2024.03.01

『戦国妖狐』 第8話「魔剣士」

 旅の途中、闇が守る村を訪れた一行。しかしその闇が生贄を求めていることに反発して飛び出した真介は、闇を倒した烈深と出くわす。灼岩の仇である烈深を前に激高し、戦いを挑む真介だが、実力差は歴然で叩きのめされてしまう。そんな中、真介の精神に魔剣・荒吹が語りかけてくるが……

 前話のあまりに衝撃的な結末(原作を読んだ時はあまりに衝撃的だったので、その後のこの辺りのエピソードのことがほとんど頭から抜け落ちかかっていました……)を受けて、物語やキャラクターの雰囲気も変わったような気がする本作。その中でも最も変わったのが真介であるのはいうまでもありません。

 そして今回の前半は、その真介がメイン。別人のように据わった目と濃い隈で、ひと目でヤバい精神状態にあることがわかる真介ですが、さらにその状態で想像会話によって魔剣とブツブツやり取りしているのですから、なおさらヤバさは際立ちます。
 そんな真介は村を守る代わりに生贄を取る闇・かごもりを斬りに行くのですが――それを止めようとするたまのロジック(この辺り、普段の理想論からいきなり闇側に傾いた感あり)に噛み付いたかと思えば、彼女の幻術を一喝で破ったりと、かなりの変わりようであります。とはいえ、精神状況がシビアになれば強くなれるのであれば苦労はないわけで、迅火たちを追ってきた烈深には手も足も出ず叩きのめされてしまうのですが――しかし流れ的にはこれこそ覚醒のチャンスであります。

 はたしてダウンしたところに魔剣・荒吹の精神が現れ、「力が欲し(略)」と語りかけてくるのですが――ここであっさりとその言葉を受け入れたりしないのがまた本作らしいというか作者らしいところ。そもそも、剣の力を我が物にするために、剣の仮想人格と想像会話するというやり方自体が実に「らしい」。ここでの真介のパワーアップは、その独特のロジックに則って、何とも不思議な説得力があります。
 といってもまだまだ烈深の方が技というか文字通り手数では上。あっさり逆転されたかと思いきや、ここでまさかの男の解除不可武装・巨武志が炸裂! 迅火ではなく真介の方が受け継いでいた(?)のは意外な気もする――というのはさておき、さらにかごもりの思わぬ追い打ちで烈深はダウン。無抵抗な相手に刃を向ける真介ですが――ここでとどめを刺すか(灼岩たちの幻が見えたとはいえ)一瞬ためらってしまうのは、まだ彼が彼である証拠なのでしょう。
 そして思わぬ水入りが入り、それぞれ真の名を名乗り合って別れる真介と烈深。これは互いがそれぞれの立場や地位抜きでやり合うべき相手と認めたからでしょうか、悪因縁ではありますがこれも一つのライバル関係ではあるのでしょう。

 と、前半だけでかなり濃密な回でしたが、後半は打って変わって(?)味方と名乗る美女・山の神が登場。たまが対神雲対策を立てはしたものの、実質無策に近かったところに文字通り救いの神が現れたわけですが――しかし彼女が語る前に、当の神雲たちが現れ、山の神が残した二人の巨大な天狗は、神雲の連れた少年・千夜の奇怪な「腕」によってあっさりと倒され――というところで次回に続きます。

 にしてもたまよ、妖精眼のことを知らなかったのか――『散人左道』ファンであれば常識なのに!(無茶言うな)


『戦国妖狐 世直し姉弟編』上巻(フリュー Blu-rayソフト) Amazon

関連サイト
公式サイト

関連記事
『戦国妖狐』 第1話「我ら乱世を憂う者」
『戦国妖狐』 第2話「灼岩」
『戦国妖狐』 第3話「永禄七年」
『戦国妖狐』 第4話「迅火と人間」
『戦国妖狐』 第5話「氷岩」
『戦国妖狐』 第6話「ふこう」
『戦国妖狐』 第7話「火岩と芍薬」

|

2024.02.26

『明治撃剣 1874』 第伍話「死闘」

 ついに始まった撃剱会本選。急遽真剣の使用が許可された中、第一試合では雷岩梶五郎と対峙した静馬が何とか勝利。続いて、中澤琴も追い詰められた状況から二刀を用いて勝利する。第三試合以降は雨で翌日に順延されるが、その晩、狂死郎は毒を盛られることに……

 というわけでいよいよ始まった大日本撃剱会の本選トーナメント。会場はド派手な四神の像に三、四階建ての客席、試合開始前には大太鼓が打ち鳴らされ、公然と勝敗を賭けた賭博が――と派手にやりたい放題なのにご満悦の守屋組長ですが、撃剱会の運営は狂死郎に任されていたということは、これは彼のセンスなのでしょうか。それはさておき、今回展開するのは、前回選出された八人の選手の激突ですが、しかしその裏側では様々な事態が動いていることはいうまでもありません。

 第一試合は静馬vs雷岩梶五郎――殺人力士の異名を持つ梶五郎とは、前回ちょっとした因縁があった静馬ですが力はともかく、技の面では勝るとも劣りません。しかし木刀同士の勝負では、すぐに得物が折れてしまい――というところで、いきなり真剣の使用もOKというルール変更。そういうのはアンダーグラウンドで行うものでは、と心配になりますが、御前のバックがあるからということか、組長は気にも留めません。
 そんなわけでこれまで以上に命懸けになった勝負ですが、静馬は梶五郎の攻撃をもろにくらいながらも、技もへったくれもない馬鹿力で相手をブン投げて逆転勝利。正直なところ、もう少し技でも使って欲しかったところではあります。

 第二試合は中澤琴vsブレイズ・ミラー。イギリス人のわりには(?)十文字槍を用いるミラーですが、相変わらずの時間を気にしながらの猛攻に追い詰められた琴は、これを二刀を使って封じ、交差しながらの一閃で勝利。しかし忘れかけていましたが、元々静馬たちは二刀を使う辻斬りを追いかけて撃剱会に参加した身だったわけで、これで琴も容疑者の仲間入りです。

 そして第三試合――というところで雨が降り、文字通りの水入り。しかしその晩、せんりのインタビューを受けていた狂死郎が雛鶴に毒殺されかけるという事件が発生。客人よりも先に盃に口を付けるという出来の悪い三下のおかげで助かったようなものですが、どれだけ強力な毒だったのか、狂死郎は一口飲んだだけで瀕死の状態に……
 それでも翌日の試合は進行し、第三試合は藤田五郎vs宝井幸太郎。鎖鎌を使う宝井に刀を奪われて追い詰められる藤田ですが、眼鏡を取ってやたら目つきの悪くなった彼は行司の軍配を奪って攻撃を封じ、そこからさらに行司の脇差で一撃――行司が本身を差していたばかりに、ついに大会に死者が出るのでした。

 そしてついに第四試合――ヨレヨレになりながらも何とか出場した狂死郎ですが、ここで対戦相手の吉川冬吉の意外な真実が判明。実は彼の正体は、清水次郎長一家の小政――うかつにも見落としていましたが、吉川冬吉は小政の本名、そして史実での小政も、居合の達人と言われております。時々思わぬところで面白い史実を拾ってくる本作ですが、なるほど、前回ちょっとした大物扱いされていたのはこのためか、と納得であります。
 さて、体調不良に加えて相手も悪いと窮地の狂死郎でしたが、しかしこちらも二刀を用いて相手の居合いを封じるという戦法で辛勝するのでした。
(ちなみに死因はともかく、死んだ年も史実通りであります)

 しかし狂死郎の受難は続きます。翌日、二人がかりで狂死郎を襲う牧野巡査と小山内。やはり牧野が御前の暗殺者・鴉――なのかはまだわかりませんが、そうであるとすればそのダシにされてしまった小山内は、狂死郎の凶刃を受けることに……
 そしてその頃、琴との勝負で実にみっともなくKOされた静馬。梶五郎戦のしょっぱさに続き、主人公にあるまじき展開の連続に、ただでさえ物語の核心から遠い位置にいる彼の今後が不安であります。おそらく元婚約者はあんなに裏で大暴れしているというのに……


 それにしても明治時代の後ろ暗いところのある商人は、何故ガトリング砲が好きなのか……


関連サイト
公式サイト

関連記事
『明治撃剣 1874』 第壱話「東京」
『明治撃剣 1874』 第弐話「渡世」
『明治撃剣 1874』 第参話「狩人」
『明治撃剣 1874』 第肆話「撃剱」

|

2024.02.23

『戦国妖狐』 第7話「火岩と芍薬」

 岩の闇に歓待される最中、里にやって来た旅の妊婦を里で休ませるたま一行。しかし妊婦が産気づいた矢先に、迅火抹殺の命を受けた道練と烈深が現れる。激しく男と男の拳を交わす迅火と道練。しかしその間に烈深が放った巨岩が、妊婦たちのいる小屋目がけて転がっていくのを見た灼岩は……

 原作読者にはついに来てしまったか、という他ない今回。OPなしでいきなり始まるところからも、ただならぬ雰囲気が伝わります。

 といっても前半はいつもどおりのゆるいムード主体の展開。強くなりたいと夜の素振りを欠かさない真介と、そこに現れた灼岩の、ラブコメ感満載のやり取りにはニヤニヤさせられます(ここで芍薬と火岩と、文字通りの一人芝居を見せる黒沢ともよの演技が楽しい)。あまりの小っ恥ずかしさに、その場に出ていかずにツッコミを入れるたまですが、迅火もたまの隣にいるために闇になりたがっている時点で大概だと思います。
(それにしても真介に剣を教えたのが、武士の幽霊だったのにはびっくり。語られなかったものの、原作でもそのつもりだったとか)

 しかしそんな甘酸っぱい展開の後、妊婦に名前を問われて、人としての名である芍薬ではなく、灼岩と名乗ってしまう彼女が切ないのですが――それを受けて妊婦が女の子なら芍薬と名付けると語る(そして迅火が男の子だったら火岩を勧める)のにグッと来ます。しかしあれもこれも、皆ある意味前フリだったとは!

 一方中盤では、前回酒を酌み交わした道錬が刺客として迅火の前に登場することになります。とにかく強い相手と戦うのが生きがいという道錬は、技はボクシング――いや撲神ながら、相手の攻撃を全て受けとめた上で勝つというプロレスタイル。自分は傷付かずに圧倒的な火力で瞬殺する迅火とは正反対の相手ですが、そんな道錬と真正面から打ち合うバトルはなかなか気合の入った作画で、きっちりバトルものとして盛り上がります。
 戦っているうちに変な脳内麻薬が出たのか、アヒャヒャヒャと笑いながら殴り合う迅火は確かに怖えですが……

 さて、前半でラブコメ、中盤でバトルと、シチュエーションとテンションを変えながら展開してきたこのエピソードですが、ラストに待つのは悲劇であります。それも極めつけの。
 道錬と迅火の熱戦を尻目に、妊婦が今まさに赤子を産もうとしている小屋めがけて、大岩を転がす烈深。混乱の中の道錬パンチで迅火はダウン、たまは妊婦の世話、真介には打つ手なし――という場で、立ち上がるのは灼岩。その力で大岩を受け止める灼岩ですが、しかしその時……

 もうこの先の展開は原作で何度も読み返して(そしてそのたびにボロボロと泣かされて)いるのですが、ここに動きと声がついた時の破壊力たるや凄まじい。
「だ…大丈夫す バケモンすから」
「安心して生まれてくるす 大丈夫 守るから」
「ようこそ世界へ しっかりがんばるすよ」
と泣かせる台詞の連続(ここで原作にない「幸せ…わたす幸せでした」と言わせるのもニクい)と来て、原作では(間違いなくあえて)描かれなかった赤子の泣き声を響かせる演出は、ある意味どストレートながら、だからこそ胸に刺さりまくります。そしてここでとどめに赤子の名が――とくれば、もうこちらも迅火の如く「おおおお」と呻くしかないのです。

 誰かをアレして泣かせるというのは、作劇としてはあまり褒められたものではないのかもしれません。しかしここでは、おそらくは本当の喪失を知らなかった迅火と真介が、それを真正面から突きつけられる――そしてそれとほとんど同時に、命の誕生を目の当たりにするという点で、すなわち生と死の在り方を目の当たりにしたという点で、大きな意味があったと感じます。
(そんな姿を、おそらくはこれまで無数の生と死を見てきたであろうたまが見守るのもいい)

 人と闇という軸に加えて、生と死という軸が描かれた今回。そのまま今回限定のEDに雪崩込むのも、大きな余韻を残すエピソードでした。


『戦国妖狐 世直し姉弟編』上巻(フリュー Blu-rayソフト) Amazon


関連サイト
公式サイト

関連記事
『戦国妖狐』 第1話「我ら乱世を憂う者」
『戦国妖狐』 第2話「灼岩」
『戦国妖狐』 第3話「永禄七年」
『戦国妖狐』 第4話「迅火と人間」
『戦国妖狐』 第5話「氷岩」
『戦国妖狐』 第6話「ふこう」

|

2024.02.22

椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第6巻 感動、親子の再会 そして理玖の生きる目的

 独自路線を行きつつも、これが見たかった! と言いたくなるような展開が続くコミカライズ版『半妖の夜叉姫』、前巻は親世代復活か!? という引きで終わりましたが、まだまだ意外な展開は続きます。是露を追い、九州に旅立つこととなった夜叉姫一行。その前に、新たな半妖の娘が……

 京で是露の襲撃を受けて辛うじて逃れた中、過去に何が起きたのか、そして自分たちの親が何故姿を消したのか知ったとわたち。さらに「朔」の影響で妖力を失い、苦戦しながらも、彼女たちは是露の配下・魔夜中を打ち破ることに成功します。
 神としての姿を取り戻した魔夜中の加護により力を得たとわたちは、その勢いで是露に挑むものの、流石に相手は大妖――窮地に陥ったその時、犬夜叉・かごめ・りんが現れて……

 と、猛烈に盛り上がったところで終わった前巻でしたが、あくまでもここに現れた犬夜叉たちはかりそめの姿。実際に戦う力はなかったはずなのですが――しかしそこで是露の身に意外な異変が起きることになります。
 しかしそれ以上にこの場面で印象に残るのは、りんの姿でしょう。冷静に考えればここで登場しても戦力にはならないりんですが――しかし彼女が語るとわたちの強さの源は、親と引き離されても決してとわたちは孤独ではなかったことを語るものであり、戦う力を持たない彼女だからこその言葉に大きく頷くしかありません。

 そしてそこに真打ち・殺生丸が登場、ついに是露もその場を逃れるのですが――ここから、この巻のクライマックスの一つというべき場面が描かれることになります。そう、夜叉姫たちとその親たちの束の間の再会、そして別れが……
 ここは一つ一つのやりとりが泣かせの連続なのですが――ここでもその場を攫っていくのが殺生丸。前巻で仄めかされた、殺生丸が置かれたある状況――それを踏まえながらも描かれる、不器用で無愛想な彼なりの妻と子への愛の姿は、もうエモいとかいうレベルではないのであります。


 さて、ここまでがこの巻の三割程度、ここからは新展開となります。肥前国にあるという麒麟丸の根城へと旅することになった三人の夜叉姫と理玖・りおん。堺から西に海路で向かおうとする一行ですが、しかし海に強力な妖怪が出現するようになったため、船が出なくなってしまったというのです。
 そこで海専門の退治屋の船に同乗することになった一行(ここで登場する屍屋の支店のくだりが実に楽しい。足下兄弟か!?)ですが、さてここで登場する海の退治屋を率いるのは――なんと紫織!?

 この紫織、アニメでは第20話に登場しましたが、元々は『犬夜叉』のキャラクター。百鬼蝙蝠の父と人間の母の間に生まれた半妖であり、非常に強力な結界を張る力を持つ少女であります。アニメでは、身寄りのない半妖の子供を匿う隠れ里を作り、子供の頃のせつなが世話になった人物として描かれました。

 それが何故ここで大男を顎で使う海の女に――という気もしますが、しかし元々地黒だった彼女のビジュアルは、妙に似合うのもまた事実であります。
 そして何よりも、半妖の娘としてはとわたちの先輩に当たる彼女が、一種のロールモデルとして活躍するのも、大いに納得できるところでしょう。

 さて、彼女とその一党、そしてとわたち一行の前に現れたのは、ワダツミズチなる女妖。海のメデューサというべきそのビジュアルと能力は、アニメの第26話に登場した海蛇女(元々の名前は「わたつみのたまひ」)がベースでしょう。
 アニメでは悲しい過去の妖怪でしたが、こちらでは特にそういうところもない敵のワダツミズチ。しかしとわたちが総力戦を強いられることになったのですから、かなりの実力者であったことは間違いありません。

 とはいえ、このエピソードで中心となったのは、理玖という印象があります。アニメでは結構立ち位置が曖昧だった理玖ですが、こちらでは早々に殺生丸の協力者として行動、心ならずとはいえ、麒麟丸や是露とは早々に敵対する立場となります。
 しかしそれだけに今の彼の立場は微妙なところにあります。もはや行く先もなく、為すべきこともない理玖。元々、麒麟丸によって作られた存在である彼は、己には心すらないと思い定めていたのですが……

 それがそうではなかったと戦いの中で気付き、そして新たな自分の生の目的を定める姿が、実にいい。そしてそれを形にしてみれば――これにもなるほど、と納得させられるのです。

 そして新たな味方を加えて、いよいよ麒麟丸の城に迫るとわたち。はたしてその前に待つのは――いよいよクライマックスは近いのでしょう。


『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第6巻(椎名高志&高橋留美子ほか 小学館少年サンデーコミックス) Amazon

関連記事
椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第1巻 これぞコミカライズのお手本、椎名版夜叉姫見参!
椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第2巻 共闘新旧世代 そして親世代の抱える想い

椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第3巻 夢の胡蝶 その真実
椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第4巻 史実とのリンク? 思いもよらぬ大物ゲスト登場!?
椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第5巻

|

2024.02.20

『明治撃剣 1874』 第肆話「撃剱」

 町で起きた辻斬りの犠牲者が大日本撃剱会の出場者であったことから、捜査のために身分を隠し、出場することになった静馬。そこには数々の強豪と共に、あの修羅神狂死郎も参加していた。一方、謎の人物・御前が行う阿片の密貿易を巡り、狂死郎が世話になっている守屋組長らの思惑が複雑に絡み……

 二回も休みが入ったためもあってか、まだ第四回だったのか!? という気がする本作ですが、今回はタイトルというかサブタイトルの通りに激剣会が登場。それにふさわしくというべきか様々な剣士たちが登場し、その一方で物語の裏側の動きも活発化して一気に物語は複雑になってきた印象があります。

 そしてその縦糸になるのはいうまでもなく撃剣会であります。言ってみれば剣術試合を興行化した撃剣会ですが、本作においては、謎の人物・御前とも深いつながりのある守屋組が取り仕切る興行、そしてそれを任されたのが、組長の龍三と杯を交わした狂死郎で――というわけで、色々と裏があるとしか思えません。しかしそれはさておいたとしても、多額の賞金に釣られて腕自慢たちが集まってくる、というのは定番ながらやはり盛り上がるパターンであります。

 もちろん本来であればこうしたグレーゾーンのイベントに巡査である静馬が関わるはずもありませんが、彼が取り扱うことになった辻斬り事件の被害者が出場予定者、そして目撃された犯人が二刀流ということで、これも剣客ならば撃剣会絡みの可能性がある――というわけで捜査のため、偽名で彼も出場することになります。
 さらに参加者の中には何故か藤田五郎がいるのですが(ここで静馬が何となく見覚えがあるような顔をしながら名前に覚えがなかったのは、藤田名乗りは斗南藩移住の時なので平仄はあっています)、さらに嬉しいのは中澤琴の登場です。
 女性ながら男装して新徴組に参加したという、嘘のような実在の剣士である中澤琴。さらに自分より強い者と結婚すると決めていた(その結果生涯独身だった)とまで来るとキャラが立ちすぎているためか、意外とフィクションに登場することは少なかった彼女が登場するだけでも本作の価値はある、というのはもちろん言い過ぎですが……

 さらに土俵で相手を殺して追放された殺人力士・雷岩梶五郎、紳士然とした態度ながら自分のペースのためには残虐行為も厭わないイギリス人ブレイズ・ミラー、やたらと運が良い短躯のおっさん・宝井幸太郎、賭場でのいざこざで刀を交えた狂死郎をも驚かせた居合使い・吉川冬吉――といずれも一癖も二癖もある面々に、静馬・藤田・琴、そして狂死郎も加わった八人でトーナメントが! と、いきなりメジャーな展開になるのには驚きましたが、ストーリーが比較的地味だっただけに、歓迎したいと思います。

 さて、このトーナメント自体は次回開幕ですが、それと並行してきな臭さを見せているのが、第一話から登場している謎の金髪侍・御前サイドの動きであります。新政府打倒のために色々と企んでいるらしいこの御前、その一環として阿片の密貿易を行っていますが、一味の守屋組長と商人の藤島が、阿片を横流しして私腹を肥やそうとしているなど、一枚岩ではない様子。
 さらにそこに目をつけた狂死郎は、配下たちを使ってこの横流しを妨害(しかしそれを阻んだ狐面の用心棒も、もしや……)。その目的はまだ不明ですが、御前の側は狂死郎、いやその前身の庄内藩士・池上宗一郎の存在を知り、自分の敵であると認識しています。どうやら幕末にはドイツと手を結んで薩長に対抗しようとしていたらしい狂死郎が、何故御前を狙うのか――おそらくはその辺りに本作の物語の核があるのでしょう。

 そして組長への牽制と敵の排除、一挙両得とばかりに、雛鶴が狂死郎抹殺を狙う一方で、御前は「鴉」なる者を呼んだようですが――その直後に登場した巡査の牧野がいかにも不審な動きを見せたと思えば、金欲しさにその動きに巻き込まれそうなのが小山内巡査――と、あちこちで動きが出てきました。
 さらにここに辻斬り事件がどう絡むのか、様々な勢力と登場人物が現れ、事態が複雑化していくのは伝奇の華、次回以降が楽しみです。
(これでキャラデザがもう少しわかりやすいと良いのですが――メインどころ以外はかなり地味なのでキャラを混同しやすい)


関連サイト
公式サイト

関連記事
『明治撃剣 1874』 第壱話「東京」
『明治撃剣 1874』 第弐話「渡世」
『明治撃剣 1874』 第参話「狩人」

|

2024.02.16

『戦国妖狐』 第6話「ふこう」

 火岩の故郷に向かう途中、酒を醸す闇・猩々と出会ったたまたちは、猩々たちの友だという四獣将・道錬と酒を酌み交わす。その後、結界に包まれた村に行き当たった一行の内、一人内部に潜入したたまは、「ふこう」と名乗る闇と出会う。一方、外に残った迅火たちに四獣将・烈深が襲いかかる……

 前回ラストで神雲対策を決めた一方で、灼岩の希望で、火岩の故郷に向かうことになった一行――というわけで今回は比較的独立したエピソード集的な内容。原作では「最強剣豪伝説」「ふこう」「猩々の酒」の三話分が一回にまとめられています。
 といっても最初のエピソードは冒頭部分、真介が雷蔵から魔剣・荒吹を託された部分のみが語られて、その後の刀使いの闇・八本松剣鬼と真介の決闘はバッサリカット。八本松、何気に最後の最後まで何度も登場する面白キャラですし、真介が奮闘するエピソードではありましたが、本当に単発感の高い話なのでこれはまあ、仕方ないでしょう。

 そして前半に登場するのは、原作と順番が入れ替わって四獣将・道錬。断怪衆四獣将の一人ながら、闇である猩々たちと交誼を結び、それどころか断怪衆的にはお尋ね者である迅火たちと平然と酒を酌み交わす、色々とスケールの大きな好漢であります。
 ここで冷静に考えれば、印河と央鳳(灼岩を追っていた二人組の坊さん)以外の断怪衆と迅火たちが語り合うのはここが初めてなわけで、一体君たちは何をやっているんだ――という気もしますが(原作に登場したまともな断怪衆の坊さんもカットされたので、そもそも断怪衆が何を考えているかわからない)、たまがかつてそうであったように、人間と闇はわかり合えるものであるということを、闇に対する最強の戦力自身が示すというのは、やはりある意味本作を象徴しているといえるのでしょう。

 そして後半は今回のサブタイトルとなっている闇・ふこうが登場するエピソード。笑顔の絵文字のような顔に黒い軟体の体という異様な姿のふこうですが、その態度は友好的で、結界の村を、そして結界の中に入ってきたたまをも守ると語る、奇妙な存在であります。その彼(?)が村を守った結果はどうなったか――その皮肉すぎる結末も含めて、これも人間と闇の関わり方の一つではあるでしょう。
 そしてここでたまが、迅火の父・山戸源蔵との関わりを語ることでまた別の関わり方を、それと同時に人間と闇の決定的な違いを語るのも印象に残ります(Aパートで、たまが酒を教わったのは源蔵から、というオリジナル描写があるのも面白い)。

 その一方で、これまた今回初登場の四獣将・烈深は――今回のところは唐突に妙なのが出てきたな的な印象で、人間状態の迅火と互角なのもちょっと困ったところ。それでもここで烈深との初対決が描かれなかったら、ふこうのエピソード自体カットされていたような気もしますが……
(そして道錬と順番が入れ替わったのは、ここでバトルが入るからなのだろうな、と想像)

 何はともあれ、道錬も烈深も出番はこの後が本番。Cパートで辿り着いた火岩の故郷では、とんでもないサイズの長老が現れましたが、さて――このペースだと次回、あのシーンが描かれるかと思うと、今から胸がズンと重く……


『戦国妖狐 世直し姉弟編』上巻(フリュー Blu-rayソフト) Amazon


関連サイト
公式サイト

関連記事
『戦国妖狐』 第1話「我ら乱世を憂う者」
『戦国妖狐』 第2話「灼岩」
『戦国妖狐』 第3話「永禄七年」
『戦国妖狐』 第4話「迅火と人間」
『戦国妖狐』 第5話「氷岩」

|

2024.02.08

『戦国妖狐』 第5話「氷岩」

 迅火に倒された雷蔵を匿い、剣を教わる真介。しかしその雷蔵の妹・氷乃が次なる刺客・断怪衆四獣将・氷岩として現れる。自分と融合した火岩と同族と融合した氷乃を止めようとする灼岩だが、その前に龍の匂いをまとった男・神雲と子供が現れる。龍はダメだとその場から逃げ出す迅火たちだが……

 いよいよ断怪衆との戦いが本格化する今回ですが、前回迅火を追い詰めた雷蔵の妹にして四獣将(退魔僧集団のネーミングじゃない……)の一番手・氷岩との対決がメイン――と思いきや、灼岩と一体化していた闇・火岩の登場、そして迅火もビビる最強の敵・神雲と得体の知れない少年・千夜の出現と、結構重要な展開が目白押しであります。

 この先の展開で大きくクローズアップされる神雲と千夜はそちらに譲るとして、注目は灼岩で、迅火に替わって参戦というのはいかにもバトルものっぽくていい――というのはさておき、実は「灼岩」は人間の芍薬と闇の火岩が融合した存在だった、ということが今回判明。今まではいわば芍薬のパーソナリティが表に出ていたのが、氷乃いや氷岩と融合した蒼岩(何だかややこしい)を前に、火岩が前面に出ることになります。
 これまで「◯◯す」と気の抜けたような喋り方だったのから一転、シリアス(?)で力の入った喋り方となるのには、別キャストなのかと思わず確認してしまったほどの見事な演じ分けでしたが、それだけ異なる存在が同じ体に共存しているというのは、ある意味、本作で描かれる人間と闇の共存の一つの在り方と言ってもよいのかもしれません(もっとも、最初は暴走して大変なことになりましたが……)。

 そしてこれと対照的な存在が氷乃であることは言うまでもありません。自ら望んで闇をその身に取り込んだものの、決してそれは闇と共存するのではなく、相手の意識は喰らい尽くして力のみを自分のものとする――なるほど、霊力改造人間というものがそういう存在であれば、迅火でなくとも顔をしかめたくなるような邪法というべきでしょう(というより、灼岩はかなり規格外の存在なのか?)。そんな彼女が自らを氷乃でも蒼岩でもない氷岩と名乗るのは、芍薬と火岩が二魂一身の灼岩であるのとは、似て非なるものであることは言うまでもありません。
 物悲しいのは、居場所を失い親に売られて改造された灼岩と、自ら望んだとはいえ裏の世界から表舞台に立つ(兄を立たせる)ために改造された氷岩には、どこか共通項があることでしょう。それでも、ありのままの自分を受け入れてくれる者がいた灼岩と、自分が支えようとしていた兄の心を理解できずにいた氷岩は、決定的に道を違えることになったわけですが――人間でも闇でもない存在になったはずが、闇に飲まれ、人間になりたいと訴えながら散った氷岩の姿は、あまりに悲しいものがあります。


 さて、そんなドラマが展開する一方で、迅火は思い切り食われていた、というか締まらない印象。氷岩を殺すと見栄を切りながら(まあ、殺す殺すと宣言して実際に殺す奴はあまりいない)灼岩に出番を譲ったのはともかく、神雲を前に尻尾を巻いて逃走、その後もたまに発破をかけられるまで戦意喪失と、普段の中二病的態度が態度だけに、何とも残念としか言いようがありません。
 まあ今回は負けイベントなので後は捲土重来ということで、たまが勝利へのステップを宣言して終わるわけですが――「正義を騙り 対話を拒み 力を行使する あの思い上がったクソガキ」って、君たちがいうか……
(というか迅火はまだ悩める部分が描かれているからよいとして、たまはここまでアレなキャラだったか )


『戦国妖狐 世直し姉弟編』上巻(フリュー Blu-rayソフト) Amazon


関連サイト
公式サイト

関連記事
『戦国妖狐』 第1話「我ら乱世を憂う者」
『戦国妖狐』 第2話「灼岩」
『戦国妖狐』 第3話「永禄七年」
『戦国妖狐』 第4話「迅火と人間」

|

2024.02.06

『明治撃剣 1874』 第参話「狩人」

 行方不明者の服を売る古着屋を捕らえたことから、数多くの人間が殺害されていたことを知った静馬。背後に狩人倶楽部なる団体があることを知り、古着屋が出入りしていた商人・蔵屋に調査に向かった静馬だが、主の善兵衛に追い出される。さらに善兵衛は木戸孝允に圧力をかけ、捜査を中止させるが……

 何故か放送が一週空いての今回は、いきなりの人間狩りネタ。これまでそれなりに史実を踏まえた物語が描かれてきましたが、突然、政界にも顔が利き、警察の捜査も手の及ばない黒幕が――という展開には、どういう顔をしたらよいのかわからなくなります。
 この人間狩りは、戊辰戦争の中で人を狩り、殺すことに味をしめた元武家、今は大商人である蔵屋善兵衛が、配下を使って人間を拐かし、狩人倶楽部なる団体に人を集めて、密かに行っていたというもの。密かにといっても、そこら辺で攫ってくるのですぐに騒ぎになるし、殺された人間から剥ぎ取った血染めの服を、雑に古着屋に卸しているのですから、見つからない方が不思議であります。
(ちなみにこの善兵衛、絵に描いたような変態なのですが、料亭で吸い物の味が薄いと、自分の指を切って出した血で味付けするシーンは頭がおかしくて良かったです)

 木戸孝允でなくとも呆れそうな犯行ですが、その木戸も圧力をかけられ(狩人倶楽部の参加者に長州出身者が何人も含まれていたとはいえ)、警察の捜査を中止してしまうのは、まあいくらでも後ろ暗いところのありそうな桂小五郎だし――というのは冗談としても、病院に担ぎ込まれた古着屋を堂々と襲って殺した上、巡査にまで深手を負わせるほどの無茶をするとは、何とも大味な展開に天を仰ぎたくなります。
(一応、江藤新平の乱の対応に大久保利通が忙殺されて、こちらにまで目が向けられなかった、という史実を踏まえたエクスキューズはあるのですが……)
 こういう時に腹芸でごまかしてなんとかするのが川路のキャラかと思いきや意外と役に立たず、大久保にチクって木戸を抑えるというあまりパッとしないやり方で対応するのも残念なところではありました(もっともラストでは――こちらは後述します)。そんな中、静馬は「ならんものはならん!」と会津魂全開ではみ出し警官ぶりを発揮しますが、基本的に能力値が常人レベルなので善兵衛に鉄拳制裁したくらいしか見せ場がないのが何とも……


 しかしその中で、思わぬドラマが描かれたのが、謎の御前の下で暗躍する謎の芸者・雛鶴であります。これまで大久保利通襲撃や江藤新平の下野等で暗躍してきた彼女は、実は善兵衛に深い恨みを持つ者だった――というわけで、ある意味私怨ながら、今回ばかりは悪を討つ立場にあったといえます(尤も、これまでの行動も彼女なりに悪を討っていたのだと思いますが)。
 そしてその彼女を姉のように慕う小梅は、雛鶴を助けようとするあまり、単身善兵衛を襲撃して失敗、人間狩りの標的に――というところで静馬と接点が出来たわけですが、彼が探す澄江と同じ折り方のウサギを折ることが出来ることから、この先静馬のドラマにも関わるのでしょう(というか、しばらく彼女が澄江なのだと思っていました……)。

 また、ラストになって一人逃げ延びようとした蔵屋の番頭格をいきなり悪即何とかした新キャラが――と思えば、これが藤田五郎。「明治で警察が出てきたら藤田、そうでなければ川路と思え」という格言があるくらいですが(ありません)、やはり本作にも登場しました。ここでは川路の密命を受けて悪即何とかしているようですが、川路が表で動かなかったのも彼の存在があったからでしょうか。

 そしてもう一人、何となく物語の中で、元庄内藩士・池上宗一郎が正体らしいと語られた狂死郎。今回も守谷組長のために地味な仕事を派手にやり遂げていましたが、東北諸藩最強の軍事力を持ち、ほとんど最後まで新政府軍と互角に戦い抜いた(ある意味会津藩とは好一対である)庄内藩と絡んでいるとすれば、やはりこの先面白い存在になりそうです。


関連サイト
公式サイト

関連記事
『明治撃剣 1874』 第壱話「東京」

|

2024.02.02

『戦国妖狐』 第4話「迅火と人間」

 人間を喰らう闇の成敗に向かった迅火とたまの前に現れた闇喰い人・雷堂斬蔵。風を操る魔剣・荒吹を用いるだけでなく、卓越した剣技を持つ斬蔵に迅火は敗れるが、斬蔵は命を奪わず見逃す。しかし断怪衆から妹の命と引き替えに迅火の確実な抹殺を命じられた斬蔵は、再び果たし合いを挑むのだった。

 冒頭から突っ走ってきましたが、何だかんだでたま・迅火・真介・灼岩が四人一組で暮らすことになって、ちょっと落ち着いた感のある本作。今回冒頭では、顔見知りの闇の知らせで、村人に生贄を出させている闇のことをたまが知るわけですが、知らせに来た闇とのやり取りや、村人に対して見返りに他者に善行を施すよう促す姿など、前回までの殴り込みはあくまでも例外で、たま(と迅火)はこうして地道にやってきたのだなあ、と感じさせられるところです。――いや、文句を言う子供も人を食う闇もぶん殴っているので、結局こういう行動しかなかったのかも……

 と、ここで村の子供の母親を人質に取るという闇のイヤらしい戦術に対して、迅火は当然のごとく無視しようとするも、しかし――という前振りを経て、今回の真打である「人間」斬蔵が登場。迅火とほぼ互角にやり合う力を持つ魔剣を持ちながらも、真のスキルは純粋な剣術という玄人好み(?)の人物で、そのやさぐれた風貌も相まって、主人公を圧倒して成長させて退場するゲストキャラ感溢れる人物であります。
 まあ実際には退場はしないのが本作のよいところですが、闇から解放した母子を今度は自分が人質にして迅火に対決を迫ったり、人間の技術の精華である剣術で迅火を圧倒したり、それでも迅火を討たずに大人の余裕を見せたり、律儀に斃した闇はきちんと食べたり、そしてこんなナリと稼業でも妹は大事にしていたり――と改めて見てみるとこんなにいいキャラだったのだなあと感心させられます。後で触れるように今回は「人間」「人間性」が意味を持つエピソードですが、その様々な象徴として、重要なキャラクターであるというべきでしょう。
(人間臭いといえば、迅火には実家を潰すと脅し、斬蔵には妹の命がかかっていると脅しつつ、「難しく考えるな。『脅しとは卑怯だぞ』と言っておけばいいのだ」と妙に味のあることを言う名もない断怪衆も、これもある意味「らしい」と感じます)

 一方の迅火はといえば、己の圧倒的なパワーで蹴散らすことのできない相手の登場に焦り、死すら覚悟した末に、再戦では完全に飲まれて決定的なミスを犯す(この辺り、斬蔵がどこまで意図していたかはわかりませんが、狙い通りであったとしたら面白い)ことになるのですが――そこからの大逆転の手段がムチャクチャなものなのが実に面白く、その八方破れぶりが斬蔵の技を破るという展開にある種の説得力をもたらしていると言ってよいのではないでしょうか。
 もちろんこんな技は普通の「人間」にはできないのですが、走馬燈まで見て頭が真っ白になるというのは、これはこれで実に人間らしい(そもそも闇闇拘っている時点でめちゃくちゃ人間らしいわけで……)。先に触れた人質のくだり、そして明るく接してくる灼岩やある意味真っ直ぐなリアクションの真介との触れ合いも含めて――今回はタイトル通りに迅火が様々な人間に触れて人間性を学び、自分の中にも残っている人間性を自覚するエピソードなのでしょう。

 しかし迅火がその人間性を捨てようとしている一方で、既に捨て去ってしまった者もいて、というのはフライングですが、闇とは人間ではないモノを指すのか、人間性を捨てればそれは闇なのか――その辺りに着目すると、やはり興味深い物語であります。


『戦国妖狐 世直し姉弟編』上巻(フリュー Blu-rayソフト) Amazon


関連サイト
公式サイト

関連記事
『戦国妖狐』 第1話「我ら乱世を憂う者」
『戦国妖狐』 第2話「灼岩」
『戦国妖狐』 第3話「永禄七年」

|

2024.01.27

『戦国妖狐』 第3話「永禄七年」

 断怪衆の総本山に殴り込み、僧兵たちを蹴散らす迅火。しかしその奥の城に迫った時、突如立ち上がった城が繰り出した拳で、迅火は遥か彼方に殴り飛ばされてしまう。一方、自分たちの前に現れた霊力改造人間から真介たちを守ろうとした灼岩は、自分の所業を思い出してしまうことに……

 ここまでで、いきなり現れた断怪衆にいきなり喧嘩を売った迅火がいきなり叩きのめされて――という展開だった本作ですが、ここまでが贅沢なプロローグだったという印象。慌ただしい展開が続きましたが、今回はその中で登場人物たちの行動原理を問いかける内容でもあったと感じます。

 前回の引きで、霊力僧兵の一斉攻撃を食らっても全く堪えず、逆に一撃で吹き飛ばしてみせた迅火は、その直後に、今回の黒幕というべき老人・野禅と遭遇、自分に差し向けられた霊力改造人間を一蹴。しかしその彼も、霊力改造人間製造の本拠と思しき城に突入しようとしたところで、その城そのものに殴り飛ばされて……
 と、目まぐるしい展開ですが、この城「泰山」の出現はある意味今回のクライマックスというべき文字通りの大ネタでしょう。しかし原作では一ページで変形、次の見開きでは迅火に拳が迫って――という、思わず唖然としてしまうような、実に作者らしいすっとぼけた意外性が良かったのですが、アニメでは城が立ち上がり拳を繰り出すまでをきっちり見せようとして、逆にそのスピーディーな意外性を殺してしまったのは実に勿体ない。動きを見せるのはアニメの利点ですが、なかなかメディアの違いと表現の関係は難しいと今更ながらに感じさせられます。

 一方、真介周りのアニメオリジナルの描写は、相変わらず細かく厚みを増している印象で、熊(?)の霊力改造人間に襲撃を受けた際に、身を挺してたまと灼岩を庇い(ここでヘラヘラとツッコミを入れていたたま、一体どうするつもりだったのか。というか基本的にたまが戦闘で活躍した印象が薄い……)、ビビりながらも自分は逃げず、二人を逃がそうとする真介がその理由を語る部分はアニメオリジナル。彼なりの強さを求めての行動の帰結であることを示すその言葉の内容は、語らずとも行動を見れば感じられるものではありますが、しかしそれが彼の意思として明確に示されるのは、やはり大きな意味があると感じます。
 もっとも彼の場合、意思に力が伴わないのが残念なところですが、それに対して力が意思を上回って暴走してしまったのが灼岩。彼女の暴走は前回も描かれましたが、今回はそれと微妙に異なる描写で――彼女自身の視点で、もう一度その様が、より細かく描かれるのが(もちろん良い意味で)キツい。特に怪物状態の灼岩に追い詰められた父親が、地面に散らばった銭をかき集めようとした描写など、実に厭らしい(褒め言葉)のですが、だからこそ彼女のどうしようもない絶望感が際立ちます。

 そして人から闇になりかけて得た力に溺れ親を殺めた者がいる一方で、力がなかったために人に親代わりの闇を殺された者もいる――と、灼岩と迅火が一種の対照的な存在として描かれる一方で、真介はその力を求めた灼岩のあり方を人間として肯定してみせつつも、だからこそその結果の哀しさに堪えきれず涙を流す……
 ここで語られたそれぞれにとっての力の在り方は、舞台となる永禄七年――戦国時代真っ只中の殺伐とした時代ゆえのものであるといえます。だからこそ、その力のより善き使い方をたまが示すことは、そのまま彼女がこれまで語ってきた世直しの理想の実現であり、この時代に抗うものでもあるのです。


 と、改めてみるとなかなかに巧みな構成なのですが、客観的に見れば喧嘩を売って返り討ちにされ、追っ手から逃げているというシチュエーションは、やはりスッキリしないところではあります。Cパートで襲来が予告された次なる強敵との対峙がそれを変えるのか――見てのお楽しみであります。


『戦国妖狐 世直し姉弟編』上巻(フリュー Blu-rayソフト) Amazon


関連サイト
公式サイト

関連記事
『戦国妖狐』 第1話「我ら乱世を憂う者」
『戦国妖狐』 第2話「灼岩」

|

より以前の記事一覧