『鬼武者』 第伍話「魄」
海全を失った一行に新たに襲いかかる吉岡三姉妹。傷を負って倒れたさよのため、佐兵衛が薬草を探しに行く間、武蔵はひたすら素振りを続け、平九郎は己の無力さに涙するのだった。そして意識を取り戻したさよは、全ての原因は自分にあったと武蔵に語るが……
物語は全八話の後半戦に突入したこともあってか、小休止的な色彩の強い今回。吉岡一門云々とあらすじにあったので、何かの間違いかと思ったのですが、本当に冒頭から登場したのは吉岡三姉妹を名乗る三人組でした。
長刀を手にしているのがお京、鎖鎌を操るのがお宮、手裏剣使いがお冴――と、誰が誰だか字幕を表示しないとわからないのが困りものですが、三兄弟を兄者たちと呼び、そして年格好が明らかに若すぎるところを見ると、やはり彼女たちも幻魔なのでしょう。
ともあれ、いきなりアバン前に登場し、闇にて磨きし暗殺術などと言いながら襲いかかってきた彼女たちですが、武蔵は鬼の篭手を装着して一蹴。しかし、前回からの疲労もあってか、さよがダウンしたため、一行は見つけた小屋で小休止を取ることになり、その間のそれぞれの様子が描かれます。
といっても、薬草を取りに行った佐兵衛は相変わらず内心がよくわからず、武蔵は刀をひたすら素振り、さよは寝込んでいて、中心になるのは平九郎――冒頭からなんだか元気がないなと思ったら、仲の良かった五郎丸や、始終口論していた海全が命を落とし、無力感に苛まれていた彼は、ついに一行から逃げ出してしまうのでした。
(素振りに没頭しすぎて、武蔵がそれに気付いていないように見えてしまうのはいかがなものか)
そして意外なことに、伊右衛門の過去も語られることになります。幻魔と手を結んで謀反を起こしたとされる彼の生い立ちと、第一話以来久しぶりに登場した師・松木兼介との出会いが、彼の回想という形で描かれます。形式的に、彼と視聴者にしか共有されない(つまり武蔵は知らない)のは気になりますが、武士の生まれではない彼が、思わぬ機会から松木と出会い、刀を手にしたことが全ての始まりなのでしょう。
そんな彼が今、思い切り洋装の執事・或触奴(アルフレッド)を連れているのは違和感がありますが、名前的にもパターン的にも、この執事の方が本丸の幻魔のような気がします。そして、字幕では「男」と出るけれどもラストのクレジットでは思い切り本名が明かされている物干し竿の剣士は、そんなことは興味なさそうに武蔵を待っているわけですが……
一方、さよは魘される中で、川で砂金を見つけたことを思い出し、それがきっかけで村人たちが金採掘に取り憑かれ、幻魔を呼び込んだと自分を責めます。そんな彼女に対して、全て否定するわけでも無条件に慰めるわけでもなく、金を見つけたのはさよのせいかもしれないが、それ以外に責任を感じる必要はない、その責任は自分たちが背負うという武蔵は、あるべき大人の姿を示すものとして、好感が持てます。
そして逃げ出す途中で出会った佐兵衛の傍らに、海全と五郎丸の霊(?)がいるのを見た平九郎も思いとどまり、再び一行は旅を始めます。しかし、その前にまた現れたのは吉岡三姉妹――今回は得物をそれぞれ変形の十文字槍・鎖鉄球・四方に刃のついた大型手裏剣(字幕では裏手裏剣(?))にパワーアップさせ、得意げな三人ですが、武蔵は女性であろうと全く容赦なく、ズババババッサリ感。で三人まとめてみじん切りに――そして、ついに一行が山の洞窟にたどり着いたところで次回に続きます。
というわけで、折り返し地点ということでこれまで生き残ったキャラクターたちの振り返りが行われた回ですが、完全にネタキャラだった吉岡三姉妹の存在もあって(吉岡兄弟の二番煎じ感が強すぎるため、いっそ関係ない別キャラだったら印象が違ったかも……)、全八回という短い尺の中でやらなくてもよい回、という印象が残ったのは勿体ないところではあります。
(普通に時代ものっぽかった伊右衛門の過去に関しては、ちょっと興味を惹かれはするのですが……)
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