『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』 第三十三話「禁忌の抜刀」/第三十四話「逆刃刀 初撃」
張の奇剣に苦戦しながらも、青空に託された赤空の最後の一振りで勝利する剣心。その刀こそは逆刃刀の真打だった。そして剣心は、初めて逆刃刀を抜いた時のことを思い出す。それはかつて上野戦争の直後に高熱を発して倒れた自分を介抱してくれた、元岡っ引き夫婦を救うためだった……
今回はちょっと内容的に中途半端な組み合わせですが、二話まとめて紹介(といってもメインは三十四話の方)します。
第三十三話は、前話から引き続いて十本刀・張との対決。薄刃刀にいきなり苦戦する剣心を最初は見捨てて子供を助けようとした青空は、剣心の格好良い啖呵に考えを改めて父・赤空の最後の一振りを託し、剣心は子供を手に掛けようとした張相手に思わず本気を出して一閃するも、実は逆刃刀だったのでセーフ――という展開になります。 この辺り、運良く人斬りにならなかっただけ(刃衛の時も危なかったですが、あれは薫殿が頑張ったので)というのにモヤモヤしますが、これはまあ仕方がないことでしょう。むしろここは、あれだけ殺人奇剣を作ったにもかかわらず、最後は心を改めた赤空の遺志が彼を、息子と孫を助けたと考えるべきでしょう。(あと、「峰打ち不殺」みたいなことにならなくてよかった……
さて、原作では葵屋で剣心が改めて逆刃刀を受け取って「よし!」だったわけですが、アニメの方では、剣心の回想の形で、ほぼ一話かけたオリジナルエピソードが描かれることになります。
剣心が赤空に別れを告げ、刀を託されておそらく程なく――江戸に現れた剣心は、折悪しく高熱を発してダウンしたところを、皐月という女性に救われます。時あたかも上野戦争の直後、夫の義一と共に暮らす彼女は、剣心を新政府軍に追われる旧幕軍の敗残兵と思って助けたのです。 そんなわけで二人(と猫たち)のもとで養生することになった剣心。しかし、かつて義一は岡っ引きとして御用盗を追っていた中で片腕を失い、勝てば官軍と復讐を企んでいる元御用盗たちから隠れ住んでいることを知ります。そしてついに義一の家を突き止め、襲撃してきた元御用盗たち。皐月とお腹の子を助けるために命を投げ出そうとする義一を助けるため、剣心はついに刀を抜くのですが……
というわけで、結構派手な内容だった第零幕に比べると、初期エピソードに近いムードの物語ですが――しかし舞台はまだ戊辰戦争の最中だけに、いつ庶民が戦いに巻き込まれてもおかしくない世界であり、そして戦いに名を借りて今回の御用盗たちのような悪事を働く人間の存在には、厭な生々しさがあります。もっとも、そんな時代だからこそ、傷付いてもなお明るい明日を目指そうとする二人の姿が印象的であるわけで、やはり時代の混乱の中で傷つき剣を捨てた剣心が、二人のために剣を再び手にする展開には納得がいきます。(ただ、義一はもうちょっと元岡っ引きらしい喋りでも良かったのではないかなあ、という気持ちは、時代劇ファンとしてはあります。もちろん、色々な岡っ引きがいるわけですが……)
その一方でちょっと引っ掛かったのは、剣心が刀を抜いて初めて、それが逆刃刀であると気付くくだりですが、これはまあ、それまで刀を抜く気にもならなかった、ということなのでしょう(しかしいざ抜いてみたら、面白殺人奇剣でなくて本当によかった……)。また、最終的にその場を収めたのが、剣心の過去の雷名であったというのは、これもまあ初期エピソード的でもあります。
もう一つ余計なことをいえば、せっかく「御用盗」というワードが出てきたのですから、いつもの関俊彦のナレーションで「御用盗とは〜」と解説すればよかったのに、と一瞬思いましたが、そうすると相楽隊長の暗い過去が言及されかねないから――というのは考えすぎですが、単なるそこらの賊のように単純化して描かれたのは、ちょっともったいなかったと感じます。
なお、この第三十四話の脚本は、もちろん黒碕薫。というわけで、アニメオリジナルとはいえ、ほぼオフィシャルと考えてよい内容なのかな、と思います。(ちなみに登場した猫の中に、聞き覚えのある名前が……)
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