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2024.12.01

『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』 第三十一話「京都到着」/第三十二話「十本刀・張」

 京都に到着し、操の育った料亭「葵屋」で、元隠密御庭番衆の「翁」と出会う剣心。翁の力を借りた剣心は、折れた逆刃刀の代わりを求めて刀匠・新井赤空を探すが、赤空は既に亡き人だった。しかし赤空の最後の一振りがあると知った十本刀・刀狩の張の魔手が、赤空の息子一家に迫る……

 だいぶ遅れてしまいましたが、今回も二話紹介。ようやく京都に到着し、名実ともに京都編スタートといったところですが、志々雄一派との激突もいよいよ本格的に始まります。

 第三十一話で描かれるのは、タイトル通り剣心(と操)の京都到着の模様。ここでこの先、剣心たちの京都での足がかりになる葵屋が登場するわけですが、そこはかつて隠密御庭番衆の京都探索の拠点で――と、重要キャラの「翁」こと柏崎念至が登場します。旧アニメ版ではザ・頼りになるお年寄り役声優の北村弘一氏が演じていましたが、今回は千葉繁氏と、エキセントリックな側面を強く感じさせるキャスティングですが、違和感なくハマっているといえるでしょう(千葉氏も年齢的には無理がないですし――地虫忍者経験もある、というのはさておき)。
 初登場シーンから、一目で剣心を抜刀斎だと見抜き助力を申し出るなど、かつての実力も健在と感じさせる翁ですが、ここで剣心が「新井赤空」と「比古清十郎」と二人の探し人の名を挙げることで、この先の物語が広がっていくことになります。

 しかし隠密御庭番衆といえば、言うまでもなく四乃森蒼紫ですが――その蒼紫といえば、隠すこともなく堂々とあの長物を手に京を闊歩していたのは、これは原作通りではあるものの、ビジュアル的にはやはり面白すぎるというか何というか……(この先、もっと面白いことになるのですが)

 そして対する志々雄も京都のアジトに到着、そこで待っていたのは十本刀の一人にして志々雄の軍師・佐渡島方治。切れ者ぶりに似合わず、配下たちの前では自らアジテーション役も辞さない男ですが、ここでは蘊蓄を傾けながら、「勝利」の花言葉を持つ阿蘭陀菖蒲(グラジオラス)の花束をプレゼント――ってこんな場面原作にあったっけ!? と思いきや、今回のアニメオリジナルシーンでした。
 実は今回脚本を担当したのは黒碕薫――長きにわたり原作協力を担当し、このアニメ第一期で担当した石動雷十太編・第零幕では、アニメオリジナルの描写で原作ファンを驚かせてくれましたが、今回も期待通りの展開というべきでしょう。といっても今回は、ここと後述の張のけん玉の件くらいなのがちょっと物足りないのですが……

 しかし、ここで国盗りに前のめりの方治に対して、志々雄は剣心に十本刀を当てると宣言。滅茶苦茶反対する方治ですが、あの面子が全員要人暗殺に役立つかといえば非常に疑問で、志々雄の言うように三四人まとめていけばそれなりにイケるのでは――という気がしないでもありません。もっとも志々雄は三段バカ笑いでわかるようにほとんど自分の趣味で言ってるので、方治の苦労が偲ばれます。
(にしても、宗次郎と宇水がいれば問題ないと、宗次郎と並び称されるほどの宇水さん――活躍を期待しないわけにはいきません)

 さてここで顔を見せた張は、剣心が折れた逆刃刀の代りを求め、その逆刃刀を打った新井赤空(は亡くなっていたのでその息子の青空)の下を訪ねたこと、手ぶらで帰ったものの、赤空には最後のひと振りがあるらしいことを聞いて、妙にやる気を見せます。
 そこで青空の店を訪れた張は、息子の伊織がけん玉で遊んでいたのを見て、自分も自信満々にやってみせたものの、ひたすら大失敗――というのが第三十二回のオリジナルシーン。これが張が伊織を人質に取り、長刀の鞘の先にぶら下げたまま、刀版けん玉ともいうべき逆中空納刀にチャレンジするシーンのサスペンスを煽る――という趣向ですが、力入れるところかなあ、という気はいたします。

 しかしこの張、関西弁の喋りといい、自分の欲のままに動く性格といい、これまで何となく憎めない印象がありましたが――今回改めてみると、実行に至らなかったまでも子供を手に掛けることも厭わないド畜生で、この先の扱いを考えるとなんかこう、もう少しヒドい目に遭っておいてもよかったのでは、という気もします。
 その戦いはまだ決着は着いていませんが、今回の時点でかなりボコボコ。しかし十本刀の実質一番手としての彼の本領発揮は、まだまだこれから――と次回に続きます。


 しかし青空君、神社に奉納した最後の刀まで汚されては赤空が刀匠ではなく本当に「殺人道具を作った男」になってしまうと言っていましたが、この先登場する赤空の殺人奇剣を見れば、もはや手遅れだととしか……
(というか、「殺人奇剣」という言葉ができてしまった時点で既に)


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