2009.06.01

「大江戸ロケット」 音曲劇機巧光盤「銀河警察10-4・10-10」

 ソラと清吉が江戸を去った後のある日、銀次郎は赤井と瓜二つの顔の喋る魚を見つける。月面基地のソラは、それが赤井の細胞を吸収した青い獣の生き残りではないかと睨み、天鳳と天天を送り込むが…

 アニメ版「大江戸ロケット」のDVD全巻購入特典のドラマCD、音曲劇機巧光盤「銀河警察10-4・10-10」の紹介であります。
 今頃突然で恐縮ですが、あと十日ほどで月周回衛星「かぐや」が任務を終えて月面に落下するというタイミングでもあり…いやごめんなさい、それもありますが、私が応募ハガキ送り損ねてCDを手に入れ損ねていたところに、先日さる方々のご厚意によりCDをようやく拝聴することができたので、今回ここに紹介する次第です。

 さて、今回のドラマCDは、番外編ではなく、まぎれもなく本編の後日談。とはいえ、25分弱という時間制限もあって、登場するのは清吉おソラに銀さん金さん、タイトルの天鳳・天天にゲストキャラ(?)の赤井魚という面々です。
 時系列的には本編の数年後といったところか(金さんがお奉行になっているので)、登場する面々のキャラは、ほとんど本編から変化なしというのが嬉しいところ――あ、約二名バカップルになったのがいますが、まあ良し。
 そのバカップルの一人、おソラさんは、銀河パトロールの月面基地の長官となり(清吉は…ヒモ?)、天鳳・天天はその部下、銀河パトロール伝習隊、略して電波特捜隊(略してねえ)となっているということで、皆慌ただしくも楽しい日常を送っているようです(そういえば最終回EDの内藤泰弘先生のイラストの天鳳・天天は、それっぽい格好でした)

 そんな中、万次郎にも改名し損ねて相変わらずフラフラしているような銀さんが、偶然赤井そっくりの喋る人面魚と出会って…というのが今回のお話。
 青い獣が赤井を食って脳や遺伝子を取り込んでとか、赤井の性格なら人を襲うことがあり得る…とかソラは何げに恐ろしい推理を働かせていましたが、しかし実際のところ、とてもあの陰険メガネとは思えない穏やかで理知的な話しぶりはまるで別人、いや別魚――

 と、その赤井魚が中心となる今回のエピソード、基本的な展開は、いかにも特典CDドラマらしい(?)ベタなギャグに加え、今回もメタなネタにパロディに時事ネタの連発と、やりたい放題の懐かしいノリではあるのですが、しかしそれで終わらないのがこの作品。

 ズルいくらい切り込みが鋭い赤井魚の口から、銀さんのソラへの想いの深層とか赤井への悔恨の念とかへの掘り下げを行ったり、「人は生まれながらに生きる場所が決まってる」「この世とは違うものに人は憧れるものです」などとお馴染みの調子も飛び出して、こちらはニヤニヤ。
 そして、なぜ赤井魚が赤井の顔をしているのか、なぜ赤井とは全く違う性格なのかが明かされるラストの展開など、泣かせの部分もきっちりあって、本編ファンにはまったくもって嬉しいプレゼントでした。


 ただ一つ、ファンとして悲しむべきことは、これをもってアニメ「大江戸ロケット」という作品が、完全におしまいということ…。みんなそれぞれ元気にやっているのがわかったのは嬉しいですが、しかし、何だかお祭りが終わった後のような寂しさがあります。

 とはいえこればかりは仕方ない。銀さんのように、これからも時々胸を張って過去を懐かしむことといたしましょう。


 しかし「長寿と繁栄をー!」って、時事ネタも一回りして新しくなっちゃったなあ…


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2007.10.03

「大江戸ロケット」 26発目「なんだかんだのリフトオフ」

 ゆうの仇である青い獣を討つ赤井。しかしご隠居の若返りの薬の効果で青い獣が大量増殖してしまう。一方、打上げ直前になって清吉はロケットの設計を変更するが、それを清吉がソラとともにロケットで脱出するためと見た遠山は打上げを中止させようとする。が、そこに赤井を斃した青い獣の群れが出現、銀次郎、鳥居と黒衣衆らがロケットに迫る青い獣を防ぐ中、遂にロケットはリフトオフするが…

 さあ泣いても笑ってもこれで最終回の「大江戸ロケット」、清吉の、ソラの、銀次郎の、赤井の運命やいかに!? と手に汗握って観てみれば…うははははは、ひでえ最終回<褒め言葉
 なんか前回の感想で、眉間に皺寄せて聞いたふうなこと書いてた俺涙目www

 もちろん、死闘の果てにゆうに看取られて(やはりあのピンクのやつはゆうの魂だったんだ…)逝った赤井の最期&EDカットの演出など、グッと来るシリアスな展開も用意されていますが、基本のノリはやっぱりコメディ。最後の最後の最後まで、どこから何が飛び出してくるかわからない本作のノリは健在で、明るい笑顔で最後まで見届けることができました。

 贅沢を言えば、せっかく鳥居様が「妖奇士」に続き大暴れwith絵に描いたようなツンデレライバル台詞で大活躍して下さった青い獣軍団との決戦があまりアニメ的に動いていなかったのが残念(いや何よりも、あのシーンこそ鉄十を大暴れさせるべきだろ 常考)ではありますが、逆に不満らしい不満はその程度。
 ロケットが打ち上がってから、ラストに至るまでのドンデン返しのつるべ打ちは、原作舞台を観ていても――いやそれだからこそ――非常に楽しむことができました(舞台ではサラッと語られたご隠居の秘密が、こちらではあんな形で爆発するとは…)。
 一番良いシーンで、「ボディを狙ってた」云々のしょーもないパロディネタを入れてくるセンスも相変わらずでしたしね。

 もちろん、単に楽しい、面白いお話というだけでなく、アニメ独自のテーマもきっちりと回収してくれるのが本作の素晴らしいところ。
 物語の冒頭から語られてきた、清吉がロケットを打ち上げるもう一つの理由である「江戸の人々に元気を与えたい」という思いが、前回提示された、科学技術が本質的に内包する危険性に対して、技術者が如何に身を処すべきか、という命題への回答ときっちりと結びついて、巨大なうねりを引き起こすという展開は――単なる「遊び」が社会を動かす力の一つとなるという痛快な皮肉も含めて――本作の一つの結末として、実に美事なものであったと思います。
(正直なところ、水野○○は、舞台で使われていた以前に、時代ものとしては当然使ってくるであろうネタで、扱いにはさほど期待していなかったのですが、まさかこうした形で絡んでくるとは…参りました!)

 原作を――そのメディアなりの特質を生かしつつ――再現するのはもちろんのこと、更に一歩推し進めて原作が秘めていた可能性をも提示してみせるのが、「原作付きもの」の理想と私は考えていましたが、本作はまさにその理想をきっちりと形にしてくれた感があります。

 更にこのサイト的な観点から言わせていただけば、時代ものとして観た場合に、滅茶苦茶をやっているようでいて、押さえるべきもの――単に時代考証や史実といった形式的な部分だけでなく、その作品をこの時代を舞台とした作品として作ることの必然性という、精神性の部分――をきっちりと押さえていた点は大いに評価すべき点と考えます。
 原作に中島かずき、脚本に會川昇、考証に近藤ゆたかという、およそこの業界で考えるに最高のメンバーが集まった以上、ただの作品で終わるわけはないと期待していましたが、その期待を遙かに上回るものを見せていただきました。


 個人的には、本作をアニメ界の「天下御免」と呼びたい…ってのは褒めすぎかもしれませんが、時代アニメ史上に残る作品であることは間違いないでしょう。
 何はともあれ、半年間もあっという間。本当に楽しいものを見せていただきました。

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2007.09.26

「大江戸ロケット」 廿五発目「匠の仕事が月に哭いて……」

 おりくの手により下田に建造された発射台。その試射を止めようとする銀次郎は、追ってきた鳥居と死闘を繰り広げるが、その煽りを食って打上げは失敗、多数の犠牲者が出てしまう。が、今度は遠山が清吉に大陸間弾道弾を開発するよう命令。ソラは月に帰ることを断念しようとするが、しかし職人たちの心意気を知った清吉は、皆のためにもロケット打上げを決意する。その頃、水野に取り入っていた黒衣衆・眼、実は青い獣の前に、赤井が単身立ちふさがって――

 今回を入れて残り二話という段階で、相当に原作とは物語を紡ぎ始めた「大江戸ロケット」。ご隠居ではありませんが、さすがにこの展開は予想できませんでした。
 考えてみれば、前回と今回で大きな役割を果たしたおりく・遠山・青い獣(分裂体)は、いずれもアニメオリジナルのキャラクター。それが物語の中心になれば、オリジナル展開になるのは当たり前といえば当たり前ですが、しかしそれだけでなく、アニメでは、舞台では届かなかった域まで、物語を掘り下げようとしているように感じられます。

 それは、技術者・科学者における公と私の問題とでもいいましょうか――望むと望まざるとに関わらず、個人が扱うには大きすぎる力を手にした時に、技術者は、科学者はどのように行動するべきか。
 もちろん、世のため人のためになるように使うのがベターではありましょうが、しかし例えばそれが――抑止力という名目こそあれ――兵器として多くの人を傷つけかねないものに使われるとしたら(今回、下田で打上げ事故で多くの犠牲者が出たのは、もちろん銀次郎の行動が原因ではありますが、しかしこれは科学技術というものが本質的に孕む危険性の、一つの顕れということと見ることもできるでしょう)
 いや、そこまで大げさに考えないまでも、その力をお国のためといったマクロなレベルでなく、自分自身と周囲の人々のためというミクロなレベルで使うことは、非難されるべきことなのかどうか。
 今回、清吉が直面したジレンマは、おそらくは古今東西の様々な技術者たちが直面したものでしょう。

 本作では、どう見ても悪役の水野や鳥居が清吉たちに対置されていたために黒白が付き易くなっていましたが、しかし今回、遠山も同様にロケットの兵器利用を考えていたことが明らかになったことで、その境界も大きくゆらぎました(もちろん遠山の場合、これまで清吉たちを騙していたわけで負のイメージが強いわけですが、その目指すところ自体は、我が国を含めた現代の国家が当然のように行っているところであります)。

 それでは清吉は何を指標として行動すればよいのか――その答えを、本作においては三太と源蔵に見られるように、職人の、一種の心意気に求めています。
 自分が楽しければよいというそれは、「私」を完全に前面に出したものであって、それが本当に正しい答えかどうか、おそらく完全な答えを出すことはできないでしょう(個人的には共感できるのでしょうが、仮にいまこの日本でこれと同じことを言ったら、袋叩きに遭うことでしょう)。

 しかし最初から大きな「公」のためになるものではないとしても、小さな「私」を束ね積み上げるることによって、その「公」と同じくらいの規模の「私」を満足させられるかもしれない、というのは、理想的に過ぎるかも知れませんが、魅力的な考え方ではあります。


 と、個人的には色々と考えさせられてしまったのですが、まあそういう難しい話は抜きにしても、物語が大いに盛り上がっていることは間違いありません。
 特に今回のラスト、眼に取り憑いていた青い獣に対して、八丁堀の同心時代にもなかったような凛とした姿で赤井が立ち向かおうとする姿には震えました。果たして赤井の真意が那辺にあるのか、それはまだわかりませんが、理屈抜きに格好良かったことは間違いありません。

 赤井はこれまでに罪を重ねすぎたためにわかりませんが、次回最終回で、一人でも多くの登場人物が笑顔になれることを祈ります。
 特に、レギュラー陣の中で唯一今回出番がなかった鉄十とか(いつでも幸せそうな奴ではありますが)。


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2007.09.17

「大江戸ロケット」 廿四発目「○○をのっとれ!」

 遂に完成し打上げを翌日に控えたロケットだが、密かに忍び込んだ青い獣により地上で爆発してしまう。しかし将軍の肝煎りでロケット計画は続行、時は流れて天保十四年閏九月…再び打上げが近づいた頃、清吉はお伊勢の勧めで下田に出かける。だが、そこで彼が見たものは、巨大な打上げ台だった。鳥居の命により、おりくらの手で外国船を狙う砲台として作られた打上げ台に怒りを隠せない清吉だが…

 泣いても笑ってもあと残すは三話のみ。その最終三話の幕開けは、しかし、嵐の前の静けさ、ラストスパートに向けての地均しという印象でしょうか。
 巨大宇宙船を巡る戦い以来鳴りを潜めていた赤井が、そしておそらくは眼に取り憑いた青い獣が再登場、銀次郎も帰還し、レギュラー勢が再び全員集合したことになります。

 そして、本作の中核を成す二つの要素が、(これまで以上に)クローズアップされました。
 その一つはボーイミーツガール。清吉とソラが出逢ったことから始まったこの物語、ソラが空に帰って本当に二人は別れてしまうのか、二人の気持ちの行方がどうなるか。ソラの望みを叶えることがソラとの別れに繋がるというジレンマは、最初からわかっていたものの、打上げ直前になってみるとやはりそのシチュエーションの文芸的うまさというものが感じられます。
 …ただ、江戸っ子のくせに(偏見)ほんとに直前になってもウダウダ言ってる清吉はどうなのよ、という気持ちは正直しますが(いや、上記のジレンマのためではあるのですが)。

 そしてもう一つは、江戸時代におけるテクノロジー。以前に描かれた、鳥居からおりくへのロケット開発の依頼、すでにうやむやのうちに消えてしまったかに思っていたこの依頼がここに来て思わぬ形で前面に出てきましたが、これが実に興味深い。
 なるほど、現実世界のロケット開発史は軍事と切り離せないものでありましたが、その構図を江戸時代に、この天保期に当てはめるとどうなるか。一種の国粋主義者である鳥居がこの技術を手にした場合、今回のような形で実を結ぶことは十分に考えられます。

 江戸時代に月ロケットを作る、それ自体は身も蓋もない言い方をすれば絵空事ではあるのですが、しかし、仮にそれだけの技術が江戸時代に存在した場合、それが社会に及ぼす影響は如何なるものになるのか。それを無視せず描いていることに、何と言いましょうか、SF的リアリズムというべきものを感じますし、その絵空事の中のリアリズムが、本作が単なるドタバコメディではなく、いい意味で油断のできない本作の魅力となっているのだと思います。

 …と、今更なことを書いてしまいましたが、さてそれではこの先の展開がどうなるか、全く読めないのも事実。
 ソラを月に帰すだけでも大変なところに、ここに来てロケット技術を「悪用」したもう一つのプロジェクトが出現したため、この始末をどうつけるのか、正直予想できません。

 予想できないと言えば、どう動くか読めないのが赤井の行動。どうやら銀次郎への対抗意識があるようですが、それで一体何をしようというのか。清吉サイドのプラスになることをするとは思えませんが、青い獣との因縁を含めて気になるところです。
(さらに言うと、なんだか意味ありげな表情を見せる野次馬だか知らない人だかが気になります)


 …最後に、これは全く個人の趣味趣向の問題ですが、ちょっと残念だったのは、今回作中の時間が急に流れて閏九月になってしまったこと。
 時代ネタ的にこの時期にしなければいけないのはよくわかりますが、無理矢理「年表に合わせた」感が漂うのが、どうにも気になります(これまで寄り道・脱線が多かっただけになおさら…)。
 はじめに史実ありきで物語を構成するのは、時代ものとして当たり前ではありますが、もうちょっとスムーズに見せてくれても良かったのではないかな…と感じた次第です。


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2007.09.10

「大江戸ロケット」 廿三発目「剣舞に花火をどうぞ」

 いよいよ今回を含めて残り四話となった「大江戸ロケット」ですが、今回はいよいよ銀次郎主役話。以前、一話くらい銀次郎復活に向けて、大坂での過去絡みのエピソードがあるのではないかと予想していたのですが、何とそれを描くのは原作舞台の脚本家でもある中島かずき氏という嬉しいサプライズであります(ちなみにタイトルの元ネタは「必殺からくり人」…本作と同じく、天保を舞台としたアウトローたちの物語であります)

 あてどなく旅を続けるうちに世直し義賊の銀狐仮面と夜桜頭巾の噂を聞く銀次郎。心中穏やかでない中、彼が出会ったのは、かつて大塩の配下であった美作天兵衛でした。乱の中で大筒の暴発に巻き込まれたために失明して、今は平穏に暮らしているはずの天兵衛の周囲に、銀次郎は何やら不穏な空気を感じて彼から離れますが…
 一方、江戸ではお伊勢さんが今は大目付の金さんに呼び出され命ぜられたのは、最近京大坂を中心に火薬を狙って活動する盗賊団・夜狐党の探索。仕方なしに探索を引き受けたお伊勢さんは、天鳳と、何故か鉄十と共に大坂に向かうことになります。
 そして一味を誘き出すため、囮の火薬を運ぶお伊勢一行の前に現れた夜狐党、鉄十が色々やらかしてややこしいことにもなりかねましたが、何とかその懐に飛び込んでみれば、その頭目はあの天兵衛――

 琵琶湖のほとりに大船団をしつらえた天兵衛の狙いは、大塩の乱の再来、今度は大坂でなく、ロケット打上げの騒ぎに乗じて江戸を焼き払おうという野望に天兵衛は燃えていたのでありました。既にお伊勢たちの狙いを見抜いていた天兵衛により窮地に追い込まれる三人を救ったのは、「あっしには関わりがねぇこって」と去ったはずの銀次郎!
 お伊勢と天鳳に船団を任せ、自分は爆発した火薬の黒煙の中、天兵衛と対峙する銀次郎ですが、馴れぬ闇の中で苦戦。そんな彼の窮地を救ったのは、火薬と見ると黙っちゃいられない鉄十が作って打ち上げた花火の輝きでありました。
 大義に賭けた己の夢を見失い復讐という我欲に凝り固まってしまった天兵衛を倒し、間接的に清吉たちの夢を守った銀次郎ですが、さて彼の夢は――

 と、期待通り実に渋いストーリーだった今回ですが、やはり目を引くのは今回のゲストキャラ・天兵衛の存在。かつては大塩に心酔し、銀次郎らと同志の絆で結ばれながら、挫折して復讐のために江戸の町を炎で包もうとする彼は、一歩間違えれば銀次郎もそうなっていたかもしれない銀次郎のネガとも言える存在であり、今回は、銀次郎の自分自身との対決という側面があったと言えるのではないでしょうか。
 現実に目を閉ざしたのみならず、己の行くべき道から目を逸らして外道に踏み込み、いわば心の目を閉ざしてしまった天兵衛。銀次郎もまた一度は現実に絶望し、顔を焼く寸前までいったわけですが、しかし彼が正道に踏みとどまることができたのは、清吉の花火の輝きを天に見たからというドラマ設計は実にうまいと思いますし、そして再び花火に銀次郎が救われる(=二人の道が分かたれる)というのも、お見事と言うほかありません。
 ちなみにこの天兵衛を演じたのは小山力也氏。銀次郎役の山寺宏一氏との対決は、共に大人の男を演じさせたら業界屈指の名優同士の実に濃いぶつかり合いだったのですが、マニア的にはこの二人と言えば、本作と同じマッドハウス制作の時代劇アクション「獣兵衛忍風帖」「同 龍宝玉篇」でそれぞれ主人公の牙神獣兵衛を演じたのを思い起こさずにはいられないわけで――新旧牙神獣兵衛対決というシチュエーションには密かに燃えてしまいました。

 そして、シリアスなだけでなく、例によって例の如くのギャグとパロディのつるべ打ちももちろん健在。ミラクルボイスや海老車などという一体どの層を相手にしているのかわからなくなるようなオールドネタから、獣拳合体にカミナのアニキといった最新のネタ(というかセルフパロ)、果てはニコ動実況ネタなど、一瞬たりとも油断のできないテンションの高さは、これは本作独特のノリ…というよりやっぱり中島かずき節じゃないかなあと、新感線ファンとしては思います(個人的には天鳳がTVを飲み込んだ時の「果心居士かい」「手妻手妻」という会話が、ネタの濃さといい会話のテンポといい大好きでした)。
 そしても一つ、個人的にたまらなかったのは鉄十の大暴れで――さすがに中島脚本を演じることにかけては間違いなく本作では一番馴れている人が演じているだけのことはある、まさに水を得た魚のような暴走ぶりにはひっくり返って笑わせていただきました。「タヌキサイコー」な獣の拳もヒドかった(褒め言葉)ですが、個人的にはあの千葉ちゃん写しの息吹きを見ることができただけでもう…


 それはさておき、どうやら己の成すべきことに向き合おうとする姿が見えてきたような気がする銀さん。まだまだ迷いや悩みは多そうですが、人間、自分に夢がなくても人の夢を守ることだって立派なことだと思います。というかあと三話なんだから急いで戻らないと出番がなくなっちゃうって!
 銀さんのみならず、あとわずかな時間のうちに登場人物それぞれに何が待ち受けているか、そして物語そのものの行方は、と気になることばかりですが、おそらく残り三話、一気呵成に物語が展開することでしょう。…え、次回でおしまい!?(んなまさか)


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2007.09.03

「大江戸ロケット」 廿二発目「たった一夜の夢だった」

 残り五回、奇士神曲の話数と同じだけしかないのに(関係ない)前回に負けず劣らず大脱線だった今回の「大江戸ロケット」。一言で表すと「ショタコン獣欲地獄」といったところでしょうか…(検索で期待してきちゃった方ごめんなさい)。今回は駿平が主役回、やっぱり色々と割り切れないと悩んできた駿平が、思わぬ女難大騒動の中でやっと一つ割り切れるお話です。

 ようつべに盗撮画像が晒される(思わず海賊版撲滅キャンペーン)くらい復活して出番ができた源蔵さんという人の計算で、致命的に人手不足なことが判明したロケット開発。猫の手も借りたい…というわけでもないでしょうが、ご隠居はいつぞやの機械でなんと野良猫を大量に人間化して労働力にするというとんでもない裏技に出ますが、駿平は動物が人間になるなんて割り切れないとばかりにご隠居の元に向かいますが…そこでとある薬瓶を倒してしまったのが災いの始まり。実は惚れ薬だったその液体を目一杯吸い込んでしまったために、レギュラー陣を含めて江戸中の女性が額に「恋」マークを浮かべて、駿平萌えになって大変なことに…
 と、以下のネタは箇条書きで

○惚れ薬にはその人間の深層心理でも刺激する効果があるのか、それぞれにマニアックな方向に萌えまくるレギュラー陣。お伊勢さんは弟萌え…ってあなたの声で弟萌は色々な意味で危険です。腐女子も大喜び

○天鳳は眼鏡萌えに…また江戸時代では希少価値のありそうな趣味ですな。しかしアキラってあんたフィンガー5か! さすが昭和四十七年頃の特撮番組みたいな名前をしている人は違います。

○さらにマニアックな方向で迫るおりく。半ズボン…じゃなくてすっごく短い猿股萌えとは全くもって難儀すぎる。想いを寄せる相手の弟に…というちょっとドキドキもののシチュエーション台無し。

○さて異変の原因に気付いたおぬいは、正体に気付いていたおソラの励ましもあって、本当の姿である犬の姿に戻り、その嗅覚を利用してご隠居を捜すことになりますが――江戸の町中は危険がいっぱい。たとえば…

○いきなり鉄十が「アイシー!」とか言って抱きついてきたりな。にしてもアイシーって…アイシーは…アイシーは回路の代わりになって、もう…くっ、人の子供の頃の悲しい記憶を思い出させやがって。大体アイシーはチャウチャウだ…ってこれは鉄十も言ってました。しかし鉄十は相変わらずの完全に出オチキャラですが、先日観てきた舞台でも中の人は出オチキャラだったのでこれでよしとします。

○一方、惚れ薬の効果は洒落にならない域にまで達し、江戸中の女性がほとんどリビングデッドという何だか「屍美女軍団」みたいな状態に(わからんわからん)。石川島も萌える女性軍団に蹂躙され、もうヨレヨレになった駿平は複葉機で…って劇場版か!

○そしていままで何ごともなかったおソラにもついに薬の効果が…って額に浮かんだのは「濃」の一文字、まるで模型雑誌に連載経験のあるミリタリーモデルマニアの脚本家みたいな勢いで蘊蓄を語りだします。

○ようやく解毒薬を持って駆けつけたおぬいですが、既に射場は崩壊、折悪しく(良く?)一糸まとわぬの人間の姿に戻ってしまったおぬいは、口移しで駿平に解毒薬を飲ませて…おお、何だか深夜アニメみたいな展開。

○そんなこんなで台風一過、おぬいの正体に気付きつつも何だか吹っ切れた様子の駿平。おソラへの想いも割り切ったようで、まずはめでたしめでたしと言ったところでしょうか。やーい獣萌え兄弟。…あ、いや、異類婚姻譚は美しい日本の伝統ですよ?


 というわけで、何だか観ているこっちが悪夢のようだった(褒めてます)今回ですが、無闇に作画レベルも高く、特に女性陣の笑顔がやたらと可愛らしく、理屈抜きで楽しく観ることができました。本筋以外では、夫婦漫才、いや漫才抜きの夫婦のようだとお伊勢さんに言わしめた清吉おソラの掛け合いが楽しく、実に微笑ましい気分になったことです(割り切る前の駿平にとっては針のむしろだろうけどなー)。


 さて次回は中島かずきさん出陣! 残り四話、奇士神曲の残り話数と同じだけしかないのに(しつこい)ゲストエピソードとは大丈夫なのかとちょっとだけ心配になりますが、銀さんが主役ということで色々と期待は高まります。果たして銀さん戦線(何の?)復帰となりますか、男泣きなエピソードになることを楽しみにしたいと思います。


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2007.08.29

「大江戸ロケット」 二十一発目「脱線は三度まで」

 前回までのドシリアスエピソードも一段落ついて、さて最終回までにどうするんでしょうと思ったら、今回は何と劇中劇という展開。考えてみれば原作が原作だけに、あってもおかしくはない展開ですが、ここに来てとはちょっと吃驚しました(予告の時の眼の「俺に台本来てねーじゃん!」の意味がわかって大笑い)。しかもまさかの源蔵回とは…ある意味、これまででもっともカオスは一話でしたが、しかしそれでもきちんと終盤にひねりを入れてくるあたり、いかにもこの作品らしい一話でした。

 何だか突然ロケットの町になってしまった石川島(しかし発射台があるけれども、あんなところで打ち上げる気かしら…ロケットなめんな)。そこに何故か芝居小屋を建てたお伊勢さん、おソラさんとロケットの芝居を上演するというのはもちろん金儲けのためではありますが、銀さんが興味を持って帰ってくるかもしれないから、という女心が泣かせます。
 そしてタイミングよく(?)人間に戻った源蔵に、ふとしたことから女物の着物を着せてみたらこれがとんでもない美人さんに。さすがはビジュアル探偵(そういえばヌードを披露してたしなあ)…というのはいいとして、トントン拍子に舞台のかぐや姫(=おソラ)役に大抜擢されます。

 かくして始まる大舞台、当然台本通りにいくわけもなく脱線の連続ですが、それでも何とかラストのロケット打上げまで来てみれば、しかし、役に…いやおソラの気持ちになりきってしまった源蔵さんが、「帰りたくない!」と台本にない台詞を言ってしまったおかげでまた大波乱。アドリブで声を当てることとなったおソラは、自分自身の言葉で、心の内を語ることに…
 と、この辺りの展開が実にうまい。散々バカやってきた挙げ句に、実はこのエピソードが、この時のために――これまでうっすらと描かれてきた、そしてこれからより一層大きな意味を持つであろうおソラの清吉への想いを描くために――積み上げられてきたと気付いた時には、大いに感心してしまいました。
 まあ、大爆発オチはずるいとは思いますが(笑)

 以下、その他のキャラ・ネタ等に関する感想を箇条書きに

○源蔵さん周辺
 最近出オチ状態だった源蔵さんに文字通りスポットライトが当たって感無量。もっとも、目立ったのはやっぱりほかの連中のような気がしますが…
 にしても、源蔵さんのお母さんの「(着物は)とっくの昔に売っぱらっちまったよ」とか「(女物の衣装でも)アニメだからどうとでもなるよ」とか、いちいちオカンらしい傍若無人ぶりが妙にリアルで…

○劇団ネタ
 やっぱり個人的には一番のツボはこの辺り。メタなネタはお得意な本作ですが、ここまでメタメタだと実に愉快です。今回みんなで結成した劇団が「劇団☆東快道」ってのがまた「らしい」名前で大笑いしましたが、やっぱり圧巻は呼んでもないのに出てくる中ノ島一吉(なかのじまかずきち)。
 いやーこれはひどい(褒めてます)。名前だけ見るとかずきさんなのに(顔もよく見るとちょっと似てる)、ドリルといい髪の色といい声といい…カミナの兄貴、復活するところ間違ってるよ!(そして羽織には新幹線の柄が入っているのもまた芸コマ)
 にしてもBOXバラ売りなしはやっぱないよな。私はもちろんBOX買いましたが。

○鉄十とおりく
 ある意味、源蔵さん以上に出オチ状態の鉄十ですが、舞台ネタに鉄十を入れないとは何という片手落ち! 日曜の晩は中の人が大河ドラマで一世一代の熱演を見せてくれたというのに…<それは関係ない
 まあ、こういう時に身軽に乱入できるキャラは便利だと思いますが、ピンクのスポットライトでの登場シーンが、これまたらしくて大笑い。いや、じゅんさんならあれくらいリアルでやるよな。
 そして気がついてみると鉄十と一緒に登場する率がやたら高いおりくさん(OPからして一緒だしね)。もうあんな獣萌え純情男はやめて鉄十とくっつけばいいのに。
 あと、おりく退場の時に無駄にドップラー効果を効かせる救急駕籠が芸コマ過ぎる。

○清吉とおソラ
 そして今回の影の(?)主役カップル。もう清吉の意識しまくりっぷりは、端から見ると不審人物以外の何者でもないですが、まあ恋する男の子はこんなもんだ!(なに喜んでるんスか三田さん) いやー、舞台の下とはいえ、自分たちをモデルにしたメロドラマを二人っきりで…というのは、思春期(なの?)の男の子にはある意味拷問シチュエーションだよね…
 にしても「ずっと一緒にいたい人が」というおソラの台詞は、二人の状況を考えるとなかなか面倒な内容ではあります。おソラさん、分裂しなきゃいいが…

○その他の人々
 ほとんど裏技とはいえ、このご時世に堂々と芝居を演じられて実に楽しそうなレギュラー陣、見ているこちらも嬉しくなります。その中でも、おそらく一番喜んでいたのは、天鳳天天の二人ではないでしょうか。
 特に天鳳は、玉吉(舞台での清吉)役をボーイッシュに好演していて実によかったのですが、世の中には女に生まれたために役者になれなくて妖夷の肉食ってる人とかいるかと思うとちょっと複雑な気持ちになりました。
 …それはともかく、玉吉を演じている時の早水リサさんの発声がやたら舞台調でちょっと感心しましたよ(舞台にも出てらっしゃる方みたいですね)。

 一方、こういうのが大ッ嫌いなはずなのに、今回やけに物わかりがよかった鳥居様。水野様お墨付きとはいえ、妙にロケットに前向きなのがちょっと気持ちの悪いことです。


 と、微妙に嵐の予感を感じつつ、さて次回は…やっぱり予告だけじゃ全然わかりませんね、こりゃ。


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2007.08.22

「大江戸ロケット」 二十発目「難儀に微笑む女」

 いよいよ青い獣との対決も大詰めの「大江戸ロケット」。第二十話の今回は、さすがにギャグもパロディも抑え目、しかし作画は結構な力を入れて終シリアスにストーリーが展開し、意外な形で一つの決着を迎えることとなります。

 ついに浮上した巨大宇宙船を巡る戦いは、三つ巴、卍巴と大混戦。それぞれの使命、それぞれの想い、それぞれの因縁が幾重にも絡み合って、実に見応えのあるドラマとなっていたのですが、存在自体がウザい(そこまで言ってない)鉄十はアバンタイトルで強制退場…(´Д⊂ おソラなめんな。
 それはともかく、銀次郎により自分の心の鍵を開けられたと嘯く赤井(ここで「徳川(とくせん)」とちゃんと言っているのは、当たり前といえば当たり前ですが好印象)の前に、あっけないほど簡単に敗れ去った銀次郎。やはり心の中、自分で自分に嘘をついている人間は、自分(の欲望)に正直な人間には勝てないのか…勝って欲しいんだけどなあ。何とか黒衣衆と清吉に助けられて彼らと和解、一気…じゃなかった一揆コールで薬も飲んで復活、久々の黒衣衆ファイト一発! で先に宇宙船に突入したおソラと青い女を追います。

 その二人は、一時休戦して青い獣分離体を追い詰めますが、ここでわかったのはこの分離体が、青い女の帰りたいという気持ちから生まれたものだということ。青い女の、帰りたくないという気持ち(≒赤井と共にいたいという気持ち)と、故郷に帰りたいという、文字通り引き裂かれた想いが生み出した存在…今回のこの分裂は意図せざるものでしたが、青い女はこれまでもこの「心の分裂」を行ってきたらしく、それが彼女たちの母星では大罪であったということが語られます。
 正直なところ、心を分裂させることが永久禁固に値する大罪、という考え方はよくわからないのが困ったものですが、まあ心を分裂させると体も勝手に分裂するのであればそれはそれで迷惑…なのかなあ。あ、もしかしてピッコロ大魔王と神様みたいなものなのか。これは確かに迷惑だ。
 …閑話休題、以前青い女が「楽しい」という感情を単純でくだらないこと、というように評していましたが、元々は彼女たちは相当複雑な思考形態を持つ生物なのかもしれません。おソラさんを見ているとそうは思えなかったりしますが…

 一方、状況は戦いの継続を望む眼の思わぬ乱入もあって、船のコントロールルームへ。あくまでも帰還を望む分離体は、鉄十の竜勢を飲み込んで自分の腕をロケットランチャー状態に変形、その攻撃から赤井を庇った青い女は瀕死の重傷を…そして青い女が自爆装置を起動させたことを知ったソラは清吉銀次郎と共に脱出、残された赤井と青い女は、二人だけで最期の時間を迎えることとなります。
 ああ、何だかズォーダー大帝の超巨大戦艦に特攻しそうな感じだねえ…とか爺臭い感想はさておき、青い女の心が、母星への帰還以上に自分と共にあることを望んでいることを知った後の赤井の穏やかな表情が、何とも印象的で――それまでつまらない人生を送ってきた、いや、自分の心の中で自分の人生をつまらないと思いこんできた男がようやく手にした幸福感、心の充足だったのでしょう。
 そして、青い女を「ゆう」と呼ぶ赤井。夕日は西に沈む、夕日は赤い…赤井西之介が男を見せた時ですが、幸せは一時。赤井はゆうにより船外に脱出させられてしまうのでありました。

 その直後、様々な想いを飲み込んで爆発する宇宙船。清吉とおソラは、手に手を取り合って宙を舞う一方で、己は一人地べたに落下という、これ以上はない美しいビジュアルで失恋する銀次郎が拙なすぎます。そのショックから銀さんは一人旅の空へ…残されたお伊勢さんは何を想う。
 と、銀さんは可哀想ですが、江戸に残った面々は、本当にうまくいきすぎて気味が悪いくらいのハッピーエンド。清吉が所払になるだけで、他は一切お咎めなし。所払と言うと重そうですが、これは幕府の公事方御定書に定められた六段階の追放刑の中でも最低ランク、住んでいる所から追い出されるだけですし(もっとも人別を消されていると無宿人になってしまうわけですが…あ、ここでは浮民と言った方がいいのかしら)、石川島に作業場も用意されたらしく、至れり尽くせりです。

 そして慌ただしくも希望に満ちた新しい一歩を踏み出した清吉とおソラですが、清吉はおソラに白い獣の姿を見せて欲しいと頼みます。何だかこの白い獣の姿となったおソラさんは、羞じらっているようで、何というか、こう、妙にエロい演出だったのですが、これは考えてみれば好きな男の子の前で、生まれたままの姿を晒しているのだから無理もない話でしょう。しかしまあ、清吉もすっかり赤井のことをどうこう言えない獣萌えに…
 と、この場合男(地球人)の方はどうでもいいのですが、ちょっと心配なのはおソラさんの方。この調子でいくと、彼女もゆうのことをどうこう言えない状況になってしまうのではないか、心配になってきます。
 劇中でも言われている通り、己の本音と建て前――とまで極端ではないものの、己の中に相反する心を持つというのは、少なくとも我々人間にとってみれば当たり前の話。もちろん、日々の生活を送る上では、そうした複数の心の折り合いをどこかでつけなくてはいけないわけですが、それがそうそううまくいったら苦労はないし、もしそんなことをみんなが出来るようになったら、たぶん世の中から文化芸術というものの大半は消えてなくなるのではないかなあ…宇宙人をロケットに乗せて帰す話が、ずいぶんと面白い方向に向かってきたものです。

 さて残すは六話。多いような少ないような、微妙な話数ですが、青い女と鳥居様という二大障害がなくなった今、むしろやることがあるのか…という気がしないでもありませんが、本題であるロケット開発に加えて、まだまだ問題は山積。銀さんもあのままでは追われないでしょうし(何となく、銀さんの大坂でのエピソードが入るような気が)、分裂体に取り込まれたように見える眼の存在も不気味。粘着気質では誰にも負けない鳥居様もこれくらいで黙るとは思えませんし、何よりも、生き残ってしまった赤井の行く末が気にかかります。
 こう挙げてみれば、退屈している余裕はなさそうですね。そして最終回までに源蔵と鉄十の活躍はあるのか…


 しかしあれだけのサイズの宇宙船が爆発したら、月の基地の方から何か言ってこないかしら。あ、そういえば舞台版のラスト…

 も一つ。ラストに出てきたピンクがゆうの魂ってことは…ないよねえ(本当にそうだったら泣けます。良い意味で)。


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2007.08.15

「大江戸ロケット」 拾九発目「とち狂って候」

 さあほとんど最終回直前のノリとなってきました「大江戸ロケット」、Web拍手で声援もいただいたので頑張って感想書きます。
 今回は作画的には崩壊手前という感もありましたが、とにかく後から後からギャグやらパロディやらシリアスやらが飛び出してくるテンポの良さは健在で、間違いなく本作のクライマックスの一つであろう展開を、大いに盛り上げてくれたと思います。

 さて前回のヒキ、赤井の短筒で背中からズドンとズドンとやられた清吉ですが、銭酸…じゃなくて銭帷子でがっちりガード。しかしそれならばと刀を抜いた赤井の前には手も足も出ず、黒衣衆を向こうに回していたおソラさんは、見るに見かねておソラさんは自分の身を差し出すと…
しかしこの辺りの、自分の暗黒面を露わにして清吉をいたぶる赤井様の迫力はなかなかのもので、自分の不安定な身分を語った上での「テレビで見るより遥かに厳しい」という台詞は、何だかもんの凄い説得力で思わずうなづいてしまいました。
 しかし、確かに原則一代限りのお役目である町方にとって、役目から外されるというのはそのまま幕府のお役人という身分をも失うわけで大いに恐ろしかっただろうとは思いますが、現実にはよほどやらかさない限り世襲のお役目ですし、町人や武家屋敷からの付け届けのおかげで普通の役人よりかは余程裕福で、また隠密廻り同心といえば実際に事件の捜査に当たる三廻同心の一つで花形であったはずなのですが(あ、隠密廻りだから付け届けはないか)、どうなんでしょう(この辺は自分でもう少しちゃんと調べてみないといけないかな)。

 それはさておき、そこにタイミング良く駆けつけたのは天鳳天天。前回赤井宅で発見した獣爪に、青い女が獣に変身する決定的瞬間を収めたビデオまで出てきて絶体絶命。何とかごまかそうとはしたものの、ツッコミ体質が災いしてか、あまりに天然すぎるおソラさんへのツッコミの中で超自爆――この辺りのやりとりの呼吸は、新感線ファンなら「あるある」と言いたくなるような実に見事な呼吸の自爆劇で、大いに笑わせていただきました。
 しかしハルヒダンスから大伴昌司ってどんだけ幅広いんですかこの番組のネタは。

 さらにそこに現れたもう何言ってんだかわからないテンションで吼える若本耀蔵にばっさり袈裟懸けに峰打ちされて捕らえられた赤井。しかし鳥居様の刃は収められることなく、そのままおソラと清吉に向かいますが――そこに突如現れて立ちふさがったのは、どことなく若き日の山口崇似(に見えるのは思いこみかなあ)の美形剣士!? この期に及んで新キャラ? と思えば何とそれはご隠居=平賀源内。お手製の若返り薬で一瞬だけ若返っての登場でしたが、インパクトは十分でした。

 さらに、そこに駆けつけた遠山様が携えていたのは水野忠邦の書状。おソラに清吉、みんなまとめてお構いなしというその書状の前にはさすがの鳥居様も怒りに燃えつつも逆らうわけにはいかず、赤井も捕らえられて、これにて一件落着…?
 ちなみに、水野様の書状圧力であっさり難関クリアというのは、正直あまりすっきりしない展開ですがこれは原作舞台通り。しかし、やはりご隠居の正体ばらしのタイミングは舞台通りこのシーンの方がインパクトが大きかったような…いや、これ以上ネタを増やすと焦点がぼやけるか。
 また、ここまでの件で示される、私利私欲のためなどではなく、ただ日の本を守るという信念のために行動する鳥居像は、明確に「天保異聞 妖奇士」の鳥居像と重なっており、ビジュアル的には正反対ながら、二つの作品で一本筋の通った描写にはニヤリとさせられます。

 が、怒濤の展開にすっかり忘れていましたが、青い女はまだ健在。その場に乱入した青い女は赤井を救い出した上に、勝利のメイクラブと言わんばかりに熱烈な接吻を交わして――まったく、公衆道徳ってもんを知らないから近頃の宇宙人は…そしてそれを思い出すたびに赤くなる清吉のおぼこぶりも凄い。
 それはさておき、赤井を連れた青い女は、自分から分裂した獣を追って消え、さらに黒衣衆が、そして赤井の裏切りをお伊勢から聞かされて怒りに燃える銀さんが、そして何よりおソラと清吉が、二人を追って舞台は秩父へ――
 …どうでもいい話ですが、眼が青い女に目ん玉を持っていかれたシーンは、人食いガラスにほじくられた目ん玉をあっさりはめ込んだタツマキみたいなオチになるかと思ったのに。

 さて江戸の騒ぎも知らずにマイペースの鉄十ですが、こちらはこちらで大騒動。何だか知らないが暴れ回るさゆりこと青い獣分裂体をなだめるのに必死になっていたかと思えば、いつも懐にいた謎の生命体が突然分裂体と融合、その催眠術(?)にやられて、分裂体にすっかり魅了されてしまい…
 そうとは知らず、それぞれの想いを胸に秩父に向かう者たちのうち、銀次郎と赤井が遂に激突。
 しかし、真っ正面から銀次郎を迎え撃った赤井が、「俺はこれから一生面白おかしく生きるのさ」と、奇しくもかつて銀次郎が大塩を失った時に叫んだのと同じ言葉を嘯くのが実にいい。同じ言葉を胸にしながらも対照的な道を歩むこととなった二人の行く末は…微妙に銀さんが崖から落ちて生死不明になりそうで怖いです。

 一方、ようやく鉄十のもとに駆けつけた清吉おソラが見たものは、辺り一面を掘っくりかえす鉄十と青い獣の姿。そうこうしているうちに獣が掘り出したのは――でっかいソラマメ!? 以前に登場した青い女のそれとは比べものにならないほどに巨大ですが、こんなに簡単に浮上できるのであれば、鉄十の言うかぐや姫は何故すぐに帰らなかったのか…


 というわけで、冒頭にも書きましたが、本当にもう最終回一話前と言われても信じてしまいそうな怒濤の展開。次回を入れてもあと七話もあるのに、果たしてこのあと一体どうなってしまうのか…(まあ、清吉の銀次郎越えの話がないといけないと思うのですが)。
 それにしても、今回登場人物の中の人たちがそれぞれに熱演していた中で、それとはちょっとベクトルの違った熱演を見せてくれたのが、鉄十役の橋本じゅんさん。暴れるさゆりちゃんをなだめるシーンやら、催眠術(?)でやられてちょっとダンディ方面におかしくなったシーン(本当、じゅんさんのエセダンディっぷりは粟根さんのエセ美形っぷりに匹敵するぜ…)やら、じゅんさんアドリブでやってない? と言いたくなるようなアレっぷりで最高でした。まあ、台詞のネタを見る限り、ちゃんと台本はあるようですが、普段からちょっとおかしい奴が、別の方向ににおかしくなったらどうなるか、その演じ分けが本当に見事だったと思います。表の「とち狂っ」た奴が赤井だとしたら、裏は鉄十と言ってもよいのではないでしょうか。何はともあれ、鉄十の出番がもっと増えることを祈りつつ、次回を楽しみに待つとします。


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2007.08.08

「大江戸ロケット」 拾八発目「相手は神君の隠し穴」

 色々な意味でどん底展開から何とか上向きテイストになってきた前回を受け継ぎ、今回はレギュラーキャラ総出演でおソラ救出作戦に挑むという総力戦。話数で言えばまだ全体の三分の二を超えたところですが、何だかあと八話を残して最終回みたいな盛り上がりになってきました。
 あまりにも盛りだくさんだったので今回は箇条書き。

○凶悪な顔の清吉おソラの手配書を貼りだして世人に二人の凶悪ぶりをアッピールする赤井様。視聴者全員が突っ込んだかと思いますが、「女に骨抜きにされた」のはアンタだアンタ(まあ、人間、他人を煽る時には、自分が言われたくないことを相手に言う傾向があるようですが…)

○その手配書を鉄十の元に届ける役割を果たしたものの、残った熊に襲われた源蔵鳩…存在感が薄いは薄いなりに知恵を巡らせたのにメインライターにも疎まれた挙げ句こんなところで惨死とは(違

○遠山様のヒントを元に、町奉行ブログ(しかし何というネーミング…)のエントリを立て読みする天鳳天天。が、途中で見つけたメッセージは「しにがみはりんごしかたべない」…バカ! バカ! 敏樹! しかし、ねっと茶屋といい、メイドコスの天鳳といいポスタービームサーベル差したアキバ系天天といい、この辺りの展開は360度隙なくツッコミどころなのがもの凄い。

○それはさておき、二人が立て読みで見つけた言葉は「そらぬけあな」。つまり神君徳川家康が江戸城に作った抜け穴(…熊木赤針斎謹製?)におソラさんが捕まっていると…この時の「遠山様は…やっぱり金さんだ!」という天鳳の台詞が何げに泣かせます。ちなみに抜け穴から抜け出しては下々を徘徊していたという暴れん坊な将軍様がサンバを踊るというベタベタなギャグもありましたが、バックダンサーには何故か今は亡き源蔵の姿が…

○さてそんな動きがある一方、前回微妙に死亡フラグを立てていた銀さんは、単身鳥居様&黒衣衆に立ち向かってボコボコに。銀さん、不器用だねえ…とそこに現れたのは天鳳天天に、二人に引っ張られてきたスケバン刑事白波姿のお伊勢さんの小悪党チーム。ここでお伊勢さんの桜の代紋(あ、夜桜だからか)が唸って砂嵐を起こし、銀さんを連れて小悪党チームは撤退しますが、それにしても天鳳天天は中盤に入ってから大活躍だなあ…小悪党チーム結成の時の三人の会話がまた、時代劇してて良いのです

○その頃、青い女は分離した獣と融合しようとするも失敗、そんな中、おソラ救出に駆けつけた鉄十は偶然青い獣と対峙して…そのまま意気投合、スキップしつつ、何しに来たかすっかり忘れてどこかに消えていくのでした。ってそんなオチありか! 折角のじゅんさんの出番――鉄十のアクションみたかったのに! てゆうかさゆりって誰よその女! …青い女は相変わらず名無しなのに。

○ご隠居邸で目を覚ました銀さんに「男が余裕なくしたら格好悪いよ」と声をかけるご隠居…そしてご隠居と銀さんが向かった先は老中・水野忠邦邸。この時に「堀田様や土屋様(? じゃあ頼りにならないからね」と言いながらご隠居が見せる黒い表情がこれまたいい。そして銀さんのディバイディング鍵十手で連れ出された水野様は、ご隠居の顔を見るや、不倫相手が家に押し掛けてきた男みたいなことを言い出しますが…この二人の過去に一体何が<微妙に誤解を招く表現

○そして始まる救出作戦。以前に登場した人力カタパルトでロケットからの脱出ポッドを打ち上げるという、おりくの花火テロという陽動があるとはいえ豪快にもほどがある作戦ですが、まあ、幕末になると江戸城の警備もザルでご金蔵破られたりしていたようですからこれはこれでOKでしょう。もともと存在を忘れ去られているような涸れ井戸が目的地でしたからね。

○一方、なんか微妙にエロいことを言い出すお伊勢さんを連れて天鳳天天が向かったのは赤井宅。微妙にせこいっちゃあせこいですが、これが思わぬ大発見につながるとは…そう、布団の下から出てきたコレクションがもう大変(そっちかい)。さすがは死体や獣に萌える男…というかショタ声の弟は用心した方がいい、などと色々と衝撃的だったもので、獣に見せかけた時の凶器が発見されたのをスルーしそうになりましたが、これでついに赤井の悪事が暴かれることに…そして現れた青い女に単身立ち向かうお伊勢さんが男前すぎます

○遂に抜け穴で再会した清吉おソラ。牢を挟んでお互いの気持ちをぶつけ合いますが、純情と天然で、何だかおぼこいな君たちは。しかし異文明同士の交流をこういうスタンスで描く作品は、それこそ山のようにありますが、やっぱりベタでもいいものはいいですね。「驚いたのは本当のことを知らなかったからだ」という台詞もまたいい。いなせってのはどうかと思いますが

○そして何だか急にイイ奴になった赤井様が牢を開けてくれて牢から脱出できたおソラを連れて逃げようとする清吉。赤井はその背中に短筒を向けてバァンと…これ、舞台版の粟根さんが同じことやったら絶対信じてもらえなさそうですが(たぶん言った直後に「信じられるか!」とボコられる)、アニメ版の川島氏の声で言われると一瞬信じそうに…なったのは私だけか。何はともあれ、気になりすぎるヒキで次回に続く。


 と、物語の構成上仕方なかったとはいえ、色々とスッキリしなかった展開の多くが覆され、一転、実に熱い展開になってきた今回。
ここであまり大マジメになっても照れくさいものがありますが、そこはいつも通りふんだんにギャグやパロディを取り込むことにより、物語のテンションにうまく緩急付けているのはさすがといったところでしょう。
 何よりも、風来長屋チーム+おりく、小悪党チーム、そしてご隠居と銀さんと、それぞれが自分の出来ることを尽くしておソラさんを助けるために尽力するというのは実に心躍る展開です。個人的には職人連中があまりにもあっさり気持ちを改めてしまった気がしないでもないですが、まあ江戸っ子らしいということでいいか。

 が、個人的には、鉄十がその輪の中から今回ほとんど出オチ状態で退場してしまったのが何とも残念で…大河ドラマで一瞬ご尊顔を拝めたとはいえ(関係ねえ)、橋本じゅんさん分があまりにも不足しているので、次回こそは鉄十の活躍をどうか…出番があってもそれはそれで悪い予感しかしませんが。


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