最終決戦開始 男たちの奮闘! 椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第8巻
このところ泣かせる展開の連続だったコミカライズ版『半妖の夜叉姫』ですが、いよいよ最終決戦に突入することになります。妖霊星に憑かれた麒麟丸を倒し、犬夜叉を救うため、麒麟丸の本拠に到着した三姫たちですが――この巻は男性陣の活躍が目立つ!?
博多の海を埋め尽くした幽霊船団の中、是露の乗る母船に乗り込み、激闘を繰り広げた三姫。その最中、己の心を見つめ直した是露は自ら消滅を選び、ついに一つの戦いが決着しました。
その結果、虹色真珠から解放されたかごめとりん、そして犬夜叉とついに涙の対面を果たした三姫。しかし犬夜叉の身には妖霊星の欠片が深く食い込み、立っていることがやっと――そんな状況に、三姫は自分たちで麒麟丸、そして妖霊星と戦うと告げるのでした。
そんなわけで、この巻の冒頭で描かれるのは、弥勒や珊瑚、楓のもとに帰ってきた犬夜叉・かごめ・りんの再会。親子の再会は非常に泣かせるものがありましたが、犬夜叉と弥勒の戦友同士の再会もグッと来るところで、特に一目で犬夜叉の状態を見抜いての弥勒のリアクションは、この二人の長年の仲を感じさせます。
(しかしこの様子だと、弥勒と珊瑚は参戦しないようで、残念と言えば残念)
一方、決戦の地・肥前の麒麟丸の城に到着した三姫一行ですが、気付けばかなりの大所帯――三姫に理玖とりおん、琥珀と翡翠、
竹千代(阿久留が憑依)と雲母(あと冥加)、さらにそこに殺生丸と邪見も加わり、なんと十人強のパーティーです。
これだけの人数がいれば、いかに麒麟丸とて――と思いますが、彼女たちの前に、理玖も知らなかったという麒麟丸の秘密部隊の一員にして小姓頭の冥道丸が立ち塞がります。
「冥道」という、『犬夜叉』世界では意味を持つ言葉を冠し、アニメでは時の風車の守護者でありながらも、作中では単発の敵キャラに留まっていた感のある冥道丸。しかしこちらでは麒麟丸の腹心に相応しい強力な能力の使い手として、これだけの面々を向こうに回して一歩も引かず暴れ回るのです。
しかし、その強敵との戦いの中で、大いに印象に残ったのが、翡翠と琥珀です。
弥勒と珊瑚の子である翡翠は、琥珀の下で妖怪退治屋として活動する少年ながら、これまでは、せつなに気のあるところ以外はあまり印象に残らなかったキャラクターでした。
アニメに比べると合流が遅かったことや、弥勒との確執がないことがその一因かもしれませんが――しかしここで彼はある役割を果たすことになります。
それを「活躍」と呼んでいいかは意見が分かれるかもしれませんが――その最中で描かれる、子供時代のせつなとのエピソードには、彼の善き部分が描かれ、グッとくること必至です。
そしてグッとくるといえばもう一人――琥珀の一世一代の活躍がここで描かれます。本作においては(アニメも含めて)、親世代と子世代の中間の立ち位置で、どうにも割りを食っていた感のある琥珀。そんな彼が、ここで『犬夜叉』からの年月を感じさせるドラマを展開するのがたまりません。
それはもしかすると(かつて原作者が彼に対して語っていたことを考えると)、描きすぎなのかもしれません。しかし「あれから」の琥珀を描くに、避けては通れない部分を敢えて正面から描き、そして彼の「勝利」を描くのには、ただただ頭が下がるとしか言いようがないのです。
(そして決着シーンで、本作では触れられていない、しかしかつて琥珀と同じ苦しみを抱えていた、あのキャラクターの存在を確かに感じさせる演出の見事さ!)
もちろん三姫も、アニメ版とはまた異なる(そして考えてみれば本作にはこちらの方が相応しいという印象もある)禍一族と激闘を繰り広げるという見せ場があったのですが、やはりこの巻の主役は翡翠と琥珀――そしてもう一人、決して前面には出ないものの、それが逆にその成長を感じさせるようになった殺生丸だったという印象があります。
この巻のラストではいよいよその殺生丸と麒麟丸が対峙、因縁の対決が始まることになります。
しかしもちろん、三姫たちも親たちに負けてはいないはず。殺生丸の戦いと同様、いやそれ以上に、この先の彼女たちの戦いが大いに楽しみです。
『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第8巻(椎名高志&高橋留美子ほか 小学館少年サンデーコミックス) Amazon
関連記事
椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第1巻 これぞコミカライズのお手本、椎名版夜叉姫見参!
椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第2巻 共闘新旧世代 そして親世代の抱える想い
椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第3巻 夢の胡蝶 その真実
椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第4巻 史実とのリンク? 思いもよらぬ大物ゲスト登場!?
椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第5巻
椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第6巻 感動、親子の再会 そして理玖の生きる目的
椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第7巻 決戦、そして本当の再会の時!
| 固定リンク