2024.12.09

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第10話「託された心」

 殤不患の頼みで、謎の少年に稽古をつける捲殘雲。その頃丹翡たちは、鬼歿之地にあって邪気を浄化する祠の中で、遂に最後の神誨魔械を見つける。一方、魔界では阿爾貝盧法の手引きにより、魔王と禍世螟蝗が会見に臨もうとしていた。しかし遂に姿を現した魔王の顔は……

 残すところ三分の一を切って、なお物語が落着するところが見えない本作。特に敵方は幹部クラスがほぼ退場という状況ですが……

 そんな中である意味一番よくわからない動きをしているのが殤不患ですが、前回その頼みで謎の少年――公式サイトによれば任少游に捲殘雲は稽古をつけます。といっても任少游の技はつぎはぎだらけのでたらめ、捲殘雲から見ても未熟ですが、そんな相手に捲殘雲は何故強さを求めるのか、ひいては勝利することの意味を問いかけ、何を以て勝利とするか、道は一つではないことを語ります。
 ここで捲殘雲が語る内容は、初めて登場した時の、江湖で腕と名を上げることしか考えていなかった彼であれば、全く考えてもいなかったことでしょう。そして彼がそう考えるに至ったきっかけを与えたのは、まず間違いなく殤不患と思われます。これは小説版の『東離劍遊紀』で明確ですが、本作が、実は捲殘雲という青年が好漢の何たるかを知り、それを目指していく物語でもあることを思えば――ここで捲殘雲が求めるものが、任少游に託されたことには、大きな大きな意味があることでしょう。

 自分の故郷を求めて、逢魔漏を用いて様々な世界を渡り歩いている任少游――捲殘雲との出会いを経て、自分自身の武術、名付けて「拙剣無式」を会得することを目指すと決めた彼の正体が何者であるか、それは我々の予想通りだと思います。だとすればいささか奇妙な関係にも思われますが、さて……
(というか刃無鋒といい、どれだけ捲殘雲からいただいているんですか殤不患)

 そんな思わぬところで未来の大侠が生まれた(?)とは知らず、睦天命がその鋭敏な感覚で植物の存在を察知し、向かった先にあったのは、この鬼歿之地にあるとは思えないオアシスのような場所。そしてそれを成立させていた清浄な気を放っていたのは石造りの祠――その中に安置されていた最後の神誨魔械を、ついに殤不患は手にするのでした。

 さて、ついに丹翡たちが目的を果たした一方で、護印師の偉い人は予想通り朝廷の説得に失敗。いや、これは危機感の全く無い朝廷の人間がいけないのですが、そんな連中に対して護印師たちは自分の力で鬼歿之地に陣地を作ると宣言――かなり無茶をしている感がありますが、新たに鬼歿之地に向かう護印師たちの中には、かの萬軍破将軍の元部下たちが加わっていたのがアツい。将軍の遺志を受け継ぎ、魔界の脅威に立ち向かおうという彼らの決意は、これも「託された心」なのでしょう。

 一方、何だか繭になってずっと寝ているので当初思ったよりは存在感が薄れてきた浪巫謠ですが、そんな彼に迫るのは悍狡の群れ。哀れ黒い人も休德里安も、骸になってしまえば餌と同じ、さらに繭まで襲いかかってきた悍狡を前にしては、聆牙は手も足も出ない――と思いきや、何だか不吉なことを言い出したので、これはもしや!? と思いきや、本当に手足が出た!
 いや、あの状態から変形して手足が出るのかと焦ったら、なんかいきなり小西克幸の声で喋る(当たり前)イケメンに変化! 魔界パワーを吸収してパワーアップしたらしく、こればかりは楽器らしいというべきか、妖糸を放ってノリノリで大暴れする美麗の魔人の姿は、天工詭匠ロボに並ぶサプライズというか、再び武侠とは――と深遠なる問いに頭を悩ますことになりそうです。

 そんなヒーロー側が何だかよくわからない状況になっている一方で、手勢がどんどん失われていく禍世螟蝗猊下は、異飄渺の凜雪鴉に長々と実は気付いていましたよアピール。実は本当に気付いていないんじゃないかとハラハラさせられましたが一安心、しかし自分の手駒であれば別に正体が誰でも構わん的なことをインチキキセル野郎に対して言い出すのには、大変な不安が残ります。
 そしてその大物ぶりを発揮して、異飄渺の凜雪鴉を連れて魔界に赴く禍世螟蝗。阿爾貝慮法と刑亥の導きで魔宮に足を踏み入れた二人の前に、魔王がついにその姿を現すのですが、刑亥も知らなかったその素顔は――凜雪鴉!?


 というわけで、聆牙イケメン化が今回のハイライトかと思いきや、最後の最後に全てを攫っていった魔王様。殤不患と凜雪鴉、二人の主人公のルーツ的なものが同じ回で何となく描かれたわけですが、風来坊主人公好きとしては、別に出自はわからなくても――と思います。もちろん、そういう人間は少数派だと理解していますので、黙って成り行きを見守ります。


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『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第9話「覚醒」

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2024.12.02

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第9話「覚醒」

 繭状態のところに襲いかかってきた休德里安を、半ば無意識のうちに斃した浪巫謠。一方、深手を負った霸王玉と花無蹤は、神蝗盟より互いとの暮らしを選び、任務を放棄して姿を消し、凜雪鴉を苛立たせる。そして睦天命たちを連れて地上に戻った殤不患は、捲殘雲に奇妙な頼みをするのだが……

 サブタイトルのとおり、冒頭に浪巫謠のさらなる魔族化が描かれる今回。前回、どう考えても死亡フラグを打ち立てていた休德里安は、やはりあっさりと散るのですが、それが浪巫謠に敵と認識されてではなく、彼が夢うつつの中で禍世螟蝗と戦っているつもりで暴れたいたら、その攻撃をくらってある意味とばっちり的に殺されたというのが哀れです。
 ちなみにこの夢うつつの中では、禍世螟蝗の巻き添えで殤不患と睦天命も死んでいるようですが――それは夢の中で阿爾貝盧法が告げるように、彼が魔族だから周囲の人々を不幸にしてしまうのでしょうか。魔族にだって愛情はあるんだーっと、一番言って欲しがってるのは阿爾貝盧法のような気もしますが……

 さて、愛情といえば歪んだ愛情では右に出る者のない嘲風は、凜雪鴉によってやはり西幽に戻されていましたが――浪巫謠を取り戻すために西幽の全軍で魔界を攻めると言い出したものの、さすがに周囲からは可哀想な人を見る目で扱われる始末。ある意味無力化したともいえますが、これが凜雪鴉の企みなのでしょうか。

 そして愛情といえば、意外なところで花開いた愛情が一つ――前回、互いの力を合わせた芙爾雷伊との決死の戦いの中で、互いの真価を認めあい、何だかイイ感じになっていた霸王玉と花無蹤。二人は、なんとせっかく手に入れた魔宮印章と禍世螟蝗から託された神誨魔械を異飄渺の凜雪鴉に返却してしまいます。
 二人が、忠誠心よりも使命よりも大切な人を見つけたので寿退職して東離で静かに暮らします! と言い出したのには、さすがの凜雪鴉も「話を聞け!」と異飄渺の演技を忘れて叫びますが、もはや固い絆で結ばれた二人には届きません。空間転移術(便利)で二人が魔界から消えた後には、ワナワナ震える凜雪鴉が残されるのみ――と、凜雪鴉がこうなるのは久々ですが、彼が大悪党をハメること以上に、彼の見込みが狂って冷静さをかなぐり捨てて荒れる様は、大変気持ちが良いものです。心の底からザマあと言いたいと思います。
(しかし絶対に凜雪鴉の餌食になると思っていた花無蹤が見事に笑傲江湖してしまうとは、全く予想が外れて感服しました)

 一方、魔界でかつての仲間たちと再会した殤不患は、そのまま魔界の奥に殴り込み! はせず、前回とは逆パターンで(嵩張りそうな天工ロボを引き上げつつ)鬼歿之地に戻ります。当分ウォウウォウはお預けのようで残念ですが……
 そこで第二期にあっさり騙された護印師の偉い人に東離の宮廷を動かすように頼み(たぶん無理)自分たちは本来の任務である、最後の神誨魔械を探すことにした殤不患ですが――捲殘雲が見つけてきた謎の洞窟が、彼に奇妙な行動を取らせます。

 捲殘雲に防瘴気マスクを被ってここで待っていて、やって来た若僧の相手をしてやってほしいという殤不患。捲殘雲相手に三拝して殤不患が去った後、はたしていずこからか現れた幼さを残した剣士が捲殘雲に戦いを挑みます。しかし捲殘雲相手に軽くあしらわれた彼は、弟子入りを志願。共感性羞恥に震える捲殘雲も、殤不患の頼みとあらば仕方なく、共に稽古することになるのですが――どう見ても正体がバレバレのこの若僧の正体は如何に、というよりどうやってここに来たのか。気になると言えば、次回のナレーションではまるで捲殘雲が遺志を託しそうな勢いで、むしろこちらが心配です。


 にしても主人公(の片割れ)が全く知らぬ間に、魔宮貴族と神蝗盟という二大敵組織が幹部ほぼ全滅しているとは、意表を突いた展開です。
 何となく魔界編は第四期でカタが付きそうな気がしますが、それでは完結編では何が描かれるのか。残り四話の行方が気になります。


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2024.11.24

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第8話「再会」

 魔宮会議の場で、魔界の行方を左右するような策を献じる阿爾貝盧法。一方、異空間に囚われ、芙爾雷伊の襲撃を受けた霸王玉と花無蹤は、それぞれ深手を負いながらも手を携えて戦う。そして凜雪鴉に誘い出された嘲風を探す睦天命たちに襲いかかる魔族。そこに現れた男こそは……

 一人討たれた上に三人欠席(実際にはうち二人死亡)して、御前に集うのはたった三人とすっかり寂しくなった魔宮会議。そんな状況で阿爾貝盧法は、魔宮印章で復活する魔神だけでなく、魔界に眠る魔神全てが復活したら――と、聞いたこともない仮定の話を始めます。しかしそうなっても魔神たちを人間界に送ってしまえば問題なし、今度は人間界の半分の王=西幽の帝=禍世螟蝗と手を組んでるので――という彼の発言は、前々回の会談の結果なのでしょう。一見魔界に有利な提案ですが、阿爾貝盧法の場合、真意を全て喋っているなどとは到底思えませんが……

 さて、そんな会議の最中に、魔宮貴族二人を神蝗盟の二人が殺したと知り、激怒して二人が捕えられた異空間に向かう魔宮三位・芙爾雷伊。彼女の挑戦を真っ向から受け止める霸王玉ですが、なんと芙爾雷伊の洋傘(!)を前に完全に力負け、しかも肩の骨を折られるという信じられない展開となります。しかしトドメを刺されんとした彼女を救ったのは、意外にも花無蹤でした。
 しかも、剛力を失った自分には何も残されていない――と心まで折られた霸王玉に対して、花無蹤は自分の敗北の過去を語ると共に、勇猛な気骨ことがお前の真骨頂だと、まさかの叱咤激励。そして追撃してきた芙爾雷伊に対し、花無蹤は霸王玉に化けて芙爾雷伊の攻撃を両足の骨をバッキバキに折りながらも受け止め、その隙に霸王玉が芙爾雷伊に乾坤一擲の一撃――しかも互いの役割を果たすため、神誨魔械を交換するという、まさかのコンビネーションで逆転勝利を飾ります。

 今度は自分が自慢の足を失って自嘲する花無蹤に対し、貴様は忍び足だけが取り柄ではなく、勇気と知略の男だと讃える霸王玉。大事なものを失った者同士で手を取り合って、何だかいきなりイイ感じですが、逆に盛大に別のフラグを立てたようで不安になります。
(とりあえず、縦合体して互いを補えばいい線いくのでは――って鬼か!)
 そしてまさかの一話で退場となった芙爾雷伊ですが、実力では完全に二人を上回る姿にはようやく魔宮貴族の凄みを見せてもらえましたし、ゴス衣装にどこか歌舞伎を思わせる台詞回しも面白く、惜しいキャラであったことは間違いありません。

 ちなみに二人が仕える禍世螟蝗はといえば、表の方の顔で嘲風の行方を心配――というより手駒が一人いなくなって不便という感じですが――して捜索を厳命。そしてその禍世螟蝗に、わざわざ嘲風は魔界にいると教えた異飄渺の凜雪鴉(真剣に驚く禍世螟蝗にちょっと不安感が漂います)は、睦天命たちから言葉巧みに嘲風を引き離して、さっそく禍世螟蝗の下に送り返した様子。手駒に使うと言っていたわりにはあっさり手放しましたが、これもまた策士の手管なのでしょう。

 しかし、この凜雪鴉の行動が意外な波紋を呼びます。嘲風を追ってきた睦天命と天工詭匠は、前回辛くも逃れた魔族に再び見つかり大ピンチ。追い詰められた二人ですが、そこに現れたのは「殤!」「不患!」――鬼歿之地からはるばる下ってきた主人公、ようやく魔界に見参です。
 久々の念白付き、しかも「His/Story」(というか久々のウォウウォウ)をバックに大立ち回り――と最高の見せ場で魔界デビューの殤不患。しかしまさか、ノリノリで奥の手のサウンドブースターを披露した天工詭匠ロボと、その力を借りて「His/Story」を熱唱する睦天命にその場を攫っていかれるとは、予想もしていなかったでしょう。

 なにはともあれサブタイトル通りに再会した殤不患と睦天命。しかし、いきなり自分のところから消えたことにメラメラ来ている睦天命という強敵を迎えた殤不患の運命は……
(さらにそこにわざとしくチラっと顔を出す凜雪鴉という、殤不患的には衝撃映像)

 そしてあまりの盛りだくさんぶりに忘れかけていましたが、前回変な薬を飲まされて繭になった浪巫謠は、相変わらず繭の中で唸っている最中。そしたその繭の前でご満悦の安索亞特ですが、魔宮会議をサボってまで見物していたのが祟り、魔宮第二位・休德里安に不意打ちを受けてあっさり命を落とすことになります。
 浪巫謠が手も足も出ない状況で、黒い人が退場してしまい焦る聆牙を尻目に、休德里安は繭に手をかけようとして――と、どう考えても魔宮第二位も退場しそうなところで次回に続きます。


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2024.11.17

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第7話「魔道の果て」

 魔族の襲撃を受けた睦天命一行の窮地を救った凜雪鴉。一方、一連の謎めいた行動を訝しむ刑亥に、阿爾貝盧法は時空魔術によって因果を改竄した末の呪いを語る。そんな中、それぞれの動きを見せる魔宮貴族たち。そして鬼歿之地では、瘴気の谷の底を探るため殤不患が谷底に向かう……

 早くも一クールの折り返し地点に到達した今回ですが、冒頭描かれるのは、魔族から襲われる睦天命一行の危機。どこかの誰かさんによる恨みを八つ当たりされる羽目になった一行ですが、見るからに雑魚っぽい相手にもかかわらず、天工詭匠ロボは一撃でダウンし、睦天命は得物でもある琴を破壊され、無力な嘲風はちょっとか弱い女性にやり過ぎではないかと思うような殴打を受け――と思ったらそれは全部幻でした、と文字通り煙に巻いたのはインチキキセル野郎。
 もちろん善意で助けたわけではなく、利用する気満々――凜雪鴉のことを知らない三人が出会ってしまったのが(特に一番利用のしがいがありそうな嘲風)運の尽きという気もしますが、利用価値のあるうちは一番頼もしい相手なのかもしれません。利用価値のあるうちは。

 一方、前回ついに神蝗盟にまで手を伸ばしたのに対し、さすがに不審というか不安感を隠せない刑亥に対し、阿爾貝慮法は驚くべき真実を語ります。魔界の最下層に生まれた非力な存在であった自分がここに至るまでの苦労と苦闘――を彼が全くしていないことを。
 端から見れば凄まじい天賦と幸運の結果に見えるそれは、彼が到達した時空魔術の秘奥、因果律すら捻じ曲げる彼の技によるもの。しかしその末に、自分自身にとって辛い記憶、不都合な過去は、自分でも意識できないレベルで全て消し去られてしまったのです。そんな彼にとって、もはや魔宮貴族という輝かしい地位に象徴される自分の人生は、自分の力で勝ち取ったものではなく、別の世界線の自分とはいえ、人が引いたレールの上を歩んでいるのみ。彼のように気位の高い男にとって、それはどれだけ味気無いものでしょうか。

 単なる愉快犯ではないことが明らかになった阿爾貝盧法ですが、彼が息子である浪巫謠に固執する理由もそこにあります。浪巫謠は自分の人生にとっては予想外の異物、自分自身の運命を知り尽くした自分でもわからぬ存在の登場に、彼は歓喜に震えていたのです。
 つまりこれまでの一連の行動は、単なる悪趣味ではなかったということになりますが――本人は全く理解の範疇外だと思いますが、自分自身の予想もつかない子供の成長を心待ちにするというのは、これはもう普通の父親の心境ではないでしょうか。
(そして、そんな身の上を聞いたら、喜んでオモチャにしようとするヤツが一人いるわけで……)

 そんな思いもよらぬ魔族模様が語られているかと思えば、元気に暗躍している魔宮貴族たちは、ある意味悩みがないといえるでしょう。しかしその筆頭である烏蕾娜と佩雷斯は、本心を隠しながら酒を酌み交わしている間に、それぞれ霸王玉と花無蹤にびっくりするくらいあっさりと暗殺される有り様(そしてその後、刑亥によって雑に異空間に封じられる神蝗盟組)。

 一方、安索亞特は浪巫謠にパワーアップのためと称して怪しげな薬を勧めますが――聆牙が止めたにもかかわらずあっさり飲み干した浪巫謠は、悪夢の中でかつて殺した相手(たぶん)や睦天命、そして殤不患にさんざん詰られることになります。
 これで人間の心を捨ててパワーアップするということなのかな、と思いますが、何だか自分の人生に迷って他人の甘言に乗せられた挙げ句、結果的に自分と周囲を傷つけるというのは既視感がありますが――もう少し成長しようよ、というのはさすがに酷でしょうか。

 そして鬼歿之地では、瘴気の谷底が魔界に繋がっているのではないかという疑いを確かめるために、殤不患が谷底に降りることになります。予告を観た限りではいきなり飛び降りていたので、さすがに心配になりましたが、第二期で婁震戒に折られた空飛ぶ神誨魔械・誅荒劍(完璧に存在を忘れてました)を丹翡から託され、辛うじて剣に残っている浮遊能力を使って降りていくことに……
 いや、やっぱり蛮勇にも程がありますし、なにかあったら残された二人もただでは済まないと思うのですが、ここで躊躇しないのが江湖の男伊達というものでしょうか。

 かくて混沌にもほどがある魔界に降りていく(であろう)殤不患ですが、そこで待ち受けるものは――まさか顔馴染みがほとんど全員揃っているとは思ってもいないでしょう。特にインチキキセル野郎。


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2024.11.10

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第6話「謀略の渦」

 人間たちによる阿爾貝盧法の城の襲撃は衝撃を呼び、魔王は魔界に入り込んだ人間の排除を命ずる。しかし花無蹤と霸王玉の前にそれぞれ魔宮貴族・烏蕾娜と佩雷斯が現れて取り引きを持ちかけ、安索亞特も浪巫謠に接近する。一方、鬼歿之地の高地に辿り着いた殤不患はある推測を語る……

 気がつけばもう第六話になった本作ですが、まだまだ状況は混迷の一途を辿ります。前回のラストで、阿爾貝盧法の居城に踏み込んだ浪巫謠と花無蹤が激突することになりますが、なるほど共に西幽の有名人らしく互いを知る二人の戦いは、本来の目的には関係ないと見切った浪巫謠が無駄に父親の部屋を破壊しつつ撤退。残された花無蹤と、後からやって来た霸王玉も城を去ります。

 しかし、少なくとも浪巫謠についてはほとんど自作自演に近い阿爾貝盧法は、しれっと魔宮会議に被害者面で出席。犯人は神誨魔械を持った人間と告げたことで、一同を困惑させます。専守防衛に目覚めた魔王様は、この状況に侵入者の人間排除を命じるのですが――それを受けてバックレた安索亞特に放り出された形なのは神蝗盟の二人です。
 しかしそこに現れた異飄渺の顔をしたインチキキセル野郎が、「盟主の狙いは魔宮印章なんですよ。あれ、聞いてなかったですかあ?」と煽りを入れた(また、「魔宮印章を集めると魔神の力が得られる」と、絶妙にずらしたことを言うのがイヤらしい)ことで、二人の間はさらにヒビが入っていきます。

 それぞれ手分けして安索亞特を探そう、などと手がかりもないのに言い出すあたり、既自認するほど冷静ではなくなっている花無蹤ですが、一人になった彼の前に現れたのは、魔宮第五位の烏蕾娜。そして霸王玉の前にも魔宮第六位の佩雷斯が現れ、それぞれ安索亞特の時と同じような取り引きを持ちかけます。公式サイトのキャラクター紹介によれば、共に今の魔王の路線に反発する過激派、そして互いをライバル視している二人が、同様に犬猿の仲である神蝗盟の二人に近づけば、碌なことにならないのはめにみえています。

 一方、徒労感に打ちひしがれる浪巫謠の前には安索亞特が登場。浪巫謠の耳で接近を察知できない辺り、大物感を感じさせますが、むしろ彼の得意技は陰謀。全く懲りていないように、阿爾貝盧法を敵にする者同士、手を組もうと浪巫謠に持ちかけますが――それを密かに覗いながら、安索亞特の策を学ぶのも息子にはよい修行、などと放置している阿爾貝盧法の方が大物であることはいうまでもありません。
 むしろ神蝗盟の二人の存在を知った阿爾貝盧法は、第三期で神蝗盟と手を組んでいた刑亥を使って、禍世螟蝗に渡りをつけるのですが――イケボ同士、いやラスボス級の悪党の顔合わせが何を生むのか、現時点では想像もつきません。
(しかし、今回も阿爾貝盧法の秘書、というより腰巾着であった刑亥ですが、インチキキセル野郎に操られていないか、不安が残ります)

 そして今回も鬼歿之地で苦労している殤不患・丹翡・捲殘雲ですが、瘴気の薄れる高所に登った殤不患は、この瘴気が、以前迷い込んだ魔界のものと同じであると語ります。そして三人の目に映るのは、瘴気を吐き出す巨大な谷。つまり、この下には――ようやく、主人公がメインの舞台に立つ術が見えてきました。

 一方、相変わらず同担拒否(そもそも同担ではない)の嘲風が、睦天命に対してお前らのせいで浪巫謠が――と八つ当たりしていたところに現れたのは、名前も覚えていませんが、その殤不患が魔界に迷い込んだ時に倒した魔族の縁者。じゃないかなあ、たぶん。
 八つ当たりのようで関係性的にはそうでもない形で魔族たちが襲いかかってきたところで、続きます。


 というわけで、相変わらず体感時間が短い展開ですが、ここのところ魔宮貴族たちの陰謀が続いて話の流れが固まってきた印象もあります。ここは一つ、折り返し地点になる次回では、後半の原動力になる爆弾の投下を期待したいところです。
(予告を見た限り、実際に爆弾=殤不患が魔界に降ってきそうですが……)


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2024.11.03

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第5話「魔宮貴族」

 最後の神誨魔械を探し、鬼歿之地を苦心しながら征く殤不患一行。一方、魔界に飛ばされた睦天命たちは、浪巫謠を探すため一時休戦する。その頃、阿爾貝盧法を狙い、それぞれのやり方で侵入を試みる霸王玉・花無蹤・浪巫謠。そして刑亥と再会した凜雪鴉は、思わぬことを彼女に告げる……

 第5話まで来ましたが、相変わらず各勢力が独自の動きを見せることもあり、毎回体感10分くらいの展開が続く本作。それでも西幽組が魔界に来たことで、だいぶ登場人物たちが集結してきた感があります。その西幽組は、可哀想なお付きの人は狂乱した末にあっさり退場、残った睦天命・天工詭匠・嘲風は、浪巫謠という共通の目的があるため、一時休戦することになります。ここで睦天命が殤不患並みの懐の深さを見せる一方で、「あれは身を守る術すら知らぬ小鳥だった」とか一見しおらしいことを言い出す(けれどもその小鳥に殺し合いをさせていた)嘲風のさりげないヤバさが光ります(この人こそ照君臨の血を引いているのでは……)。
 一方、ひたすら鬼歿之地を歩いている殤不患・丹翡・捲殘雲組は、今回も少しアクションがあったきりで出番がわずかなのが、そろそろ寂しいところです。

 そんなわけで今回メインの舞台は魔界なのですが、安索亞特の依頼を奇貨として、ついに神蝗盟組が阿爾貝盧法の城に殴り込み。花無蹤は盗賊らしく密かに忍び込む一方で、霸王玉はまさに異飄渺でなくとも「いや少しは考えましょうよ」と言いたくなる勢いで正面から突っ込んだところで、刑亥と浪巫謠がやって来て――と、いつの間にかこの二人(というか行動を共にしていたはずの刑亥)が阿爾貝盧法に置いて行かれているのが妙におかしい。

 その阿爾貝盧法はどこに、と思いきや、城の中ではなく魔王様の御前。魔宮貴族たちの会議の招集を受けて――とうことでついに前回退場した迦麗以外の、未登場だった魔宮第二位から第六位までの貴族が登場します(第一位の魔王様はシルエットのみ登場)。こうしてみると安索亞特だけが人外めいたシルエットで、皆さん案外普通の印象を受けます。
 ここでの新情報は、前回浪巫謠が迦麗から奪った魔宮印章は、四つ集めると新たな魔神を呼び出せるという事実。全部で八つあるので、魔神が二体呼び出されるのは確定のようなもの――などと言ったら、「この魔界がついに手に入れた太平の世」などと魔王とは思えないことを言っている魔王様に申し訳ないでしょうか。

 さて、本来であればこの情報は結構大きなインパクトがあるはずですが、しかしそれを大きく上回るサプライズが今回待ち受けています。
 遅れてやって来た浪巫謠と刑亥の前に現れ、二人の前で異飄渺の擬態を解いて姿を見せたインチキキセル野郎。散々警戒されながらも、浪巫謠を先に城に忍び込ませた彼は、刑亥に問いかけます。魔界に来てから妙に体が軽い、普通の人間にこういうことはあるのか、と。それを聞いた刑亥は即座に否定、そんなのは魔族だけだということになるのですが――ということは凜雪鴉に魔族の血が!?

 ……などとは全く素直に驚けず、また適当にフカしてるんじゃあいの? と思われるのがインチキキセル野郎たる所以ですが――その言葉を聞いて、こんなヒドい奴が人間なはずはないから、それなら理解出来る! とうっかり思ってしまうのが刑亥の刑亥たる所以。もう少し人を疑う心を――と魔族に言うのも何ですが、これまで何度痛い目に遭わされたのか忘れたのでしょうか。
 というより、刑亥が信じ込んだ時点でもう嘘確定のような気がしますが、今のところ人間とは異なる思考回路を持っていそうなのが阿爾貝盧法くらいで、あとは意外と人間っぽいのも影響しているように思います。個人的には、そんなことになっても全くケロッとしている凜雪鴉が魔族だと、散々悩んでいた浪巫謠の立場がなくなりますし、あっさり敗れ去った蔑天骸に「仕方ない」感が生まれてしまうので、人間であって欲しいところですが――やっぱり、浪巫謠の話を聞いて適当に思いついたのではないかしら。

 などと、刑亥ならずとも色々迷わされている間に、浪巫謠の身に花無蹤の鎖が迫る場面で次回に続きます。


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2024.10.27

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第4話「奇巧対決」

 異飄渺に化けて魔界に潜入した凜雪鴉は、霸王玉と花無蹤それぞれに対面、互いの反目を更に高める。その頃西幽では、嘲風の軍が睦天命と天工詭匠を襲う最中に鬼奪天工が乱入、禁断の兵器で暴れ回る。一方、自らの在り方に葛藤する浪巫謠は、力を発揮できず、迦麗の猛攻に追い詰められるが……

 相変わらず様々な勢力のキャラクターたちが、それぞれの場所で派手に動いてまことに賑やかな本作ですが、今回も見どころ十分。冒頭から、異飄渺に化けた凜雪鴉がいよいよ暗躍を開始します。
 禍世螟蝗から霸王玉と花無蹤の監視を命じられたのをよいことに、それぞれに接近してはプライドを絶妙にくすぐり、その上で相手への反感を高めるという、実にタチの悪い動きを見せる凜雪鴉。特に元盗賊で自分の知謀に絶対的な自信を持つ花無蹤は、どう考えてもキセル野郎にとっては最高の獲物であるはずで、この先プライドをズタズタにされた上に組織での地位やら何やら全てを失うのではと楽しm――いや心配でなりません。

 さて、そんな神蝗盟側の動きを前フリに、今回のクライマックスの一つとなるのは、西幽での睦天命・天工詭匠と嘲風の軍勢の戦い――にガトリング砲片手に乱入してきた鬼奪天工と天工詭匠の戦い。さすがにこの世界においてもガトリング砲は規格外の代物なのか、嘲風以下が目を白黒させている間にガトガト放たれる銃弾は、主に彼女の軍勢の方を蹴散らしていきます。しかし鬼奪天工の狙いは天工詭匠、天工が名に付く同士で過去に色々と因縁があるようですが――しかしガトリング砲まで出してくるとは辛抱たまらんと、天工詭匠は睦天命を置いて、自分の洞窟の中に飛び込みます。
 ガトリング砲に対抗できそうなもの(そしてそれだけの説得力があるもの)など、そんなに多くはありませんが、まさか――と思っていたところに現れる天工詭匠。その姿は――ロボ(正確にはパワードスーツ)!? いやはや、悪い予感が当たったというか、「武侠とは」という疑問に真顔にもなろうというものですが、まあガトリング砲もロボも、時代伝奇ではアリなのですから、武侠ものでもアリでよいでしょう(どちらもよくない)。

 何はともあれ、絶対的優位を確信していたところに後出しで登場した驚異のテクノロジーに鬼奪天工も浮足立ち、ガトリング砲を乱射するものの、ロボの前では豆鉄砲同然。さらにその隙を睦天命に突かれて音波攻撃で弾倉を切られたところに、ロボのメガトンパンチ一閃! 鬼奪天工はひとたまりもなく吹き飛ばされます。
 しかし鬼奪天工の望みは魔界の土を踏むこと。最後の力で天空に魔界への扉を開けた彼だけでなく、嘲風とかわいそうなお付きが、そして睦天命が扉に引きずり込まれたのを見た天工詭匠も扉に飛び込みます。しかし念願の魔界で満足気に息絶えた鬼奪天工はともかく、巻き込まれた面々は、ただ呆然とするのみ……

 ちょうどその頃、浪巫謠は自分を獲物として襲いかかってきた迦麗を前に防戦一方。さすがにその身を心配する刑亥ですが、阿爾貝盧法は何も分かっていないと一笑に付します(最近刑亥こんな役ばっかり)。浪巫謠が押されているのは、単純な実力差ではなく、その身に宿る魔界の血に戸惑い、自分が魔へと変じることに恐れているため――そんな浪巫謠に、聆牙が声をかけます。単なる道具でも武器でもなく、互いに命を預けた相棒として――その言葉に、たとえどうなったとしても、仇である阿爾貝盧法を討つという強い想いを取り戻した浪巫謠は、再び覚醒し、凄まじい叫びをあげます。
 その声は、聴覚の鋭敏さでは右に出るもののいない睦天命に届いただけでなく、浪巫謠に激しく執着し(元はといえばその想いがこじれた末にこうして魔界に放り込まれる羽目になった)嘲風――魔界の扉から落ちてきた時に、かなり危ない頭の打ち方をしてダウンしていた彼女をも一発で目覚めさせます。

 そして荒れ狂う浪巫謠の力は暴風のように迦麗を翻弄、ついにその槍を砕き、彼女の身を貫きます。かくて魔宮第七位を斃し、その印章を受け継ぐことになった浪巫謠ですが――もしかして位だけであれば父親を上回ったということでしょうか。


 一方、かつての仲間たちが魔界で大変なことになっているとは露知らず、殤不患は捲殘雲と丹翡を連れ、鬼歿之地の砂嵐の中を歩んでいるところで――と、今回も危うく出番なしのところをギリギリ間に合って、次回に続きます。


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2024.10.20

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第3話「侠客の決意」

 悍狡を倒したものの、そこが魔宮第七位の迦麗の狩場だったことから、彼女の襲撃を受ける浪巫謠。一方、鬼歿之地に向かう丹翡と捲殘雲を見送ろうとした殤不患は、突然前言撤回し、やはり自分も行動を共にすると告げる。その頃、西幽では嘲風の軍勢が、睦天命と天工詭匠を襲撃。さらにそこに……

 伝奇ものの醍醐味の一つは、様々な勢力が折り乱れての乱戦・混戦にあると思いますが
本作はまさにその醍醐味が横溢。前回登場した安索亞特と覇王玉&花無蹤はお休みでしたが、代わって魔宮第七位の迦麗が新登場。魔界でも西幽でも混戦模様の中、前回全く出番のなかったあの男がついに……

 というわけで、サブタイトルから察せられるように殤不患がようやく立ち上がるのですが、冒頭に登場したその姿は、これまで同様に覇気のないもの。自分が動いて周囲の人間が傷付くのはもう耐えられないんだ! と、侠客にあるまじきナイーブ無双っぷりです。これはさすがにキセル野郎ならずともガッカリ度が高いですが、さすが名門の奥様はそんな態度はおくびにも出さず、丹翡は捲殘雲と鬼歿之地に向かうと告げます。
 まあ、少なくとも殤不患が気にしていた片翼ドラゴンは、ヤンデレの無理心中を邪魔したばかりに既に惨殺されているのですが、仮にそれを知っていても彼の考えは変わらないでしょう。旅立つ二人のために、鬼歿之地マップを作って来たのは彼らしい人の良さですが……

 しかし彼は、捲殘雲がつけていた対瘴気用のマスクを見て、突然何かを悟ったような態度を見せ、自分も同行すると言い出すのですが――果たして彼は捲殘雲に何を見たのか? これまでの物語でそれらしい場面はなかったように思いますが、前期で時を超えた時に何かあったのか、あるいは彼の語られざる過去になにかあったのか? 謎は深まりますが、何かと安否が気遣われる捲殘雲が、想像以上に重要人物なのは間違いないようです。

 一方、前回魔族の血に覚醒した浪巫謠は息も絶え絶えですが――そこにさらなる嫌がらせ、いや試練を用意していたのは阿爾貝慮法。実は浪巫謠が悍狡を倒した場所は、魔宮第七位・迦麗の狩り場――そこでいわば獲物をかっさらった浪巫謠がただで済むはずもありません。果たしてその場に現れた迦麗――前回登場した安索亞特が陰謀家の蜘蛛繫がりで花無蹤に重なるものがあったのと対照的に、こちらはバトルマニアの女傑ということで覇王玉を連想させるキャラクターですが――は、早速浪巫謠に襲いかかります。
 連戦とはいえ黙っていては殺られるのみと応戦する浪巫謠ですが、窮暮之戰後に魔王が作り上げた秩序を崩壊させようと企む阿爾貝慮法にとっては、この事態はその手段の一つにほかなりません。その手足となることを命じられた刑亥こそいい面の皮ですが、今回は聆牙に凄まれてたじろぐなど、この先が心配になるばかりです。

 さて、冒頭に触れた通り、今回は出番のなかった覇王玉&花無蹤ですが、さすがにあの二人だけは拙かったかな――と禍世螟蝗も思ったらしく、異飄渺をフォローに送り込みます。といっても、連絡取ったらいきなり魔界行けという無茶苦茶ぶり(一応、準備もせずに行って大丈夫か、的なことは言いますが……)。もう一つの顔の方で萬軍破に反旗を翻されたのもこういうところなんじゃないかな――と思いますが、もしかしたら異飄渺の正体に気付いて嫌がらせをしたのかもしれません。
 もっとも、キセル野郎は四次元ポケットの一つも持っていそうな感じなので、ケロッとしていそうですが……

 そして前回ラストに描かれた嘲風の睦天命&天工詭匠攻めですが、言うまでもなく相手が悪く、兵隊はバッタバッタとなぎ倒されていきます。睦天命の琴によるマップ兵器攻撃は、音を使って撹乱するという嘲風の指示で封じることができましたが、むしろより恐ろしい天工詭匠のトラップが発動。ついにはガトリング砲まで――いや、ガトリング砲はやりすぎでは? と思いきや、そんなものを持ち込んだのはなんと鬼奪天功!?
 カラクリ使い同士の因縁のようですが、ただ出すだけでもなんか面白いガトリング砲を、武侠もので、しかも年寄りが持って乱入という絵面の面白さが、今回描かれた全てを吹き飛ばして次回に続きます。


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2024.10.15

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第2話「魔界の宴」

 阿爾貝慮法からけしかけられた魔獣悍狡と戦ううちに、己の中の魔族の血に目覚める浪巫謠。一方、丹翡たちは魔界に抗するため、最後の神誨魔械を探す決意を固める。そしてその頃魔界に乗り込んだ覇王玉と花無蹤の前に、魔界第四位の貴族・安索亞特が現れる。彼が二人に持ちかけたのは……

 (TV放送での)ラストシーズンだからか、かなり展開が早いのが気持ち良いこの第四期。今回も複雑に入り乱れる諸勢力の動きが並行して描かれ、刻一刻変わっていく状況の変化が楽しめました。

 そんな中で何といっても最も大きく動いたのは浪巫謠でしょう。前回のラスト、魔界の貴族の城に出入りするためには――と、魔獣悍狡討伐を父から命じられた浪巫謠ですが、ポケモンめいた外見のわりに悍狡は内功まで使いこなすかなりの強敵。聆牙も刃が立たぬ相手に散々苦戦を強いられる浪巫謠ですが――その中で彼はついに魔族の血に覚醒、聆牙を突き立てただけでは終わらず、日頃の優雅さが嘘のように、弱った相手を素手で乱打し殴り殺す残虐ファイトを繰り広げます。
 その様に、人間界に放って置いて辛い目に遭わせた甲斐があったと声を裏返らせて喜ぶ阿爾貝慮法と、ドン引きする刑亥(しかし刑亥、明らかに今回の面子の中では格下過ぎて今後の立ち位置が心配です)。そして我に返り、己の所業に驚く浪巫謠の頭には、魔族の証である角が……

 一方、鬼奪天功の術法で、結構簡単に魔界へと乗り込んだ覇王玉と花無蹤は、魔界の者たちが悍狡を狩ろうとして返り討ちに遭う姿を目撃、勝手に血をたぎらせた覇王玉は悍狡に襲いかかります。しかし浪巫謠があれだけ苦戦したのに、と思いきや、彼女たちの手には神誨魔械――前回、禍世螟蝗から与えられた、相性を問わず使えるように細工されたもの(萬軍破は真面目に怒っていいと思う)――があります。その力で覇王玉は正面から悍狡を粉砕、花無蹤も姿を消してからの鎖縛りで相手の動きを止め、念白付きでトドメを指します。いや、あれだけ浪巫謠が苦戦して、悲壮な勝利を遂げた後にこれはちょっと――とは強く思いますが、やはりこれは神誨魔械の威力に驚くべきなのでしょう。

 そして何はともあれ、悍狡を仕留めた二人に、声をかける者がいます。下半身が蜘蛛のような異形の姿のその人物(?)は、安索亞特――魔界第四位の貴族。彼は二人の強さを称え、食事に誘います。見るからにヤバそうな料理(もしかして素材は悍狡?)が並ぶ卓で、遠慮なく覇王玉が飲み食いする一方で、安索亞特から魔界の状況を聞かされる花無蹤。
 実は今の魔界は、魔王によって貴族同士の私闘が禁じられており、力関係も曖昧になっているとのこと。そこに現れた他所者を彼がもてなすということは――そう、二人を使って敵を除こうという思惑にほかなりません。そしてその敵とは、何と阿爾貝慮法! 蜘蛛同士が密議を交わすその様こそは、卓上の様子のおぞましさ以上に、まさに「魔界の宴」と呼ぶべきでしょう。

 と、魔界の側が早くも動き出した一方で、東離では丹翡が皇帝ならぬ皇弟・晏熙に謁見し、窮暮之戰の再来に備えて戦力状況を奏上しますが――全く危機感のない晏熙は真面目に取らず、貴族の子弟で見目麗しいのを集めて兵として使えば良いと、宋の禁軍のようなことを言い出す始末。これは頼りにならんと、丹翡、捲殘雲、そして確か第二期に出てサソリ娘に振り回されてた老人は、新たな神誨魔械を探すことを考えます。鬼歿之地に眠るという、最後の神誨魔械――それを探すべき者は、当然一人しかいないのですが……

 そして前回あれこれ言っておきながら、何だかんだでその一人につきまとっている凜雪鴉は、なんと第三期から引き続いて異飄渺に化け、いけしゃあしゃあと禍世螟蝗に対面。本当に気付かれていないのであれば色々な意味でスゴいのですが、凜雪鴉に変装して潜入している名目で、まだまだつきまとうことになるようです。そう、今回本当に、おそらくシリーズ初で全く出番のなかった男、殤不患に。

 そして西幽では、あの嘲風に、睦天命と天工詭匠の居場所が知れてしまい――と、次から次へと動いていく事態。特に魔界では想像以上に早く阿爾貝慮法側と神蝗盟側が接触することになりそうですが、しかし阿爾貝慮法の下には、覚醒した浪巫謠がいます。どう考えてもただでは済むはずがありませんが――さて。


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2024.10.08

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第1話「帰郷」

 無界閣に消えた浪巫謠を思い、打ちひしがれる殤不患。そんな彼に対し、凜雪鴉は失望したと姿を消す。一方、阿爾貝盧法と刑亥と共に魔界を行く浪巫謠は、父から試練として魔物をけしかけられる。そして魔界に関心を抱く禍世螟蝗は、斥候として覇王玉と花無蹤の二人を送り込もうとしていた。

 第三期以来、実に三年ぶりの登場となった第四期。その初回である今回は、第三期の最終話からほとんどそのまま続く形で、三つの勢力の動向が描かれることとなります。

 まずは主人公サイドですが――激しく落ち込んでいるのは、西幽来の親友である浪巫謠を崩れ落ちる無界閣に置き去りにしてしまった(と思い込んでいる)殤不患。睦天命に合わせる顔もない――などと言ったらまた滅茶苦茶怒られると思いますが――と沈む彼を、捲殘雲は静かに見守ります。というか、酒場の払いを持ったり、呼びに来た護印師(?)への態度といい、いつの間にか大侠の風格が出てきたな捲ちゃん……

 一方、全く優しく接しないのは凜雪鴉です。今のお前は退屈だ、面白味に欠ける。行く先々で騒動を引き起こす厄介者のお前だからこそ興を唆られてきた。血湧き肉躍る冒険譚がここで幕引きというならもうこれ以上つきまとう理由もない――一見、落ち込んでいる人間に容赦なく追い打ちをかけているように見えますが、この場合はツンデレな叱咤激励の影が感じられます。いつかまた血の滾りが抑えきれなくなったら、その時はまた一緒に世間を引っ掻き回してやろうじゃないか、とまで言っていますし……(完全に同類扱いなのはさておき)

 さて、その浪巫謠はといえば、父にして母の仇である阿爾貝盧法、そしてその配下となった刑亥と共に魔界に赴いたわけですが――いよいよ本格的に描かれることとなった魔界は、さぞかし強豪がひしめく弱肉強食の地獄に違いない! と思いきや、これが刑亥が驚くほど寂れた地に変貌していました。というのも、窮暮之戰の人間界侵攻が中途半端に終わったばかりに、侵攻用に召喚した魔神を養わなければならなくなり、毎週生贄を用意しなければならなくなったとか……
 何かの寓話のような話ですが、別の意味で弱肉強食になってしまった魔界の皆さん、殤不患が神誨魔械を持って行ったら喜ばれるんじゃないでしょうか。

 そんな状況もどこ吹く風と歩みを進める魔界伯爵ですが、いまだ生々しい死骸が転がる地にやってくると、浪巫謠に試練と称して魔物退治を命じます。人間には倒せないというその魔物の実力や如何に……

 そしてもう一つ、蠢くのは禍世螟蝗一派です。第三期ラストで驚くべきその正体を明かした禍世螟蝗ですが、いよいよ本格的に魔界への侵攻を決意したものか、斥候を送り込もうと企みます。一体どうやってと思いきや、そこに顔を出したのは鬼奪天工――第三期で時空の狭間に落ち込んだ婁震戒の前に現れ、面白片腕サイボーグに改造した老科学者です。その時は、うっかり七殺天凌を馬鹿にしたばかりに置いてけぼりをくらったこの怪人物が、ついに人物紹介に載る身分に昇格しました。

 いつ元の世界に戻ってきたかはしりませんが、その技術を用いて禍世螟蝗が送り込むのは二人の幹部――というか幹部二人しか残っていないような気もしますが――、その名も覇王玉と花無蹤! 片や蜂の紋章を持つ西幽最強の女傑、片や蜘蛛の紋章を持つ計略自慢の盗賊と、正反対のキャラクターの持ち主ですが、予想通り相性は最悪です。そんな二人を競わせて成果を上げようという禍世螟蝗ですが、どう考えても惨事の予感がします。
(特に自意識過剰っぽい計略自慢の盗賊は、誰がどう見てもアイツの餌食のために出てきたとしか)


 なにはともあれ、これで三つの勢力のうち、二つはすぐに魔界でかち合いそうですが、残る主人公たちはどうするのか――というより殤不患はいつ復活するのか。
 今回がTVシリーズとしてはラストとのことですので、集大成となるような展開に期待したいと思います。


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