるものであったとは、脱帽であります。

 そしてこのままバトル漫画で終わるのか、と思わせておいて、やはり本作のラストはこうこなくちゃ! という形で締めてくれるのが嬉しい。
 これまで本作は、主人公二人の料理が、妖怪の中の情あるいは「人間性」を甦らせる姿を描いてきましたが、それを最後の最後まで貫いてくれたのは――もちろんそれが本作のコンセプトではあるとはいえ――大いに評価したいと思います。


 全三巻と、決して長い作品ではありませんでしたが、最後に描かれた料理といい、カーテンコール的結末といい、描くべきものは描いた感もあり、気持ち良い結末でした。


『妖怪めし』第3巻(木野麻貴子&木下昌美 (監修) マッグガーデンコミックスBeat'sシリーズ) Amazon

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