『鬼武者』 第陸話「鬼」
ついに金鉱内部に足を踏み入れた武蔵たち。彼らが目にしたのは、西洋風の建築が存在する不思議な空間だった。そこに現れた西洋人の執事風の男・或触奴は、武蔵たちに伊右衛門の仲間になるよう誘う。当然それを拒んだ武蔵たちに、人間戦車に乗って襲いかかる或触奴。その機動力に苦しむ武蔵たちだが……
残すところ三話まできて、ついに敵の本拠地に突入した今回。坑道を通り抜けたその先に存在する、洋館のエントランスのような全く場違いな空間に現れたのは、伊右衛門の執事を務めていると思しき白髯の外国人・或触奴(アルフレッド)――彼はこの本拠地がいかに堅固であるか、幕府はおろか外国の軍勢に攻められてもびくともしないといささか誇大妄想的に説明した上に、死んだ者も剣技は生前のまま、魂は魔物の魔人云々(ちょっと違う)的なことまで言い出します。
そして、闘技場めいた場所で、伊右衛門の味方になるよう促す或触奴ですが、武蔵たちがそれを肯うはずもありません。それに対して、これまでの慇懃無礼さはどこへやら、高木渉がcvを担当するのも納得なエキセントリックさ全開で武蔵たちの抹殺を悪趣味に宣言する或触奴ですが――彼の後方から突如一本の矢が放たれ、その後も次々と矢が襲いかかります。
その矢を放っているのは騎馬武者――と思いきや、馬に乗った武者ではなく、下半身が馬になった武者! この馬武者が引く戦車(チャリオット)に飛び乗った或触奴は、新型銃を乱射して襲いかかります。闘技場という開けた場所で凄まじいスピードで走り回り、或触奴の銃と馬武者の矢という飛び道具で攻撃する――一方的に攻撃されるしかない武蔵たちは、圧倒的不利な状況に追い込まれます。
そこで何かを覚悟した表情を見せたのは平九郎――真正面から敵に向かっていく彼は、何やら煙幕のようなものを放ちます。その正体は、一息吸うだけで目が回り、脳髄が揺り動かされる幻覚剤――しかしどう見ても人外の馬武者と或触奴に人間用の毒が効くとも思えません。が、平九郎には毒をパワーアップさせる最後の手段がありました。それは粉に生き血をまぶすこと――そのために自ら矢を受け、吹き出る血が煙と混ざった時、或触奴たちにも毒が効果を発揮した!
高木渉がcvを担当するのも納得なラリっぷりで苦しむ或触奴を、鬼の篭手の一閃で倒す武蔵――てっきり幻魔化してパワーアップするかと思いきや、あっさりと或触奴は退場し、代わってその場には、さよの両親が現れます。どう考えても悪い予感がするものの、そんなことは気にせずさよは両親に飛びきますが――当然ながらというべきか、二人は突然さよの首を締め始めます。
そこに現れた伊右衛門は、ありがちなエキセントリックさで武蔵たちを煽ります。さよを助けるためには両親を殺すしかない、と……
その言葉に応じ、躊躇なく二人の首を落とす武蔵。娘の前で親の首を落とすとはまさに鬼武者! と非常に厭な感じでタイトルを回収する伊右衛門に対し、涙を流しながら怒りを露わにする武蔵――と、どう転んでもこの後ただでは済まない場面で、次回に続きます。
そんなわけでクライマックスに向けて盛り上がるかに見えた今回ですが、なんだか平九郎が突然便利な技を発動させた上に、その発動条件のために犠牲になるという展開は(こういう言葉はできるだけ使いたくないのですが)あまりにもご都合主義的すぎて、逆に興醒めした、というのが正直な気分です。
こうなってくるとなんでもネガティブに見えてくるもので、ラストもべつに首を斬らなくても止めることはできたのでは――と感じてしまい、死にイベントを消化したという印象ばかりが残った回でした。
果たして、残る二話でどれだけ盛り上げることができるのでしょうか……
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