Manga2.5版「猫絵十兵衛御伽草紙」 動きを以て語りの味を知る
このブログでもこれまでずっと取り上げて参りました、猫絵師の十兵衛と猫又のニタのコンビを中心に描かれるちょっと不思議な人情噺「猫絵十兵衛 御伽草紙」が、Manga2.5でリリースされました。Gyaoでは第1話が無料配信されておりましたので、さっそくチェックしてみました。
Manga2.5とは、公式サイトによれば「マンガ原稿を素材に、色・アニメーション・音声・音響効果・字幕・BGMを付加した 革新的なコンテンツとして動画配信するモーションコミックの新しいブランドです(人気マンガそのものを動画化したモーション・コミック)」とのこと。
私は今回初めて見ましたが、その印象を簡単に言ってしまえば、漫画から吹き出しを取り去って、その部分を音声化し、基本的に一コマ単位で画面に映し出したもの…といったところでしょうか。
動き自体はそれほど大きくついているわけではありませんが、特に本作で言えば、猫の描写(歩いてくる場面や飛び跳ねる場面)に動きが取り入れられていたのが、ちょっと面白いところです。
さて、今回視聴したのは、「猫参りの巻」。目を病んで伏せてしまった老人の飼い猫が、毎日どこかに出かけていくその先は…というこのお話、原作単行本では第1巻第1話、つまり「猫絵十兵衛御伽草紙」という作品全体の、記念すべき第1話であります。
そんなこともあって原作自体何度も読み返していたこともあり、内容自体はよく知っていたのですが、それだけにこのManga2.5というメディアの特徴が感じられたように思います。
それは、想像以上に語りのメディアだったと申しましょうか――
Manga2.5という形式では、オーディオドラマなどとは異なり、漫画のコマというビジュアルはもちろん存在するのですが、上に述べたとおり、それはコマ単位で切り取られた、ある意味動きを失った状態。
その中で物語の動きを感じさせるのは、基本的に登場人物の台詞のみ…というわけで、モーションコミックの中で、通常よりも台詞の重みが感じられるというのは、ちょっと面白いものだと感じました。
もっとも今回のエピソードは、かなり「静」の内容。さらに言ってしまえば、題材が昔話的ということもあって、特に「語り」の印象を強く受けたのかもしれません。
(逆に言えば、それだけ本作がこの表現形式に適しているということかもしれませんが…)
その点もあって、今回モーションコミック化された残り4話の方も大いに気になっているところではあります。
さて、最後になりましたが声のキャストの方は、十兵衛が増田俊樹、ニタが杉田智和。
個人的にはニタの声はもっとおっさんくさくかつ脳天気な印象があったのですが、蓋を開けてみると杉田氏のちょっとぶっきらぼうな口調が意外と悪くない印象。
人間姿から逆算してのキャストかな、という印象はありましたが、いずれにせよ、どちらもさほど違和感はなかったかと思います。
「猫絵十兵衛 御伽草紙」(永尾まる原作 ハピネット) 特集ページ
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