「幕末機関説 いろはにほへと」 第二十六話「海の向こうへ」
いつものOPなしでグッといつもと違う感も高まる「幕末機関説 いろはにほへと」最終回。冒頭から全力疾走体勢ですが、恩田作監だけあってクオリティが高い! 高すぎて今まで見ていたのは何だったのか、と複雑な気持ちになりますが、最終回にふさわしい素晴らしいクオリティでありました。
浮上を開始した五稜郭に大ジャンプ(飛びすぎ)、突入した耀次郎を待ち受けるのは、首に操られた兵士たち…多い、ちょっと多すぎるよ! と言いたくなるくらいの兵士の群に真っ向から突入。まさに幕末無双状態でバッサバッサと斬り倒し、あっさり一面クリアして次のステージへ。
が、次のステージで待つのは偽ジャンヌと化した赫乃丈…いかに月涙刀を持ち覇者の首に操られているとはいえ、所詮は素人、しかも月涙刀は小太刀。一刀の下に斬り倒しますよ! と師匠に宣言した耀次郎の敵とは思えず、戦いの焦点は本当に耀次郎が殺っちゃうか、ですが――
予想通り座長を圧倒する耀次郎ですが、耀次郎、刀で座長のジャンヌ衣装を脱がしてる!? なにこのエロ剣術(実際この時の座長の体の曲線が妙に艶めかしい)と最初は思いましたが、これは演じる役の虚構を剥ぎ落とし、赫乃丈を元の姿に戻すということなのでしょう。
そしてついに剥ぐものもなくなった時、その後の一撃はどうするのか、と今度こそハラハラしていたら…月涙刀の柄頭で鳩尾一撃! 剣術的にも理に叶った攻撃で、座長を無力化。実に見事な勝利です(しかし左京之介にもこれやってやれよう(´Д⊂)。
それでもなお座長の体を操って耀次郎をズブリ、とやろうとする小太刀ですが、避けようともせず刀を掴んだ耀次郎(のよくわからないパワー)と、小太刀を止めんとする座長の、二人の心が勝利したか、小太刀も鎮まり遂に月涙刀大小が耀次郎の腰に! これは素直に格好良い。
一方、榎本を捨てた覇者の首をその身に憑かせたのは蒼鉄先生。それならば最初からやればいいのに、と思わないでもないですが、本人は大願成就まで裏に徹する(というよりこんなキモいものは他人に憑かせとけという)気だったか、はたまたパーフェクトモードの耀次郎を待っていたか…いずれにせよこちらも体勢は万全(?)です。
そして対峙する色男二人…耀次郎はもちろん月涙刀、蒼鉄先生は長巻チックに変形させた太刀を手に演じる剣戟は、まさに本作の集大成と言うべき華麗凄絶なもの。耀次郎も、そしてこれまでかすり傷一つ負わなかった(たぶん)先生も、互いに手傷を負いながらの死闘は、時間こそさほど長くはありませんが、実に見応えがありました。
そんな中でも謎のスイッチを押してステージを変化させる先生は素敵すぎます。
そんな戦いも遂に終わり、苦しい息の下で己の真意を語る先生。覇者の首を用いて造った国にどれほどの意味があるのか。かつて坂本竜馬に首を拒絶された先生は、竜馬の意志を継いだ耀次郎をもって、己が行動の正しさを測ろうとしていたと――迷惑だな、先生。いや先生のすることなので許します。
そして時は流れ…赫乃丈は仲間とともに一座を続け(そういえば彼らは何のために蝦夷地くんだりまで来たのか…)、不知火小僧は相変わらず琴波太夫を追っかけて――って、耀次郎並みの不死身キャラだな太夫――それぞれに平和な暮らしに戻った中、耀次郎は海外逃亡、じゃなかった竜馬が見てきたものを自分も見るために一人海の向こうへ…
うむ、実にきれいな幕切れですが、この時の耀次郎の背広姿が尋常ではない似合わなさで最後の最後に爆笑してしまってごめんなさい。
さて、全話完結して振り返ってみれば、幕末から明治初頭の時代と人物を克明に描いてきた本作、箱館戦争の件などは、伝奇抜きの時代劇としてもなかなかよくできていたかと思います。
また、本作のウリの一つであった牧秀彦先生による殺陣についても、回によって差が大きかった演出と作画のクオリティに左右されたところが大きかったものの、十分に楽しませていただきました。
が、残念なところも色々あったのは事実。上記のクオリティのバラけかたもそうですが、やはり耀次郎のキャラが薄かったなあ、というのが、悪い意味で印象に残りました。発展途上の人物というには迷いが少なく、完成された人物というには魅力がいささか乏しい、そんなキャラクターであったため、特に中盤は歴史の巨大なうねりの中に埋没しがちで、ひいては本作のドラマとしての盛り上がりを欠けさせる結果にもつながったかと――彼一人の責任にするのは厳しすぎますが――感じました。終盤も、なんだか突然にパワーアップした感がありますしね(それだけ迷いがなくなった、ということなのでしょうが絵的にわかりづらかった)。
と、厳しいことばかり書いてしまいましたが、この半年間、毎週楽しみに見ることができたのは事実。様々な悲劇はありましたが、結末は、青空をバックに「愛の剣」が流れた最終回EDのように、爽やかで後味のよいものであったかと思います。まずは、スタッフとキャストの皆様に感謝感謝です。
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