2022.06.11

あずま京太郎『THE KING OF FIGHTERS外伝 炎の起源 真吾、タイムスリップ! 行っきまーす!』第1巻 いま描かれる660年の因縁!

 突然どうした、というチョイスかもしれませんが、格闘ゲームの最大手の一つ、ザ・キング・オブ・ファイターズ(KOF)シリーズのスピンオフにして、660年の過去を描く物語であります。現代まで続く草薙家と八神家の因縁の源とは――現代からタイムスリップしてしまった矢吹真吾が見届けます。

 以前のKOFで八神庵に負わされた傷も癒え、草薙京の父・柴舟の下で修行に励む矢吹真吾。そんなある日、自主練中に謎の空間に引きずり込まれた真吾が意識を取り戻してみればそこは見覚えのない場所――それどころか、見たこともないような不気味な怪物が襲いかかってくるのでした。
 自分の技も通じず、窮地に陥った彼の前に現れたのは真っ赤な炎を操る男――怪物を焼き払ったその男は、八尺瓊と名乗るのでした。

 訳のわからぬまま八尺瓊についていった真吾はそのまま、八尺瓊邸の牢に放り込まれることに。そこでようやく自分がタイムスリップしたことに気付いた真吾は、今が鎌倉幕府が倒れた後の時代だと知るのですが……


 1994年稼働の第1作から今年の第15作まで、長きに渡り展開してきたKOFシリーズ。そのストーリーの中心には、一つの伝奇的設定があります。

 シリーズの(初代)主人公である草薙京とその宿命のライバル・八神庵――彼らは共に約1800年前に「オロチ」なる存在を封印した「三種の神器」と呼ばれる家系のうち、草薙家・八尺瓊家の末裔。
 しかし約660年前にオロチの力に魅せられた八尺瓊家の者がオロチの封印の一部を解き、さらに妻が草薙家に殺されたと騙された末にオロチと血の契約を結び、八神と名を改めた――大まかにいえば、これが両者の、いや両家の因縁の始まりなのです。

 そして本作はまさにその瞬間を描く物語なのですが――それを見届けるのが真吾というのが、なるほど、と感心させられます。
 KOF97が初登場の真吾は、京に憧れて押しかけ弟子になった(京的にはパシリにした)という設定のキャラクター。別に京や庵のように手から炎を出せるわけでもない、ちょっと体が頑丈なだけの本当にごく普通の高校生なのであります。

 しかし何かと事件に巻き込まれやすい京の近くにいるためか、真吾も様々な戦いに首を突っ込み、ついにはKOF XIでは京と庵の緩衝役としてチームを組むことに――まあ、その結果、暴走した庵から京を庇って深手を負い、以降大会に出場していないのですが……
(ちなみに本作では、この時の傷(とKOF97ドラマCDで山崎竜二に刺された時の傷)にある意味が与えられているのが実に面白い)

 それはともかく、物語の渦中近くにいながら、あくまでも立場は傍観者の一般人的という彼のスタンスは、本作のような物語には非常にマッチしているというべきでしょう。
 まあ、庵は(京も)『THE KING OF FANTASY 八神庵の異世界無双 月を見るたび思い出せ!』で異世界転生しているので、今回は別のキャラの方が――というのはともかく。


 さて、そんな本作ですが、キワモノめいたタイトルに対して、内容の方はかなりしっかりとしている印象があります。オロチの誘惑に堕ちる前の八尺瓊とはどのような存在だったのか、いやそもそも歴史の中で(陰で)草薙・八尺瓊両家は何をしていたのか――そんな部分がきっちり描かれているのは、ファンとして嬉しい限りです。(何故形の上では八尺瓊家がどこの者とも知れぬ真吾を一応保護しているのか、という説明も面白い)

 そしてその中で、真吾が懸命に自分なりの道を、自分なりの戦いを見つけようと努力するという、成長物語としての側面が描かれているのも、好印象であります。
 もっとも、お前あれだけ京や庵の近くにいて、八神=八尺瓊って知らなかったのか!? などとも思いますが、そこは先に述べたように、一般人代表としての役割なのでしょう。
(そもそも初出が30年近く前の設定、最近のファンは知らないのかも……)

 この巻の時点では、まだまだ660年前の因縁そのものの真実は描かれておらず、それは最終巻であろう次巻に送られていますが、それがどのように描かれるのか楽しみになる――KOFファンにはオススメできる作品です。


 ちなみに作中に「鎌倉幕府が滅びてから争いばかり」「武力を持ちながら戦に加担せぬ我々は公家側からも将軍側からも良く思われてはいない」という台詞があるのを見ると、本作は後醍醐帝と足利尊氏が対立し、幕府ができる直前が舞台のように思われます。
 仮に庵が初登場した1995年から660年前とすると1335年と、見事に平仄が合うのですが――KOFで年代を云々するのは野暮とはいえ、興味深いところではあります。


『THE KING OF FIGHTERS外伝 炎の起源 真吾、タイムスリップ! 行っきまーす!』第1巻(あずま京太郎&SNK 講談社マガジンポケットコミックス) Amazon

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2021.10.29

『弁慶外伝 沙の章』 日本から大陸へ! 時空を超えた元寇伝奇

 先日紹介した『弁慶外伝』の続編に当たる作品――ハードをスーパーファミコンに移して1992年に発売された本作は、元寇を背景に、その背後で繰り広げられた語られざる戦いを描く物語。日本に始まり、舞台は中国大陸にまで時空を超えて広がる、稀有壮大な物語であります。

 文永11年、大軍で襲来し九州を蹂躙したものの、突然吹き荒れた暴風によって壊滅的な打撃を受けて撤退を余儀なくされた蒙古軍。その背後に日本側の強力な呪術の存在を察したフビライ・カンは、配下の四界将の一人・呪魂を派遣――北条時宗も全国の法力者でこれを迎え撃つも、多くの犠牲を出すのでした。
 そして文永の役から2年後、四国の修門砦で修行を積んでいた主人公・不動(デフォルトネーム)は、帝の命により戦いに加わるべく都に向かおうとするも、その矢先に砦は襲撃を受けて壊滅。不動も窮地に陥ったところを、長門の練武館からやって来た戦士・巳陰(みかげ)と常世(とこよ)に救われることになります。

 呪魂の追撃から辛うじて逃れた三人は、呪魂を倒して元の再襲来を阻むべく、日本中を奔走。数々の冒険の末、かつて源義経の手によって眠りについた不死身の戦鬼・弁慶を復活させ、ついに呪魂に挑むのですが……


 と、文永の役と弘安の役の間の時期を舞台とする本作。そもそも鎌倉時代を舞台としたゲーム自体(前作のような義経・弁慶を題材としたものを除けば)珍しいのですが、元寇を題材にしたものは、それこそ本作のほかは昨年の『Ghost of Tushima』くらい――というのは大げさかもしれませんが、それくらい希少であることは間違いありません。

 さて、冒頭に述べたとおり本作は『弁慶外伝』の続編ですが、物語自体は直接の繋がりはなく、前作で何処かへ旅立った義経と弁慶のその後が語られる程度であります。
 とはいえ、前作で伊勢三郎が率いていたかすみの一味が、ほとんど忍者集団のかすみ一族になっていたり、前作の主人公・鬼若が法眼に育てられた林省寺が廃墟となっていたりと、前作を知っていればニヤリとできる場面がいくつかあることは間違いありません。

 そして物語的には前作以上に奔放に、如何にも伝奇的な陰の歴史が語られていくわけですが――しかし本作は中盤で思いもよらぬ展開を見せることになります。

 弁慶とともに呪魂を倒し、日本を救ったかに見えた不動たち。しかしこの戦いの根源が、単なる元による日本侵略というものではなく想像を絶するほど根深いことを知った不動たちは、中国大陸に渡り、伝説の地・崑崙を求めて旅をすることになります。
 その前に立ちふさがるのは残る三人の四界将たち。そしてやがて物語は時空を超え、邪馬台国まで遡る奇怪な因縁が語られることになります。一度は義経が身を以て封印した魔を滅ぼすため、不動と弁慶たちは死闘を繰り広げることになって……

 と、鎌倉時代の日本を舞台とするだけでも珍しいのに、本作はこの時代の中国大陸を舞台にするというさらに珍しい展開をすることになります。フビライだけでなく、バヤンや古源邵元といった実在の人物まで登場する一方で、ほとんど既存の神話伝説を用いないオリジナルの伝奇世界が展開されるのに驚かされます。
 ――が、個人的にはオリジナルになりすぎて(そして中国に渡ってからは舞台に馴染みがなさすぎて)もう伝奇ものというよりファンタジーじゃないかな、という印象があるのも正直なところではあります。

 また、冷静に考えると物語の処々に矛盾というか不明点があったり(結局、メインキャラの一人・鳴沙にまつわる設定が今ひとつ未消化だったり等)、ちょっとすっきりしない部分もあって、ゲームとしては前作よりもはるかに完成度が高いにもかかわらず、賛否が分かれているのも、理解できるところです。

 ちなみにゲーム性でいえば、前作の高すぎるエンカウント率やバフデバフがほとんど役に立たない点などは解消されているのですが、敵味方ともポンポン連続攻撃やクリティカルヒットを出すので、戦闘が安定しないのがストレスが溜まる点。
 いや、一番ストレスが溜まるのは、タイトルロールであり物語的にも重要な位置づけのはずなのに、戦闘ではNPC扱い、しかもランダムにしか攻撃しない(攻撃しない時の方が多い)弁慶の存在なのですが……


 と、最後に一点言及すべきは、本作のイメージビジュアルでしょう。前作は本宮ひろ志が担当していましたが、本作では何と山形厚史が担当。
 説明書や攻略本で見ることができるイラストは実に見事で、これだけでも何とかしてご覧いただきたい逸品であります。


『弁慶外伝 沙の章』(サンソフト スーパーファミコン用ソフト) Amazon


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『弁慶外伝』 鎌倉伝奇RPG! しかし色々な意味で古典……

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2021.10.14

『弁慶外伝』 鎌倉伝奇RPG! しかし色々な意味で古典……

 実に今から32年前、PCエンジン用ソフトとして発売された時代伝奇RPGであります。鎌倉時代を舞台に、奇しき因縁を背負った少年・鬼若が、かの弁慶らと共に繰り広げる戦いを描いた本作を、今に至りようやくクリアいたしましたので、今回ご紹介いたします。

 おそらくは鎌倉時代の初期、房総のとある寺で都の僧・法眼に育てられていた少年・鬼若(きじゃく)。何者かに拐われた幼馴染の少女・おコトを救出した彼は、それをきっかけに、自らの出生に秘められているという謎を解くための旅に出ることになります。
 やがて金屋吉次郎こと金売吉次の縁で、衣川の戦を密かに生き延びた伊勢三郎(実はおコトの父)を仲間に加えた鬼若。魔界の侵略が始まったことを知った鬼若は、出羽の法術師・沙夜香、結界の中で眠りについていた弁慶をも仲間に加え、諸国に向かうのでした。

 そして旅の中で、自分の両親の正体を知る鬼若。その後も都から奪われた三種の神器の行方を追って東奔西走、さらには義経の姿が現れたという蝦夷の地に渡り――ついに決戦の地・裏鎌倉に乗り込んだ鬼若たちの前に現れた真の敵とは……


 冒頭に述べたように、今から32年前の1989年(平成元年!)に発売された本作。当時は和風ファンタジーというべき作品はそれなりにありましたが、正史を(一応)背景とした作品はまだ珍しかった印象があります(ちなみに和風ファンタジーの雄・『天外魔境』第1作は同年の発売)。

 ゲームシステム的には当時から見ても非常にオーソドックスな4人パーティー形式のRPGである本作――今の目で見ると当然ながら古さは否めないのですが、それはもちろん言うだけ野暮というものでしょう。当時としては珍しい漢字を用いた画面はなかなか見やすく印象的です。

 さて、ストーリーの方は、上に述べたのがある意味全てというか、かなりシンプルで、ほぼ一本道の、お使いの連続で展開していく内容――というのはこれまた時代を考えれば仕方がないとして、ある意味お約束の物語を日本の舞台設定に当てはめたものといえます。
 主人公の両親があの二人であるとか、ラスボスが――正確にはその裏に真のラスボスがいるのですが――あの人物というのは、これはもう設定的には定番中の定番ですぐ予想がつくのはちょっと残念なところではありますが……(この数年後に発売されたスーパーファミコンの『鬼神降臨伝ONI』とかなり被る)。

 もっともその一方で、常陸坊海尊の扱いや、蝦夷地を異国から来た魔法使いたちが治めているなどユニークな部分があるのは評価できます。


 そんなわけでストーリー的にはそれなりに楽しめたのですが――ゲームとして大きな減点ポイントなのは、その異常なまでのエンカウント率。もちろん運はあるものの、ひどい時は数歩歩いただけで敵が出現。
 さらに、フィールドではエンカウントを封じる術があるものの、ダンジョンでは使えず、ストレスは溜まるばかり(またこのダンジョンの階段が実質ワープポイント並みの滅茶苦茶な繋がり方なので迷いまくる)。

 本作を今頃になってプレイした理由の一つが、最近の色々とリッチなゲームは疲れるので、イベントは少しで、ひたすら戦うゲームがしたいと思ってのことだったのですが――まさかこういう形で叶うとは。

 さらに睡眠と毒以外のデバフ・バフ系の術はそのターンしか効果がないという、ちょっとどうかしているとしか思えない仕様もあったりして――この頃よくあった、プレイアビリティの低さが難易度の高さになっているゲームとなってしまっているのは、やはり残念というほかありません。

 私は今回このゲームを、PlayStation VitaのPCエンジンアーカイブスでプレイしたのですが、携帯機のどこでもセーブ機能がなければとてもクリアできなかったのは間違いないかと思います。
 そんなわけで、物語的にはそれなりに面白いものの、やはり今プレイするにはよほどのことがないと――というのが、今回最後までプレイして確認できたことでありました。

 ちなみに本作、スーパーファミコンで元寇の頃を舞台とした続編『弁慶外伝 沙の章』が発売されており、こちらはなかなかよくできているようなので、いずれプレイしたいと思います。


 ちなみに本作、作中で三年前に義経が蝦夷に現れたという言及があるので、その辺りの年代の物語なのでしょう。
 鬼若の年齢がちょっとややこしいのですが、鬼若は常人より成長速度が早いという設定があるので……


『弁慶外伝』(サンソフト PCエンジンアーカイブス)

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2021.08.06

『Bloodstained: Ritual of the Night』 新たなメトロイドヴァニア、新たな伝奇世界

 既に発売から2年が過ぎた作品を今紹介するのも恐縮ですが、まだ追加コンテンツの開発が続いていること、そして何よりもつい先日ようやくクリアしたため、紹介させていただきます。18世紀末のイギリスに現れた悪魔の城を舞台に繰り広げられるゲーム、「メトロイドヴァニア」の名品であります。

 産業革命による科学の発展で、錬金術から人々の心が離れていくのに危機感を抱いた錬金術ギルド。彼らはその存在感を示すため、魔力を宿し成長する結晶「シャード」をその身に埋め込まれた少年少女たち「シャードリンカー」を生贄に悪魔を召喚、しかし大量の犠牲者を出した末に自滅したのでした。
 それから十年、儀式の直前に謎の昏睡状態に陥ったことから難を逃れたシャードリンカーの少女・ミリアムが覚醒。それと時を同じくして、無数の悪魔が潜む謎の城が地上に出現したのであります。

 かつて親しかったシャードリンカーの青年・ジーベルが悪魔を操っていることを知り、その身に宿るシャードを武器に、彼の暴走を止めるための戦いを決意したミリアム。
 人間たちへの復讐に燃え、ミリアムを誘うジーベル。ジーベルに仕える悪魔・グレモリーを追う東洋の剣士・斬月。悪魔召喚に用いられたロガエスの書を追う老錬金術師・アルフレッド。悪魔と戦うミリアムをサポートする美しきエクソシスト・ドミニク――悪魔の城を巡り、幾重にも絡み合うミリアムと彼らの運命の行方は……


 そんな本作は、いわゆる「メトロイドヴァニア」の王道を行く作品。メトロイドヴァニアとは、サイドビュー視点の探索型アクションゲーム。一定のエリアの中で探索や戦闘をを行い、使えるアクションや行けるエリアを増やしていくという、要するに『メトロイド』や『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』のようなゲームであり、それ故の名称(キャッスルヴァニアは悪魔城ドラキュラの英名)であります。
 そして本作のプロデューサー・五十嵐孝司は、この『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』以降、シリーズの大半を手掛けた人物であり、そして独立後に初めて発表した本作は、その味わいを(意図的に)色濃く残した作品となっています。


 それではシリーズの味わいとは何でしょうか? ゲーム的には、経験値制を導入することによる難易度の緩和、出来ることや行ける場所が広がっていくタイミング等のレベルデザインの巧みさが考えられますが――何よりも物語背景の設定とゲーム内容(音楽やグラフィックも含めて)のマッチング、設定が本編の内容に与える厚みにあったと感じます。

 悪魔城シリーズでいえば、あのヴラド・ツェペシュを百年に一度甦る魔王として設定し、その魔王の君臨する主人公に城に挑むという物語を――それが大半はプレイ開始前の背景に留まるとしても――設定することによって、ゲーム内の探索・設定の背後に、大きな広がりがあったと感じます。
 言い換えればドラキュラという「実在」の人物を題材とし、どこかの異世界でなく、現実と地続きの世界を舞台とすることで――つまり伝奇的な空気を持ち込むことで、シリーズは他との差別化に成功していたのです。


 さて本作は、あくまでも悪魔城シリーズではない別個の作品ではあるものの、敢えてそれに内容や雰囲気を大きく寄せた作品であります。そしてそれはゲーム性の部分だけでなく、伝奇性の部分でも同様です。

 上に述べた錬金術師ギルドの悪魔召喚は、実は1783年――アイスランドでラキ火山が噴火、数年間異常気象をもたらして多大な犠牲者を出した年に設定されています。
 この史実が、物語背景として一つの背骨を与えるとともに、物語のキーアイテムにロガエスの書――かのジョン・ディーが天使との交感実験をした際に使用したという「実在の」文書を配置することで、新たな物語世界に厚みを与えているのです。

 といっても現実とのリンクはそのくらいで、18世紀末に(魔界のテクノロジーという扱いとはいえ)鉄道が登場したり、アイテムとして日本料理が、敵キャラとしてくねくねが登場したりという点はあるのですが――それは、ゲームとしてのご愛嬌ということで。


 何はともあれ、悪魔城シリーズという先行作品を踏まえつつ(利用しつつ)も、あくまでもそれとは別個の、新たな伝奇世界の創造に挑んだ本作。それは決して容易な試みではなかったと思いますが、本作はそれを見事に成し遂げたと感じます。
 メトロイドヴァニアとして面白いのはもちろんのこと、一つの伝奇ものとして――懐かしくも新しい作品が生まれたことを、ジャンルそのものの、そして悪魔城シリーズのファンとしても歓迎したいと思います。


『Bloodstained: Ritual of the Night』(Game Source Entertainment Nintendo Switch用ソフトほか) Amazon

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2020.12.14

富士原昌幸『スーパーロボット大戦OGサーガ 龍虎王伝奇』 伝説の超機人、「現実」世界に吼える

 2003年の雑誌連載開始から幾度かの中断を経て、実に14年後に描き下ろしを含めて完結した、中華伝奇ロボットアクション漫画――スーパーロボット大戦シリーズの主人公機の一つである龍虎王の過去の戦いを描くスピンオフ作品であります。

 日本と清国の緊張が高まる明治時代、発掘が進められているという超機人の調査を命じられ、大陸に渡った大日本帝国陸軍情報部の大尉・稲郷隆馬。古代中国で作られた機械人形という、ほとんどホラ話としか思えぬ超機人ですが――しかし確かに実在し、大英帝国のグリムズ男爵の手によって発掘が進められていたのでした。
 超機人が眠る蚩尤塚を代々守ってきた一族の末裔・文麗を男爵の手から救い出した隆馬ですが、男爵は発掘した二体の超機人・雀王機と武王機を起動。窮地に陥った二人の前に、地中から龍王機と虎王機が出現――これに乗り込んだ二人は、二身合体した龍虎王・虎龍王を駆り、伝説の四神同士の戦いを繰り広げることになります。

 辛くもこの戦いに勝利した隆馬と文麗ですが、その前に現れたのは、世界中の紛争の背後に暗躍する組織・バラルのエージェント・孫光龍。
 伝説の妖魔たちを象った妖機人たちを配下に持ち、さらに超機人の中でも最上位に位置する四霊の一体・応龍皇を操る光龍との対峙の末に、二人はかつて地上で繰り広げられた機人大戦の存在を知るのですが……

 という第一部に続き、時は流れて第二部の舞台となるのは第二次世界大戦前夜の昭和初期――バラルに一族を滅ぼされた隆馬と文麗の孫・飛麗は、バラルと戦うために結成され、グリムズ家や名門ブランシュタイン家も参加する超国家組織・オーダーと出会い、その一員として潜水母艦・魁龍に搭乗することになります。

 オーダーの擁する巨大ロボットたる鋼機人・轟龍のパイロットとなり、謎めいた艦長の下、仲間たちとともに、次々と襲い来るバラルの妖機人たちと戦い続ける飛麗。
 戦いの果てに明らかになるオーダーとバラルの目的――そしてバラル四仙の一人・泰北が操る四罪の超機人、さらに再び現れた孫光龍が潜む四霊の一体にしてバラルの拠点・霊亀皇との決戦に臨む飛麗と仲間たちの運命は……


 というわけで、数十年に及ぶ稲郷家と蚩尤塚の一族、さらにはグリムズ家やブランシュタイン家と、バラルとの戦いを描いた本作。内容的にはゲームの『スーパーロボット大戦α』シリーズ及び『スーパーロボット大戦OG』シリーズに登場した龍虎王の由来を語る物語であり、そしてゲームに登場したキャラクターの先祖たちの姿を描く物語であります。
 その意味ではまさしくゲームのスピンオフなのですが、しかしここで登場する超機人たち――古代中国神話に登場する神や妖魔、神獣の類をモチーフとした巨大ロボットたちの存在は実に魅力的で、背景となっている神話の「真実」たる機人大戦の内容も含め、ゲームとは独立した巨大ロボット伝奇として楽しむことも出来ます。

 また、第一部がかなりシンプルなストーリーだったのに対して、第二部はキャラクターの背負う因果因縁が複雑となり、よりユニークな物語が展開。。さらに人が造った超機人というべき鋼機人(四神をモチーフとして四体登場)が、能力的には及ばずながらも、懸命に妖機人たちに挑む姿は、圧倒的な力を誇る龍虎王のバトルとは違った魅力があります。


 その一方で、単行本全3巻というボリューム上の制約もあってか、キャラクター造形は些か掘り下げが少なく、特に飛麗の内面があまり描かれていないのは――終盤の展開を考えても――食い足りないところではあります。
 そして何よりも、本作の特徴の一つである、未来の物語ではなく(その未来に分岐していく)現実世界の過去を舞台にしているにもかかわらず、その点がほとんど設定上に留まり、あまり物語の中で有機的に活かされていなかったのは、個人的には何よりも残念に感じられます。

 もちろん本作はそういう物語ではないことは重々承知ですが、この辺りは大いに勿体ないという印象があります(特に第二部は冒頭以外ほとんど海上で物語が展開してしまうため、現実との距離感が大きく……)。
 結局のところ、面白い部分も大きいけれども勿体ない部分も大きい、古代伝奇としては面白いけれども近代伝奇としては――と個人的には感じることとなった本作。もちろんこういう視点で本作を見ている人間はまずいないわけですが……

『スーパーロボット大戦OGサーガ 龍虎王伝奇』(富士原昌幸 KADOKAWA電撃コミックス) 上巻 Amazon/ 下巻 Amazon/完結編 Amazon

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2012.10.09

「戦国無双Chronicle 2nd」 年代記にして銘々伝の面白さ

 ニンテンドー3DSのロンチソフトとして発売され、意外な面白さにファンを驚かせた「戦国無双Chronicle」の新作、「戦国無双Chronicle 2nd」が発売されました。前作の面白さはそのまま、旧来のシリーズの味わいも取り込んでみせた快作であります。

 「戦国無双」というゲームについては、今さらここで説明するまでもありますまい、一騎当千の戦国武将(でない人間もたくさんいますが)が活躍する戦国アクションゲームです。
 正直なところ、「無双」シリーズのゲームは毎年何作も発売されているため、食傷気味の部分もあったのですが、そんなゲーマーも感心したのが前作「戦国無双Chronicle」。
 各ステージ毎の操作キャラクターを複数設定し、タッチパネルでそれを随時切り替えることにより、刻一刻と変わっていく戦場の状況に対応していくというのが、抜群に面白く、かつ新鮮で、「無双」シリーズの新たな可能性を見せてくれた、と言っても過言ではない作品でありました。

 その「戦国無双Chronicle」を引き継いだ本作は、前作の登場キャラに加え、藤堂高虎・井伊直虎・柳生宗矩(!)と三人の新キャラを加えたパワーアップ版…と言うと、近頃はやりの完全版的印象がありますが、実際のイメージは大きく異なります。

 というのも、前作はクロニクル(年代記)の名の如く、河越夜戦から大坂夏の陣までがほぼ一直線に描かれていたのに対し、本作は、中心となる武将毎に分かれた物語が描かれる、並行的構造。
 しかも武将によっては、史実とは異なる展開となったり、あるいは別の武将の物語を反対側から描いていたりと、ifの部分がよりクローズアップされているのであります。

 なるほど、ステージ自体は前作でも登場したものであっても、そこで展開される物語が異なれば、これは全く異なるものとして見ることができましょう。
 実は、「戦国無双」シリーズとして見れば、前作のクロニクルスタイルがむしろ異色で、各武将毎にストーリーが(if展開も含めて)描かれる本作の方が、シリーズの本流に戻ったとも言えます。

 個人的には前作のスタイルも気に入っていただけに、少々残念に感じるところがないわけではないのですが、しかしどうしても登場武将の活躍に濃淡が出てしまった前作に比べれば、より平等に活躍を描くことができる今回のスタイルは、武将毎のファンが存在するシリーズにおいてはむしろ正しいチョイスとかもしれません。むしろ、クロニクル的部分を残しつつ、従来の武将銘々伝的な要素を取り込んだ、おいしいところ取りのスタイルと言っても良いのではないでしょうか。

 さらに言えば、ステージ数が増えたことで、ちょっと驚くような人物や事件が描かれるようになったのも実に楽しい。
 取りあえず最初に選んだ今川の章(実質は井伊直虎の章なのですが)では、小野道好が無駄に存在感をアピール。この人が目立つゲーム(というかフィクション)初めて見ましたよ!
 その他、浅井の章では長政を差し置いて斎藤龍興が大活躍したりと、全般的に今回はモブ武将が大健闘した印象があります。

 もっとも、おかげでいつもの無双アレンジされた武将たち(のコスチュームやキャラクター)が、えらく浮いて見えるのも痛し痒しですが…


 それはさておき、本作が前作をプレイした方でも間違いなく楽しめる作品であることは――そしてもちろん、本作で初めて戦国無双をプレイするという方にも面白い作品であることは間違いないお話。無双アレンジが苦手な方もいらっしゃるかとは思いますが、想像以上に真面目に歴史ものしている部分もあり、食わず嫌いの方ほど楽しんでいただきたい、そんな快作であります。

「戦国無双Chronicle 2nd」(コーエーテクモゲームス ニンテンドー3DS用ソフト) Amazon
戦国無双 Chronicle 2nd


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 「戦国無双Chronicle」 合戦を動かすという快感

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2012.07.16

「十 忍法魔界転生」連載決定記念 「魔界転生」総まくり

 時代伝奇ファンにとって最近最も大きなニュースは、せがわまさきによる山田風太郎の「魔界転生」の漫画化、「十 忍法魔界転生」の連載開始ではないでしょうか。
 この作品自体は連載開始後に取り上げたいと思いますが、ここで、今までに発表された「魔界転生」という作品のバリエーションを振り返ってみるのも悪くない試みでしょう。

 言うまでもなく「魔界転生」は山田風太郎による小説ですが、この作品の持つものは、後世のクリエーター(そして売り手)にとって大いに魅力的であったらしく、商業作品を挙げただけでも、かなりの数にのぼります。
 そのうちの多くはこれまでこのブログ等で取り上げていますし、まだの作品についても近いうちに取り上げたいと思いますが、ここではリストアップがてら、簡単に各メディアごとに各作品に触れてみたいと思います。

○小説
「魔界転生」(1964-65)(山田風太郎 角川文庫ほか) Amazon
 言わずとしれた元祖であり、作者の作品の中でも最も有名な作品でしょう。旧題「おぼろ忍法帖」、後に「忍法魔界転生」、そして現在のタイトルに変更。
 忍法帖としても、剣豪小説としても破格の作品でありますが、立川文庫等で語られてきた剣豪たちの物語を、一種のパロディとしてまさに転生させて、こうして現代まで残したことが、ある意味最大の意義かもしれません。

○映像
「魔界転生」(1981)(監督:深作欣二 東映) Amazon
 魔界転生の名を一躍知らしめることとなった角川映画。十兵衛役ははまり役の千葉真一ですが、それに勝るとも劣らぬ存在感を沢田研二演じる天草四郎が見せたことで、以降の作品のほとんどでは、四郎が敵の中心として描かれることに…
 物語的には、骨子の部分と登場人物を借りたほとんど別物でありつつも、それでもなお面白い名作。本当に燃え落ちる舞台の中での、十兵衛と但馬守(若山富三郎)のラストバトルは、既に伝説であります。

「魔界転生 The ARMAGEDDON」「同 魔道変」(1996)(監督:白井政一 徳間ジャパンコミュニケーションズ) Amazon
 全二作のビデオシネマ。十兵衛役は渡辺裕之。ビデオシネマであることを考えればまずまずですが、オリジナル部分で時々妙にぶっ飛んだシーンを楽しむべきでしょうか(春日局の転生は魔界転生史上に残る珍シーン)。
 珍しく四郎が敵方の中心ではなく、原作の森宗意軒の立場に由比正雪がいるのも特徴。日本では未DVD化。

「魔界転生 地獄篇 第一歌」「同 第二歌」(1998)(監督:浦田保則 アミューズ・ビデオ) Amazon
 全4巻予定のOVA作品。残念ながら2巻までが発売されて未完となっています。十兵衛の声は玄田哲章、四郎の声は置鮎龍太郎。
 転生衆が集まってきたところでの終了でしたが、十兵衛と四郎が島原の乱で一度対決するなど、オリジナル要素、それもアニメらしいぶっ飛んだ部分(荒木又右衛門の足八本とか)が多く、未完、さらに日本では未DVD化なのが惜しまれます。

「魔界転生」(2003)(監督:平山秀幸 東映) Amazon
 十兵衛役は佐藤浩市、四郎役は窪塚洋介。魔界転生の過程がかなり独特なため、登場する転生衆も一風変わったキャラクターが登場しますが、一本の映画としてみた場合には今ひとつ盛り上がらないというのが正直なところです。

○漫画
「魔界転生」(1987)(石川賢 講談社漫画文庫ほか) Amazon
 あの石川賢による魔界転生漫画化の、いや時代伝奇漫画の金字塔。原作の設定を踏まえつつも、作者が幾度かモチーフとした神と悪魔の戦いの次元まで達した作品内容は、ある意味原作を超えたと言えます。
 無茶苦茶やっているようで、キャラクターのビジュアルなどは存外原作の描写を踏まえているのも見事。

「魔界転生」(1999)(とみ新蔵 リイド文庫 全2巻ほか) Amazon
 現在のところ、原作にほぼ忠実な唯一の漫画版。剣豪漫画の巨匠が描くだけに、剣戟描写は確かなものがあります。あまりにも真っ当なすぎる漫画化なのがかえって寂しい、というのは失礼かもしれませんが…

「魔界転生 夢の跡」(1997)(鳥羽笙子 角川書店あすかコミックスDX 全2巻) Amazon
 なんと田宮坊太郎を主人公とした極めてユニークな作品。四郎によって魔界転生した坊太郎が、かつての想い人と瓜二つの娘と出会ったことから…と、少女漫画的趣向を取り入れることで、十兵衛vs四郎の物語でありつつも、坊太郎視点で描くことにより、全く異なる味わいの作品となっています。

「魔界転生 聖者の行進」(2003)(九後奈緒子 角川書店あすかコミックスDX) Amazon ブログ記事
 2003年映画のタイミングで発表された漫画。独特の絵柄・描写のために好き嫌いははっきりわかれるかと思います(特にアクション描写は感心しません)が、四郎に死という救いを与えようとする十兵衛、望まぬ生を嫌悪し十兵衛の強さに天主の姿を見る四郎と、キャラクター描写は面白い作品です。

○舞台
「柳生十兵衛 魔界転生」(1981)(JAC)
 千葉真一が十兵衛を、志保美悦子が四郎を(!)演じた豪華版。配役を見ればわかるように、天草四郎女性説に基づいているとのこと。未見なのが非常に悔しい…

「魔界転生」(2006)(G2 松竹ホームビデオ) Amazon ブログ記事
 中村橋之助が十兵衛を演じた舞台…というとかなり意外に感じられるかもしれませんが、確かに線は細いものの、成宮寛貴演じる四郎(これがまたはまり役)らの悲しみを受け止める人間味溢れる十兵衛像はなかなか良い。ストーリー的にも原作に近いのが特色ですが、最大の弱点は殺陣が今一つなところでしょうか。

「魔界転生」(2011)(劇団ヘロヘロQカムパニー) ブログ記事
 関智一率いる劇団ヘロヘロQカムパニーによる舞台で、関智一の十兵衛をはじめ、浪川大輔の四郎など、有名声優も多数出演。
 転生シーンなど、舞台でここまでやると思わなかった描写の数々も面白いですが、最大の特徴は深作版と原作の良いところ取り的にアレンジされたストーリー。ラストがちょっと慌ただしいですが、意欲作です。

※演劇については上記以外も上演されているかとは思いますが、とりあえずある程度のメジャーどころをピックアップしました

○ゲーム
「魔界転生」(D3パブリッシャー プレイステーション2用ソフト) Amazon
 2003年版映画に合わせて発売されたのですが、何故かローグライクゲーム。ベースとなっているのが悪名高きSIMPLE2000シリーズの「THE ダンジョンRPG 忍 魔物の棲む城」――というだけでゲーマーの方にはどのような作品か予想できると思います。最初はフルプライスで、後にSIMPLEシリーズで再販されましたが、ワゴンの常連でした。


 以上、大変駆け足でしたが、これまで発表された「魔界転生」はほぼカバーできているかと思います。

 個人的なオススメを挙げるとすればとしては、原作はもちろんとして、深作欣二の劇場版と、ヘロヘロQカムパニーの舞台版は、魔界転生初心者(?)が見ても楽しめるのではないかな、と思いますので、ぜひ(石川賢版は次点)。

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2012.07.13

「ぐわんげ」 闇と黄金と破壊の室町シューティング

 Xbox360購入記念の時代劇ゲーム特集(ということにして下さい)第2弾はケイブのシューティングゲーム「ぐわんげ」。
 いわゆる弾幕シューティングに分類される作品ですが、舞台は室町時代、主人公は式神を連れた三人の男女という、極めてユニークな作品であります。

 13年前(!)の1999年にアーケードゲームとして発売され、長らく家庭用に移植されてこなかった作品ですが、現在はXbox360のダウンロード配信でプレイすることが可能となっているのはありがたいお話です。

 時は室町時代、主人公は狂気に陥り人食いと化した仮面の男・シシン、鬼討ちの家に生まれながらも式神を宿し家を追われた少女・小雨、凶暴な式神を宿した賞金稼ぎの少年・源助の三人。本作は、この三人がそれぞれの目的のため、黄泉への扉の先にあるという獄門山に潜む神を討つために戦いの旅を繰り広げる様がバックグラウンドとして設定されています。
 あくまでも室町時代というのは設定上で、史実と絡むということはほとんど全くないのですが、しかし作品の設定からビジュアルに至るまで、全体を支配する昏い(そして時に荒々しい)ムードは、室町時代の雰囲気を良く表しているのではないか…と個人的には感じます。

 何しろ、本作で言う式神とは、いわゆる陰陽師が使役するそれとはまた異なる存在。
 主に宿り、超常的な力を貸すものの、主とは別の意志を持ち、そして力を貸す代償に主の命をわずか一年で食らい尽くす、一種の寄生生物なのであります。
 つまり主と式神の関係は、主従や相棒と言うよりも、お互いに利用しあう関係。両者の間の緊張関係が生む殺伐とした空気は、本作の基調を成しているという印象があります。

 そしてゲームシステムとしても、この式神は極めて大きなウェイトを占めます。呼び出された式神は> フェデラル・ヒルで、敵の放つ弾に重ねることでそのスピードを遅くする能力を持ちます。同時に式神は敵に重なると爆弾を落としてダメージを与えるのですが…
 面白いのは、式神によって敵が倒された場合、その敵が放っていた弾で、式神の力で遅くなっていたものは、金(得点)に変わるという点です。つまり式神の存在は攻防一体の上に稼ぎの手段であり、そして稼ぐためには敵弾を画面上に出来るだけ多くの敵弾を出させる必要がある。
 このハイリスクハイリターンの構図が、プレイヤーの意志が、わかりやすく明確な形で反映されるのには、感心させられました。

 と、これはもちろんゲーマーとしての感想。時代ものとしては、先に述べたとおりあくまでも設定上に留まる…のではありますが、しかし個人的には、本作をプレイして受ける印象は、奇妙なほど「室町時代」を感じさせるのです。
 式神をはじめとする魔という闇の存在、その闇を前にしても尽きぬ人の欲望の象徴である金、そして画面上にぶちまけられる無数の破壊。
 闇・黄金・破壊…そのそれぞれが一体となって、どこか美しいビジュアル絵巻を成す様が、実に「室町」的である。というのは、これは室町伝奇好きの牽強付会な見方に過ぎるかもしれませんが、しかし本作が、本作でしか描けない世界を、設定から操作感、ゲーム性まで一体となって描いているのは、間違いありません。


 まあ、登場する妖怪の中には江戸時代の(妖怪画を元にした)ものも含まれていますし、敵の中でやたら木造戦車が目立ったりするので、やはり「的」どまりに留めておくべきなのかもしれませんが、それはそれで。

「ぐわんげ」(ケイブ Xbox Live Arcade用ソフト)

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2012.07.06

「サムライスピリッツ閃」 リアルさとゲーム性の間で

 アーケード版が約4年前、家庭用が約2年半前に出たものを今頃レビューするのも大変恐縮ではありますが、Xbox360購入(これまた今頃…)記念ということで、家庭ではXbox360でしかできない時代ゲーム、「サムライスピリッツ閃」であります。

 念のためおさらいしておけば、「サムライスピリッツ」シリーズはSNK/SNKプレイモアによるいわゆる対戦格闘ゲーム。
 1993年(19年前…!)の「サムライスピリッツ」以降、2Dもので6作(「零SPECIAL」を含めれば7作)、3Dもので4作(家庭用オリジナルの「剣客異聞録 甦りし蒼紅の刃」を含む)と、結構な作品数を数えるシリーズです。 登場キャラが武器を持つことによる一撃の重さ、伝奇性濃厚な世界観とキャラクターと、他のゲームにはない特徴を持つ本シリーズですが、もちろん私も大ファンであり、最近は家庭用オンリーではあるものの、欠かさずプレイしております(が、腕はド下手)。

 さて、前置きが長くなりましたが、本作は現時点でのシリーズ最新作にして、約10年ぶりの3Dもの。前作に当たる2Dものの「天下一剣客伝」がシリーズ最終作を謳っていただけに、当時は復活をずいぶん嬉しく思った記憶があります。

 登場キャラの方は、全26名のうち、主人公格の猛千代をはじめとして、実に半数以上の14名が新キャラ。物語の方も、従来とは一新され、欧州のレスフィーア王国なる国家を巡る冒険となっています。
 システム的にはまず標準的な3D格闘ゲームと言いましょうか…定番の打ち上げからの空中コンボはありますし、また軸避けと縦斬り・横斬りを絡めた攻撃体系は、3D武器持ち格闘ではまず定番のものでありましょう。


 そんな格闘ゲームとしての格好は整って見える本作なのですが…しかし、初めてプレイした時には、正直なところ悪い意味で驚かされました。
 …イラストと実際のグラフィックが全然違う。

 いえ、もちろんキャラのイメージイラストと実際のゲーム中のキャラ造形が異なるのはある意味当たり前、2Dと3Dなのですから同じ方がおかしい(というのは言い過ぎか)。
 しかし本作においては、北千里による適度に漫画チックなイラストと比べると、3Dモデリングされた「不気味の谷」というのは言い過ぎにしても、別物感が強く漂います(試合開始前のロード画面に大きくイラストが表示されるので尚更)。

 またゲーム性の方も、大斬り一発の脅威こそシリーズの味を感じさせてくれますが、いわゆる飛び道具が削除されたことで、どうしても近距離での差し合いが増えて、窮屈な印象が漂います。
 もちろんこれはこれでリアルなチャンバラということはできますが、今度は空中コンボの存在が…
 この辺りは、格闘ゲームとしての定番と、シリーズの個性とのせめぎ合いではあると思いますが、どうせやるのであれば、思い切りどちらかに極端に振れて欲しかった、とは感じます。

 そして個人的にもっとも大事なキャラ(とストーリー)なのですが、こちらも今一つ…地味の一言。
 それなりにキャラ造形の積み重ねがあるシリーズおなじみのキャラはともかく、新顔のほとんどは、デザインに一発でこれ、という取っ掛かりがあるキャラが少ないのが苦しい。
 新主人公の猛千代も、ぱっと見のデザイン的には悪くないのですが、動かしてみると悪く言えばモブキャラ的に見えてしまうのが苦しい。和風ゴスのヒロイン・鈴姫はその中でも一人気を吐いていると言えますが…
(ちなみに物語の中心が海外ということもあって、新キャラのほとんどは外国人。これがまた個性の薄さに繋がっているように感じられるのです)

 もっとも、良くも悪くも地味な、実際の世界にももしかするといそうなキャラクターデザインというのは、SNKの格闘ゲームの味の一つではあります。ラスボスがプロイセン軍人的なコスというのも、これはこれで悪くありません。
 しかし、先に述べたゲーム性から来る地味さの部分もあり、もう少し踏み出しても良かったのではないか、とは正直なところ感じます。
 それであればせめてストーリー面で弾けてくれれば良かったのですが、魔界のマの字もない展開はどうにも…


 ネガティブな感想ばかりになって本当に申し訳ありませんが、これが正直なところ。新しいものを求めすぎて、違うものに行きあたってしまったというところでしょうか。
 来年はシリーズ20周年ですが、その時にはこのシリーズらしい新作に出会いたいものですが…さて。

「サムライスピリッツ閃」(SNKプレイモア Xbox360用ソフト) Amazon
サムライスピリッツ閃

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2012.06.30

「夜の魔人といくさの国 さまよえるヴァンピール」 吸血鬼も戦国史の一ページ?

 最近はTVゲームでダウンロード専用ソフトが増えていますが、その中には時代ゲームファンも見逃せない作品も含まれています。
 今回取り上げる「夜の魔人といくさの国 さまよえるヴァンピール」もその一つ。日本の戦国時代をモデルにした世界で、吸血鬼の生活を体験するという非常にユニークな作品です。

 本作は一見ファンタジーのようなタイトルですが、ここで言う「いくさの国」とは、戦国時代の日本を思わせる戦国乱世の島国。
 主人公は、この国に派遣されてきたヴァンピール=バンパイア=吸血鬼となって、覇王「織田のぶなが」の血を吸うことを目的として活動することとなります。

 というと、かのドラキュラ伯爵の如く堂々たる吸血鬼を想像しますが、主人公はまだまだ駆け出し。乗っていた船がいきなり転覆して、無一文の状態でいくさの国に上陸し、戦国ライフを開始することとなります。

 こうして始まるゲームは一日を昼と夜に分け、それぞれでコマンドを繰り返して進むこととなります。昼は人間の世界に立ち交じって(どうやら日光は平気な様子)仕事をしたり、町の人間と交流したりして暮らし、夜は吸血鬼となって町の人の血をすすったり、邪悪な魔力を発揮してしもべを操ったり…
 吸血鬼といえど、いきなり大魔力を発揮してのぶながを襲うのは不可能。まずは地道に表の世界で金や人脈をゲットして、裏でしもべや魔力を増やしていくというのが、まずは基本となります。

 さて、本作の舞台は、冒頭で述べたとおり戦国時代の日本的世界。織田家があるだけでなく、上杉・武田・今川等々、戦国大名が群雄割拠しています(言い忘れましたが、本作のマップは日本ほぼ全土をカバー。スタート地点はランダムですので、プレイによって別々の大名の城下町から始まることになります)。
 そしてこの世界で暮らすのは主人公だけではありません。大名や家臣といった武士たち、そして城下町で暮らす職人・農民・商人等の町人たち…ほとんど無数に感じられる人々が、日々の暮らしを送っているのです。

 そのため、ゲームでは主人公の全く与り知らぬところでも人々は動き、その結果の甚だしきは、大名家の興亡として表れることとなります(もちろん吸血鬼として勢力を伸ばして、裏から大名を操って他国を滅ぼすことも可能ですが)。
 そんな(全く無力ではないけれども)自分も大きな歴史の流れの中に立つ一人に過ぎない、という感覚が、吸血鬼というファンタジックな題材を扱いつつも、実に歴史ゲームしていて楽しいのであります。

 さらに本作は、ゴールに向かう道はほとんど無数にあります。
 吸血鬼として真面目に(?)活動に励んで急速にしもべを増やすだけでなく、商人や職人に徹してひたすら金を儲ける、土地の人間と結婚してごく普通の家庭を営む、はたまた国から国へ流浪の旅を続ける…
 この辺りの自由度の高さは、戦国ライフシミュレーションの名作「太閤立志伝」を彷彿とさせられました。


 もちろん本作は定価700円のダウンロードゲーム、グラフィックはほとんどなく、キャラクターのデータは数字で、行動の結果は文章で示されることになります。さらに、自由度が高すぎて何をしたらいいか戸惑うこともしばしばで、その意味ではプレイする人を選ぶゲームではあるかと思います。

 しかしそれでもなお、歴史の中で生きる(言い換えれば「さまよ」う)ということを、無味乾燥になる一歩手前で――この辺り、主人公を吸血鬼という適度に(?)人間離れした存在としたことが生きています――存分に味合わせてくれるというのは、実に得難い体験ではあります。
 一気にクリアを目指してプレイするのではなく、歴史の頁を一枚一枚繰るつもりで、少しずつプレイしていくとぴったりな、そんなゲームであります。

「夜の魔人といくさの国 さまよえるヴァンピール」(ポイソフト ニンテンドー3DSダウンロードソフト)


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