2023.09.26

谷津矢車ほか『どうした、家康』(その二)

 家康の生涯を超短編で綴ったアンソロジーの紹介の後編であります。

「鯉」(谷津矢車)
 岡崎城で飼われていた、信長下賜の鯉を食べた咎で捕らえられた鈴木久三郎。どうやら諫言のためらしいと気付いた家康ですが、許された久三郎は不遜な言葉を残すのでした。
 数年後、三方原の戦いで絶体絶命の窮地に陥った家康の前に現れた久三郎が取った行動は……

 三河武士といえば、家康への忠誠で団結していた印象がありますが、しかしそれが必ずしも事実ではないのは、一向一揆の際の状況を見ればわかります。本作はそんな家康の難しい立ち位置を、一人の三河武士との関係性から浮き彫りにするという視点の妙に唸らされます。

 そしてクライマックス、家康の生涯でも最大の危機といえる三方原で彼を救ったのは――単純に感動的な、と表現して終わらせるわけにはいかないその真実を、しかし家康の成長を以て昇華させた上にに、「鯉」の意味が絡み合う結末もまた、巧みと評するしかありません。


「親なりし」(上田秀人)
 大坂冬の陣でついに豊臣家を滅ぼした家康。大坂城を包む炎を目の当たりにして、「愚か者が」と呟いた家康の真意は……

 大坂の陣終結直後に、家康が徳川頼宣に語って聞かせるという趣向の本作は、老練な年長者が未熟な後進に説明してやる(説教する)という、作者の作品ではお馴染みのスタイルで描かれます。
 豊臣家だけでなく、秀吉を、さらには信長を愚か者と言い切る家康の真意は奈辺にあるのか。そこで描かれるのは、作者の作品に通底する「継承」という概念なのですが――そこに含まれる家康の悔恨を知った上でタイトルを見れば、なるほどと感じさせられます。

 舞台となる時系列順に作品が配置された本書の中では中頃に収録されているにもかかわらず、大坂の陣が描かれているのを不思議に思いましたが、この家康の想いが何に対するものであったかを知れば納得です。


「賭けの行方 神君伊賀越え」(永井紗耶子)
 茶屋四郎次郎に本能寺の変の発生を知らされ、一時は死を考えた家康。しかし四郎次郎の言葉に思いとどまった家康は、決死の帰還を試みるのですが……

 本能寺の変の直後、堺にいた家康が領国に帰還するために必死の思いで敢行した伊賀越え。家康の生涯でも有数の危機を、その立役者の一人である茶屋四郎次郎を通じて描いた作品です。
 内容的にはシンプルではありますが、面白いのは、ここであっさりと切腹しようかと考え、そしてそれを思いとどまる家康の心の動きでしょう。家康がここで死のうとして周囲に諫められたのは史実のようですが、本作の視点はユニークかつ納得させられるものがあります。

 もう一人の立役者である服部半蔵が語る、伊賀が危険な理由もまた納得の視点で、人間心理に向ける視線が印象に残る作品です。


「燃える城」(稲田幸久)
 大坂冬の陣で豊臣家を追いつめ、勝利を目前とした家康。大久保彦左衛門と共に本陣で悠然と構えていた家康ですが、そこに真田幸村が迫ります。追い詰められた家康がそこで見たものは……

 戦国最後の戦いというべき大坂の陣も終結目前となり、ある種の余裕ある家康を描く本作。戦国の世の出来事を物語にまとめたいという彦左衛門が、「三方原には参戦していないので、馬印を倒すほど慌てふためいて逃げ帰ったのは見ていない」と語るというフラグ以外の何ものでもないものを立てておいての幸村襲来はちょっと笑ってしまいましたが、物語はそこからが本番であります。

 そこで幸村を通じて家康が見たものは、対峙したものはなんだったのか。ちょっと格好良すぎる気もしますが、本書の掉尾を飾るに相応しい結末であります。


 というわけで、超短編で家康の生涯を描いた本書ですが、一作品毎の分量の少なさから、作品によって色々と差が出ていたのは仕方のないところでしょうか。
 何はともあれ、個性的な歴史時代小説アンソロジーを手掛けさせたら右に出るものがいない、講談社ならではの一冊であることは間違いありません。


『どうした、家康』(講談社文庫) Amazon

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2023.07.17

永尾まる『猫絵十兵衛 御伽草紙』第23巻 人情・猫情・妖情そして旅情の原点回帰

 あのコンビがついに帰ってきました。約三年ぶりの登場となった『猫絵十兵衛 御伽草紙』最新巻であります。江戸を離れ、北への旅に出た二人が、新潟で、佐渡で、様々な人情・猫情・妖情に出会います。そして明かされる、ニタの意外過ぎる過去(?)とは……

 この世ならざるものを見る力を持つ猫絵師の十兵衛と、強大な力を持つ元猫仙人のニタ――と書くとなにやら物騒ですが、至ってマイペースな二人。これまで江戸を中心に描かれてきたこの二人の物語は、前巻の終盤から大きく趣を変えることになります。
 江戸からふらりと旅に出て、越後までやってきた十兵衛とニタ。そう、この巻では、越後、佐渡を中心に、二人が旅の最中に出会う様々な出来事が描かれることになります。

 前巻のラストでは、越後の新潟湊で遊郭から足抜けしてきた娘・おけいと出会った二人が、彼女を助けて遊郭の主・二ツ岩の団三郎狸(この第23巻の表紙を艶姿で飾っております)と対峙。すったもんだの末、おけいと団三郎と共に、佐渡に渡ることに――という物語「湊猫」が描かれました。
 そしてこの巻の冒頭に収録された「小木湊猫」は、その後編というべき内容――育ての親である老爺が病となり、彼に薬を届けるために足抜けしたおけいが語る、とある昔話が物語の中心となります。

 このエピソードでは、「湊猫」を読んだだけではわからなかった意外な真実(それも二段構えの)にまず驚かされますが、それ以上に印象に残るのは、やはり切々と描かれる「情」の存在でしょう。
 本作は作中の随所で「歌」が印象的に使われていますが、このエピソードでも、おけさ節の元になったというおけいの唄に乗せて切々と描かれる、種族を超えた「情」の姿が、感動を呼びます。
(ただ、ラストの捻りは、これまでの描写的に、ん? という気がしないでもありませんが……)


 さて、その後も二人の旅は続きます。

 団三郎狸が語る、佐渡の国産み神話にまつわる、ある猫の物語「佐渡の猫石」
 毎年雪の降る時期に、老夫婦のもとにやってくる不思議な子供と二人の交流「雪猫」
 ニタが見せたいというとっときを求めて山中にやってきた十兵衛の受難「さかべっとう猫」
 子供時代の十兵衛が、友達のために初めて「猫絵」を描く「猫の絵」
 猫絵で知られる上野国石時見家の若き殿様が、善光寺参りに向かう途中の旅で二人と出会う「猫絵の殿様」「猫絵の殿様 弐」
 琵琶法師に身をやつした老猫が語る奇岩の由来の物語「半過の岩鼻猫」

 どのエピソードもこれまで同様、時に切なく、時に温かい「人情」「猫情」「妖情」を存分に描くのですが――そこに「旅情」が加わるのですからたまりません。
 誰もが憶えがあるであろう、旅に出た時の不思議な解放感と軽い興奮、そしてそこはかとない寂しさ――そんな味わいが、本書のエピソードには漂っています。

 もっともその中で思いもよらぬ変化球が飛んでくるのも、また本作らしいところでしょう。たとえば「佐渡の猫石」は、伊邪那岐命と伊邪那美命まで遡る壮大な物語ですが、そこに顔を出すのはなんと……
 いやお前、そんな頃から――と、いきなり広がったスケール感に絶句するとともに、何ともすっとぼけた「真理」が描かれるオチが痛快ですらある一編です。


 ちなみにこの巻のあとがきによれば、前巻ラストからの「越後篇」「佐渡島篇」は、かなり以前から――それこそ本作の成立前、というか本作の成立に関わる形で構想されていたものであるとのこと。その意味では、この巻の内容は本作の原点回帰と言えるのかもしれません。

 冒頭に触れたように本書はほぼ三年ぶりの新刊ですが、その間、「ねこぱんち」誌での連載もストップした状況と、愛読者としては非常に心配になる期間でした。
 しかしこの巻では、前巻にほとんどなかったあとがきもきっちりと(4ページも)あり、そして本書の刊行と時を同じくして「ねこぱんち」誌の連載も再開――と、嬉しい限りです。

 どうか原点回帰したその先も、ずっと十兵衛とニタの物語を描いてほしい――本書を読んで、心からそう感じた次第です。


『猫絵十兵衛 御伽草紙』第23巻(永尾まる 少年画報社にゃんCOMI) Amazon

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 『猫絵十兵衛 御伽草紙』第12巻 表に現れぬ人の、猫の心の美しさを描いて
 永尾まる『猫絵十兵衛 御伽草紙』第13巻 ニタが嘉するもの、ニタが人の世で生きる理由
 永尾まる『猫絵十兵衛 御伽草紙』第14巻 人と猫股、男と女 それぞれの想い
 永尾まる『猫絵十兵衛 御伽草紙』第15巻 この世界に寄り添い暮らす人と猫と妖と
 永尾まる『猫絵十兵衛 御伽草紙』第16巻 不思議系の物語と人情の機微と
 永尾まる『猫絵十兵衛 御伽草紙』第17巻 変わらぬ二人と少しずつ変わっていく人々と
 永尾まる『猫絵十兵衛 御伽草紙』第18巻 物語の広がりと、情や心の広がりと
 永尾まる『猫絵十兵衛 御伽草紙』第19巻 らしさを積み重ねた個性豊かな人と猫の物語
 永尾まる『猫絵十兵衛 御伽草紙』第20巻 いつまでも変わらぬ、そして新鮮な面白さを生む積み重ね
 永尾まる『猫絵十兵衛 御伽草紙』第21巻 バラエティに富んだ妖尽くしの楽しい一冊
 永尾まる『猫絵十兵衛 御伽草紙』第22巻 変わらぬ江戸の空気、新しい旅の空気

 『猫絵十兵衛御伽草紙 代筆版』 三者三様の豪華なトリビュート企画

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2022.12.21

西公平『九国のジュウシ』 恐るべき野生児が見た岩屋城の戦い

 戦国時代でも有数の寡戦となった岩屋城の戦い――高橋紹運率いる700余名が、島津軍5万を向こうに回して壮絶な戦いを繰り広げた籠城戦。その秘話を描く何ともユニークな漫画であります。紹運の前に現れた凄まじい戦闘力を持つ野生児・十四郎が、この戦いで見たものは……

 戦国時代末期の九国(九州)制覇を目指す島津に対して、最後まで戦いを繰り広げた末、豊臣秀吉に助けを求めた大友家。しかし救援が到着するのは四ヶ月後。それまでの時間を稼ぐため、大友家にこの人ありと知られた名将・高橋紹運は岩屋城に籠もることを選ぶのでした。
 高橋軍763人に対して、対する島津軍は5万人――絶望的な戦力差の中で、紹運の傍らにあってなおも生き延びると言い放つ少年・十四郎がいました。

 遡ること七年前、岩屋城で噂となっていた獣のような動きの子供――合戦場に現れ、軽々と兵たちの攻撃を躱しては、切り落とした相手の手足や、死体の臓腑を拾い集めるその子供に、強く興味を惹かれた紹運。
 そして子供が、山中の洞窟で共に暮らす巨大な狼を母上と呼び、人肉を与えていたことを知る紹運は、子供を追ってきた山賊の矢から「母上」を庇ったことをきっかけに、子供――十四郎を戦場に伴い……


 岩屋城の戦いを題材としつつも、物語の中でこの戦いが描かれるのは、冒頭と最終巻(第三巻)の後半部分――それ以外の部分で描かれるのは、この野生の化身のような十四郎と、紹運をはじめとする人々の関わりであります。

 至近で振るわれる刀を躱し、自分めがけて放たれる矢を掴み取る。刀のひと振りで、人の首や手足を軽々と叩き斬る――およそ常人を遥かに超えた身体能力を持つ十四郎ですが、彼が真に常人と異なる点は、その精神性にあります。
 上に述べたように母狼に育てられ、そして老いて狩りが出来なくなった母狼のために合戦場で人肉を集め、食わせるという凄まじい生活を、ごく平然と送っていた十四郎。
(実は彼の親については、さらにドン引きものの過去があったことが明らかになるのですが……)

 しかし時は血で血を洗う戦国乱世。そんな剣呑な人間でも、強ければ喉から手が出るほど欲しい――という紹運も十分どうかしているというのはさておき、そんな十四郎と、紹運や彼の子・千熊丸(後の立花宗茂)たちの交流は、彼ら自身を、そして彼らの周囲の状況を変えていきます。

 それは、十四郎との共同生活の中でその才能を開花させていく千熊丸のように、急激なものであることもあります(その変化に戸惑うギン千代が可笑しい)。あるいは本人も気付かぬうちに、ゆっくりと変わっていく十四郎のような場合もありますが――いずれにせよここで描かれるのは、人は人との触れ合いの中で、初めて人として成長することができるという「真実」であります。


 そんなドラマを時にシリアスに、時にコミカルに(というか大半コミカルに、でしょうか)積み重ねた末に、岩屋城の戦いに突入する本作。
 そこで描かれるのは寡戦にして籠城戦という極限状況ですが、しかしそこに不思議な温かみのようなものを感じさせるのは、そこに人と人との――そしてその中には十四郎も含まれるのですが――確かな繋がりがあるからなのでしょう。

 そしてこの戦いのある事実と、十四郎の名に一つの符合を見出す時――そこには不思議な感動が生まれるのです。


 正直に申し上げれば、先に述べたシリアスとコミカルの落差など、どんな顔をして読めばよいのかわからなくなってしまう時も多いのですが――しかしそんな点も含めて唯一無二の、そして不思議な魅力を持つ戦国漫画であります。


『九国のジュウシ』(西公平 KADOKAWA HARTA COMIX全3巻) 第1巻 Amazon / 第2巻 Amazon / 第3巻 Amazon

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2022.08.31

永井義男『江戸狼奇談』 有名人探偵+アクセントの効いた時代ミステリ

 永井義男が1995年から1998年――すなわち、小説家デビューした直後の時期に月間小説誌に発表した作品を中心とした短編集であります。全六編のうち、四編は実在の人物を主人公としたミステリ色の強い作品という、ユニークな一冊です。

 本書に収録されているのは、いずれも独立した作品ですが、ここでは特に印象に残った作品を中心に紹介しましょう。

 表題作であり巻頭の「江戸狼奇談」は、タイトル通り、江戸に現れた狼を巡る奇談であります。ある晩、狼に噛まれ、尊敬する医師である沢三伯のもとに駆け込んだ米搗き職人の仙太。しかしその噛み傷に違和感を感じた三伯は、最近狼が出没しているという噂の中身を調べるよう、仙太に頼むのでした。
 仙太が町で聞き込みをした結果、最初の被害者は、狼に局部を噛み切られて死んだ子供だったと聞き、そこから騒動の裏を見抜く三伯ですが……

 本作の題材となっているのは、十九世紀前半に鈴木桃野が記した奇談集「反故のうらがき」中の、麻布・青山の狼騒ぎ。その最初の被害者から、狼の「正体」に至るまで、実は原典通り――すなわち「実話」なのですが、しかしその隙間を巧みに埋め合わせ、一つのミステリとして成立させているのが、本作の魅力でしょう。
 しかしそれ以上に目を惹くのは、本作の探偵役が沢三泊であることです。卓越した頭脳を持ちつつも、役人と接点を持つことを嫌う彼の正体は――知っている人には全く隠されてはいないわけですが、本作で描かれた事件が、彼の運命に繋がっていく終盤は、やはり衝撃的です(その描写が「公式発表」通りでないだけ余計に……)。


 続く「夢酔続言」は、「夢酔独言」をもじったタイトルから察せられるように、勝小吉を主人公にした作品であります。知り合いから、出入りの大店の若旦那が美人局に引っかかったと相談された小吉。この若旦那、震え上がって金だけでなく財布や羽織まで身ぐるみ置いてきてしまったというのですが、それをネタにどんな因縁をつけられるかわからない――と、店の主人から頼まれた小吉は、囮役を買って出ることになります。
 誘いに乗ったふりをして相手をさんざん脅しつけ、首尾よく奪われたものを取り戻した小吉ですが、実は……

 後に『とんび侍喧嘩帳』で小吉を主人公に迎える作者ですが、本作の小吉は、いかにもバイオレンスものの主人公らしく(?)、エロにも暴力にも強い男。この辺りの描写は、正直にいって今見るとちょっと――なのですが、しかし終盤に至り、物語は全く異なる様相を呈することになります。
 小吉のもとを訪ねてきた旧知の高屋彦四郎(柳亭種彦)に、今回の一件を話した小吉。しかし戻ってきた品を見た彦四郎が語るのは――まさかここに繋がるのか、という意外な真相なのです。

 正直なところ真の探偵役がいきなり登場した印象はありますが(もっとも、二人の交友は勝海舟の「氷川清話」で明言されているのですが)、しかしここで描かれるある種の強い怒りは、小吉ではなく彦四郎が語るからこそ意味があるものでしょう。


 その他、「汚穢屋吟味帳」は、盗みに入った家の庭に糞を垂れると捕まらないという俗信を背景に、その「遺留物」を分析したことをきっかけに起きる騒動ですが、探偵役を新内節の本家本元というべき鶴賀若狭掾(の隠居後の姿)とすることで、奇妙な題材ともども、なんともユニークな雰囲気を醸し出す作品です。
 また「世田谷裁き」は、世田谷で真夜中に農家を訪れてその場で亡くなった正体不明の男の体に二つ傷があった謎を解き明かす物語ですが、探偵役が井伊家の十四男で冷や飯食いの若者・鉄三郎というのが意外性十分。彼の存在が、事件の真相と因縁を感じさせるものになっているのも、時代小説としても面白いところです。


 残る二編、「深川旦那殺し」は、妾を安囲い(要するに妾の共有)している気弱な勤め人が、他の面子が次々と殺されるという事件に巻き込まれ――という物語。一方、「虎穴堂弥助」は、妻をやくざに寝取られた男が、超実戦派の武術道場で修行して復讐戦に挑むという、本書の中ではミステリ味のない異色作となっています。
 どちらもあらすじを見ればわかるように、現代ものでも通じるような内容ながら、それを時代ものとして落とし込んでいるのが面白いところでしょう。


 以上六編、江戸の性愛関係の著作も多い作者らしさを窺わせつつ(そして今読むと執筆年代を感じさせつつ)、アクセントの効いた物語揃いの短編集であります。


『江戸狼奇談』(永井義男 祥伝社文庫) Amazon

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2022.08.02

野田サトル『ゴールデンカムイ』第31巻 大団円 黄金のカムイの呪いの先に

 いよいよ長きに渡った黄金争奪戦にも決着の刻が来ました。五稜郭から脱出した杉元たちが飛び込んだのは、函館駅に向かう列車の中――しかしそこは第七師団の兵士たちを満載! 後ろからは鶴見たちも追いすがり、地獄行きの暴走列車の中で繰り広げられる死闘の行方は……

 五稜郭で広大な土地の権利書と、莫大な砂金を発見したものの、鶴見率いる第七師団の猛攻を受けることとなった杉元たち。鯉登父が、都丹が、二階堂が、ソフィアが、ヴァシリが次々と退場していく中、五稜郭を脱出した杉元とアシリパたちが飛び乗った函館行きの列車の中で、最後の最後の戦いが繰り広げられることになります。
 この戦場で土地の権利書を守るべく必死の戦いを繰り広げるのは杉元、アシリパ、白石、土方、牛山。そしてそれに対するは鶴見、鯉登、月島、尾形、さらには無数の第七師団の兵士と、ヒグマ――ヒグマ!?

 最後の舞台に残った役者たちの中で、最後に立っているのは誰か――逃げ場のない閉鎖空間の中で、いつ終わるとも知れない死闘が続くことになります。


 というわけで、ここから先の戦いは、どの組み合わせ一つとっても、まさに黄金カードと言うべき名勝負の連続。杉元・土方サイドも鶴見サイドも、文字通り死力を尽くした戦いが、この最終巻の中に、驚くべき密度で詰まっているのです。

 しかし黄金を巡るこの戦いの掛け金は己の命。ここに至って、いやここに至ったからこそ散っていく一人ひとりのキャラクターの姿は、その演出も相まってこちらの感情をグワングワンと揺さぶってくれます。
 誰が散って、誰が残るのか――それをここで挙げることはしませんが(本当は一人一人触れたい!)、残るのはある意味納得の面子であるのと同時に、退場する者は心から惜しまれる顔ぶれであることは言うまでもありません。

 しかしそんな消える命を背負い、昏く翳っていくのはアシリパの瞳。たとえ杉元とともに地獄に落ちる覚悟を固めたとしても、しかしこれだけの命が眼の前でまとめて失われていくことが、彼女にとって、どれだけ大きな衝撃であるか言うまでもありません。そしてその暗闇から彼女を救い出せるのが、誰のどんな言葉であるかもまた……


 そしてその果てに迎えた最後の最後の対決に臨むのは、言うまでもなく杉元と鶴見――片やただ一人を助けるための金を求めて首を突っ込んできたノラ坊、片や無数の人間の運命を操ってきた大義と野望の男、対称的な二人の対決は、もはやこれまで二人が背負ってきた人生のぶつかり合いといえるでしょう。
 そして圧巻は、二人の、いやそこに至るまでの戦いの中で、鶴見の心の仮面が外れた瞬間でしょう。ラスト一話前に見せた表情はもちろんのこと――その他にも単行本の加筆修正描かれた鶴見の意外な(?)想いは、鶴見という人物が善悪という単純な視点では量りきれない、本作を代表する「人間」であったことを示すものなのでしょう。

 しかしこの黄金争奪戦の中で、杉元もまた様々なものを背負い、成長してきました。そんな彼が己のためだけでなく、誰かのために動く姿は、格好良すぎるかもしれませんが、黄金のカムイの呪いを解く一つの希望であったと感じるのです。


 そして最終話――一コマ一コマに至るまでに施された細やかな演出に圧倒されつつ、生き残った登場人物(いや生き残らなかった者も)のその後を丹念に描いた結末には、これほど「大団円」という言葉が相応しい内容はないでしょう。

 実はこの最終話については、雑誌掲載時に比べると、大枠は同じながら、細かいコマ割りや台詞回しなど驚くほど大量に手が入っていることに気が付きます。
 これはおそらく(いや間違いなく)、雑誌掲載時に終盤の描写に批判が寄せられたことによるものだと思いますが――私はその時には「フィクションはどこまで現実に責任を持つべきか」ということを随分考えさせられましたが――それに対して、できる限りの努力をしたことが、今回の修正からは感じ取れるように思います。
(こちらも批判が寄せられた、あの「オチ」にもよく見たら修正が入っていたのには噴きましたが)


 そして参考文献リストも終わり、ああ、本当に終わってしまった、と思っていたら、その後に付された描き下ろし4ページ。
 これは一体? と思ってみれば――いやはや、最後の最後の最後まで量りきれない人間でしたが、あるいはこれが彼の役目だと思えば、それはそれで一つの救いのようにも感じられるのです。


『ゴールデンカムイ』第31巻(野田サトル 集英社ヤングジャンプコミックス) Amazon

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 野田サトル『ゴールデンカムイ』第30巻 五稜郭決戦に消えゆく命 そして決戦第二ラウンドへ!

 『ゴールデンカムイ公式ファンブック 探究者たちの記録』 濃すぎる作品の濃すぎるファンブック!

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2022.06.23

野田サトル『ゴールデンカムイ』第30巻 五稜郭決戦に消えゆく命 そして決戦第二ラウンドへ!

 連載は大団円を迎えましたが、まだまだ単行本が完結するまで油断できないのがこの『ゴールデンカムイ』。残すところは本書を入れてわずか二冊ですが、この巻でも驚くほどの加筆修正が施されています。いよいよ始まった五稜郭包囲戦の中、次々と失われていく命。はたして最後に残るのは?

 刺青人皮が示す黄金の在処、五稜郭に集うことになった生き残りの全勢力。先に五稜郭に入った杉元・アシリパ・白石と土方一派、さらにソフィアとパルチザンに対して、鶴見も第七師団を招集、鯉登父の駆逐艦まで加わっての全面対決は、もはや戦争というレベルにまでエスカレートすることになります。
 アイヌのために残された土地の権利書、そして土方のアイヌとの繋がりからようやく発見された黄金――長きに渡り求めてきたものをついに発見したアシリパたちは、決して退けない戦いに挑むのですが……

 と、まさしく死闘がひたすら続くこの巻。ここでは名前は挙げませんが、一人、また一人とキャラクターが退場していくのは、もはや仕方がないこととはいえ、やはり胸が痛みます(もっともそんな中、新たに、そして最高のタイミングで駆けつける律儀すぎるマタギには胸が躍るのですが)。

 しかしそんな死と暴力の最中でも、一人一人のキャラクターの輝きを見せてくれるのが本作の魅力であります。
 特にこの巻の序盤、キラウシが懸命に戦う姿は、彼がほとんど巻き込まれてここまで来たようなキャラクターだからこそ、彼の中に生まれた希望を感じさせる名場面だったと感じます。
(そしてその想いが、ある人物の最期に繋がる無情さもまた……)


 しかしこの巻で圧倒的なのは、冒頭に述べたように単行本における加筆修正シーンでしょう。それこそ細かいところまで挙げれば数限りないのですが(例えば上のキラウシのシーンも、わずか一つの台詞を追加しただけで印象がさらに強くなっています)、やはり数ページにわたる追加部分は、特に強烈に印象に残ります。

 その一つは、五稜郭の元陸軍訓練所での鶴見と鯉登との対峙であります。かつて鯉登が鶴見に命を救われ、彼に心酔するきっかけとなった地で、彼のつく嘘と――いや、嘘をつかずにはいられない彼の心(この辺り、連載最終回時の雑誌附録を見ているとニヤリ)と正面から対峙する鯉登の言葉は、途中で一部が薩摩弁になる部分も含めて、彼のこれまでのドラマが凝縮されているようで、胸に迫るものがあります。
(そしてアッここに繋がるのか――と驚かされるのですが、それはまだ先)

 そしてもう一つ胸に刺さったのは、実に6ページにわたり、ソフィアの内面を、過去を描いた場面であります。
 五稜郭で斃れたパルチザンの仲間たちの名前を呼ぶ姿から始まり、彼女の脳裏に浮かぶ、かつてのロシア皇帝暗殺の場面。そこでは、ウイルクが顔に傷を負うこととなったもう一つの理由、そしてその理由がソフィアの心に終生残った傷の理由と通底するものであったことが、語られることになります。

 そんな彼女が背負ったものを顕わにした果てにソフィアが呼んだのは――いやはや、このページを見たときには、思わず声が出そうになりました。個人的にはこの巻のハイライトと感じた次第です。


 さて、そんな数多くの生と死が描かれた五稜郭決戦も、この巻の後半でアシリパと杉元たちが五稜郭から脱出したことで、否応なしに終わりを迎えることになります――が、それは最終決戦が終わったという意味ではありません。
 決戦の第二ラウンドの舞台、それは函館駅に向かう列車の中。逃亡中偶然出会った列車に乗り込んだ杉元たちが見たものは、中にすし詰めになった第七師団の第二陣たちだったのであります。

 鶴見たちも追いつき、もはや逃げ場のない車内、そして頭巾ちゃんとの対決を終えた尾形も乗り込み、もはや大混乱の中、暴走列車は地獄へと一直線に向かうことになります。
 その先に待つものは――いよいよ次巻大団円であります。


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 野田サトル『ゴールデンカムイ』第8巻 超弩級の変態が導く三派大混戦
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第9巻 チームシャッフルと思わぬ恋バナと
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第10巻 白石脱走大作戦と彼女の言葉と
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第11巻 蝮と雷が遺したもの
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第12巻 ドキッ! 男だらけの地獄絵図!?
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第13巻 潜入、網走監獄! そして死闘の始まりへ
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第14巻 網走監獄地獄変 そして新たに配置し直された役者たち
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第15巻 樺太編突入! ……でも変わらぬノリと味わい
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第16巻 人斬りとハラキリとテロリストと
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第17巻 雪原の死闘と吹雪の中の出会いと
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第18巻 ウラジオストクに交錯する過去と驚愕の真実!
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第19巻 氷原の出会いと別れ さらば革命の虎
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第20巻 折り返し地点、黄金争奪戦再開寸前?
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第21巻 二人の隔たり、そして二人の新たなる旅立ち
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第22巻 原点回帰の黄金争奪戦再開
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第23巻 谷垣とインカラマッ 二人のドラマの果てに
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第24巻 海賊の理想 そして全ては札幌を目指す
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第25巻 殺人鬼の意外な正体!? そして全勢力激突寸前!
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第26巻 ほとんどトーナメントバトルの札幌決戦!
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第27巻 解かれゆく謎と因縁 そして鶴見の真意――?
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第28巻 「ノラ坊」と「菊田さん」――意外な前日譚!
 野田サトル『ゴールデンカムイ』第29巻 解かれたなぞ そして最終決戦開始!

 『ゴールデンカムイ公式ファンブック 探究者たちの記録』 濃すぎる作品の濃すぎるファンブック!

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2022.06.20

仁木英之『モノノ怪 執』(その三) 作品世界への新たな風となったスピンオフ

 アニメ『モノノ怪』のスピオンオフ小説『モノノ怪 執』の紹介のラストです。今回は「饕餮」「ぬっぺらほふ」の二話をご紹介いたします。

「饕餮」
 九州・月ヶ瀬藩の三老と呼ばれる家柄ながら、かつての島津家との戦いで両親をはじめとする多くの親族を喪い、落魄した山中家の若き当主・甚次郎。同年代の若衆の中でも浮いた存在である彼は、父祖が命を落とした古戦場に、饕餮と呼ばれる怪異が出没すると聞かされ、逆に興味を覚えます。
 国替えとなる先についていくことを認められず、憑かれたように父祖たちの活躍の痕跡を古戦場で求める甚次郎。彼は饕餮によって父祖の最後の戦いを見せられるのですが……

 これもある意味歴史・時代小説の一典型というべき、地方の小藩もの(?)といった趣きのある本作(舞台となるのが九州の月ヶ瀬藩なのは、このサブジャンルの名作である葉室麟『銀漢の賦』のオマージュでしょうか)。
 このサブジャンルの定番として描かれるように、地方に暮らす若者の鬱勃たる想いが中心となる本作ですが、それがモノノ怪に憑かれ、過去の記憶に惑溺する主人公の姿として描かれるのは、本作ならではでしょう。

 何が真であるのか、二転三転した末に甚次郎が掴んだ想いと、それの果てのモノノ怪との戦いの有様が不思議な感動を呼びます。


「ぬっぺらほふ」
 かつて母と姉が行方不明となり、今は父・忠義の叱咤激励の下、大奥に入るために日夜文武に励む楓。刻苦の末、若年寄・堀田掃部に気に入られ、書院番組に抜擢された忠義は、楓の大奥入りへの口利きの条件として、掃部からある怪異退治を命じられるのでした。
 本郷の加賀藩邸近くに現れるというぬっぺらほふ――見目よい男女が通ると置いてけと袖を引く、目鼻も口もない妖――をおびき寄せるため、父に協力する楓ですが……

 ラストを飾る本作に登場するのはぬっぺらほふ――作中でも言及されるようにのっぺらぼうの異称であり、同時に目鼻もない肉の塊であるぬっぺふほふを連想させる名のモノノ怪であります。(のっぺらぼうといえば――それは後で触れます)

 あまりに酸鼻な過去の一幕から一転、どこかコミカルさすら感じさせる姿で大奥入りを目指す楓を中心に展開していく本作ですが、そんな彼女の心の隙間とモノノ怪が出会った時に何が起こるか……
 胸が悪くなるような過去の事件の真相(これはこれで「らしい」という気もします)と、ある意味ストレートなモノノ怪の真と理を描きつつ、そこから楓との関係性で一捻り加える展開にも唸らされます。

 ちなみに「のっぺらぼう」といえば、アニメ『モノノ怪』のエピソードの一つ。「家」に押しつぶされ、自分というものを喪った女性を描いた物語でしたが、さてそれとよく似たタイトルの本作は――その結末には大いにギョッとさせられると同時に、なるほどと納得させられるのです。


 以上全六話――『モノノ怪』という作品の新たなエピソードとして違和感ない内容であると同時に、歴史・時代小説の文法で『モノノ怪』という作品を捉え直す試みとして、大いに楽しませていただきました。(ただ数カ所、用語の使い方の点でちょっと不思議な部分があるのですが、これは意図的なものなのでしょう、やはり)
 第一話で触れたように、薬売りを狂言回しとして展開したアニメ『モノノ怪』とは異なり、各話の主人公を中心に、その視点から展開する内容も、スピンオフとしてみれば、納得がいくものであります。

 また、これは以前作者の『くるすの残光 最後の審判』の文庫解説を書いた時に感じたことですが、作者の作品には、超越者の力による救済を以て事足れりとしないという印象があります。
 その点は、『モノノ怪』という作品の構造と――最終的には薬売りの退魔の剣によるものの、単なる力押しではモノノ怪は倒せず、人の心に関わるモノノ怪の真と理を解き明かす必要があることと、想像以上に相性が良かったと感じます。
(というのは牽強付会に過ぎるかもしれませんが……)

 願わくば、『モノノ怪』という作品世界に新たな風を吹き込んだこのスピンオフの続編も、ぜひ読みたいと思います。モノノ怪が人の世にある限り、薬売りはいつでも、どこにでも現れるのですから……


『モノノ怪 執』(仁木英之 角川文庫) Amazon

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2022.06.19

仁木英之『モノノ怪 執』(その二) 薬売り、史実と邂逅す!?

 仁木英之による『モノノ怪』のスピンオフ小説の紹介の第二回であります。今回は「亀姫」「玉藻前」「文車妖妃」の三話をご紹介いたします。

「亀姫」
 少年の頃から従ってきた主君・加藤嘉明を喪い、その子・明成に仕える堀主水。しかし明成は父と違い、都普請と同時に会津若松城の修築を大々的に進めるように厳命を下し、老臣たちと距離感が生まれることとなります。
 そんな中、藩家老で猪苗代城城主・堀辺主膳の子・石右衛門は、恋人で筆頭家老の娘・善を猪苗代城に棲む怪異・亀姫に仕立て上げ、明成を操ろうと企むのでした。

 その事実を知った主水は、覚悟を決めて会津若松城に乗り込むのですが……

 薬売り、史実と邂逅! と言いたくなってしまう本作。冒頭からしてしれっと薬売りが病の加藤嘉明の枕頭に侍っているのに驚かされますが、何よりも本作の中心となるのは、何と堀主水――歴史・時代小説ファンであればお馴染み、いわゆる会津騒動の中心人物として後世に名を残す実在の人物なのです。

 つまり本作はこの会津騒動の秘史、前日譚というべき物語――アニメ『モノノ怪』が歴史的事実と一定の距離を持った作品であったことは前回述べましたが、本作は第一話の方向性をさらに推し進め、史実の中に立つ薬売りの姿を描いたといえます。もちろんこれも、スピンオフならではの趣向ですが……
 物語の方は、ややクライマックスが慌ただしくなってしまった感はあるものの、美しいモノノ怪の形が印象に残る一編であります。
(ちなみに『怪 ayakashi』の「天守物語」では亀姫の姉が登場しているのもある意味因縁でしょうか)


「玉藻前」
 深川の数町離れた裏店長屋に住む仲の良い友達同士の小春と花。小春の父で浪人の藤川高春は、つくり花師のまとめ役、花の母・桂は、つくり花師――仕事と称し、度々桂のもとを訪れる高春に疑いの目を向ける母に命じられて、仕事の様子を見に行こうとする小春に対し、花はそれを止めようとするのでした。
 そんなある日、不気味な影に追われた小春の前に現れた薬売りは、彼女に二つの賽を渡して……

 妖の中でも大物中の大物である玉藻前=九尾の狐。ネームヴァリューの点では最大のこの存在と薬売りが対決する本作は、しかし意外にもその舞台を下町――人情時代劇の定番中の定番である深川に設定しています。
 しかしそこで展開されるのは、妻子ある浪人と道ならぬ関係となった寡婦、親友同志である二人それぞれの娘といった、人情ものというには少々湿っぽすぎる人間関係なのです。

 はたしてそこにいかにして九尾の狐が絡むのか――と思いきや、物語は終盤で大転回。ここで正体を現す九尾の狐の正体は、まさに本作ならではのものといえるでしょう。
 ここにキーアイテムとして登場してきた賽が絡んで展開する世界は、まさに『モノノ怪』ならではのカラフルで不条理な世界であり――そしてその中を切り開いていく少女たちの想いが印象に残ります。ぜひビジュアルで見てみたい物語であります。


「文車妖妃」
 幼い頃、祖父に連れられて講釈を聞いて以来、物語に取り憑かれた為永春水。以来、講釈師と作家の世界に飛び込んだ春水ですが、なかなか芸は上達せず、苛立ちは募るばかり。彼の近くには、書き損じを食らう小さな妖・文車妖妃が出没するようになります。
 そんなある日、かつての修行仲間であるお文から、柳亭種彦への恋文を託された春水。彼は恋文を渡さずに自分が返事を代筆するようになりますが、そのうちに種彦への恋慕に狂ったお文は……

 再び実在の人物と薬売りが邂逅することとなる本作は、一種の芸道ものもいえそうな作品。後に『春色梅児誉美』で人情本の第一人者と呼ばれることとなる為永春水の若き日を描いた物語であります。
 あらすじだけ見るとほとんど春水の伝記のようですが、己の才のなさにもがく彼のある意味分身というべき文車妖妃は、才も無いのに書くことに取りつかれた人間の執着を喰らいにくるという、何とも胸に刺さる妖です。

 しかし妖としては無害な文車妖妃が、いかにしてモノノ怪となるのか――その理は、まさに人の情とそれに憑かれた者の姿を浮き彫りにしたものであり、『モノノ怪』という作品世界を用いた芸道小説に相応しいものであると感じます。
 結末で語られる薬売りの、二重の意味で意外な言葉も必見です。


 次回でラストです。


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2022.06.18

仁木英之『モノノ怪 執』(その一) 時代小説の文法で描かれた『モノノ怪』

 十五周年ということで、にわかに慌ただしくなってきたアニメ『モノノ怪』周辺。その先陣を切る形となったのが、このスピンオフ小説『モノノ怪 執』であります。全六話が収録された本作を担当したのは、なんと歴史・時代小説でも活躍する仁木英之。はたして小説で描かれる『モノノ怪』の世界とは……

 2006年、オムニバス『怪 ayakashi』の一編「化猫」で初登場した薬売り。奇抜な化粧と衣装で身を飾ったこの美青年、モノノ怪の気配があるところに、場所・時代を問わずどこからともなく現れては、その形・真・理を見顕して退魔の剣でモノノ怪を斬る、奇妙なゴーストハンターであります。
 この薬売りのキャラクター、和紙のテクスチャを用いた美術、そして怪異の陰の人の心の綾を巧みに織り込んで二転三転するミステリアスな物語が受けて、2007年には『モノノ怪』として五つのエピソードが放送されることとなりました。

 以降、ファンの間では続編を求める声が根強くあったのですが――十五年間沈黙を守った末(その間、蜷川ヤエコによるアニメに忠実な漫画版がありましたが)、今年動きを見せ始めたのは冒頭に触れたとおりであります。
 そして本作は仁木英之による小説ですが、なるほど『僕僕先生』をはじめとする壮大なファンタジー、『くるすの残光』などの伝奇時代小説、人情ファンタジー『黄泉坂案内人』、さらには文アルのノベライズ等を手がけた作者は、うってつけかもしれません。

 私も『モノノ怪』ファン、仁木英之ファンとして大いに本作を楽しみにしていたのですが、その期待は裏切られることはありませんでした。以下、全六話を一つずつ紹介していきましょう。


「鎌鼬」
 新年、管狐の加護を得たという奥三河の村の庄屋のもとを訪れた三河万歳の門付け芸人・徳右衛門。同じく訪れていた熊野神人、傀儡師、角兵衛獅子、そして薬売りとともに宴席に招かれた徳右衛門ですが、自分たちが客間から出られなくなっていることに気付くのでした。
 そこに現れて昨年家宝の管が盗まれたと語ると、最も優れた芸を見せたものが座敷を出て富を得ることができると告げる屋敷の主。かくて、芸人たちの芸比べが始まることに……

 「御久」の文字が見えるような気がするこの第一話。中心となるのが閉鎖空間に閉じ込められた人間たちのエゴのぶつかり合いという、ある意味『モノノ怪』らしい展開が描かれることになりますが――そのぶつかり合いが異能の芸人たちの技比べの形で描かれるというのは、映像で見てみたいと感じます。

 しかし興味深いのは、舞台背景や徳右衛門たち芸人の技の内容や由来を、本作が丹念に史実・現実を踏まえて描いていることでしょうか。アニメの『モノノ怪』は、特に無国籍的とすらいえるようなその美術や設定において、意図的に時代考証との距離感を醸し出していた一方で、本作は、時代小説の文法で『モノノ怪』を書いたという印象があります。
(もっとも、続くエピソードを読んでみれば実は本作が一番アニメに近いという印象なのですが……)

 その意味では確かにスピンオフを感じさせる本作ですが、もう一つ、本作においては完全に徳右衛門視点で物語が進行し、薬売りは完全に傍観者であり、アニメで時折見られた人間味も極力抑え気味という印象があるのも、面白いところです。
 あの決め台詞が登場しないのには最初驚かされましたが、これもまた、スピンオフゆえというべきでしょう。もっとも、芸人たちの中にちゃっかりと混じっていたり、意外に(?)芸達者なところを見せたりと、やっぱり薬売りは薬売りだと思わされるのですが……

 結末とそこに至る過程に、どこかスッキリとしない、考える余地を残す内容といい、実に『モノノ怪』らしい第一話だったというべきでしょうか。


 第二話以降は次回・次々回に紹介いたします。


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2022.04.22

野田サトル『ゴールデンカムイ』第29巻 解かれたなぞ そして最終決戦開始!

 連載の方はいよいよ残すところあと一話、読者が全員固唾を呑んでいる『ゴールデンカムイ』。全話をネット上で一挙公開という思い切ったキャンペーンも話題ですが、それでも欲しい単行本の方は、本書を入れて残り三巻であります。ついに明かされるアイヌの黄金の行方とは、そして最終決戦の行方は……

 揃った刺青人皮から、ついに刺青の秘密を解き明かしたアシリパと鶴見。その一方で、杉元と菊田、そして尾形の弟・花沢勇作を巡る過去の因縁が語られ、思わぬ形で杉元と鶴見がすれ違っていたことが描かれました。
 そして過去も現在も、全ての因縁が集う黄金の在処こそは五稜郭だった――と判明したところで、物語の舞台は最後の地・函館に移ることになります。

 冒頭こそ焼きイカに舌鼓をうつヒマもありましたが(もしかしなくても最後のグルメか……)、時間的に余裕があるかと思いきや、既に第七師団は各地から五稜郭に集結を開始していたことを知った杉元たち。

 しかしまだ金塊の正確な隠し場所もわからず、しかも見つけ出しても分量的にすぐ運び出すのは不可能というほかありません。やむなく五稜郭に篭城を決意したものの、戦力的にさすがに無茶ではと思いきや、そこにソフィアとパルチザンの猛者たちがやってくる――という冒頭部分から、既に痺れる展開であります。
(そして同時に尾形と頭巾ちゃんも同時に五稜郭に向かっているのもまた……)

 そんな開戦目前でも、なおも一行は金塊を探し続け、ついに厳重に梱包された品物をアシリパは見つけるのですが、その正体はなんと――なるほど、こう来たか! と唸らされるものでありました。

 確かに白石たちがガクッとくるのもわかるのですが、しかし戦わずしてアイヌが自分たちの文化を守る手段として、これ以上のものはないと感じます。そして当時の状況からして、決してあり得ないものではないというのがまた心憎い。
 そしてまた、鶴見が呪いとして放った言葉を、アシリパが自分たちへの救いとして受け止め直すのもまた、グッとくるところであります。
(もちろん、実際にはそうなってはいないという現実はあるのですが、大事なのはこの物語の時点で、物語の中で成立し得る希望であったということでしょう)


 と、一気に大団円ムードが高まったところで、いきなりそれをぶち壊しにする砲弾の雨。なんと駆逐艦まで持ち出してきた第七師団の攻撃開始で、否応なしに最終決戦が始まることとなります。
 パルチザンを加えても圧倒的な戦力差がある中で、いかにして杉元は、いや土方は持ちこたえようとするのか? ここで永倉が、そして門倉が、いかにもらしいあるいはらしくない動きでそれぞれ活躍するのもまた、グッと決戦ムードを感じさせるところです。
(それにしても永倉、史実との絡みでここで早々に脱落するかと思いきや……)

 そしてその一方で、五稜郭に隠されたものに、いわばもう一段奥があることが明かされることになります。そのきっかけも実にイイのですが、ここで土方の回想から――全土方ファンの脳に刻み込まれるパワーワード「爽やかニシパ」とともに――彼の真意が明かされるのも、これまたグッときます。
 初登場時はもうちょっと裏がありそうなキャラクターに感じられたものの、しかしやっぱり爽やかニシパは義の人だった! というのは、やはりファンには嬉しいものであります。


 かくてついに最初の目的をはたした杉元とアシリパ。しかし純粋に喜ぶ杉元に対して、アシリパの目に浮かぶものは、喜びだけのようには見えません。そしてそんな人々の想いを呑みこむように、ついに描き下ろしで真の目的(用途?)を明らかにした鶴見の号令一下、第七師団の突撃が始まることになります。

 敵も味方もあっけなく斃れていく中も降り注ぐ艦砲射撃。対して函館山に隠された土方の奥の手とは――その意外かつ痛快な正体が明らかになったところで、この巻は幕となります。
 残すところはわずか二巻、最終決戦はここからが本番であります。


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