『青のミブロ』 第2話「泣いていい世界」/第3話「魂の在り処」
ミブロの一員として、鬼の棲み家と恐れられていた屯所に足を踏み入れたにお。そこに集う若者たちは、世評と裏腹に賑やかな面々だった。しかしその一人・芹沢は、宴会の帰りに隊士の一人を殺害、その始末をにおと同年代の少年・太郎に押し付ける。その命令に従う太郎の行動に驚くにおだが……
アニメ版『青のミブロ』第二話・第三話をまとめて紹介。におが壬生浪士組に加わるまでを描くプロローグ的内容であった第一話に続き、第二話ではOPで顔を見せているミブロのメンバーたちがいよいよ登場することになります。
ここで突然相撲大会を始めてしまう彼らの姿は、ほとんど体育会系の部活の合宿というノリで普通に面白い兄ちゃんたち、という印象。永倉・原田・藤堂・山南・井上そして近藤という面子だけでなく、新選組ものでは定番の悪役である芹沢も、見かけは非常にコワモテでも、かなり陽気に振る舞っている姿が意外かつ印象に残ります。
もちろん楽しい場面だけでなく、不逞浪士が暴れているという報に駆けつけてみれば、土方が容赦なく相手を斬り――と、血なまぐさいところも容赦なく描かれます。さらにその上で、第二話の終盤では、におが不逞浪士から子供を庇い、それに対して(本作では奇人の部類に入りそうな)近藤が実にイイことを言って――と、この回ではミブロの陽の姿が硬軟取り混ぜて描かれたと言えるでしょう。
しかし第三話では、におたち三人の狼の二人目の登場とともに(三人目は第二話で既に登場はしているのですが)、ミブロの陰の姿が描かれます。
相撲大会の翌日、前日会わなかった少年・田中太郎と顔を合わせたにおですが、同い年の彼に対しても異常にへりくだる太郎は、芹沢に下僕のように扱われている存在。その晩、酔って屯所に戻ってきた芹沢は、同じ浪士組の人間である殿内義雄を斬ってきたと告げ、太郎にその始末を命じて――という展開は、第二話のミブロの姿が、ある意味新選組の今のパブリックイメージに沿ったものであったのに対し、いきなり暗部を突き付けるような描写が衝撃的です。
特ににおに次いで登場した(史実に登場しない人物という意味で)オリジナルキャラの太郎は、その光のない死んだような瞳と、卑屈な、そして裏表ある言動が強烈なキャラクター。アニメではキャラクターデザインの関係で瞳はそこまで死んで見えませんし、原作でショッキングだった「奴隷」という表現はさすがに使われませんでしたが、それでも強烈に異彩を放っていることは間違いありません。
そんな太郎が、証拠隠滅と称して行うのがまた強烈すぎる――直接の描写はないとはいえこの時間帯の番組でやるとは思えない行為なのですが、それを目の当たりにしながら、なんとか少しでもマシな方向に変えていこうとするにおの行動(この時、何だかんだ言って太郎よりもよほどリアリストの面が垣間見えるのが興味深い)がこの回の見どころの一つでしょうか。
近藤派が浪士組内の権力闘争の末に殺したという説が有力な殿内ですが、本作においては裏切り者であり、それに気づいた芹沢によって斬られたという展開は、ちょっとミブロを美化しすぎているようにも思えますが――記録に残る殿内の死に様を取り込んでの結末はなかなかうまいと感じます。
そして先に述べたように、第二話で新選組の陽の部分・正の部分を描いた上で、第三話で陰の部分・負の部分を描く構成も巧みと言えるでしょう。
――が、こうした部分はほぼ完全に原作に由来するところと言えます。レギュラー陣の声の演技はさすがというべきですが、絵的には第一話のネガティブな印象を覆すには至らない――というより、アクションシーンについてはかなり省エネな演出なのが厳しいところで、「アニメ」としての完成度と言った場合には、かなり厳しいと言わざるを得ません。
この先、「アニメ」としての本作をどれだけ見せることができるのか――このペースでいけば、まず確実に第一部ラストまでいくはず。それまでにどれだけこの印象を立て直すことができるか、その点が勝負という気がします。
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