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2024.11.24

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第8話「再会」

 魔宮会議の場で、魔界の行方を左右するような策を献じる阿爾貝盧法。一方、異空間に囚われ、芙爾雷伊の襲撃を受けた霸王玉と花無蹤は、それぞれ深手を負いながらも手を携えて戦う。そして凜雪鴉に誘い出された嘲風を探す睦天命たちに襲いかかる魔族。そこに現れた男こそは……

 一人討たれた上に三人欠席(実際にはうち二人死亡)して、御前に集うのはたった三人とすっかり寂しくなった魔宮会議。そんな状況で阿爾貝盧法は、魔宮印章で復活する魔神だけでなく、魔界に眠る魔神全てが復活したら――と、聞いたこともない仮定の話を始めます。しかしそうなっても魔神たちを人間界に送ってしまえば問題なし、今度は人間界の半分の王=西幽の帝=禍世螟蝗と手を組んでるので――という彼の発言は、前々回の会談の結果なのでしょう。一見魔界に有利な提案ですが、阿爾貝盧法の場合、真意を全て喋っているなどとは到底思えませんが……

 さて、そんな会議の最中に、魔宮貴族二人を神蝗盟の二人が殺したと知り、激怒して二人が捕えられた異空間に向かう魔宮三位・芙爾雷伊。彼女の挑戦を真っ向から受け止める霸王玉ですが、なんと芙爾雷伊の洋傘(!)を前に完全に力負け、しかも肩の骨を折られるという信じられない展開となります。しかしトドメを刺されんとした彼女を救ったのは、意外にも花無蹤でした。
 しかも、剛力を失った自分には何も残されていない――と心まで折られた霸王玉に対して、花無蹤は自分の敗北の過去を語ると共に、勇猛な気骨ことがお前の真骨頂だと、まさかの叱咤激励。そして追撃してきた芙爾雷伊に対し、花無蹤は霸王玉に化けて芙爾雷伊の攻撃を両足の骨をバッキバキに折りながらも受け止め、その隙に霸王玉が芙爾雷伊に乾坤一擲の一撃――しかも互いの役割を果たすため、神誨魔械を交換するという、まさかのコンビネーションで逆転勝利を飾ります。

 今度は自分が自慢の足を失って自嘲する花無蹤に対し、貴様は忍び足だけが取り柄ではなく、勇気と知略の男だと讃える霸王玉。大事なものを失った者同士で手を取り合って、何だかいきなりイイ感じですが、逆に盛大に別のフラグを立てたようで不安になります。
(とりあえず、縦合体して互いを補えばいい線いくのでは――って鬼か!)
 そしてまさかの一話で退場となった芙爾雷伊ですが、実力では完全に二人を上回る姿にはようやく魔宮貴族の凄みを見せてもらえましたし、ゴス衣装にどこか歌舞伎を思わせる台詞回しも面白く、惜しいキャラであったことは間違いありません。

 ちなみに二人が仕える禍世螟蝗はといえば、表の方の顔で嘲風の行方を心配――というより手駒が一人いなくなって不便という感じですが――して捜索を厳命。そしてその禍世螟蝗に、わざわざ嘲風は魔界にいると教えた異飄渺の凜雪鴉(真剣に驚く禍世螟蝗にちょっと不安感が漂います)は、睦天命たちから言葉巧みに嘲風を引き離して、さっそく禍世螟蝗の下に送り返した様子。手駒に使うと言っていたわりにはあっさり手放しましたが、これもまた策士の手管なのでしょう。

 しかし、この凜雪鴉の行動が意外な波紋を呼びます。嘲風を追ってきた睦天命と天工詭匠は、前回辛くも逃れた魔族に再び見つかり大ピンチ。追い詰められた二人ですが、そこに現れたのは「殤!」「不患!」――鬼歿之地からはるばる下ってきた主人公、ようやく魔界に見参です。
 久々の念白付き、しかも「His/Story」(というか久々のウォウウォウ)をバックに大立ち回り――と最高の見せ場で魔界デビューの殤不患。しかしまさか、ノリノリで奥の手のサウンドブースターを披露した天工詭匠ロボと、その力を借りて「His/Story」を熱唱する睦天命にその場を攫っていかれるとは、予想もしていなかったでしょう。

 なにはともあれサブタイトル通りに再会した殤不患と睦天命。しかし、いきなり自分のところから消えたことにメラメラ来ている睦天命という強敵を迎えた殤不患の運命は……
(さらにそこにわざとしくチラっと顔を出す凜雪鴉という、殤不患的には衝撃映像)

 そしてあまりの盛りだくさんぶりに忘れかけていましたが、前回変な薬を飲まされて繭になった浪巫謠は、相変わらず繭の中で唸っている最中。そしたその繭の前でご満悦の安索亞特ですが、魔宮会議をサボってまで見物していたのが祟り、魔宮第二位・休德里安に不意打ちを受けてあっさり命を落とすことになります。
 浪巫謠が手も足も出ない状況で、黒い人が退場してしまい焦る聆牙を尻目に、休德里安は繭に手をかけようとして――と、どう考えても魔宮第二位も退場しそうなところで次回に続きます。


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