2008.06.03

今週の「Y十M 柳生忍法帖」最終回 雲とへだつ

 記念すべき第百回をもって、「Y十M 柳生忍法帖」もめでたく大団円。そのサブタイトルはやはり「雲とへだつ」。別れの時にふさわしい、切なくも爽やかなものを感じさせるタイトルです。

 「雲とへだつ」とは、松尾芭蕉の「雲とへだつ友かや雁の生き別れ」の句から取られたもの。芭蕉が故郷の伊賀上野を捨て、江戸に出る際に詠んだ句であり、友との別れの想いが込められた句であります。
 その句を冠した最終回は、十兵衛の新たな旅立ちと、堀の女たちとの別れが描かれることとなります。
 堀の女たちの復讐物語は前回で完結し、今回はエピローグといった内容。相変わらず親父殿の前では青菜に塩といった体の十兵衛ですが、それを知ってか知らずしてか、沢庵和尚は、十兵衛を庇っているのか煽っているのかわからない調子で宗矩とあれやこれやと語り出します。
 これはこの場面に限らないのですが、このラストエピソードは、原作ではいかにも大団円といった、ちょっとしみじみした調子だったのですが、この「Y十M」では、どこかユーモラスな印象を湛えたものとなっていますが、これはこれでホッとできるものがあって良いかもしれません。
 …にしても和尚をただただ心配して会津に駆けつけた宗矩さんマジいいひと。

 と、そんなやりとりから逃げ出して(芦名衆から追い剥ぎまで働いて!)一人馬上の人となった十兵衛をですが、その彼を追う者たちが、八騎――言うまでもなく、お千絵・さくら・お鳥・お品・お圭・お沙和・お笛、そしておとねであります。
 それぞれ万感の想いを込めて視線を交わす十兵衛と女たち、十兵衛は北へ、北へ――そして女たちは鎌倉東慶寺へ。おそらくは二度と会うことのない両者ではありますが、そこには涙はなく、むしろお互いを思いやり、誇らしく思う気持ちが見て取れるのが、何とも清々しいことです。

 そしてそんな印象をさらに強めるのが、ここでまさかのオリジナル展開、意外なキャラクターの登場であります。あの、十兵衛の鶴ヶ城突入時にお供して、そこで斬られたと思われた鶯の七郎が…! 隻眼になっちゃいましたが元気な姿を見ることができてこれは嬉しいサプライズでした。

 そして雲とへだつ十兵衛と女たち。しかし十兵衛のにはもう一人、どうしても胸の中から去らない女人の姿がありました。言うまでもなくそれは――
 この場面、定番中の定番パターンである、青空に笑顔が浮かぶというオチではなかろうな、と少し身構えていたのですが、ごめんなさい、私があさはかでした。
 青空に浮かんだのは確かですが、その姿は…これは是非実際にご覧いただきたいのですが、この手があったか! と大いに唸らされた素晴らしい画。気高さすら感じさせられるその姿は、本作のラストを飾るにふさわしいものであったかと思います。


 さて、長きに渡りました「Y十M 柳生忍法帖」の感想も今回でおしまい。
 以前から何度も書いていましたが、原作の「柳生忍法帖」は、私の最も好きな時代小説の一つ。それがせがわ先生の手で漫画化されると知ったときの嬉しさを、昨日のことのように思い出します。

 冷静に振り返ってみると、正直なところ「あれ?」と思う場面も時々ありましたが(まあその大半は原作由来なのですが)、しかしそれを補って余りある、せがわ先生の見事なビジュアルとアクションをたっぷりと堪能することができて、本当に原作ファン、せがわファン冥利に尽きる作品でありました。
 あの、十兵衛の素晴らしい啖呵を見ることができただけでも、私は本当に、本当に満足です。


 さて、どうやら十兵衛のこの後の物語もせがわ先生により漫画化されるようですが――今度は十兵衛に狗神が取り憑くんですね!?
 …ってそっちかい! と一人ツッコミして、この感想を終えさせていただきます。

 せがわ先生、本当にお疲れさまでした。

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2008.05.27

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 剣鬼遂に散る

 ラストまで本当にあとわずか! というところで一週おあずけとなってしまった「Y十M 柳生忍法帖」、前回ラストは、知っている人はよく知っているけど、知らない人は全く知らない木村助九郎をはじめとする剣士たちが登場したところまででした。今回の冒頭で明かされるその正体は――

 彼らの正体こそは柳生新陰流の長老・高弟十人、その名も柳生十人衆柳門十哲。松尾芭蕉の高弟たち「蕉門十哲」のもじりだと思うのですが、実に素晴らしいネーミングです。漫画の中では明かされませんでしたが、その他のメンバーも出淵平兵衛、庄田喜左衛門、村田与三、狭川新左衛門と、柳生ものの小説などではお馴染みの面子。ほとんど柳生新陰流オールスターと言うべき顔ぶれで、実に頼もしい援軍ではあるのですが、まだ大物が――柳生但馬守宗矩、言わずとしれた柳生十兵衛の父であります。

 が、父親の顔を見た十兵衛、先週までの格好良さはどこへやらのガクガクとした、緊張したとも凍り付いたとも見える表情に…オーラスに主人公がこんな顔をしているのは大問題ですが、幸い事態は凄まじい勢いで展開中。宗矩に続いて現れたのは、江戸にいたお千絵とお笛が、クライマックスにギリギリ間に合って只今到着です。
 しかし再会を喜ぶ間もなく、磔台から解き放たれた五人とともに向かう先は、蛇の目は一つ、漆戸虹七郎。十兵衛のないものを――既に潰れていた側の眼を――奪ったのと引き替えに、あるものを――残された隻腕を――失った彼に既に戦闘能力はなく、七つの刃に貫かれ、さしもの剣鬼もついに地に伏します。
 と、ここで注目すべきは、虹七郎が七つの刃に貫かれるまで、その口から桜の枝を離さなかったこと。前回の感想で触れたように、原作では敗北を悟った後自ら枝を落として、卑怯にも鉄砲隊で十兵衛たちを撃ち殺そうとしたのですが、こちらではそのような挙に出ることなく――最後の最後に惨痛に耐えかねてか食いしばった歯が枝を噛み折るまで、自らの剣士たる証としての枝を離すことはありませんでした。
 前回の感想のコメントに、この「Y十M」では、虹七郎は卑怯な手は使わない、ある意味あくまでも純粋な剣士として描かれているのではないか、というご指摘をいただきましたが、これはまさに慧眼であったと申せましょう。どうにもやられ役としての存在感が先に立った感のある会津七本槍でしたが、最後の最後で男を見せてくれました。

 さて、残るは諸悪の根元、バカ殿加藤明成の仕置きのみ。ここまで来ても見苦しく明成は己の堀一族への仕置きが、幕法に則ったものであると強弁しますが、しかしここに満を持して登場した天樹院千姫様が切ったカードは、意外、そちらではなく、物語の冒頭に描かれた、会津七本槍による鎌倉東慶寺蹂躙の罪でありました。
 これは確かに意表を突いた切り札――というのもこの罪、咎めようと思えばいつでも咎めることができたはずであって、要するに最初にこれをやっておけば、ほりにょの艱難辛苦の日々もなかったはずなのですが…もちろんそれを言うのは野暮というもの(というより、物語の冒頭で千姫自らがこの手段の存在を匂わせているのですが)。
 自らが想像だにしなかった――それこそが、この男の外道たる所以の一つでありますが――罪で裁かれるというのは、まさに溜飲が下がるというかなんというか。しかも、己の息子からも絶縁同様に扱われ、領国を失って一人、石見国(今の島根)に流されると…明成の息子は、原作では登場しませんでしたが、史実に対しては真面目なせがわ先生、ここで明成への追い打ちとして(名前のみとはいえ)再登場させるというのが面白い(しかし、千姫の言う「地獄」の意味が原作とちょっと変わっているのも興味深いですな)。
 何はともあれ千姫のドSっぷりに惚れ惚れしました(しかし「ごみょうだい」だよねえ…?)。

 さて、今回のサブタイトルは、「尼寺五十万石」――尼寺と争った挙げ句に敗れて四十万石をふいにした明成にとってはまことに皮肉なタイトルですが、実はこれ、原作「柳生忍法帖」の旧題。ここでこれを持ってくるとは、何とも心憎い仕掛けではありませんか。

 さて、次回でついに最終回ですが、そのサブタイトルは、やはりあれ以外ないでしょう――感動の大団円まで、一週間をずいぶん長く感じることになりそうです。

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2008.05.13

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 ここでわざわざ助九郎

 隻眼vs隻腕、その決戦の結果は!? というところでGWに入ってしまった「Y十M 柳生忍法帖」。十兵衛の隻眼の上からはツ、ツーと鮮血が垂れてきて、これは一体…

 言うまでもなく顔、というか頭は急所、少しでも深く刃が入れば即死という危険部位ですが、しかし十兵衛は不敵な表情であの名台詞を!
「おれは無いものを失い…おまえは有るものを失ったなあ…」
 いやーこの台詞までオミットされたらどうしようかと思いましたが良かった良かった。
 そして「あるものを失った」虹七郎の方は…なんだか生まれたての子馬のようにプルプルしております(そして今回終わるまでそのままフォローなし。これはひどい)。

 そんな虹七郎は放っておいて、磔にされていたさくら(髪結構伸びた?)を解き放った十兵衛、他の四人も助けてあげればいいのに、ここで群衆に対して、刀のスローを要求です。
 ここでまた微妙に目立ったのは謎の軍学者、真っ先に鞘込めに刀を投げ入れますが、これに続いて他の群衆も刀を何本か…しかし、ここで原作の印象的なシーン――制止しようとした芦名衆に対し、今度は抜き身の刀が何本も降ってくる――がカットされているのは一体どのような理由なのか、合点がいきません(原作の地の文でも言われてるように、普通は無理っぽいから?)。

 合点がいかないといえば、それ以上なのは鉄砲隊に指示を出したのが明成なのがまた残念。原作では虹七郎の決定的な敗北宣言として効果的に使われていた部分なのですが、これがまた妙な感じにアレンジされているのは、うーんどうなのでしょう。
(あと、これに対する十兵衛の「卑怯っ」という台詞も短いながら格好良かったんですがそれもオミット)

 と、単なる原作ファンのいちゃもん付けになってきましたが、ラストではこの窮地に木村助九郎が、なんと見開きで登場。いやー原作でも大好きなシーンでしたが、ここでわざわざ助九郎というのが、山風ファン、せがわファン的には何とも意味深に感じられます。いや、考えすぎでしょうけどね。

 まあよそ見はよすとして、おそらく本作もあと二回で完結。ここにきて一週空いてしまうのが本当に残念ですが、一気呵成に見事な結末を迎えることを期待しましょう。

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2008.04.29

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 隻眼vs隻腕

 前回はブチブチ言ってしまいましたが、やっぱり面白いです「Y十M 柳生忍法帖」。今週はいよいよ会津七本槍最後の一人、隻腕の剣鬼・漆戸虹七郎と十兵衛の大決闘であります。

 敵陣のど真ん中もど真ん中、厳戒態勢の公開処刑の場に単身現れた十兵衛。ある意味、これは最初に城に乗り込んだときよりも無茶なシチュエーションでは…と思いきや、そこで十兵衛が銅伯とおゆらを捕らえたとハッタリ発言。
 冷静に考えれば色々と無理がありますが、何よりも実際に十兵衛が自由になってその場にいることがなによりも説得力、それ以上に、十兵衛に「(決闘)やらないか」と言われて完全にその気になった虹七郎のおかげで、場はすっかり十兵衛ペースであります。

 そして始まる最後の決闘を見守るのは、逆さ磔にされて顔がアップになるとちょっと見分けのつきにくいほりにょの皆さんだけではなく、あんちゃあ娘やニセおとねさんのお菊さんと妹、さらに甲州流十面埋伏の計の謎の軍師さんまで、懐かしい顔ぶれ。
(こうして見ると、お坊さんたちは本当に死んでしまったのだなあ、とちょっとしみじみ…)

 そして、二人の間で徐々に高まる緊張感を示すかのように細かい、そして変則的なコマ割りの見開きページから――
 まさしく一閃! というほかない素晴らしいスピード感の一瞬の交錯…

 そして飛びすさった十兵衛と虹七郎、十兵衛の隻眼の上には、交わるように新たな傷が。さて、一方の虹七郎は…という、まことにニクい場面で、隻眼vs隻腕の決闘の決着は、次回にお預けに。


 いやはや、原作においてもこの決闘は、山風先生一流の筆でもって緊迫感溢れる名シーンだったのですが、それを漫画として咀嚼した上で再構築してみせたこの「Y十M」の方も、負けず劣らず見事な決闘シーンになったかと思います。

 これまで何度も書いてきたことではありますが、漫画という紙の上に固定された画のメディアでありながら、せがわ先生の画は、その中に確実に動きを感じさせてくれます(当然のようでいて、これをきちんとできている作品は存外少ないのです)。
 チャンチャンバラバラと派手に斬り結ぶシーンは、むしろ動きは見せやすいものですが、今回のように、一瞬の交錯の中に動きを感じさせるのは、存外に難しいもの。それを、このせがわ先生の筆は、見事に成し遂げていると言えます。

 …一瞬の、と言えば、ケイトさんのところの感想を読むまで、橋の上から虹七郎の剣をかわし、堀を越えて広場に跳ぶ十兵衛とという名シーンがあったのを完璧に忘れていましたが(なにやってるんですが自称原作ファンの三田さん)、そのシーンが抜けていても今回の満足度は非常に高かったと言えます。

 それにしてもあのサブタイトルは最終回まで取っておくつもりかしらん。それはそれでOKですが。

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2008.04.22

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 ちょっと不満が…

 さて完結まであとわずかの「Y十M 柳生忍法帖」、これまで私はほとんど手放しで絶賛してきたのですが、ちょっと今週は言いたいことありますよ…

 前回、チラッとしか描かれなかったので気になっていた銅伯とおゆら様の亡骸が仲良く並んでいる様が描かれたのはよいのですが…その後のシーンで沢庵が放った台詞が、本作の沢庵の台詞の中で私が一番好きだったあの台詞が丸々カットされている…!

 これに比べれば、ほりにょ磔が全裸じゃなくて半裸だったのなぞ小さい小さい。あと、もっと桜の花びらが散ってなくちゃとか、妙に磔柱の周りに空間が空いていて寂しいとか、「蛇の目は一つ」が思っていたより小さくて迫力がなかったりとか、それもみんな小さい。

 まあ、ラスト一ページ丸々ブチ抜いての筆画タッチの十兵衛の「おお!」が異常に格好良かったので、そこは大いに満足なのですが…

 と、ここまで書いて我に返りましたが、たった一つ台詞をオミットしたくらいでボロクソに(?)言われてはせがわ先生もたまらんですね。反省。

 ここは、いよいよ決戦! の次週からの展開を期待して、ここにその沢庵和尚の台詞を書いておくことにします。
「――大手門には、おそらく城侍こぞって集っておろうに、剣侠児、まことに堀の女たちを救い得るか? ああ!」


 …個人的にはその前の「いうにゃ及ぶ。心得たり」という台詞も和尚らしくて好きなんですが

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2008.04.08

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 善魔倶に斃る

 遂に魔人銅伯も奥の手を出し、いよいよ決戦の時と言うべき「Y十M 柳生忍法帖」。銅伯は、幻法夢山彦で呼び出した天海をいわば人質に、十兵衛に、沢庵に、そして徳川の世に最後の呪いをかけようとしますが…しかし。

 これまでは銅伯の術に苦しめられるだけであった天海が、ここで初めて銅伯と向き合います。そして天海は、将軍への血脈相承を断念してでも、銅伯を倒すと語るのですが――つまりは、それは、自らの命を捨てることで銅伯の不死身を封じるということにほかなりません。
(と、原作ではここで天海が命を捨てる決意をした理由を語る印象的な台詞があったのですが…オミットは非常に残念)

 それを知ってか知らずしてか、天海の死で生じた銅伯の隙を突いて、真っ向から拝み打ちの一刀を放ったのは十兵衛であります。
 このシーン、一ページブチ抜きでしたが、本当に「猛然と」という表現を画にしたらこうなる、と言うべき素晴らしい迫力。せがわ先生が元々得意とするCGの独特の質感に、荒々しい筆の描線が相まって、「動き」というものを強く感じさせます。

 さて、銅伯の死=天海の死であることを知る沢庵にとって、この展開はショッキングなものであろうとは思いますが、それに沈んでいるひまはない。沢庵はおとねを連れて雪地獄の女たちを救いに、十兵衛は、もちろん五人の堀の女たちを救いに、それぞれ行くことになります。
 そしてその十兵衛を見送るのは、もはや余命幾ばくもないおゆら様…切ない。そしてそれを見やるおとねさんの表情も…(これは漫画ならではのナイスな表現ですが、でも先週から気になってたんですが鼻血くらい拭いてあげようよ)

 そして地下祭壇を飛び出した十兵衛は、今度は「颶風のように」という表現が思い浮かぶような勢いで、立ちふさがる芦名衆を薙ぎ倒して一路地上へ――
(本当に、この辺りのアクション描写は、確実に「バジリスク」よりも進歩しているやに感じられます)

 というところで一週お休みが入って、再来週から最終章突入。ここから先は、原作では、誇張抜きで全てが名場面、全てが名台詞と言うべき神懸かり的完成度だったのですが、さてそれをどのようにビジュアライズしてくれるのか…不安はありません。期待感のみがあります。

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2008.04.01

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 銅伯独演会?

 佳人薄命、ついにおゆら様が倒れた「Y十M 柳生忍法帖」。刀も手に入って(不本意ながら)十兵衛にとっては逆襲のチャンス…のはずですが、今週はほとんど銅伯の独演会でありました。

 こともあろうにおゆら様の血を啜った銅伯。元々おとねさんの血を使って行おうとしていた幻法夢山彦に、先に流れた血を使ったということなのでしょうが、しかしその姿はまさに「鬼気迫る」としか言いようのないもの。己の痛恨の大誤爆で大望を無にしてしまった怒りと絶望が向けられるのは、目の前の沢庵と十兵衛を通り越して、天海と江戸幕府でありました。

 銅伯によれば、今日こそは天海による家光への天台血脈相承の日。以前、天海がお千絵らと対面した際に、己が死ねない理由として挙げた、重要イベントであります。
 ここで天海を痛めつけることにより、血脈相承を滅茶苦茶にしてやろうというのが銅伯の目論見、ここまでくるとほとんど八つ当たりですが、もう聞く耳完全に持たない暴走状態であります。

 ――しかし銅伯、天海の予定は全部知っていると語っていましたが、まさかストーカーしていたわけではあるまいし、やはり感覚共有していたためかと思いますが、それであれば天海が知っていたであろう幕府の秘事の数々も知っていてもおかしくないわけで、しかしそれを利用した形跡がないのはもしかして銅伯って結構間が抜けているんじゃ…と勝手な疑惑。

 閑話休題、刀にかけてもこの暴挙を止めようと動いた十兵衛ですが、銅伯はあくまでも余裕。何せ一度は十兵衛を完全に破ったなまり胴がある上に、ここで銅伯を斬ることは天海を斬るにほかならず、それでは銅伯に手を貸すも同じなのですから――
 しかも銅伯は剣法でも柳生新陰流には負けぬと大胆発言。それがあながちはったりに見えないのは、銅伯の気迫故か…

 そして遂に始まった夢山彦。しかし、魔鏡に映し出された天海は以前とは違い、何らかの覚悟を秘めているように見えますが…

 というわけで銅伯戦もいよいよ大詰め。銅伯と天海という不死身の両輪を壊すには、これは一つしか手がないわけですが…さて。次回も必見であります。

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2008.03.25

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 忍法銅伯流…

 作者サイトに、十一巻が最終巻と遂に示された「Y十M 柳生忍法帖」、いよいよクライマックス目前、というよりクライマックス突入。おそらくは五月には完結しそうなペースですが…

 おとねさんの血を贄に、再び幻法夢山彦を使わんとする芦名銅伯。夢山彦で天海の苦しむ姿を見せつけて、沢庵ら惑乱させようということなのでしょう。
 もちろんこれを止めようとする十兵衛ですが彼は徒手空拳、片や銅伯の手には白刃。いい加減鬱陶しくなったか、はたまた単にもののはずみか、十兵衛の身に銅伯の刃が――

 が、そこに割って入ったのはおゆら様。その御胸で銅伯の刃を――受けた。
…受けた。
受けた。 orz

 しかし、ここからがおゆら様の真骨頂。己の血に塗れた唇から紡がれた言葉…それは「忍法銅伯流なまり胴」!
 なるほど、おゆら様は銅伯の体質を継いでいたのか!? と一瞬信じたくもなりましたが、しかしどう見てもおゆら様は瀕死。それでも自分は死なないと言い切るおゆら様のけなげさよ――
 末期の願いか、口を吸ってとせがむおゆら様。十兵衛が、彼女の唇に唇を重ねたのは、決して沢庵に促されたからとは思いたくありません。
 あれだけ淫蕩の限りを尽くしたおゆら様が、最期に望んだのは、乙女のような口づけだったとは…

 しかし、収まらないのは銅伯。おゆらの胎内には、己の悲願である芦名復興の御子が宿っていたものを、己の手でそれを無にしてしまうとは――誤爆にもほどがある。ここで「おゆらは死ぬ!」と、自分とおゆらの違いを叫ぶ銅伯の台詞の内容は、原作での地の文で描かれていたことですが、ここで激高する銅伯の怒り・悲しみ・驚き・焦りが伝わってくるような叫びとして取り入れたのは誠に見事なアレンジかと思います。

 そして銅伯は、床の血溜まりから娘の血を集めて啜り始め…ここで再び夢山彦を行おうとするものか、絶対的な勝利から一転、絶望の淵に転がり落ちた銅伯、何を企むか…というところで以下次週。
 本作随一のヒロインの最期を描いた今回は(こういう感想を書いていてなんですが)何よりも一コマ一コマの絵の力が絶大で、漫画化されたことの幸せを噛みしめた次第です。


 …実はおゆら様は双子で、容姿は瓜二つだけど天女のような妹がいて、とか想像するとちょっと幸せになるなあ<現実逃避
(山風だったら二人が途中で入れ替わって、聖女と魔女も逆転したりしそうだけどな)

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2008.03.12

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 一世一代の大告白

 いよいよクライマックスに突入の「Y十M 柳生忍法帖」ですが、今週は、ここにきて主役交代!? と言いたくなるような展開。柳生十兵衛その人を押し退けて今回メインとなったのは…

 今回完全に主役を食って目立ちまくったのは、そう、おゆら様であります。
 ほりにょたちを殺すという銅伯の決意は固く、そしていくら敵の一味とはいえ、女性を殺すことはできぬと、おゆら様を解放した十兵衛。人質がなくなれば…と、十兵衛を八つ裂きにもしかねない銅伯の前に立ち塞がったのが、ほかならぬ彼女であったのですから、銅伯が驚くのも無理はない。

 もちろん彼女を動かしているのは獣心香の魔力ではありません。彼女を動かすのは、ただ、恋する乙女の一途な心…!
 初登場以来、出番の時には、ぽやーんとしているか、ドSモードか、はたまたエロエロかだったおゆら様に純な乙女心が!? と訝しく思わないでもないですが、しかし想像するに、あのような妖怪爺の娘に生まれれば、子供の頃からまともに育ててもらえるわけがない。そして、望む相手に嫁ぐことなどほとんどなかった時代とはいえ、父の悲願のお家再興のためとはいえ、はたまた自分の肉欲を満たしてくれたとはいえ…明成に対して彼女が恋情を――心と心の結びつきを覚えてはいなかった、ということでしょう。

 かくて、これまでツンにツンを重ねたおゆら様の乙女心の中で抑えていたデレが大爆発、声涙倶に下る、というのはヒフンコーガイすることだからちょっと違いますが、とにかくもの凄い破壊力の乙女の涙とともに、一世一代の大告白で十兵衛に迫ります。

 が、乙女モード全開の中でも、自分の腹の中の明成の子を十兵衛解放の取引に使ってしまうしたたかさはやっぱりおゆら様だなあ…と私は感心しましたが、収まらないのは銅伯。
 芦名衆復興の鍵を握る己の娘が、こともあろうに不倶戴天の敵である十兵衛と駆け落ち宣言、柳生ロミオに芦名ジュリエット(違 状態になったのですから…

 とはいえ、十兵衛を脅迫するように娘を脅すわけにはいかない。ここは絡め手に…ということか、連れてきたおとねさんに刃を向ける銅伯。これは幻法夢山彦の型、沢庵と十兵衛を脅そうということでしょうか。そんなことよりもむしろ、リストカットされそうなおとねさんの身の方が心配ですが…

 と、色々な方面で風雲急を告げる状態なので、一週お休みというのが恨めしい…

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2008.03.05

「Y十M 柳生忍法帖」 もしかしてもの凄いピンチ…?

 冷静に考えると夏前には終わってしまいそうな「Y十M 柳生忍法帖」。今回はそのクライマックスに向けてのタメとも言うべき回でした。

 正直なところ、お話の動き自体はあまり大きくない印象で、遂に磔台も完成して明成も回復、残るは十兵衛・沢庵のもとにいるおゆらを連れ戻すのみ…と、銅伯が十兵衛たちのもとを訪れる、という回。

 あまりに銅伯が余裕こき過ぎていて、これは典型的な悪役の自滅パターンではと心配にもなりますが――もっとも、江戸に行ったきりのお千絵とお笛のことにも気を配っているあたり、油断はない様子――普通に考えれば、これはまず逆転されるおそれはない状況ではあります。

 まず、五人のほりにょ、そして(文字通り首に縄をつけて連れてこられた)おとねさんが人質になっている。そして人質といえば、天海僧正もまた、銅伯に人質にされているようなもの。
 仮にこれらの抑えを無視して十兵衛が動こうとも、銅伯には、十兵衛をして完敗させしめた忍法なまり胴の秘術がある。さらにいえば、万が一銅伯を倒して逃れたとしても、ここは敵地の真ん真ん中、城兵こぞって待ち受ける状況であります。

 これに対する十兵衛のもとには、おゆら様がいるのみですが、これも既に獣心香の魔力が醒めて、デレ期を脱した状況で、これまでのようにいくとは思えません。
 今回のラストでは、一応、十兵衛はおゆら様の首にその腕を回してはいるものの、十兵衛が女性の首をひねることなど、できようとは思えません。

 要するに、外部からの救いの手も、自ら状況を打開する方法もなく――いよいよもって最大の窮地に陥った十兵衛の運命や如何に。 唯一気になるのは、正気に戻りながらも、十兵衛の腕の中で静かな表情を見せるおゆら様ですが…

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