『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第10話「託された心」
殤不患の頼みで、謎の少年に稽古をつける捲殘雲。その頃丹翡たちは、鬼歿之地にあって邪気を浄化する祠の中で、遂に最後の神誨魔械を見つける。一方、魔界では阿爾貝盧法の手引きにより、魔王と禍世螟蝗が会見に臨もうとしていた。しかし遂に姿を現した魔王の顔は……
残すところ三分の一を切って、なお物語が落着するところが見えない本作。特に敵方は幹部クラスがほぼ退場という状況ですが……
そんな中である意味一番よくわからない動きをしているのが殤不患ですが、前回その頼みで謎の少年――公式サイトによれば任少游に捲殘雲は稽古をつけます。といっても任少游の技はつぎはぎだらけのでたらめ、捲殘雲から見ても未熟ですが、そんな相手に捲殘雲は何故強さを求めるのか、ひいては勝利することの意味を問いかけ、何を以て勝利とするか、道は一つではないことを語ります。
ここで捲殘雲が語る内容は、初めて登場した時の、江湖で腕と名を上げることしか考えていなかった彼であれば、全く考えてもいなかったことでしょう。そして彼がそう考えるに至ったきっかけを与えたのは、まず間違いなく殤不患と思われます。これは小説版の『東離劍遊紀』で明確ですが、本作が、実は捲殘雲という青年が好漢の何たるかを知り、それを目指していく物語でもあることを思えば――ここで捲殘雲が求めるものが、任少游に託されたことには、大きな大きな意味があることでしょう。
自分の故郷を求めて、逢魔漏を用いて様々な世界を渡り歩いている任少游――捲殘雲との出会いを経て、自分自身の武術、名付けて「拙剣無式」を会得することを目指すと決めた彼の正体が何者であるか、それは我々の予想通りだと思います。だとすればいささか奇妙な関係にも思われますが、さて……
(というか刃無鋒といい、どれだけ捲殘雲からいただいているんですか殤不患)
そんな思わぬところで未来の大侠が生まれた(?)とは知らず、睦天命がその鋭敏な感覚で植物の存在を察知し、向かった先にあったのは、この鬼歿之地にあるとは思えないオアシスのような場所。そしてそれを成立させていた清浄な気を放っていたのは石造りの祠――その中に安置されていた最後の神誨魔械を、ついに殤不患は手にするのでした。
さて、ついに丹翡たちが目的を果たした一方で、護印師の偉い人は予想通り朝廷の説得に失敗。いや、これは危機感の全く無い朝廷の人間がいけないのですが、そんな連中に対して護印師たちは自分の力で鬼歿之地に陣地を作ると宣言――かなり無茶をしている感がありますが、新たに鬼歿之地に向かう護印師たちの中には、かの萬軍破将軍の元部下たちが加わっていたのがアツい。将軍の遺志を受け継ぎ、魔界の脅威に立ち向かおうという彼らの決意は、これも「託された心」なのでしょう。
一方、何だか繭になってずっと寝ているので当初思ったよりは存在感が薄れてきた浪巫謠ですが、そんな彼に迫るのは悍狡の群れ。哀れ黒い人も休德里安も、骸になってしまえば餌と同じ、さらに繭まで襲いかかってきた悍狡を前にしては、聆牙は手も足も出ない――と思いきや、何だか不吉なことを言い出したので、これはもしや!? と思いきや、本当に手足が出た!
いや、あの状態から変形して手足が出るのかと焦ったら、なんかいきなり小西克幸の声で喋る(当たり前)イケメンに変化! 魔界パワーを吸収してパワーアップしたらしく、こればかりは楽器らしいというべきか、妖糸を放ってノリノリで大暴れする美麗の魔人の姿は、天工詭匠ロボに並ぶサプライズというか、再び武侠とは――と深遠なる問いに頭を悩ますことになりそうです。
そんなヒーロー側が何だかよくわからない状況になっている一方で、手勢がどんどん失われていく禍世螟蝗猊下は、異飄渺の凜雪鴉に長々と実は気付いていましたよアピール。実は本当に気付いていないんじゃないかとハラハラさせられましたが一安心、しかし自分の手駒であれば別に正体が誰でも構わん的なことをインチキキセル野郎に対して言い出すのには、大変な不安が残ります。
そしてその大物ぶりを発揮して、異飄渺の凜雪鴉を連れて魔界に赴く禍世螟蝗。阿爾貝慮法と刑亥の導きで魔宮に足を踏み入れた二人の前に、魔王がついにその姿を現すのですが、刑亥も知らなかったその素顔は――凜雪鴉!?
というわけで、聆牙イケメン化が今回のハイライトかと思いきや、最後の最後に全てを攫っていった魔王様。殤不患と凜雪鴉、二人の主人公のルーツ的なものが同じ回で何となく描かれたわけですが、風来坊主人公好きとしては、別に出自はわからなくても――と思います。もちろん、そういう人間は少数派だと理解していますので、黙って成り行きを見守ります。
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