『フランケンシュタインの花嫁』 フランケンシュタイン再来 怪物の成長と伴侶の誕生と
後世のフランケンシュタインの怪物のイメージを決定づけた、ボリス・カーロフの『フランケンシュタイン』の続編――前作で死んだかと思われたカーロフ演じる怪物が復活、そして新たに生命創造に燃えるプレトリアス博士の存在が、更なる混迷を生み出します。
村人に追い詰められた末、燃え落ちる風車小屋の中に消えた怪物――しかし滅んだと思われた怪物は地下で生き延びていました。一方、怪物に殺されたと思われていたヘンリー・フランケンシュタインも息を吹き返し、婚約者のエリザベスをはじめ、屋敷の人々には笑顔が戻るのでした。
そしてヘンリーの傷も癒えた頃、彼を訪ねてきたのは大学時代の恩師・プレトリアス博士。やはり生命創造に取り憑かれた彼は、ヘンリーを自分の研究室に招待するのですが――そこで見せられたのは、瓶の中に詰められたホムンクルスたちだったのです。
それが自分の理想とかけ離れたものであることを知ったヘンリーは、プレトリアスからの協力要請を断るのでした。(ここでプレトリアスの研究成果を見て、自分のことを棚に上げてドン引きしているヘンリーが可笑しい)
一方、彷徨う怪物は村人たちに見つかった末に追い詰められ、一度は警察署の牢に捕らえられたもののすぐに脱出、森の中で暮らす盲目の老人の小屋に迷い込みます。盲目ゆえに怪物の姿を怖れない老人から友人として温かくもてなされ、言葉を教わる怪物ですが――そこにも追っ手は現れ、怪物は墓場の地下に迷い込むのでした。
そこで怪物が出会ったのは、人間創造の素材となる女性の死体を物色するプレトリアス。花嫁を作ってやると語り怪物を味方に引き入れたプレトリアスは、エリザベスを誘拐し、ヘンリーを脅迫して花嫁創造に協力させるのですが……
前作の続編として、前作のラストシーンの直後から始まる本作。怪物はともかく、その創造主たるヘンリーまでしっかり生きていたのはどうかと思いますが――この辺りは物語の展開上必要でもあり、まあ続編には仕方ないことでしょう。それはさておき、続編には前作に比べてパワーアップした要素がつきものですが、本作におけるその一つは、怪物の成長であります。
前作では言葉を喋らず、本能の赴くままに暴れるだけであった怪物。しかし本作における怪物は(確かに随所で凶暴に人々を血祭りに上げるのですが)、多勢に無勢で村人たちに簡単に捕らえられたりすることもあってか、怪物的な印象よりも、むしろ孤独の影が強く感じられます。
それだけに、その孤独が和らげられ、怪物が初めて他者と意思疎通することを学ぶ盲目の隠者のくだりは、短いながらもやはり感動的な場面であり(「怪物も涙を流すのだ!」)――そして同時にこの場面は、怪物が、実は知性と感情を持つ存在であることをも示すのです。
そして続編としてのもう一つの、そして最も大きな要素が「花嫁」であります。孤独を和らげるために怪物が伴侶を求める気持ちと、死体から生み出した生命をさらに増やそうとするプレトリアス博士と――二人の思惑が結びついた末に、本作のクライマックスでは、ついに「花嫁」が誕生することになるのです。
実は原作においても怪物は伴侶を求め、フランケンシュタインに創造させようとするものの、拒否されてしまうのですが――本作ではそれが創造されてしまうのが面白いところでしょう。
実は本作は(おそらくはディオダティ荘で)メアリー・シェリーがバイロンや夫に対して、実は前作には続きがあって――と語った物語という構成の作品であります。そして何よりも面白いのは、このメアリーと花嫁を、同じ女優が演じていることでしょう。もちろんその意図が作中で語られることはないのですが、何とも象徴的に感じられるではありませんか。
前作の時点で原作からは離れた物語を、さらにかけ離れたようでいて、いつの間にか近づいていたような、不思議な味わいの本作。それ故でしょうか、製作から実に90年近く経っていても、それなりに鑑賞に耐えうる作品であります。
『フランケンシュタインの花嫁』(NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン Blu-rayソフト) Amazon
![]() |
Tweet |
|
| 固定リンク